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スリ行為で捕まった......損害賠償・被害弁済によって罪は軽くなるの?
人混みなどの状況を利用し、相手の衣服のポケットやバッグから金品をこっそりと盗む行為は「スリ」と呼ばれます。
令和元年7月の大阪では、道案内をしてもらった相手へのお礼を装い、抱きついた隙に財布を盗んだとして2人の男が逮捕される事件がありました。
スリをするとどのような罪に問われるのでしょうか。また、被害者に被害額を弁償すれば罪が軽くなったりするのでしょうか。本コラムでは、スリが法律上どのような犯罪にあたり、刑の重さはどの程度なのか、また被害者へ損害賠償金を支払うことの影響などについて解説します。
1、スリは窃盗罪に該当する犯罪行為
まずは、スリがどのような犯罪となるのか、刑罰の内容や犯罪が成立するための要件はどういうものかという点について解説します。
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(1)刑法では窃盗の罪に問われる
スリは、他人の衣服のポケットやバッグなどから、気づかれないように金品を盗みとる行為です。スリというのはあくまでも一般的な呼び名です。スリは法律上、「窃盗罪」が成立します(刑法第235条)。
ほかにも窃盗罪に問われる行為には万引きや置き引き、空き巣などがあります。スリを含め、これらの行為はすべて犯罪です。当然、逮捕・起訴される可能性や有罪になって刑罰を受ける可能性があります。
窃盗罪の刑罰は「10年以下の懲役または50万円以下の罰金」です。懲役とは刑事施設に拘置され労役に服す刑をいいます。罰金とは強制的に金銭を徴収される刑をいいます。 -
(2)窃盗罪の成立要件とは
窃盗罪が犯罪として成立するには、次の3つの要件を満たす必要があります。
- ① 他人が占有する財物を
- ② 不法領得の意思を持って
- ③ 窃取すること
①の「他人が占有する」とは、他人が現実に所持・管理している状態をいいます。
たとえば自分の物を友人に貸している場合、本来の所有者は自分ですが、占有者は友人です。この場合、貸した物を友人の承諾なしに勝手に持ち帰れば窃盗罪に問われる可能性があります。
「財物」とは、所有者や占有者にとって価値のある物を指します。
基本的には有形の財物を指しますが、管理可能であれば無形の財物が該当することもあります。
たとえば電気は財物とみなされるので(刑法第245条)、他人の家や会社のコンセントを無許可で使用して充電すれば窃盗罪にあたる場合があります。
②の「不法領得の意思」とは、権利者を排除して、他人の物を自分の物として利用したり処分したりする意思をいいます。たとえば売却する目的で知人のバッグの中から金目の物を抜きとった場合には、知人を排除して、利用処分(売却)する意思があるため窃盗罪が成立します。
一方、単に知人を困らせてやろうと思い、バッグから抜きとった物をどこかに隠したケースでは、利用処分する意思がないため窃盗罪は成立しません。
この場合は、物を隠して知人が使えなくしている点が「物の効用を害する」という意味で損壊にあたり、器物損壊罪(刑法第261条)が成立する可能性があります。
③の「窃取」とは、占有者の意思に反し、対象物を自分や第三者の占有下に移すことです。
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2、損害賠償・被害弁償の有無が与える影響
ご家族がスリをして逮捕されたと聞けば、残された家族としては「被害者にお金を払って、何とか刑罰は受けないようにしてもらえないだろうか」と思われるかもしれません。
このように、違法な行為によって他人に与えた損害を埋め合わせする行為を「損害賠償」といい、金銭による賠償が原則とされています(民法第417条、719条、722条1項)。一般的な言葉で「被害弁償」と呼ぶ場合もあります。
ではスリの被害者に損害賠償すると、刑事手続きにおいてどのような影響が生じるのでしょうか。
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(1)損害賠償は罰金刑とは異なる
損害賠償についてまず理解しておきたいのは、損害賠償をしても刑罰を免れるとは限らないという点です。
なぜなら、損害賠償はあくまでも加害者から被害者へ対する「民事上の責任」を果たす行為であり、犯罪行為をして刑罰を受ける「刑事上の責任」を果たす行為とはまったく別のものだからです。 -
(2)損害賠償・被害弁償が刑事手続きに与える影響
損害賠償や被害弁償は民事上の行為ですが、刑事手続きにも影響を与えます。
