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恐喝罪の時効は何年? 刑事と民事で時効は異なるのか?
映画やドラマといったフィクションの世界では、犯罪の「時効」をテーマとしたものが多数存在します。時効成立までの逃亡劇やすでに時効が成立した事件について犯人が名乗り出て世間をにぎわすといった描写がありますが、果たして実際の事件では時効成立まで逃げ切ることは可能なのでしょうか?
他人から金銭などを脅し取る行為は「恐喝罪」にあたります。もちろん、恐喝罪にも時効があるので、時効が成立すれば刑事責任・民事責任は回避できますが、どのくらいの年数が過ぎればよいのか気がかりになっている方もいるはずです。
本コラムでは「恐喝罪」の時効について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
1、恐喝罪とは? 成立の要件や刑罰
恐喝罪は刑法第249条1項に定められている犯罪です。
条文によると「人を恐喝して財物を交付させた者」を罰すると明記されています。
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(1)恐喝罪が成立する要件
犯罪が成立するためには、法律の条文に示されている要件を満たす必要があります。これを「構成要件」といい、恐喝罪の構成要件は次の2点です。
- 恐喝行為があること……相手が畏怖の状態に陥るよう案暴力や脅しを加えること
- 交付行為があること……相手が畏怖状態に基づき自ら財物を交付したこと
本罪における「恐喝」とは、財物を得るためにはたらいた暴力や脅しを指します。財物を得る目的ではない暴力や脅しは、恐喝罪ではなく暴行罪や脅迫罪の処罰対象です。また、加える暴力や脅しの程度が強いと、より重い強盗罪で処罰されることになっていきます。
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(2)恐喝罪で科せられる刑罰
恐喝罪にあたる行為を犯し、有罪判決を受けると、10年以下の懲役が科せられます。
罰金などの規定はないので、犯罪があった場合は公開の裁判にかけられ、判決に執行猶予がつかない場合は必ず刑務所へと収監されてしまう犯罪です。
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2、恐喝罪の時効は何年? 刑事・民事の違い
「時効」には、刑事上の時効と民事上の時効があります。刑事・民事の両面から、恐喝罪の時効を確認していきましょう。
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(1)刑事上の「公訴時効」は7年
一般的に刑事事件における時効と呼ばれるものは、検察官が刑事裁判を提起できる期限としての「公訴時効」を指します。映画やドラマなどで登場する時効も、この公訴時効です。
公訴時効は、刑事訴訟法第250条の規定に従い、犯罪ごとに定められた刑の重さで期間が変わります。恐喝罪の法定刑は最大で10年の懲役なので「長期15年未満の懲役または禁錮にあたる罪」にあたり、公訴時効は7年です。
恐喝行為が終了したときを起算点にして公訴時効のカウントが始まり、日で数えて7年が過ぎると時効が成立します。公訴時効は刑事裁判を提起するタイムリミットなので、時効が成立すると検察官が刑事裁判を起こせなくなり、刑罰も受けません。
なお、刑事上の時効には公訴時効のほかにも「刑の時効」が存在します。刑法第31条には、死刑を除く刑罰の言い渡しを受けた者について、一定期間のうちに刑が執行されなかった場合にその効力が消える旨の定めがありますが、実際にはあまり問題にはなりません。
刑の時効は、刑事裁判を経たうえで検察官や裁判所のミスなどによって刑が執行されなかったなどのトラブルによって問題となるもので、通常は考慮する必要のない制度とされます。 -
(2)民事上の「消滅時効」は3年
民事上の責任にも時効が存在します。
恐喝行為は民法上の不法行為でもあり、その行為によって生じた損害について加害者は被害者に賠償する責任を負います。これを「不法行為責任」といい、その責任の期限を示すのが「消滅時効」です。
不法行為責任に基づく損害賠償請求権の消滅時効は、被害者が、損害および加害者を知ったときから3年です。不法行為のときから20年という規定もありますが、特に対面で行われる恐喝事件では「相手が誰なのかわからない」という状況は通常考えにくいので、恐喝行為から3年が過ぎると損害賠償を請求されても賠償義務は消えることが通常です。
なお、生命・身体を害する不法行為の消滅時効は5年ですが、恐喝罪は財産を害する犯罪であり生命・身体に危害を加えるものではないので対象外となります。
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3、時効完成を待てば逮捕されない? 逃げ切ることは可能?
刑事上の公訴時効が完成してしまえば、検察官は刑事裁判を提起できなくなります。
刑事裁判を開けないのだから、逮捕によって被疑者の身柄を拘束することも、被疑者を取り調べることも必要ありません。単純に考えれば、時効完成を待てば逮捕の回避は可能です。
では、実際に警察の捜査を逃れて時効完成を待つことは可能なのでしょうか?
