- その他
- 科料
科料で前科はつく? 科料、罰金、過料の違いについて詳しく解説
罪を犯した人に科される刑罰のひとつとして、「科料(かりょう)」というものがあります。科料は、軽犯罪法など比較的軽い罪に科される刑罰ですが、懲役刑や罰金刑など他の刑罰と違ってイメージしづらく、あまりなじみのない言葉といえるでしょう。
また、科料とよく似た「過料(かりょう)」という用語もあります。両者を区別する意味で、「科料」を「とがりょう」と読み、「過料」を「あやまちりょう」と読むこともありますが、混同されがちで、両者の違いをよく知らない、という方も少なくありません。
本コラムでは、科料と罰金との違いや、科料と過料との違いを整理し、科料の刑罰としての重さや前科がつくかなどについてベリーベスト法律事務所の弁護士が詳しく解説します。
1、科料、罰金、過料の違い
まずは、科料、罰金、過料の違いを解説します。
-
(1)科料とは
科料とは、刑罰の一種で、「1000円以上1万円未満」の金銭納付を命じられることをいいます(刑法第17条)。科料は、有罪判決を受けた人の財産を奪う「財産刑」のひとつです。「1万円未満」という金額からも分かるように、科料は比較的軽い罪に対する刑罰といえます。
刑法では、公然わいせつ罪(刑法第174条)や暴行罪(刑法第208条)、侮辱罪(刑法第231条)、遺失物等横領罪(刑法第254条)などに科料の規定があります。刑法のほかにも、道路交通法や軽犯罪法にも科料がある罪が規定されています。 -
(2)罰金とは
罰金も刑事罰で、同じく財産刑の一種ですが、科料との違いは金額の大きさです。罰金の金額は、「1万円以上」です(刑法第15条)。なお、減軽されて1万円未満に下がることもあります。
「罰金」の上限は個々の犯罪ごとに定められており、たとえば、窃盗罪であれば、罰金の最高額は50万円です(刑法第235条)。
刑法では、住居侵入罪(刑法第130条前段)、傷害罪(刑法第204条)、窃盗罪(刑法第235条)などに罰金の規定があります。そのほか刑法以外にも広く定められており、道路交通法や覚醒剤取締法、独占禁止法や金融商品取引法などにも罰金の規定があります。 -
(3)過料とは
過料は、刑罰ではなく、国や地方公共団体に課される金銭納付命令のことです。「行政上の罰」であり、前科はつきません。例として、各自治体の「タバコポイ捨て禁止条例」で課される過料や、転居をしたのに住民票を移転せず放置した場合の過料などが挙げられます。
2、科料は前科になるのか
科料となると、前科がついてしまうのでしょうか。
-
(1)科料の刑罰の重さ
刑事事件の裁判で有罪判決を言い渡される場合、科される刑罰は、受ける不利益の種類によって、「生命刑」「自由刑」「財産刑」の3つに分かれます。
「生命刑」は、受刑者の生命を奪う刑罰で、「死刑」のことです。
「自由刑」は、受刑者の身柄を拘束し、自由を奪う刑罰で、「懲役」、「禁錮」、「拘留」の3つがあります。
「財産刑」は、受刑者の財産を奪う刑で、「罰金」と「科料」の2つがあります。
これらの刑罰を重い順に並べると、死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留、科料となり、科料はもっとも軽い刑罰といえます。 -
(2)科料は前科になる
科料はもっとも軽い刑罰とはいえ、他の刑罰と同様、言い渡されると前科になります。前科は戸籍や住民票に記載されることはありませんが、検察庁が管理する前科調書に記載されてしまいます。
なお、前科がつくと就職が制限される職業として、弁護士、医師、教員、公務員などがありますが、制限されるのは「禁錮以上の刑」や「罰金以上の刑」に処せられた場合なので、科料の場合は資格制限の対象とはなりません。
もっとも、就職活動や結婚の際に前科の存在を秘匿していたことが後々問題になるなど、事実上の影響があることは否定できません。そのため罪を犯してしまった場合には、まずは前科回避に向けた弁護活動が望ましいといえるでしょう。
3、財産刑では科料よりも罰金の方が多い
財産刑には科料と罰金の2種類がありますが、実際の件数は、科料よりも罰金の方が圧倒的に多いといえます。
令和4年度の検察統計によると、科料が科された件数は、全国で1292件、科料の総額は1124万5000円でした。1件あたりの平均額で見ると、約8704円です。
