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書類送検とは? 身元引受人の責任範囲や立てる意義も解説
刑事事件に関するニュースに目を向けると「書類送検」という用語を見ない日はありません。令和4年3月には、老人ホームに入居中の患者を殺害した容疑で男が書類送検されたと報じられました。
刑事事件を起こすと「逮捕される」というイメージが強いかもしれませんが、書類送検という処分も存在しており、どのような違いがあるのか疑問に感じている方は多いでしょう。
本コラムでは「書類送検」とはどのような処分なのかを確認しながら、書類送検が選択されるために重要な「身元引受人」を立てる意義、身元引受人が負う責任範囲などを、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
1、刑事事件の書類送検とは
刑法などに規定されている罪を犯して警察の捜査対象になると、法律の定めにそって刑事手続きが進められます。そのなかでも、警察による捜査が終了し、次の段階へと移行するときにおこなわれる手続きのひとつが「書類送検」です。
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(1)「送検」とは|検察官に事件が引き継がれること
警察は市中の犯罪捜査をおこない、罪を犯したと疑われる「被疑者」を検挙します。ただし、警察は被疑者を罰する権限をもっていません。すべての人は刑事裁判において審理を受ける権利をもっており、誰であっても刑事裁判を経ることなく刑罰を科せられないと法律が定めています。そして、刑事裁判を起こす権限をもつのは「検察官」だけです。
送検とは、刑事裁判を起こす「起訴」の権限をもつ検察官に対して事件が引き継がれることを意味します。警察が逮捕した被疑者の身柄だけでなく、捜査書類や押収された証拠品もすべて送検の対象です。
「送検」という用語は、正確な法律用語ではありません。法律上の正確な名称は「送致」であり、検察官への送致を指すことからニュース・新聞などの報道では「送検」と呼んでいます。送検はいわゆるマスコミ用語のひとつなのです。 -
(2)「書類送検」とは|書類のみを送致すること
「送致」には、逮捕された被疑者の身柄とともに捜査書類が引き継がれる「身柄つき送致」と、逮捕を伴わず捜査書類のみが引き継がれる「在宅送致(任意送致)」があります。「書類送検」とは、後者の在宅送致を指すマスコミ用語です。身柄つき送致は、ニュースなどでは単に「送検」あるいは「身柄送検」と呼ばれています。
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(3)書類送検が選択される条件
身柄つき送検になるか、書類送検になるかの選択を左右するのは「逮捕の有無」です。警察が逮捕した事件では身柄つきで送検されますが、逮捕を伴わない在宅事件では書類送検されます。
警察の捜査中に「逃亡するおそれがある」または「証拠隠滅を図るかもしれない」と判断されれば逮捕される可能性が高まるので、裏を返せば「逃亡・証拠隠滅を図るおそれがない」ことが書類送検のためには必要だといえるでしょう。
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2、身元引受人になれる人や責任範囲
「身元引受人」は、刑事事件を起こして、逮捕され身柄つきで送検されるのか、それとも書類送検となるのかを左右する重要な存在がでもあります。
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(1)「身元引受人」とは
「身元引受人」は、日常生活におけるさまざまな機会で登場する用語です。例えば病気の治療で入院する際や、高齢になった家族が施設に入所する際にも、身元引受人を立てるよう求められることがあります。一般的には「その人の行為に責任をもち、保証や監督をする人」といった意味で解釈されており、刑事事件における意味も同様です。
刑事訴訟法などの法律で明確に定義されているわけではないものの「被疑者や被告人の行動に責任をもって、本人を監督する人」のことです。 -
(2)身元引受人になれる人
身元引受人になれる人には、法律上の条件や制限が設けられていません。ただし、被疑者・被告人を監督する者としてふさわしい立場にある存在でなければ認められないので「誰でもいい」と考えるのは間違いです。
多くのケースでは、同居の家族が身元引受人になります。被疑者・被告人と生活を共にしており、常に行動を監視できる立場である家族が適任と考えられるからです。この考え方に照らすと、遠方で別居している家族や生活を共にしていない親類などは身元引受人としては適していないともいえそうです。
ただし、ひとり暮らしで家族と同居していない、身近な親類がいないといったケースでは、血縁関係のない人でも身元引受人として認められることがあります。会社の同僚、親しい友人・知人などに依頼して身元引受人になってもらうという選択肢も場合によっては考えられます。 -
(3)身元引受人が負う責任範囲