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(1)恐喝事件で逮捕される割合
令和4年版の犯罪白書によると、令和3年中に全国の検察庁で処理された恐喝事件は1756件でした。うち、逮捕を伴う身柄事件の割合は74.4%であり、全刑法犯の平均が34.1%であったことと比較すると、恐喝罪は逮捕されやすい犯罪といえるでしょう。
これは、恐喝事件の多くで、加害者と被害者が一定の関係にあり、直接会っていたり電話やメール・メッセージなどを用いていたりしていて犯人が被害者に接触し、何らかの影響を与える危険性が高いと考えられている点が大きいでしょう。 -
(2)時効完成を待つのは難しい
恐喝罪の公訴時効は7年で、7年が過ぎれば逮捕の可能性はなくなります。ただし、7年にわたって警察の追っ手を逃れながら生活するのは極めて困難です。
警察は、公共・民間のあらゆる情報から被疑者の居場所を特定します。逃亡中に居所を知られないようにするためには、定住することも、仕事に就くこともできないうえに、携帯電話の契約も、自分名義の口座を使うこともできません。
交通違反や近隣トラブルなどの通報から警察沙汰になり、居場所が発覚するケースもあります。恐喝事件を起こして時効完成を待つには、社会から完全に隔離した生活を余儀なくされるでしょう。
ある程度は逃げ続けることができても、いずれは居場所が特定されてしまいます。逃亡後に捕まれば、検察官・裁判官がもつ心証も悪くなり、起訴されて法律が定める範囲のなかでも重く処罰される可能性が高まるので、逃げるよりも積極的に解決を目指したほうが利口です。
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4、恐喝事件の穏便な解決を目指すなら弁護士に相談を
恐喝罪の刑事上の時効は7年です。
事件から7年が過ぎれば逮捕や刑罰は避けられますが、長期にわたって正常な社会生活を送れなくなることを考えれば、7年という月日は決して短くはありません。恐喝事件を起こしてしまった場合は、時効完成を待つのではなく弁護士のサポートを受けて積極的な解決を図るのが賢明です。
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(1)被害者との示談交渉を一任できる
恐喝事件をもっとも穏便なかたちで解決できる方法が「被害者との示談」です。
被害者に対して真摯(しんし)に謝罪し、脅し取った金品に相当する金銭や精神的苦痛に対する慰謝料などの賠償を尽くすことで、許しを求めます。双方が示談の条件に合意して示談金が支払われると、それ以上あえて問題にせず処理することもままあります。
示談が成立すれば加害者にとって大きな利益につながりますが、一方で、恐喝事件の被害者の多くは加害者に対して恐怖や怒りを感じているので、交渉は容易ではありません。特に恐喝罪は暴力や脅しによって相手を畏怖に陥らせたうえで金銭などを奪う犯罪なので、被害者に示談交渉のテーブルについてもらうことさえ難しいでしょう。
示談をかたくなに拒否している被害者に何度も連絡したり、被害者宅を訪ねたりしていると「脅されている」と捉えられて、別の事件に発展してしまう可能性もあります。加害者による直接交渉は難しいので、弁護士に一任したほうが安全です。 -
(2)逮捕を回避し、釈放されるためのサポートが得られる
恐喝事件を起こしてからある程度の時間がたっているなら、すでに被害者が警察に相談しており、被疑者として警察捜査の対象になっていると考えるべきです。まだ逮捕されていなくても、さまざまな情報から居所を特定されており、逮捕に備えて行動を確認されているおそれもあります。この段階から逃亡しても長期にわたって逃げ切るのはほぼ不可能でしょう。
逮捕を避けたいなら、警察の追っ手から逃げるのではなく、自ら出頭したほうが安全です。自ら出頭して詳しく事情を説明できれば、逮捕の要件である「逃亡・証拠隠滅を図るおそれ」を否定できる可能性が高まります。
弁護士に依頼すれば、警察に対する事前の報告と出頭の調整など、逮捕を回避するための弁護活動が期待できます。警察署への任意出頭の同行も可能なので、要件を満たさない不当逮捕を防ぐ抑止力にもなるでしょう。
また、そのように備えていた事件では、逮捕されたとしても、より長期の身柄拘束となる勾留について、争って回避できる可能性がより高まります。
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5、まとめ
恐喝罪の刑事上の時効は7年、民事上の時効は3年です。
7年が過ぎれば逮捕・刑罰を受けることはなくなり、3年を過ぎれば脅し取った金銭などの賠償責任も消滅します。ただし、何年にもわたって警察の追っ手や被害者からの請求を逃れるためには、家庭や仕事といった社会生活を捨てる羽目になるでしょう。責任から逃れるための代償は決して小さくないので、逃げるよりも積極的な解決に向けて前進するべきです。
恐喝事件を穏便に解決したいと望むなら、ベリーベスト法律事務所にご相談ください。被害者との示談交渉や警察への出頭調整など、逮捕や厳しい刑罰の回避に向けて、経験豊富な弁護士が全力でサポートします。
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