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何をすると強要未遂になる? 強要未遂の構成要件や刑罰を判例とともに紹介
令和元年6月、京都府で、組合員を正社員にするよう社長に強要したとして、組合幹部や組合員らが強要未遂罪などの疑いで逮捕される事件がありました。組合員らは複数回にわたり会社の事務所に押しかけ、怒号を飛ばすなどして脅迫していたと見られています。
正社員化を求めるという行為のみに注目すれば、まさか犯罪にあたるとは思わず、強要未遂とは何か疑問に感じた方は多いでしょう。あるいは、ご自身の行為が、強要未遂罪にあたるのではと不安に感じた方もいらっしゃるかもしれません。何をすると強要未遂罪に問われるのでしょうか。
今回は強要未遂罪について、犯罪が成立するための要件や刑罰、逮捕後の流れや対処法を解説します。
1、強要未遂の構成要件について
刑法第223条第1項には次のように規定されています。
生命、身体、自由、名誉もしくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、または暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、または権利の行使を妨害した者は、3年以下の懲役に処する。
ここでは条文が示す構成要件(犯罪成立の原則的な要件)を確認しましょう。
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(1)脅迫や暴行の意味
「害を加える旨を告知」して脅迫する具体例としては、
- 「痛い目に遭わせるぞ」
- 「不倫の事実を職場にバラすぞ」
などと伝えることです。
本人のみならず、親族を対象としても同様に罪に問われます(同条第2項)。たとえば
- 「いうことを聞かないとお前の妻を殴るぞ」と伝えたうえで何らかの行動を求める
ケースです。
また、ここでいう暴行は相手に対する不当な有形力の行使を幅広く含むため、殴る蹴るなどの直接的な暴力でなくても暴行に該当し得ることになります。
これらの言動によって相手方が畏怖し、結果として強制や権利の妨害が生じると犯罪が成立します。 -
(2)何をさせると強要になるのか
「義務のないこと」とは、たとえば、
- 土下座をさせる
- 退職願を書かせる
- 売買契約を結ばせる
などの行為です。
借金の返済のように法律上義務があることを要求する場合でも、脅迫や暴行をもって履行させれば強要罪に該当します。
「権利の行使を妨害」とは、たとえば
- 大会への出場をやめさせる
- 被害届を取り下げさせる
- 債権を放棄させる
などの行為です。 -
(3)未遂も罰せられる
相手方が応じず、あるいは目的が未達に終わっても、未遂罪として処罰される可能性があります。たとえば次のようなケースでは未遂として罰せられます。
- 脅す言葉を伝えて性的関係を迫ったが拒否された場合
暴行や脅迫が開始された時点が強要罪の着手にあたるため、結果が生じなければ未遂、結果が生じると既遂と区別されます。
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2、強要未遂罪が成立するケース・判例
強要罪とよく似た犯罪に脅迫罪がありますが、強要、強要の未遂、脅迫は何が違うのでしょうか。
脅迫行為にとどまれば脅迫罪です。これに加え、何かしらの強制や権利の妨害をすれば強要罪となります。そして結果が生じなかったのなら強要未遂罪です。
たとえばネット上で
- 「〇〇するぞ」と脅せば脅迫罪
- 「〇〇しないと〇〇するぞ」と脅せば結果によって強要罪の既遂か未遂
になります。
では、裁判になるとどのような判決が下されるのでしょうか。以下、判例を紹介します。
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(1)通院先職員の配置転換をさせる(平成21年3月4日 広島地裁)
広島県内の男が、自らが通う透析センターの職員に強く辞職を迫るなどの脅迫を繰り返し、また同センターの院長に対して看護課長の配置転換を要求し、人事異動が決定された事件です。男は強要罪および脅迫罪で懲役1年8ヶ月の判決を受けました。
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(2)脅迫メールで性的行為を要求し拒否される(平成23年12月8日 広島高裁)
山口国体のイメージソングを歌っていた元歌手が、当時女子高生だった女性に対して脅迫メールを送り、また別の女性には脅迫メールを送信して性的行為を要求したが拒否された事件です。元歌手は脅迫罪および強要未遂罪で、懲役2年、執行猶予4年の判決が言い渡されました。
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(3)店員に言いがかりをつけ土下座させる(平成27年3月18日 大津地裁)
