少年事件において、「未成年者は処罰を受けない」という情報を耳にした方もいるのではないでしょうか。しかし、たとえ未成年者でも罪を犯せば逮捕されることはあります。
実際に、令和2年3月には、未成年の少年たちが路上生活をしていた男性に対して投石などの暴行を加えて死亡させる事件が発生し、関係した少年らが逮捕されました。
もし未成年者の家族や親族が逮捕されてしまった場合、保護者はどのような対策を講じるべきなのでしょうか。 本コラムでは、少年事件で子どもが逮捕された場合に家族としてとるべき行動や、未成年に対する弁護活動の意義について、弁護士が解説します。
1、少年事件の定義
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(1)少年事件とは
少年法では、20歳に達していない未成年者のことを男女の区別なく“少年”とし、少年が起こした犯罪事件のことを、少年事件と呼んで成人の事件と区別しています。
成人による刑事事件は、罪を犯したことに対して相応の処罰を下すことを目的としていますが、少年事件が目指すのは更生です。少年の健全育成によって、将来罪を犯すことのないよう適切な処分を下すことを大目的としています。 -
(2)少年事件の審判
少年事件には、原則として少年法が適用されます。
少年法第3条では、罪を犯した少年について「家庭裁判所の審判に付する」と定めています。つまり少年事件は、原則として家庭裁判所によって審判がくだります。一方、成人の刑事事件は、まず地方裁判所・簡易裁判所で審理されることが一般的です。
なお、注意すべきは、少年法が適用されるタイミングです。少年事件では、罪を犯したその時点ではなく少年審判によって処分が決定した時点を基準点としています。
たとえば、犯行時は19歳でも、取り調べなどに時間がかかり処分が決定するタイミングまでに20歳を迎えてしまった場合は、少年事件ではなく成人事件として扱われます。
そのため、犯罪が発覚した時点で20歳の誕生日を迎えるまでに数か月しかないようなケースでは「年齢切迫」として取り調べやそのほかの調査が急がれます。捜査機関や家庭裁判所も「できるだけ少年であるうちに」という意向で手続きを進めるわけです。
もし、逮捕された未成年の家族の誕生日が近い場合、早急に弁護士へ相談することをおすすめします。
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2、逮捕された未成年の措置と処分の流れ
少年が逮捕された場合でも、手続きの流れはおおむね成人と同じです。しかし、いくつか成人とは異なる部分もあるので注意が必要です。少年事件は次のような流れで進みます。
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(1)逮捕
少年が逃亡・証拠隠滅を図るおそれがあると判断された場合は、成人と同じく警察に逮捕されます。逮捕されると自由な行動が制限されるため、通学やアルバイトなどはもちろん、自宅へ戻ることができなくなります。
なお、逮捕されないまま捜査が進む、在宅事件となるケースもあります。自宅では日常とほぼ変わらない生活を送れるため、未成年者や保護者にとっては比較的負担が軽微となるでしょう。ただし、捜査への協力の呼び出しがあった場合は、必ず従わなければなりません。 -
(2)少年事件の送致
少年が逮捕されると48時間以内に警察署で取り調べがおこなわれ、家庭裁判所、検察庁、児童相談所、いずれかへの送致が決定します。
- 家庭裁判所への送致 少年が14歳以上であり、罰金刑以下にあたる罪を犯した場合は、原則として家庭裁判所に送致されます。
- 検察庁への送致 少年が14歳以上であり、事件の内容が殺人などの凶悪な犯罪である場合は、まずは検察庁へ送致されるでしょう。
- 児童相談所への送致 少年が14歳未満であった場合、児童福祉法の措置が優先されます。そのため、少年の行為や家庭環境を鑑みて児童相談所へ送致され、その後、児童自立支援施設などへ委託されます。
送致を受けた検察官は少年の取り調べをおこない、身柄拘束を延長する必要があるかを判断します。成人と同じく原則10日間、最長20日間の勾留を請求するほか、勾留に代わる観護措置として少年鑑別所へ収容されることもあります。少年鑑別所での観護措置は、10日間に限られます。
取り調べのあとは、検察官の意見書を付して、少年は家庭裁判所へ送致されます。
ただし、児童相談所において審判が必要と判断された場合は、家庭裁判所へ送致されます。 -
(3)家庭裁判所における審判要否の判断
家庭裁判所は、送致を受けた事件について調査し、少年審判の要否を判断します。直ちに判断が下せない場合は「試験観察」の期間を設けて、3~6か月程度の間に更生の可能性を判断することもあります。審判の必要がないと判断された場合は「審判不開始」となります。これは成人事件における不起訴処分と同じです。
