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あおり運転が厳罰化! 令和2年創設の妨害運転罪について詳しく解説

2020年07月22日
あおり運転が厳罰化! 令和2年創設の妨害運転罪について詳しく解説
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あおり運転が厳罰化! 令和2年創設の妨害運転罪について詳しく解説

平成29年6月に発生した、あおり運転を発端として夫婦2人が死亡した「東名高速夫婦死亡事故」を契機に、あおり運転の取り締まりが強化されてきました。
警察庁は「あらゆる法令を駆使して厳重な捜査を徹底する」と公表していましたが、従来の道路交通法ではあおり運転そのものを罰する規定がなかったため、刑罰の軽い暴行罪などによる検挙がおこなわれていました。

令和2年6月、道路交通法の一部が改正となり、あおり運転を処罰の対象とする「妨害運転罪」が制定されました。しかし、どのような行為が「妨害運転」となるのかを、正確に把握されている方は多くないようです。
本コラムでは、新設された「妨害運転罪」の解説を中心に、あおり運転に対する罰則や逮捕されてしまった場合に取るべき行動について、弁護士が解説します。

1、あおり運転は「妨害運転罪」になる

以前から、後続車両による執拗(しつよう)な追尾やクラクションの吹鳴・パッシングなどは「あおり運転」と呼ばれていました。
あおり運転を受けたドライバーが焦ってハンドル操作を誤り事故に発展したり、お互いが怒り心頭になって暴行・傷害などのトラブルに発展したりといったケースは、決してめずらしいものではありませんでした。

令和2年7月の道路交通法改正によって、悪質なあおり運転は「妨害運転罪」という犯罪になりました。
なぜこのタイミングで妨害運転罪が新設されたのか、これまでの流れや警察の対応などをなぞりながらみていきましょう。

  1. (1)あおり運転の厳罰化に向けた流れ

    あおり運転は、非常に危険な行為ながらも長らく「ただのマナー違反」として黙認されてきました。

    初めてあおり運転に法律のメスが入ったのは、平成13年の刑法改正です。
    この改正では、刑法第208条の2「危険運転致死傷罪」の一形態としてあおり運転が処罰の対象となりましたが、この段階ではあおり運転によって相手に死傷を与えた場合に罰せられるのみでした。

    平成25年にはこの規定が「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(通称:自動車運転処罰法)」に移行しましたが、やはり死傷の原因となった場合のみが処罰対象となっていました。

    ところが、平成29年に発生した東名高速夫婦死亡事故について、悪質なあおり運転がマスコミなどで大々的に取り上げられて注目を浴び、厳罰化を求める声が高まっていったのです。

  2. (2)これまでの警察の対応

    これまで警察では、あおり運転が存在していても死傷の結果に結びついていないと積極的に処罰できない状況が続いていました。
    このような状況のなかで、あおり運転の厳罰化を求める声が高まり、警察庁は全国の警察に対して「あらゆる法令を駆使してあおり運転を取り締まること」との命令が下りました。

    警察は、道路交通法の車間距離不保持や刑法の暴行罪など、既存のあらゆる法令を駆使して取り締まりを実施してきましたが、あおり運転そのものを取り締まる法整備が必要となり、この度の改正へとつながったという経緯があります。

  3. (3)道路交通法の改正

    令和2年6月10日に交付された道路交通法の改正では、あおり運転そのものが「妨害運転罪」と規定されています。
    施行は同年6月30日であるため、あおり運転は、すでに妨害運転罪による取り締まり・処罰の対象となっております。

    警察庁をはじめ全国の都道府県警察は独自の広報活動で広く妨害運転罪の新設をアピールしており、厳しい取り締まりがおこなわれることは容易に予想できます。

2、あおり運転(妨害運転)の対象となる10類型

新設された妨害運転罪は、ほかの車両などの通行を妨害する目的でおこなわれた10類型の行為について処罰の対象としています。

  1. (1)取り締まり対象となる典型例と違反

    妨害運転罪として取り締まりの対象となる10類型は次のとおりです。

    • 通行区分違反
    • 急ブレーキ禁止違反
    • 車間距離不保持
    • 進路変更禁止違反
    • 追い越し違反
    • 減光等義務違反
    • 警音器使用制限違反
    • 安全運転義務違反
    • 高速道路などにおける最低速度違反
    • 高速道路などにおける駐停車違反


    車間距離を詰めての執拗(しつよう)な追尾、前方に出ての急ブレーキ、連続したハイビーム・パッシングやクラクションなどのあおり運転は、妨害運転罪によって処断されるおそれがあります。

    また、10類型のなかでも注目したいのが「高速道路などにおける最低速度違反・駐停車違反」が処罰の対象となったことです。
    従来の危険運転致死傷罪は「交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為」という条件があったため、低速走行や時速0kmとなる駐停車の状態ではあおり運転の成立が難しいという問題がありました。

    妨害運転罪では、とくに低速走行・駐停車が危険な状況を招きやすく、そもそも交通違反となる高速道路などに限って、最低速度・駐停車の違反もあおり運転の一形態と認めたという点は注目すべきでしょう。

  2. (2)自転車も処罰対象になる

    あおり運転の社会問題化と時を同じくして道路上の危険が指摘されてきたのが「自転車の交通マナー」です。
    新設された妨害運転罪は、自動車だけでなく自転車も処罰の対象としています。

    10類型のうち、減光等義務違反と高速道路などにおける最低速度・駐停車を除いた7類型については、自転車でも取り締まりになるので注意が必要です。

3、あおり運転(妨害運転罪)で問われる罪

あおり運転が妨害運転罪として処罰される場合、どのようなペナルティーを受けることになるのでしょうか?

