刑事弁護の基礎知識
刑事事件の弁護士費用について知っておくべきこと
刑事事件の弁護士費用は決まっている?
刑事事件に限らず弁護士費用に統一の決まりはありません。 各法律事務所が自由に料金を決めています。
刑事事件の弁護士費用にはどのような種類があるのか?
刑事事件の弁護士費用には、次のものがあります。
法律相談料 | 依頼前の法律相談の料金 |
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顧問料 | まだ逮捕されていないが逮捕されるおそれがある場合等に、逮捕後すぐに弁護士が動けるように、あらかじめ個人顧問契約を結ぶ場合の料金 |
逮捕・勾留中の被疑者弁護の着手金 | 起訴前の被疑者段階で弁護を依頼した場合の着手金 |
接見の日当 | 弁護士が接見(面会)に訪れた際の日当 |
実費 | 交通費や宿泊費、記録謄写費用、通訳料、翻訳料、鑑定料などの実費 |
被害者との示談交渉の着手金 | 被害者との示談を弁護士に依頼する場合の着手金。弁護士に依頼せず近親者等に頼んでもよい |
被疑者との示談の成功の報酬金 | 被害者との示談が成立した場合の成功報酬 |
逮捕・勾留中の被疑者の身柄の解放に向けた活動の着手金 | 勾留の執行停止を裁判所に働き掛けたり、勾留の取消を請求したり、勾留取消請求却下の決定に対して準抗告を申立てたりといった活動に対する着手金 |
逮捕・勾留中の被疑者の身柄の解放の成功の報酬金 | 上記の活動が実を結び被疑者の身柄が解放された場合の成功報酬 |
不起訴処分獲得の報酬金 | 起訴されずに不起訴になった場合の成功報酬 |
第1審弁護の着手金 | 起訴され、訴訟代理人を依頼した場合の着手金 |
保釈に向けた活動の着手金 | 保釈に向けた活動を弁護士に依頼した場合の着手金 |
保釈の成功の報酬金 | 保釈に成功した場合の成功報酬 |
公判の日当 | 弁護士が公判、公判前整理手続、期日間整理手続等のために裁判所訪れた際の日当 |
控訴審弁護の着手金 | 控訴する場合や反対に検察に控訴された場合に、控訴審の訴訟代理人を依頼した場合の着手金 |
上告審弁護の着手金 | 上告する場合や反対に検察に上告された場合に、上告審の訴訟代理人を依頼した場合の着手金 |
被告人弁護の報酬金 | 無罪や減刑を勝ち取った場合の成功報酬 |
刑事事件の弁護士費用は国選弁護人と私選弁護人の場合で変わる!
刑事事件に限らず弁護士に仕事を依頼する場合、通常は、自分で弁護士を選任します。ところが、刑事弁護を弁護士に依頼するときに、国が弁護士を選任する場合があります。 刑事弁護について、自分(や近親者)で選任した弁護士を私選弁護人、国が選任した弁護士を国選弁護人といいます(なお、上述の費用体系は私選弁護人の場合の話です。)。それでは、国選弁護人と私選弁護人には、どのような違いがあるのでしょうか。以下、説明します。
(1)私選弁護人は自由に選べる
私選弁護人は自由に選ぶことができます。一方、国選弁護人は選ぶことはできません。
(2)国選弁護制度の利用には条件がある
国選弁護制度を利用できるのは、主に次の場合です。 1. 必要的弁護事件の場合 2. 資力が50万円に満たない場合 3.弁護士会に弁護人となろうとする弁護士がいない場合および弁護士会が紹介した弁護士が選任の申込みを拒んだ場合 4. 裁判所が必要と認める場合 分かりにくいと思いますので、以下にて解説します。
①必要的弁護事件 必要的弁護事件とは、弁護人がなければ裁判を開くことができない事件で、次のような事件がこれにあたります。 ・死刑または無期もしくは長期3年を超える懲役もしくは禁錮にあたる事件 ・公判前整理手続または期日間整理手続に付された事件 ・即決裁判手続によって審判をする旨の決定をする公判期日および即決裁判手続による公判期日長期とは、刑期の法定の上限のことです。要するに、「死刑または無期もしくは長期3年を超える懲役もしくは禁錮にあたる事件」とは、死刑や3年を超える懲役・禁錮が科せられる可能性がある重い犯罪についての事件ということです。また、「公判前整理手続」、「期日間整理手続」そして「即決裁判手続」というのは、審理を迅速に進めるための手続で、専門家である弁護士でなければ難しく、被告人の不利益とならないように必要的弁護事件となっています。 ②資力が50万円に満たない場合資力とは現金と預貯金です。持ち家があっても資力には含みません。 ③弁護士会に弁護人となろうとする弁護士がいない場合および弁護士会が紹介した弁護士が選任の申込みを拒んだ場合弁護士会には当番弁護士制度があり、逮捕された人はその日の当番弁護士による接見(面会)を初回のみ無料で受けられます。この当番弁護士に私選弁護人になるように依頼したところ断られた場合などがこれにあたり、このような場合は国選弁護制度を利用することができるようになります。なお、50万円以上の資力はあるものの私選弁護人を依頼することは経済的に厳しい被告人に対して、当番弁護士が、一旦、私選の依頼を断わってこの要件を満たしたうえで、改めて国選弁護人になることもあります。 ④裁判所が必要と認める場合 この場合には裁判官が国選弁護人を付けることがあります。 ・被告人が未成年者 ・被告人が70歳以上 ・被告人が耳の聞えない者または口のきけない者 ・被告人が心神喪失者または心神耗弱者である疑いがある この他にも裁判官が必要と認めれば国選弁護人が付けられます。
(3)私選弁護人は選任の時期に制限がない。国選弁護人は早くても勾留後から。
国選弁護制度は基本的には起訴後しか利用できません。起訴前の被疑者段階で、起訴されないように弁護活動を行ったり、身柄解放に向けた活動を行ったりすることはできないのです。例外的に、「死刑または無期もしくは長期3年を超える懲役もしくは禁錮にあたる事件」では、被疑者段階でも国選弁護制度を利用することができますが、いずれにせよ、逮捕直後の勾留前の段階から弁護活動を行えるのは、私選弁護人だけです。
(4)国選弁護人は無料の場合がある。有料でも私選弁護人に比べて安い
国選弁護人は費用を負担しなくてよい場合があります。負担する場合でも、私選弁護人に比べて格安で済みます。