実際にどのような影響があるのかは、刑事手続きがどの段階にあるのかによって変わってきます。
逮捕前であれば逮捕を回避できる可能性が生じ、逮捕されても起訴前であれば起訴を回避し不起訴となる可能性が生じてきます。
また、起訴されたとしても裁判の判決に執行猶予がついたり刑が減軽されたりする可能性が生じてきます。
反対に被害者への被害弁償をしなかった場合には、被害者の損害が回復されていないうえに、誠実な対応がみられないとして被害者の処罰感情も高まりやすく、逮捕・起訴されるおそれや刑が重くなることが多いといえるでしょう。
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3、スリ行為での量刑判断
スリをはたらいて窃盗罪として裁判になった場合、どの程度の刑を受けることになるのでしょうか。
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(1)量刑を左右する要素
法律で定められた刑罰の範囲内で刑の程度を決めることを「量刑」といいます。
窃盗罪の量刑は、行為の悪質性や常習性、被害者へ与えた損害の大きさや被害者の処罰感情、示談の有無などによって異なります。
たとえば仲間と共謀し、電車内で被害者を取り囲むようにしてスリをはたらいたケースは、計画性があり悪質性が高いとされ、重い量刑となる可能性があります。
高額なものを盗んだようなケースも、被害者へ与えた損害が大きく、使ってしまうなどしていれば被害弁償も難しいため量刑が重くなる傾向にあります。
また、何度もスリを行っているケースは常習性があるため量刑が重くなります。 -
(2)微罪処分となる場合
刑事事件は警察による取り調べが終わった後、検察に送致(送検)されます。しかし、例外的に送致されず、警察署限りで事件が処理される場合があり(刑事訴訟法第246条)、これを「微罪処分」といいます。
微罪処分となるのは、犯罪事実が極めて軽微で、かつ検察官から送致の手続きをとる必要がないとあらかじめ指定されたものです(犯罪捜査規範第198条)。
運用基準は各地方の検察庁が定めるため一律ではありませんが、おおむね次のような要素をもとに判断されます。
- 被害規模が小さい(被害金額では2万円以下)
- 被害者が加害者の処分を望んでいない
- 犯行が悪質ではない
- 加害者が逃亡するおそれが低い
- 加害者が初犯である(素行不良ではない)
微罪処分にならないケースとしては、窃盗罪の前科がある場合や事件が悪質な場合、犯行を否認している場合(逃亡のおそれがある)などが考えられます。
スリは一般的に警戒心の薄いターゲットを探して行為におよぶ、一度でも成功するとくり返し犯行をはたらきやすいといった面で悪質ととらえられやすいため、微罪処分の適用は難しいでしょう。
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4、家族がスリで逮捕されてしまった直後にすべきこととは?
家族が逮捕されてしまった直後、ご家族としてまずすべきことは、すみやかに弁護士を選任することです。
逮捕されると警察によって48時間、検察官によって24時間取り調べが続きます。取り調べでは捜査員からの厳しい追及を受けるため本人が精神的につらくなり、やってもいないことを言ってしまうなど、不利な供述をしてしまう場合があります。
ひとたび本人にとって不利な供述調書が作成されてしまった場合、その後、その内容をくつがえすのは難しく、処分が重くなるおそれが高まります。
こうした事態を避けるためにも、早期に弁護士によるアドバイスが必要です。
なお、逮捕後の72時間は、たとえご家族であっても原則本人とは面会ができません。
弁護士であれば時間に制限なく本人と面会することができ、取り調べにあたって注意すべき点やどのような姿勢で応じるべきかといったアドバイスを行うことができます。そして、不利な供述調書が作られないよう、サポートすることができるのです。
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5、まとめ
スリは刑法の窃盗罪に問われる犯罪行為です。量刑は事件の悪質性や盗んだ金額の大きさなどによって異なります。
ご家族ができることは、まず弁護士に相談し、被害者への損害賠償と示談の成立を行うようにすることといえます。損害賠償をしても刑罰を免れるとは限りませんが、被害が回復されたとみなされ、処分が軽くなる可能性や刑罰を免れる可能性が高まります。
家族が窃盗事件を起こしてお困りであればベリーベスト法律事務所へご相談ください。刑事弁護の実績が豊富な弁護士がサポートします。
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