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(4)少年審判の開始
家庭裁判所が必要と判断された場合、少年審判が開かれます。位置づけとしては成人の刑事裁判と同じですが、非公開のもとにおこなわれるほか、どのような方法で更生を目指すべきかが審理されます。
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(5)保護処分の決定
審判の結果によって、少年の更生に適当な保護処分が決定します。保護処分には、少年院送致・児童自立支援施設または児童養護施設送致・保護観察などがあります。
少年院送致となれば社会から隔離した環境で更生を目指すことになり、保護観察となればこれまでどおりの社会生活を送りながら更生を目指すことが可能です。
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3、保護処分を決定する判断基準
少年審判によって下される保護処分は、更生の可能性や少年の年齢によって判断されます。
- 保護観察 保護観察官や家族などによる指導・監督で、社会生活を送りながらの更生が期待できると判断された場合は、保護観察となります。反対に、社会内での更生が難しいと判断されれば少年院送致となり、社会から隔離したうえで矯正教育が施されます。
- 児童養護施設・児童自立支援施設への送致 更生のために少年の育成環境が重要視されれば、児童自立支援施設や児童養護施設へと送致されます。少年の自立を支援するのが目的で、少年院とは異なり開放的な施設で生活指導がおこなわれます。
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4、逮捕された未成年の家族ができること
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(1)適切な弁護士を選任する
未成年者が逮捕された場合、家族の存在は大変重要といえます。
少年は自ら弁護士を選任することはできないため、少年事件の弁護実績を豊富にもつ弁護士を家族が選任する必要があります。弁護士は少年審判では付添人として参加し、不要に重たい処分が下されないようにサポートします。 -
(2)速やかに面会(接見)するには
警察に逮捕された直後からの72時間は、たとえ家族であっても面会が認められません。さらに、土日も面会の対象外となるため、もし水曜日に逮捕されて金曜日に勾留が決定した場合、面会できるのは翌週の月曜日となります。
弁護士は、逮捕直後や土日を問わず面会(接見)が認められています。そのため、少年に対して、今後の流れや取り調べに対するアドバイスを速やかにおこなうことができます。逮捕されると、たとえ成人であっても取り調べで思わぬことをいってしまう可能性があります。弁護士が未成年にいち早く接見できることは、少年事件において大きなメリットといえるでしょう。 -
(3)学校や勤務先への対応
少年が罪を犯し勾留されてしまうと、警察や検察から学校・勤務先などに連絡がいくことがあります。もし退学になると、今後の社会生活に少なからず影響が出てくるでしょう。
しかし、警察から学校などへの連絡は、逮捕直後に早期に弁護士に相談することで、回避できる可能性があります。事件が解決したあとでスムーズに社会復帰ができる環境を整えるためにも、早めの行動をおすすめします。 -
(4)示談の交渉
少年事件は家庭裁判所への全件送致主義が採用されているため、被害者との示談が成立しても裁判所による手続きを回避することはできません。
ただし、被害者に対して誠実に謝罪し反省しているという気持ちを示すことで更生への期待が高まり、結果として保護処分が軽くなったり、審判の必要はないと判断されやすくなったりします。
弁護士に依頼することで、速やかな接見から示談交渉までの実務を任せることはもちろん、適切なアドバイスがもらえる相談先ができることで、ご家族の精神的な負担も軽減されるでしょう。
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5、まとめ
未成年者が罪を犯した場合は少年事件として扱われて成人事件とは異なる手続きを受けます。原則、少年事件は更生を目指した処分が下されますが、少年自身が受け答えなどの対応をする場面も多いため、本人の性格や心情によってはよく理解できていないまま不利益を被るような言動をとってしまうケースも少なくありません。少年事件で必要以上に厳しい処分が下されないためには、少年事件の弁護実績を豊富にもつ弁護士のサポートが必要です。
罪を犯して逮捕されてしまった未成年者の弁護は、ベリーベスト法律事務所にお任せください。早期の釈放や処分の軽減に向けて全力でサポートします。
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