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弁護士以外の人を示談の代理人にできる? 弁護士に依頼すべき理由とは
刑事事件の加害者となってしまった場合、被害者との間で早期に示談を成立させることが事件を穏便に解決するために重要です。特に刑事事件で重い処分がされることを回避するうえでは、示談交渉には迅速さが求められます。
では、弁護士以外の人に示談交渉の代理人を依頼することも可能なのでしょうか。また、示談交渉は弁護士に依頼するのがよい、と耳にすることがあるかもしれませんがそれはなぜでしょうか。
本記事では、示談交渉の概要から、示談交渉を代行することのできる資格の種類、その中でも特に弁護士に依頼すべき理由について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
1、示談交渉の代理は誰でも可能
原則として、刑事事件や交通事故などの加害者と被害者は、代理人を立てずに本人が示談交渉を行うことができます。しかし、実際には、弁護士を代理人にせずに示談交渉に臨むことにはリスクが存在するのです。
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(1)示談とは
示談とは、発生した民事上の責任について当事者間で話し合い、一定の合意事項をして裁判によらずに問題を解決する手続きです。
たとえば、傷害事件を起こしてしまった場合には被害者が負ったケガを治すのにかかった治療費や被害者が被った精神的苦痛に対する慰謝料などの金額を示談交渉によって擦り合わせたうえで、加害者が損害賠償を「示談金」として被害者に支払うことになります。 -
(2)示談交渉の代行は誰でも可能
法律的には、「示談交渉を代行する」という行為そのものについては、資格は必要とされません。家族や友人などを代理人として立てて、被害者と交渉してもらうことも可能です。
ただし、弁護士法第72条では、弁護士資格を持たない人が示談交渉などで法律事務を取り扱い、報酬を得ることを禁じています。つまり、家族や友人などが代理人として交渉することはできますが、その行為に対して報酬をもらうことは弁護士法違反(非弁行為)にあたる可能性があるのです。資格なしで示談交渉を代行できるのは、報酬が支払われない場合に限られます。 -
(3)弁護士なしで示談を行うリスク
弁護士不在で示談交渉を進めることには、リスクが伴います。
① 被害者が応じてくれない
そもそも、加害者が被害者に直接的に連絡をとって示談交渉を行おうとしても、被害者が応じてくれないおそれがあります。被害者によっては、加害者に会うことで恐怖感がよみがえることがあります。そうでなくても、加害者に対して被害者が恨みや怒りを抱えていることは多いものです。そのため、被害者が加害者との接触を一切拒否することは珍しくありません。
そのため加害者本人や家族などが被害者に直接連絡するのではなく、弁護士が間に入って適切にアプローチすることで、示談交渉に応じてもらえる可能性が高くなります。
② 不当に高額な示談金の支払いを要求される
弁護士なしで示談交渉を行う場合には、被害者が法外な示談金額を提示してくるおそれも否定できません。
法律の知識や示談交渉の経験が備わっていないと、個々の状況に応じてどれぐらいの示談金額が適切なのか、判断することが困難です。
一方で、弁護士であれば、犯罪の重さや被害の程度、被害者の処罰感情などを考慮し、適切な水準の示談金額を示すことが可能です。
つまり、損害の程度に対して不相応な高額の示談金を支払うリスクを回避できる可能性が高まるのです。
③ 示談成立後のトラブル
示談は、当事者が合意した内容を履行することで初めて、効果を発揮します。
合意事項を記載した示談書の作成は義務ではありませんが、示談成立後のトラブルを回避するためにも、通常は示談書を作成することになります。
この示談書の内容が不正確だったり、あいまいだったりすると、後に齟齬(そご)が生じてトラブルに発展しかねません。
正確で有効な示談書を作成するためにも、示談交渉は弁護士に依頼しましょう。
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2、弁護士以外、どんな人なら示談交渉を頼めるのか
上述した通り、報酬を受け取って示談交渉を代行することは、基本的には弁護士にしか認められていません。
ただし、弁護士以外に、司法書士や行政書士などの資格も示談に関わることはあります。
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(1)司法書士
一部の司法書士は、簡易裁判所が取り扱う民事事件について、代理業務を行うことが認められています。こうした業務が可能な、法務大臣の認定を受けた司法書士を「認定司法書士」と呼びます。
認定司法書士は、当事者の依頼を受けて、示談交渉を行うことができます。ただし、認定司法書士が示談交渉の代理業務を行えるのは、示談金が140万円以下におさまる範囲の場合のみです。これは、簡易裁判所が取り扱える事件が、紛争対象の金額が140万円以下のものに限られているためです。
