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痴漢で逮捕されたら……。どのような場合に釈放される?
「痴漢事件で逮捕」というニュースは決してめずらしいものではありません。公務員、大企業の社員、有名大学の学生などによる痴漢事件は特に大きく報道されますが、一般の会社員でも逮捕されれば報道されることも多々あります。
ここで多くの方が気になるのが「釈放」という手続きでしょう。釈放とは「疑いが晴れたとき」に身柄を解放される手続きであるという理解は一面では間違いありません。ただし、釈放とは「疑いが晴れたとき」のみになされるものでなく、実際に痴漢事件を起こしたことに間違いがなくても釈放が期待できるケースがあります。
本コラムでは、痴漢事件における逮捕と釈放の関係を解説します。
1、痴漢を犯した場合の罪名とは
日本の法律には痴漢罪という罪はありません。いわゆる痴漢行為は、法律に照らすと次のいずれかにあたるのが一般的です。
- 都道府県の迷惑防止条例違反
- 刑法の強制わいせつ罪
どちらの法律が適用されるのかは、行為の内容によって異なります。
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(1)迷惑防止条例違反
迷惑防止条例は都道府県ごとに規定されている条例で、正式名称は都道府県によって異なりますが、おおむね内容は同じです。
痴漢行為については「人を激しく羞恥させ、不安を覚えさせるような行為」について禁止しています。たとえば、京都府では、公共の場所や乗り物などのなかで、衣服の上から、または直接人の身体に触れると条例違反となり、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金刑が科せられることになりえます。また、常習の場合は1年以下の懲役または100万円以下の罰金刑に引き上げられます。
たとえば、次のような行為は迷惑防止条例違反になりえます。- スカートの上から女性の尻を触る
- 衣服の上から胸を触る
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(2)強制わいせつ罪
強制わいせつ罪は刑法第176条に定められている犯罪です。
13歳以上の相手に対して暴行または脅迫を用いてわいせつな行為をした場合、13歳未満の相手に対してわいせつな行為をした場合に成立し、6か月以上10年以下の懲役刑が科せられます。
たとえば、次のような行為があった場合、強制わいせつ罪が成立しえます。- 抱きつく
- 無理やり衣服を脱がせる
- 衣服のなかに手をいれる
- 胸や陰部を直接さわる
直接身体にさわる、衣服の上からでも陰部など性的羞恥心を害する度合いの高い部位をさわるなど、悪質性が高い行為が強制わいせつ罪に該当することになりえます。
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2、痴漢事件と釈放との関係
痴漢事件を起こして逮捕された場合、どのような流れで釈放されるのでしょうか?
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(1)逮捕
警察に逮捕されてしまった場合でも、状況次第では数日以内に釈放される可能性があります。
- 検察庁に引き継ぐ前に疑いが完全に晴れた場合
- 疑いは晴れていないが検察官が勾留を請求しなかった場合
- 裁判官が勾留請求を却下した場合
これ以上は身柄を拘束する必要がない、または身柄の拘束が認められない場合は、釈放されます。 -
(2)勾留
釈放されることなく検察庁に身柄が引き継がれ、検察官の段階でも「さらに身柄を拘束して取り調べる必要がある」と判断された場合、検察官は裁判所に勾留を請求します。
裁判官が勾留を認めると、原則10日間、延長によって最長で20日間の身柄拘束が続くことになります。
勾留を受けて身柄を拘束されている最中でも、検察官がこれ以上の「身柄拘束の必要なし」と判断すれば釈放される可能性はゼロではありません。
特に多いのが勾留中に被害者との示談が成立した場合です。示談が成立した場合、被害者は謝罪を受け入れて相応の賠償を受けて「犯人を処罰してほしい」という意思がなくなったと判断されるため、釈放の可能性が高まります。 -
(3)起訴
検察官が起訴した場合、基本的には刑事裁判へと移行しますが、起訴された後、釈放されるケースもあります。
