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殺人未遂の成立要件は? 量刑の基準と執行猶予がつくケースを紹介

2020年07月31日
  • 暴力事件
  • 殺人未遂
  • 成立要件
殺人未遂の成立要件は? 量刑の基準と執行猶予がつくケースを紹介

令和2年5月、都内のアパートで隣人の部屋に押しかけて男性を切りつけた男が逮捕されました。深夜の騒音に激高した男が包丁を手に隣人を切りつけた事件ですが、傷害事件ではなく、殺人未遂事件としての逮捕でした。
他人にケガをさせる行為を処罰する法律といえば、刑法の傷害罪をイメージする方が多いかもしれませんが、行為に至った意図や内容によっては殺人未遂とみなされます。傷害罪が適用された場合と比べると非常に罪が重くなります。本コラムでは「殺人未遂」をテーマに、犯罪が成立する要件や量刑判断の基準について弁護士が解説します。

1、殺人未遂にあたる行為とは

殺人未遂は、刑法第199条の「殺人罪」と第203条の「未遂罪」に定められている行為です。

【刑法第199条 殺人】
人を殺した者は、死刑または無期もしくは5年以上の懲役に処する。

【刑法第203条 未遂罪】
第199条(中略)の罪の未遂は、罰する。


刑法199条に定められている殺人罪は、故意に人を死に至らしめた場合に成立する犯罪です。これに対し殺人未遂は、相手を死に至らしめる意思がありながら、何らかの理由によって相手が死亡しなかった場合に成立するものです。

たとえば妻が夫を殺そうと考えて、刃物で背部を突き刺した事例で実際の判決文を見ると、「夫を殺害することを決意し(中略)文化包丁でその左側背部を数回突き刺し(中略)傷害を負わせたにとどまり、殺害の目的を遂げなかった。」と認定され、「幸いにも夫は一命を取り止め、被告人の本件犯行は、未遂に止まっていること、(中略)本件は(中略)偶発的な側面があること(中略)被害者である夫の落ち度は大きいこと」「以上のような諸事情を総合考慮して、被告人に対しては、主文の刑を科した上、その執行を猶予することとした。」この表現からも、殺意をもって実行に移したが殺害の結果が得られなかった場合などに、殺人未遂となる場合があることがわかるでしょう。
【神戸地裁 平成30年(わ)第900号 殺人未遂被告事件】

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2、殺人未遂の成立要件は、「殺意の有無」と「行為の危険性」

殺人未遂の成立するのは、「殺意の有無」と「行為の危険性」があった場合です。以下で見ていきましょう。

  1. (1)重要視されるのは殺意の有無

    ●殺意の有無とは
    殺人未遂の成立において、もっとも重視されるのが「殺意の有無」です。殺意、つまり「相手を殺す」という意思があったのかが殺人未遂の成立を大きく左右します。

    先に挙げた「妻が刃物で夫を刺した」という事例では、妻が明らかに「夫を殺害する」という意思を示していたため殺人未遂が成立しました。ところが「脅すために刃物を握ったところ、もみ合いになって誤って夫を刺してしまった」というケースでは殺意が存在しません。この場合、殺人未遂ではなく傷害にとどまる可能性があるでしょう。

    ●殺意の有無の判断基準
    殺意が存在するのかを証明する客観的な指数などが、存在するわけではありません。
    一般的に、次のような要素を満たしている場合は「殺意がある」と判断されやすいでしょう。

    • 手・足ではない部位(人体の枢要部)への攻撃である
    • 攻撃の回数が多数回にわたって執拗(しつよう)である
    • 攻撃後に被害者を救助していない
    • 殺傷能力が高い凶器を用いて、殺傷能力が高まる方法(包丁を横に向ける等)を用いる
    • 犯行前に殺意を抱くほどの事情があった
    • 「殺してやる」などの文言がある


    ただし、これらの状況があった場合でも必ず殺人未遂と判断されるわけではありません。状況によっては傷害罪に問われるにとどまる可能性もあります。

  2. (2)人が死亡する危険性が現実的に認められる行為も必要

    殺人未遂が成立するには「行為の危険性」も検討材料になります。刃物で刺す、高所から突き落とすなどの行為は当然に「相手は死亡するだろう」と予測できるので、人を死に至らしめるに足りる、危険性の高い行為だといえるでしょう。
    一方で、いわゆる「丑(うし)の刻まいり」のように呪詛(じゅそ)の力で相手を殺そうと考えて実行しても、現実的に相手を死に至らしめる危険性はありません。どんなに強い殺意があったとしても、現実的な危険がなければ殺人未遂は成立しないことになります。