たとえば、交通事故の示談交渉では、治療費などを加算していくと損害賠償額が140万円を超えることは珍しくありません。140万円を超えるとわかってから、弁護士に依頼することも可能ですが、その場合司法書士への費用と弁護士への費用が二重に発生する可能性もあります。 -
(2)行政書士
行政書士については、示談交渉の代理業務を行うことが法律上、認められているわけではありません。行政書士が報酬を得て示談交渉にあたるのは、弁護士法に抵触するおそれがあります。
行政書士事務所が示談書の作成サービスを提供していることがありますが、これはあくまで示談書の作成にとどまり、行政書士が示談金額や当事者が履行すべき内容などを話し合う示談交渉を行ってくれるわけではありません。
したがって、司法書士のように示談金の上限がなく、ワンストップで示談交渉を任せられる資格は、弁護士に限られるのです。
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3、示談交渉を弁護士に任せるべき理由
示談交渉を弁護士に任せるべき理由について、説明します。
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(1)被害者が示談交渉に応じてくれる可能性が高まる
示談交渉は、相手に連絡をとるところから始まります。被害者の連絡先を知らなければ、示談交渉を申し込むことすらできません。しかし、被害者によっては、加害者に危害を加えられたり、逆恨みされたりすることをおそれて、連絡先を教えたくない人もいます。また加害者本人が何度も被害者に連絡したり無理やり聞き出そうとしたりすると、「脅された」などと被害者に誤解されてしまいトラブルに発展する可能性もあります。
そのような場合でも弁護士なら、捜査機関に対して、加害者には被害者の情報を教えないことを条件に、被害者の連絡先を教えてもらえるようはたらきけることができます。
また、弁護士が間に入り、加害者側の窓口となることによって、被害者に安心感を与えられるケースがあります。「加害者に自身の連絡先を知られることはない」とわかれば、被害者の心境に変化が生じて、交渉に応じてくれる可能性も高くなるのです。 -
(2)示談の早期成立
傷害事件などは、刑事事件に発展する危険もあります。そうなった場合には、示談を早期に成立させることが重要な意味をもちます。
示談とは話し合いによって当事者双方が和解条件を提示し合い、それにお互いが合意することで成立します。そのため、加害者が謝罪の意思を示し、治療費や慰謝料などの賠償を支払う代わりに、被害者側には警察からの聴取の際に「加害者を罰する必要はない」と伝えてもらったり、被害届の取り下げてもらったりすることを条件として示談が成立することが多くあります。
示談が成立していることは、検察官が被疑者の処分を決める際にも考慮に入れるため、すでに謝罪や賠償が尽くされていたり被害申告が取り下げられていたりすれば、不起訴になる可能性を高めることになるのです。仮に起訴されても、裁判官が量刑と執行猶予の有無を決める際の材料になり、執行猶予が付く可能性が高くなります。
そのためにも、刑事手続きが進展する前に、示談を早めに成立させておくことが肝要です。
弁護士は示談交渉の申し込みから示談金の提示、示談書の作成などに至るまで、深い知識と経験をもっています。早めに弁護士に相談すれば、適切かつ迅速な示談成立が期待できるでしょう。 -
(3)民事・刑事訴訟のリスク低減
示談交渉を弁護士に任せれば、民事訴訟や刑事訴訟のリスクを減らすこともできます。
示談交渉では、損害賠償(示談金)の金額を決定するのとあわせて、他にもさまざまな約束を当事者間で交わすことが可能です。
たとえば、示談書で定める事項以外には何の債権債務もないと、当事者間で確認することが考えられます。これを「清算条項」と呼びます。
清算条項には、示談で問題を解決した後に、被害者が損害賠償請求などで民事訴訟を起こすのを防ぐ目的があります。
また、被害者が捜査機関に対して「加害者を罰してほしい」と申告する前であれば、処罰を求めないことを約束する条項も示談書に設けられます。被害者が「許す」という意思を示すことは刑事事件化の回避を保証するものではありませんが、リスクの低減には一定の効果があるのです。
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4、まとめ
示談交渉自体に資格は必要ないので、家族でも友人でも、代理人となることが可能です。しかし、法律の知識と示談交渉の経験が乏しい人が交渉に臨めば、不当に高額な示談金を支払うことになったり、示談後にトラブルが起きたりする可能性も高くなります。また示談交渉を適切に進めることができなければ、刑事裁判を回避できる可能性や減軽につながる可能性も低くなってしまいます。
また傷害事件などでは、刑事事件化のリスクを下げるためにも、弁護士が迅速かつ適切に対応し、示談交渉を早期に成立させることが肝要です。
示談交渉を安全かつ効果的に進めるには弁護士のサポートが不可欠です。示談交渉をめぐってお悩みのことがあれば、刑事事件の解決実績が豊富なベリーベスト法律事務所にご相談ください。
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