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万引きをして逮捕された場合どんな刑罰を受ける? 懲役刑と罰金刑について
「万引き」など他人の物を盗む行為は、刑法に「窃盗罪」として定められている、れっきとした犯罪です。
警視庁の公開する統計資料によれば、万引きの検挙件数は平成21年から29年まで一貫して減り続けているものの、なおも年間7万5000人を超えています。万引きによる逮捕者は数多く、裁判で有罪となれば刑務所に入れられたり罰金を徴収されたりする可能性も否定できません。
そこで今回は、家族や身近な人が万引きの容疑で逮捕されてしまった場合、今後どうなるのかという点について、弁護士が解説します。
1、万引き(窃盗罪)の刑罰に懲役刑はある?
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(1)窃盗罪としての万引き行為
万引きの語源には諸説ありますが、商品を間引くように盗る「間引き」が変化した言葉だという見解が有力です。この万引き行為は、刑法上では基本的に窃盗罪に当たります。窃盗罪とは、「他人」の「財物」を「窃取」する犯罪です。つまり、他人の持っている(占有している)財産的価値のある物を不法領得の意思をもって盗った場合に、窃盗罪は成立します。
店に並んでいる商品は、基本的に、店という「他人」の「財物」であり、それを自分の物にするために盗る行為は「窃取」に当たります。 -
(2)「後からお金を払う」は通じる?
しばしば万引きの現場を見つかった犯人が、「お金を払えばいいんでしょ!」と反論を試みることもあります。しかし、店員などに見つかったときだけお金を払ったとしても、窃盗罪が不成立となるわけではありません。万引きであれば、たとえばカバンやポケットに商品を入れた時点で犯罪行為が完了したと考えられることもあるため、後から支払おうとしても罪は帳消しにならないのです。
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(3)窃盗罪の刑罰とは
窃盗罪で起訴され、有罪となれば10年以下の懲役刑または50万円以下の罰金刑が科されます。懲役刑とは刑務所で一定期間労働させられる刑罰で、罰金刑は金銭を徴収される刑罰です。万引きでいきなり10年の懲役刑が科されることは考えにくいですが、犯行内容などによっては刑務所に収監される可能性も否定できません。
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2、万引き(窃盗罪)における罰金の相場は?
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(1)罰金相場はケースごとに異なる
窃盗罪で定められている罰金の額は50万円以下となっています。罰金額の下限は1万円と定められているため、窃盗罪では1万円以上50万円以下の金額となります。ただ、具体的にいくらとなるのかはケースバイケースで異なります。ケースバイケースと言っても適当ではなく、裁判所がさまざまな要素を総合的に考慮した上で決定するのです。そこで、罰金の額に影響を及ぼすポイントを確認しておきましょう。
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(2)罰金の額に影響するポイント
裁判所が刑罰を決める際に考慮している事情としては、犯罪の内容や動機、方法、結果、犯人の性格や年齢、逮捕後の態度、被害弁償などが挙げられます。これは懲役刑にも罰金刑にも共通します。万引きの場合、初めての犯行か以前にも万引きしたことがあるのか、計画的か衝動的か、盗んだものが安いか高いか、少し盗んだのか大量に盗んだのか、自分で使う目的か転売目的か、などのポイントが考慮要素となるでしょう。
再犯よりは初犯のほうが心証はよくなりますし、安いものを少量盗んだだけなら、罰金となる可能性も高まります。 -
(3)被害弁償と慰謝料
また、刑罰としての罰金ではありませんが、罰金額にも影響する金銭絡みの要素として、被害弁償と慰謝料があります。被害弁償とは盗んだ物の代金や、対応に要した人件費などを埋め合わせるために支払う弁償金であり、慰謝料はいわゆる「詫び料」です。これらの支払いを済ませていた場合には、懲役や罰金を含め減刑される可能性が高まります。
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3、万引き(窃盗罪)で逮捕された後の流れについて
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(1)逮捕されれば刑務所行き?