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3、殺人未遂の刑の重さ

殺人未遂が成立した場合、その法定刑は、殺人と同じく「死刑または無期もしくは5年以上の懲役」です。法定刑のみに注目すれば、もっとも重く処断されれば死刑に、それ以外でも無期または5~20年の懲役刑となります。

ただし、刑法第43条は未遂罪について「その刑を減軽することができる」と規定しており、もっとも刑が軽くなった場合は懲役2年6か月まで刑罰が短くなります。人を死に至らしめていないという結果から、実際に下される量刑は殺人罪よりも軽くなるのが一般的でしょう。

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4、殺人未遂の量刑の判断要素

殺人未遂の量刑の軽重は、以下のような要素を鑑みて決定されます。

  1. (1)本人の動機や内面に関する要素

    ●犯行の動機が、自己中心的なものかどうか
    実行行為に至った動機は量刑に大きな影響を与えます。先に紹介した「妻が刃物で夫を刺した」という事例では、日頃から夫の暴力に悩まされ続けてきた鬱積(うっせき)が引き金となったという事情を勘案され、懲役3年・執行猶予4年の判決が下されました。一方で、無差別で人を襲った事件のように自己中心的な動機であれば重くなる可能性が高いでしょう。

    ●本人は反省しているか、余罪や前科があるか
    また、犯行後に本人が深く反省しているのか、それとも愉快犯のように開き直って反省していないのかも量刑に影響します。
    また余罪や前科があるかどうか、なども判断要素のひとつとなります。

  2. (2)実際の犯行に関わる要素

    ●犯行の様子が残虐であったか
    刃物でしつこく刺した、通行人の多い市街地で無差別犯行におよんだ、といったケースのように、犯行内容が残忍・非道であれば、量刑は重く傾くでしょう。

    ●被害が大きかったか
    負傷の程度も重要です。死に至らなかったとしても、重度の傷害(治療期間が長い、後遺障害が残る等)を与えれば当然に量刑が重くなり、軽症や無傷の場合は軽くなる可能性があるでしょう。

    ●犯行がとっさのものであったか、計画的だったか
    一般的に、短絡的に起こしたとっさの犯行よりも、用意周到に計画された犯行のほうが悪質で強い殺意が認められる傾向があるため、量刑の軽重に大きく影響します。

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5、殺人未遂が執行猶予となる可能性はあるのか

刑罰に執行猶予がついた場合、その猶予期間中にほかの罪を犯さない限り、刑の効力が消滅するうえに、社会生活を送りながら罪を償うことができます。
しかし、殺人未遂の場合は原則として執行猶予がつきません。殺人未遂事件を起こしてしまったうえで、執行猶予つきの判決を望むなら、弁護士へ依頼し、刑の減軽を求めることが必須になってきます。

  1. (1)執行猶予がつく条件とは

    刑法第25条は、執行猶予の条件について規定しています。

    • 言い渡される刑罰が3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金であること
    • 以前に禁錮以上の刑罰に処されたことがない者
    • 以前の刑罰の執行を終わった日、またはその執行の免除を得た日から5年以内に禁錮以上の刑罰に処されたことがない者


    この条件を見る限り、最低でも5年の懲役刑が科せられる殺人未遂は、執行猶予の対象外です。

  2. (2)刑の減軽で、執行猶予となる可能性がある

    殺人未遂で執行猶予となるには、懲役3年以下の判決が下される必要があるので、「刑の減軽」を受けることが大前提となります。刑の減軽とは、その犯罪を行った背景などを鑑みたときに酌量の余地があれば、刑が軽くなるという制度です。
    これは、単に「未遂だから」というだけで認められるわけではありません。動機に酌量の余地がある、正当防衛だった、被害者と示談が成立しているという場合や、自らの意思で犯行を途中で止めた場合、心神耗弱(行為時に責任能力が限定的)だった場合などに認められます。

  3. (3)減軽には弁護士の活動が必須

    刑の減軽を求めるためには、弁護士へ依頼をし、殺意を抱いて行為におよんだ背景や事情を具体的に示したり、自らの罪を認め反省し被害者に対する謝罪や示談交渉を進めたり、といったことを行う必要があります。
    できるだけ早い段階で相談し、すぐに減刑に向けた活動を依頼するのが大切です。

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6、まとめ

殺人未遂は最高で死刑が、少なくとも5年以上の懲役が規定されている重罪です。現実的には人を死に至らしめたという結果が生じていないので、死刑になることはまず考えられませんが、それでも長きにわたる懲役刑を覚悟する必要があります。
激しいDVなどを受けていた事情があった、正当防衛や過剰防衛を主張したいといった希望があれば、ベリーベスト法律事務所にお任せください。殺人未遂事件を含めて刑事事件の弁護実績を豊富にもつ弁護士が、全力を尽くします。

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