身元引受人は被疑者・被告人について「責任をもって監督する」という立場なので、当然、事件の捜査や刑事裁判が続いている間は監視・監督する責任を負います。日常生活を監視しながら、勝手に引っ越すなど逃亡を疑われる行動がないか、事件の被害者に接触を試みるなどの証拠隠滅を疑わせる言動はないかなどを監督し、疑わしい言動があれば制御しなければなりません。
すると「身元引受人になったら、本人の言動次第で身元引受人も責任を問われるのではないか?」と不安になる方もいるでしょう。
実際に被疑者・被告人が逃亡や証拠隠滅を図ったとしても、身元引受人が責任を負うことはありません。あくまでもその責任を負うのは被疑者・被告人となった本人です。
ただし、逃亡や証拠隠滅を手伝ったり、そそのかしたりすれば、刑法第103条の「犯人隠避罪」や同第104条の「証拠隠滅罪」の共犯として責任を問われるおそれがあります。また、これらの罪に問われなかったとしても、監督不十分で逃亡・証拠隠滅を許してしまった場合は被疑者・被告人にとって不利な処分が下される危険もあるので注意が必要です。 -
(4)身元引受人を立てる方法
身元引受人を立てる場合は、単に「この人を身元引受人にする」と口頭で述べるだけでは認められません。身元引受人となる本人の意向と監督を誓約する意思を明らかにするため、身元引受書・身元保証書・誓約書などの書面を作成するのが一般的です。
これらの書面を作成し、身元引受人になろうとしている人が署名・押印したうえで、捜査機関や裁判所に提出します。
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3、身元引受人を立てる意義
犯罪の容疑をかけられてしまった事実は、周囲の人にも隠しておきたいものです。
わざわざ身元引受人になってもらうよう依頼することに抵抗を感じる方が多いかもしれません。
身元引受人を立てることにはどのような意義があるのでしょうか?
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(1)逮捕を回避できる可能性が高まる
信頼できる身元引受人が監督を約束することで、被疑者が逃亡・証拠隠滅を図るおそれがなくなると判断されやすくなります。捜査段階で逃亡・証拠隠滅の危険がなくなれば「逮捕」の要件を満たさないことになるので、逮捕を回避できる可能性も高まるでしょう。
特に、捜査機関が身元引受人を立てるよう求めている場合は、在宅事件としての処理が期待できます。 -
(2)保釈が認められる可能性も高まる
身柄つき送致を受けたうえで検察官の請求によって「勾留」が認められると、最長20日間にわたって身柄拘束が延長されます。さらに、検察官が「起訴」に踏み切った場合は、被告人としての勾留が続くことになり、刑事裁判が終わるまで釈放されません。ただし、被告人や家族などからの請求で「保釈」が許可された場合は、「保釈金」を納付することで一時的に勾留が解除され、身柄が釈放されます。
保釈が許可されるためには、逃亡や証拠隠滅のおそれがないことに加えて、被害者や証人に接触して脅すなどのトラブルは予想されないことを裁判所に示さなくてはなりません。被告人の日常生活を監視し、監督する存在として身元引受人を立てれば、保釈が認められる可能性が高まるでしょう。
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4、書類送検や身元引受人に関する疑問は弁護士に相談を
刑事事件を起こしてしまうと、法律の定めに従って手続きが進められます。書類送検や送検といった難しい用語が登場する機会が多いので、意味がわからないまま流されてしまう方も多いでしょう。また、自分自身は罪を犯していなくても、家族や友人・知人などが事件を起こして身元引受人になるよう求められてしまい「どんな責任が生じるのか?」と困惑してしまうかもしれません。
書類送検や身元引受人など、刑事事件に関してわからないことがあるときは、直ちに弁護士に相談しましょう。
意味がわからないまま刑事手続きが進んでいくと、対策を講じる余裕もないまま不利な状況に追い込まれてしまうかもしれません。逮捕を回避できるか、保釈が認められるかの瀬戸際にある親しい人を救うための協力を尽くせないまま、厳しい処分が下されてしまうおそれもあります。
弁護士に相談すれば、難しい刑事手続きに関するアドバイスが得られます。状況に応じた最善の選択肢を知ることもできるうえに、自分自身では対応できないときは、対応を弁護士に依頼しましょう。適切なサポートを受けることができます。
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5、まとめ
「書類送検」とは、逮捕を伴わない在宅事件について、書類のみで検察官へと引き継がれる手続きです。容疑をかけられている本人にとっては、身柄拘束を伴わないという意味で有利ですが、「身元引受人」がいることで、逮捕されない可能性も高まります。
書類送検や身元引受人など、難しい法律用語やわからない手続きなどにお悩みなら、刑事事件の解決実績が豊富なベリーベスト法律事務所にご相談ください。お悩みの解決に向けて、弁護士・スタッフ一同が全力でサポートします。
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