滋賀県内のボウリング場で、店員に対して土下座をさせた男が強要罪で懲役8ヶ月の実刑判決を受けました。男は対応した店員に45分にもおよぶ言いがかりをつけ、謝罪のために土下座をさせたようです。男と一緒にいた少女2名も家裁送致されています。
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3、強要未遂罪の刑罰・懲役
刑罰は「3年以下の懲役」となっており、強要未遂罪も同じ法定刑の範囲で量刑が言い渡されます。
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(1)想像以上に重い罰が与えられる
懲役刑のみの、比較的重い刑が科せられることが分かります。
罰金刑がある犯罪の場合、100万円以下の罰金、科料に相当する事件であれば、正式な裁判が開かれない「略式起訴」と呼ばれる簡略化された手続きが適用され得ます。しかし強要罪には罰金刑がありませんので、略式起訴は採用されず、起訴が決定すれば公開のもとで刑事裁判が開かれます。
ついかっとなり、相手にプレッシャーを与えるつもりでなど、軽い気持ちで犯行におよぶ人も少なくありませんが、仮に未遂で終わっても刑務所に収監されるおそれのある決して軽くない犯罪です。
もっとも、先に紹介した性的行為を要求した事件の判例のように、執行猶予がつけばただちには刑務所に行かず、日常生活を送りながら更生を目指すことになります。 -
(2)不起訴処分の獲得のために必要なこと
日本では起訴後の有罪率が極めて高いこと、強要罪には懲役刑のみが用意されていることを考えると、不起訴処分を獲得することが重要です。不起訴処分となれば即座に身柄を釈放され、前科もつきません。
そのためには被害者との示談成立が不可欠です。真摯に謝罪をし、許しを得て示談がまとまれば、その点が評価され不起訴処分となる可能性が高まります。
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4、強要未遂罪の逮捕の流れと弁護士に相談するメリット
強要未遂の容疑で警察に逮捕された場合の流れと、弁護士に相談するメリットを確認しておきましょう。
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(1)逮捕から起訴までの流れ
① 警察の捜査
逮捕後、48時間を上限に警察の捜査が行われ、取り調べを受けます。その後事件は検察庁へ送られます(送致)。
② 検察の捜査、勾留請求
検察官は24時間を上限に捜査を行い、検察官が引き続き身柄拘束の必要があると判断すれば、裁判官に対して勾留請求を行います。
③ 勾留
裁判官が勾留を認めると原則として10日間、延長でさらに10日間、身柄を拘束されます。最終的には、勾留期間満了までに起訴、不起訴が決まります。不起訴となれば身柄を釈放され、起訴となればその後刑事裁判へと移行します。 -
(2)逮捕後48時間以内に弁護士へ依頼を
送致されると、勾留請求がなされ、最長で20日間もの身柄拘束を受ける可能性が高まります。そうなれば、会社や学校から厳しい処分を受けたり、逮捕の事実が周囲に知られたりするおそれも生じることになるでしょう。
したがって、ご家族が逮捕されたときの対処法としては、警察の捜査段階である逮捕後48時間以内に弁護士へ相談し、勾留請求を回避するために活動してもらうことが重要です。
弁護士は早急に示談交渉に向けて動くため、被害者心情に配慮しつつスムーズな示談成立に期待できるでしょう。これによって、早期の身柄釈放、不起訴となる確率が高まります。
また、罪を犯した心当たりがあるが、現段階では事件化していない場合も、あらかじめ弁護士へ相談しておくことで、違法性の判断や今後の見通しなどのアドバイスを受けることができます。状況によっては逮捕を回避できることがあるでしょう。
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5、まとめ
今回は強要(未遂)罪をテーマに、犯罪の構成要件や逮捕後の流れ、対処法について具体例を交えて解説しました。脅迫や暴行を用いて、相手方の意思に反した行為を迫ると強要罪になる可能性があり、行為が成功しなくても未遂罪で罰せられます。懲役刑のみが用意されており比較的重い罪となるため、ご家族が逮捕されたら速やかに弁護士へ相談された方がよいでしょう。
ベリーベスト法律事務所では、刑事事件の弁護実績が豊富な弁護士がサポートいたします。ご家族が逮捕されてしまった、あるいはご自身の行為が強要未遂罪にあたるのではないかと不安を抱えている方は、できるだけ早くご相談ください。
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