これに対し、罰金の件数は、全国で15万7913件、総額は332億7629万2000円でした。1件あたりの平均額は、約21万0725円です。
このように、罰金は件数では科料のおよそ122倍もあり、金額も圧倒的に多いといえます。
科料の件数が少ないのは、科料の金額が1万円未満と低く、現在の物価水準からすると制裁としての機能が期待できないからです。そもそも、科料が規定されている犯罪が少ないという点も大きく影響しています。
弁護士との電話相談が無料でできる
刑事事件緊急相談ダイヤル
- お電話は事務員が弁護士にお取次ぎいたします。
- 警察が未介入の事件のご相談は来所が必要です。
- 被害者からのご相談は有料となる場合があります。
4、科料や罰金を支払えない場合
科料や罰金を支払えない場合には、労役場留置となります。ここでは労役場留置について解説します。
-
(1)科料や罰金を支払えないと労役
科料や罰金を言い渡された方の中には、お金がなくて支払えない方もいます。
科料・罰金を支払えない場合は、労役場に留め置かれ、金銭に換算した分の労働をしなければなりません。労役場は、刑務所や拘置所の中に併設されており、「懲役刑」の受刑者と同じように所定の作業を行うことになります。
労役場留置については、次のとおり刑法第18条に規定があります。- 罰金を完納することができない者は、1日以上2年以下の期間、労役場に留置する(刑法第18条1項)
- 科料を完納することができない者は、1日以上30日以下の期間、労役場に留置する(刑法第18条2項)
-
(2)留置される期間
科料を完納できないと、1日以上30日以下の期間、留置されます。罰金の場合は、1日以上2年以下です。
留置される日数は裁判によって決められますが、多くの場合、1日の留置を5000円相当と換算し、金額に応じた日数分労働することになります。
たとえば、罰金額が20万円の場合、留置期間は「20万円÷5000円=40日間」です。
5、科料に対する弁護活動
科料に対してどのような弁護活動ができるのかを解説します。
-
(1)前科を避ける弁護活動
科料はもっとも軽い刑罰とはいえ、前科がつくことに変わりありません。また、軽い刑罰の犯罪だからといって必ず不起訴になるというわけではありません。そのため刑事事件を起こしてしまった場合、まずは不起訴処分の獲得に向けた弁護活動を行い、前科を回避することが重要となります。
-
(2)示談によって不起訴を獲得する
不起訴処分を獲得するのに有効な手段のひとつが、被害者との示談です。示談とは、被害者と加害者の当事者間での話し合いによって解決する方法です。真摯(しんし)に謝罪をし、示談金を支払うなどの一定の条件について合意したうえで、被害届などを取り下げてもらう流れが一般的です。示談が成立することで、「処罰を求めない」という被害者からの意思表示になるため、検察官が不起訴処分と判断する可能性が高まります。不起訴となれば、罰金や科料を科されることもなく、前科がつくことはありません。
ただし、被害者と示談する場合は、弁護士に任せることをおすすめします。示談交渉自体は本人が行うことも可能ですが、本人同士では感情的になり、話がこじれる場合があります。そもそも被害者の連絡先を知らないような場合、弁護士でないと、捜査機関は被害者の連絡先を教えてくれません。
不起訴を目指して示談交渉を進める場合は、できる限り早急に弁護士に相談しましょう。
6、まとめ
科料は、もっとも軽い刑罰であるとはいえ、一度でも科されてしまうと前科がつくことになります。また、科料を納付しないでいると労役場留置という処分を受けてしまうこともあります。
前科を避けるためには、何よりもまず不起訴処分を目指した弁護活動が大切です。ご自身や家族が事件を起こして事情聴取を受けている場合や、被害者と示談して前科を避けたい場合など、お困りの際は、刑事事件の解決実績が豊富なベリーベスト法律事務所にぜひご相談ください。
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
当事務所では、元検事を中心とした刑事専門チームを組成しております。財産事件、性犯罪事件、暴力事件、少年事件など、刑事事件でお困りの場合はぜひご相談ください。
※本コラムは公開日当時の内容です。
刑事事件問題でお困りの場合は、ベリーベスト法律事務所へお気軽にお問い合わせください。