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窃盗未遂は窃盗既遂とどこが違う? 刑罰の減刑や刑期はどうなる?
家族が窃盗未遂で逮捕されたと聞けば、本人の今後が気になるでしょう。
窃盗未遂はれっきとした犯罪であり、刑罰もあります。
この記事では、窃盗未遂をテーマに解説します。窃盗既遂との分かれ道はどこにあるのか、減刑の規定はどのようになっているのかも含めて確認しましょう。
1、窃盗未遂とは? 窃盗既遂との量刑の違いとは
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(1)窃盗既遂と窃盗未遂
窃盗罪とは他人の財物を盗み取り、自分のものにしてしまう犯罪です。万引き、ひったくり、空き巣などさまざまな形がありますが、これらは基本的には窃盗罪です。刑法235条で処罰の対象とされています。
一方、刑法243条では窃盗罪について、「未遂は、罰する」とされており、物やお金を盗む目的を遂げなかったとしても処罰される可能性があります。 -
(2)量刑の違い
刑法43条には「犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる」とあります。未遂罪の場合には裁判所の裁量で減刑できることを指し、裁量的減軽と呼ばれます。必ずしも減軽されるわけではなく、減軽されることもあればされないこともあるということです。
さらに同条では「ただし、自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する」ともあります。
これは、同じ未遂罪であっても自ら犯罪行為をやめた場合には、刑罰が必ず軽減または免除されるという意味です。必要的減軽といいます。
窃盗罪の刑罰は「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」であり、未遂の場合も原則としてこの範囲内で罰が決定されます。ただし、減軽や免除の規定により、未遂の場合には、刑罰が減じられる可能性があります。
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2、窃盗未遂になる段階について
刑法43条では未遂を「犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった」ときと定義しています。窃盗未遂が成立するためには、窃盗の実行に着手してこれを遂げなかったことが必要です。
実際にあったケースでは、「釣り銭泥棒をしようと自動券売機の返却口内部に接着剤を塗布したとき」について、実行の着手にあたるとされました。
接着剤を塗布する行為は、それ自体は一般的なイメージの窃盗行為とはいえませんが、自動券売機の返却口内部であるという点からすれば、釣り銭泥棒という結果が生じる具体的な危険性が生じたものと評価できるとして、実行の着手があったとして窃盗未遂が成立したのです。
ほかにも、たとえば「窃盗をする目的で、深夜に他人の住居や店舗へ侵入し、金目の物や金庫に近づいたとき」は実行の着手にあたるとした判例があります。
日中、住居人や周囲の人がいる前で窃盗行為をすることは、通常は難しいでしょう。しかし窃盗をする目的で、深夜にこっそり侵入して金目の物や金庫に近づけば、窃盗という結果が生じる具体的な危険性が認められるわけです。
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3、窃盗未遂罪が成立した事例
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(1)自動販売機の紙幣挿入口を損壊
被告人は清涼飲料水の自動販売機の中から千円札を窃取しようとする目的で、バールなどの道具を用いて紙幣挿入口と周辺部品を損壊させました。しかし、通行人の通報によって駆け付けた警察官に逮捕され、千円札を窃取する目的を果たさなかったため窃盗未遂罪となりました。懲役1年、執行猶予3年の判決です。
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(2)他人のキャッシュカードを機械に挿入
被告人は盗んだバッグに入っていたキャッシュカードを用いて銀行および郵便局のキャッシュカードコーナーで現金を引き出そうとしましたが、被害者がすでに盗難届を出していたことから機械に無効カードとして取り込まれたため、その目的を遂げませんでした。
他人のキャッシュカードを挿入した時点で実行の着手があったとみなされ、窃盗未遂罪が認められました。懲役1年、執行猶予3年の判決です。
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4、窃盗未遂と窃盗既遂の分かれ目
窃盗未遂となるのか、窃盗既遂となるのかの分かれ道は、実行に着手した後に結果が生じたか否かです。窃盗罪の結果とは、財物を自分の物にするという目的が完遂されたことを指します。
上記の事例でいえば、(1)では、自動販売機の紙幣挿入口を損壊した時点では実行の着手が、自動販売機の中から紙幣を取り出した時点では結果の発生が認められます。
(2)では、キャッシュカードを挿入した時点では実行の着手(未遂)が、現金を引き出した時点では結果の発生(既遂)が認められます。
いずれの場合も罪を犯したことに変わりはありません。しかし、前述のとおり未遂の場合には刑が減軽されることがあり、量刑が大きく変わる可能性がありますので重要です。
窃盗未遂、窃盗既遂を整理すると次のようになります。
- 窃盗未遂……実行に着手したが結果が生じていない
- 窃盗既遂……実行に着手し結果が生じた
ただし、これらの境界線は実際に起きた事件の様態によって異なり、非常に難しい側面がありますので、簡単に判断せず弁護士に相談してみましょう。
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5、窃盗未遂も逮捕されることがある
窃盗未遂には処罰規定がある以上、実際には被害が発生していなくても逮捕されることがあります。
未遂の現行犯で逮捕される例としては、他人の財布を盗み取ろうとしたが気づいた被害者に取り押さえられたケースが考えられます。
また、現行犯以外で逮捕されることもあります。通常逮捕のように、逮捕状にもとづき捜査機関によって逮捕される場合などです。
たとえば、防犯カメラの映像から犯人が特定されるケースです。
通常逮捕の要件として、被疑者が罪を犯したと疑うに足りる相当な理由と逃亡や証拠隠滅のおそれがあるなどの必要性が求められます。
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6、家族が窃盗未遂で逮捕されたら弁護士に相談を
窃盗事件では、窃盗未遂となるか窃盗既遂となるかによって量刑が異なります。懲役刑もあり得る犯罪ですので、量刑次第では本人やご家族の日常が変わってしまうおそれがあります。一方で、逮捕されても不起訴処分となり前科がつかないケースもあります。
窃盗未遂でとどまること、あるいは無罪であることを主張するためには早期に弁護士に相談し、適切な弁護を受けることが大切です。
罪を犯したことが事実である場合には被害者へ謝罪し示談を成立させることで起訴を回避できる可能性もありますので、少しでも早く弁護士へ相談されるとよいでしょう。
ベリーベスト法律事務所の弁護士も力になります。ご家族が逮捕されてしまったらすぐにでもご連絡ください。
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7、まとめ
今回は、窃盗未遂に着目し、減刑・免除の規定や窃盗既遂との分かれ道などについて解説しました。たとえ未遂であっても罪を犯したことに変わりはなく、刑罰を受けるおそれもあります。ご家族としては、本人の量刑を少しでも軽くし、事態を悪化させないためには、速やかに弁護士を頼ることが賢明な選択肢です。ベリーベスト法律事務所の弁護士も全力でサポートにあたります。
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※本コラムは公開日当時の内容です。
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