- 正式な裁判を要しない「略式起訴」を受けて罰金を支払った場合
- 正式な裁判を要する「正式起訴」がされたが、保釈金を支払って保釈が認められた場合
略式起訴は犯行の事実に争いがない証拠の明らかな事件に限って採用される手続きで、罰金を納めることで刑罰が終了するため即時釈放されます。ただし、罰金刑においてのみ適用される手続きなので、強制わいせつ事件においては認められません。
保釈請求が認められた場合、保釈金を支払うことで一時的な釈放が認められます。
ただし、あくまでも裁判の期間中に限っての釈放であって、有罪判決を受けて懲役刑が下された場合は身柄を拘束されて刑務所に収監されてしまいます。 -
(4)刑事裁判
刑事裁判の結果によっては釈放が期待できます。
- 無罪が確定した場合
- 罰金刑が下されて罰金を納付した場合
- 執行猶予つきの懲役刑を受けた場合
刑事裁判で刑罰が回避された場合、または有罪でも一定期間の刑罰執行が猶予される場合は、判決をもって釈放されます。
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3、勾留の長期化で会社が解雇になることも
勾留が長引いてしまい、長期にわたる身柄拘束を受けると、会社を解雇されてしまうことがあります。
警察による逮捕から検察官による起訴までの期間は、身柄拘束が続いている場合、原則としては最長で23日です。
これだけの長期にわたって社会生活から隔離されてしまうのですから、会社の規則によって定めがあれば解雇を受けてしまうおそれがあります。
痴漢事件で長期にわたる勾留や会社の解雇といった不利益を防ぐには、被害者との示談が有効です。被害者との示談が成立すれば、早期釈放が期待できるでしょう。
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4、被害者と示談交渉を行うために
長期にわたる勾留を回避し、早期釈放を実現するには、被害者との示談が重要です。
痴漢事件における示談は、次の流れですすめていきます。
- 弁護士が捜査機関にはたらきかけて、被害者の連絡先を教えてもらう
- 弁護士が代理人として被害者と面会し、謝罪文を渡してもらうなど反省を伝える
- 被害者に示談金を支払い、示談書を交わす
痴漢事件をはじめ性犯罪事件の被害者は、加害者やその家族との接触を嫌う傾向があります。
「恥ずかしい気持ちにさせられた」「こわい思いにさせられた」という意識が強く、加害者への嫌悪感や恐怖心が拭えないからです。
面会することはもちろん、連絡先さえ教えてもらえないというケースがほとんどです。
弁護士に依頼すれば、捜査機関へのはたらきかけによって被害者の連絡先を教えてもらい、示談交渉のテーブルにつくことが可能になる可能性が高まります。
また、加害者やその家族との面会では、被害者側も感情的になってしまいがちです。示談交渉が難航するおそれがあるので、公平な第三者として弁護士が代理人として交渉することで、冷静な話し合いが期待できます。
さらに、弁護士が代理人になることで、被害者側から異常に高額な示談金の提示を受けてしまうおそれを回避できます。痴漢事件に詳しい弁護士であれば、事案に応じてどのくらいの示談金が適切であるのかを熟知しているので、被害者側にも適切な金額の示談金を提示して示談交渉を進めていきます。
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5、まとめ
痴漢事件で逮捕されてしまうと、長期にわたる身柄拘束によって会社を解雇されてしまうリスクがあります。また「痴漢で逮捕されてしまった」という評判が近所に知れわたってしまえば、その後の社会生活には大きな影響が生じるでしょう。
痴漢事件で逮捕されてしまった場合は、一刻も早く弁護士に相談し、選任することが重要です。もし痴漢事件で家族が逮捕されたなどお困りの場合は、ベリーベスト法律事務所までご相談ください。
痴漢事件の解決実績を豊富にもつ弁護士が、被害者との示談交渉だけでなく、身柄拘束中の精神的なサポートや捜査機関へのはたらきかけ、刑罰の軽減を目指して全力でサポートします。
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※本コラムは公開日当時の内容です。
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