万引きで警察に逮捕されてしまうと、すぐに刑事裁判にかけられて、有罪となればすぐに刑務所行きというイメージをお持ちの方もいるかもしれません。しかし、逮捕から裁判、そして判決までには一定の期間があり、その間にはさまざまな手続きが行われます。逮捕後の流れについて、重要な部分を確認しておきましょう。
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(2)逮捕から送検まで
犯行現場で現行犯逮捕されるか、もしくは逮捕状によって後から通常逮捕された場合、警察へと連行されます。それから警察での取り調べが48時間を上限として始まります。取り調べ中は留置場で夜を明かすことになり、自宅へは帰れません。また、直ちに身内と面会することも認められません。
なお、現行犯逮捕の場合で、初犯・損害が軽微といった理由で微罪処分となれば、検察へ送られずに釈放となります。ただし、通常逮捕や緊急逮捕の場合に微罪処分を受けることはできません。 -
(3)送検から刑事裁判まで
検察官では、逮捕された被疑者を受け取ったときから24時間を上限とする捜査が行われ、起訴・不起訴の判断が行われます。24時間以内に捜査が終わらず検察官からの勾留請求が認められれば、延長も含めてさらに最長20日間の身柄拘束(勾留)がなされます。不起訴となれば釈放されますが、起訴されると刑事裁判となり、有罪か無罪かの判断が下されます。
有罪となれば、懲役刑が言い渡された場合は刑務所へ行き、罰金刑が言い渡された場合は罰金の支払いをすることになります。
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4、万引き(窃盗罪)で逮捕された……前科をつけないためには?
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(1)起訴と前科
一度検察官に起訴され、刑事裁判で懲役などの有罪判決が出ると、前科がつきます。これは身柄が解放される簡略化された起訴としての略式起訴であっても同様です。前科がつくと、公務員などへの就業が制限される、勤めている会社のイメージダウンにつながるとして解雇されるおそれがあります。
もちろん、起訴されても無罪判決が出れば前科はつきませんが、日本の刑事裁判での有罪率は99%以上とも言われています。
そこで、万引きで逮捕された場合にはそもそも起訴されないこと、つまり不起訴処分を目指すのが基本方針と言えます。 -
(2)不起訴処分の目指し方
起訴・不起訴を判断するのは検察官なので、検察官に「起訴の必要性はない」と判断してもらう必要があります。
そのためには、まず、迅速な対応が大切です。逮捕後の手続きにはそれぞれ流れや時間制限があり、早めに対応しなければ送検され、起訴されてしまう可能性が高くなるからです。
そして、被害者との示談も重要です。被害弁償や慰謝料の支払いを済ませ、被害者の処罰意思が強くないとわかれば、検察官も不起訴で構わないと判断することが多いです。
これらについて迅速・確実な対応を行いたいのであれば、刑事事件の取り扱い経験豊富な弁護士に相談するとよいでしょう。取り調べでの受け答え方法のアドバイスや、被害者との示談交渉など、さまざまな弁護活動をしてもらうことができます。
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5、まとめ
万引きは窃盗罪であり、れっきとした犯罪です。「こんなに商品があるのだから1つくらい盗ってもいいだろう」「お金を払うのがもったいない」などという気軽な気持ちで犯行に及んだとしても、逮捕されて懲役刑や罰金刑が科される可能性はあります。また、逮捕されてからも「たかが万引きでしょう」「お金を払えばいいだろう」と思っていても、場合によっては、起訴されて有罪となり、前科がつくことも十分に考えられます。前科がつけば、進学や就職、家庭内に悪影響が及ぶこともあるでしょう。
しかし、早期に弁護士に相談すれば、刑の軽減や執行猶予、不起訴処分となる可能性を高めることはできます。もし万引きの容疑で逮捕されたら、窃盗罪の加害者弁護の経験があるベリーベスト法律事務所まで、お早めにご相談ください。
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