  1. (1)道路交通法による罰則

    妨害運転罪は、改正道路交通法の第117条の2の2に規定されています。

    ほかの車両などの通行を妨害する目的で交通の危険を生じさせるおそれのある10類型の行為をはたらいた場合は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられることになりました。

    また、同法第117条の2第6号には、妨害目的による10類型の違反行為で「著しい交通の危険を生じさせた者」に対して、5年以下の懲役または100万円以下の罰金を科すことが規定されました。

    これらの行為は、一時停止やシートベルトの違反のように「反則切符」によって処理されるものではありません。
    反則金を支払って許されるほどの軽い罪ではないので、窃盗・詐欺・暴行・傷害といった通常の事件と同じ流れで刑事手続きが進むということを心得ておきましょう。

  2. (2)違反点数による行政処分

    妨害運転罪には、懲役や罰金といった刑事罰のほかにも、違反点数の加算による行政処分が科せられます。

    「交通の危険を生じさせるおそれ」があった場合は25点が加算され、その違反だけで免許取り消しです。
    さらに、これまでの違反・事故による累積点数によっては2~5年の欠格期間が設けられており、欠格を受けている間は運転免許の再取得ができません。

    さらに「著しい交通の危険を生じさせた」場合は35点が加算され、免許取り消しはもちろん、3~10年の欠格を受けます。

4、あおり運転の容疑で逮捕された場合の流れ

あおり運転が妨害運転罪となった場合は、逮捕され、刑罰を受けるおそれがあります。
とくにあおり運転の危険性が問題となっていることからしても、当面の間、捜査機関が厳しい姿勢で対処してくることが予想されるでしょう。

  1. (1)逮捕後の身柄拘束

    警察に逮捕されると、身柄の拘束を受けてしまいます。
    帰宅することも会社に出勤することも許されず、家族などに電話をすることもできません。
    逮捕から48時間以内に検察庁へと送致され、検察官はさらに24時間以内に起訴・釈放のいずれかを決定します。

    交通事件は、この段階で検察官に身柄なしの送致を受けるケースのほうが多いという特徴があります。
    人身事故や交通違反があったのは明らかで、警察と容疑者の間で事実に争いがないことが多いという状況に加えて、窃盗や詐欺などの犯罪事件と比べると前科前歴もない「普通の人」が容疑者になってしまう状況が多いからです。
    定まった住居があって家族もあり、定職に就いていて逃亡・証拠隠滅をするおそれが低いので、逮捕後の48時間のみで釈放されて在宅の任意事件として処理されやすくなります。

    ただし、あおり運転が妨害運転罪となった場合は、事実に争いが生じやすいうえに「悪質だ」ととらえられてしまうおそれがあり、48時間のみの身柄拘束では済まされない事態も予想されます。
    妨害運転罪の容疑をかけられてしまった場合は、逮捕された段階でただちに早期釈放に向けたアクションを起こすべきだと考えておきましょう。

  2. (2)勾留決定から起訴まで

    検察官に送致された段階では、警察による取り調べや捜査が十分ではないため、起訴・釈放の判断を下すのが難しいケースもめずらしくありません。
    そこで検察官は、身柄拘束の延長を求めて裁判所に「勾留」の許可を申請します。
    裁判官が勾留を認めると、原則10日間、延長を含めて最長20日間まで身柄拘束が延長されます。

    勾留が満期を迎える日までに、検察官は再び起訴・釈放を判断します。
    起訴されれば刑事裁判へと移行し、不起訴となれば即日で釈放されます。

  3. (3)刑事裁判

    刑事裁判では、裁判官が証拠をもとに審理して有罪・無罪を判断し、有罪の場合は法律で規定された範囲内で判決が言い渡されます。
    懲役刑となった場合は執行猶予が付されない限り刑務所へと収監されてしまうことになり、罰金刑となれば原則として全額を一括で納付しなければなりません。

    あおり運転によって重大な危険が生じたようなケースでは、これまでにほかの罪で刑罰を受けた経歴のない初犯の方でも実刑判決を受けてしまうおそれがあるでしょう。

5、まとめ

従来は単なる「マナーの悪い運転」としか評価されていなかったあおり運転は、厳罰を求める社会の声に応えるかたちで新たに「妨害運転罪」という犯罪になりました。
軽微な交通違反のようにきっぷ処理で済まされることはなく、逮捕・勾留を受けて重い刑罰が科せられるおそれがあります。
とくに法律が改正されたばかりのタイミングでは、厳しい取り締まりも予想されるので、容疑をかけられてしまったらただちに弁護士に相談しましょう。

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監修者

  • 萩原 達也
    弁護士萩原 達也

※本コラムは公開日当時の内容です。
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