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経歴詐称は罪となる? 会社に経歴・学歴詐称がバレた場合の処遇とは
キャスターや政治家、起業家などの経歴詐称の話題が、テレビやSNSをにぎわすことがしばしばあります。しかし、一般の会社に就職するときにも、履歴書や職務経歴書に学歴や職歴、資格、犯罪歴などを詐称してしまう方が少なからずいます。
もし、内定後や入社後に会社側に経歴詐称の事実が知られてしまったら、どのような罪に問われ、どのような処遇を受けるのでしょうか。
今回は、経歴詐称が発覚した場合に問われる罪や民事責任について、弁護士が解説します。
1、重大な経歴詐称となる3つのケース
経歴詐称には、「採用に有利な経歴を詐称する」「採用に不利な経歴を隠す」というケースが考えられます。採用してもらいたいがために、悪意なく誇張してしまったり、隠してしまったりする場合もあるでしょう。
主な経歴詐称である「学歴」「職歴」「犯罪」の3つについて、どのような行為が詐称にあたるのかを解説します。
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(1)学歴を詐称するケース
学歴詐称は「高卒なのに大卒である」などと高学歴を詐称するだけでなく、「大卒なのに高卒である」などと偽る、いわゆる「逆学歴詐称」も学歴詐称とされる場合があります。逆学歴詐称は、高卒以下に限定されている求人に応募したいなどの理由によって行ってしまうケースが考えられます。
その他にも、下記のような行為が学歴詐称にあたると考えられます。- 実際に入学、卒業していない学校名や学部を記載する
- 退学や除籍などにより卒業していないにもかかわらず卒業したとする
- 浪人や留年した事実を隠す
- ディプロマミル(公式に認定されていない、海外の学校の学位を金銭で授与してもらえる)を大学・大学院卒業とする
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(2)職歴を詐称するケース
中途採用の場合は、どのような会社に勤務していたのか、どのような職務に従事していたか、何年勤務したかなどの職歴が、採否を決定するうえで重要な判断基準となります。また、職歴は、採用後の配属場所や職務内容、役職・職位、賃金などに影響することもあるでしょう。そのため、それらの情報を詐称するケースが考えられます。
- 実際に勤務していない企業名を挙げる、勤務していた企業名を隠す
- 実際に従事していない職務内容を挙げる、従事していた職務内容を隠す
- 「係長だったのに部長であった」など、役職・職位を偽る
- 年収を偽る
- 入社日や退社日、勤務年数を偽る
- 経験・修得していないスキルや資格について、経験・修得していると偽る
- 「契約社員だったのに正社員であった」など、雇用形態を偽る
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(3)犯罪歴を詐称するケース
採否を決定するうえで、学歴や職歴など直接的に職務遂行能力に影響を与える経歴だけでなく、職場での適応性があるか、対外的な信用を保つことができるかということも大切な判断基準です。そのため、犯罪歴を隠すという詐称は重大です。
履歴書に賞罰欄があったり、面接で犯罪歴について質問されたりした際には、求職者は誠実に真実を申告しなければなりません(最高裁平成3年9月19日判決)。
ただし、申告するべき犯罪歴は「有罪判決が確定」したものに限られます。逮捕・起訴猶予などの前歴、裁判中で刑が確定していない場合や少年時代の犯罪歴は申告しなくてもよいとされています。
また、下記のケースにおいては刑の効力が失われているので申告しなくてもよいとされています。- 禁錮以上の刑の執行が終了したか、刑の執行を免除されたものが、罰金以上の刑に処せられないで10年を経過したとき(刑法34条の2)
- 執行猶予期間が経過したとき(刑法27条)
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2、経歴詐称が犯罪となりうる可能性
経歴詐称は、どのような罪に問われる可能性があるのでしょうか。
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(1)軽犯罪法違反|軽犯罪法1条15号
軽犯罪法1条15号では、「官公職、位階勲等、学位その他法令により定められた称号若しくは外国におけるこれらに準ずるものを詐称した者」は、拘留または科料に処すると規定されています。
たとえば、大学を卒業していないのに卒業していると偽ると学位を詐称することになるので、軽犯罪法違反に該当するでしょう。しかし、拘留や科料は軽微な刑罰であり、軽犯罪法違反で起訴される可能性は低いでしょう。 -
(2)私文書偽造罪|刑法第159条
「文書を作成する権限がない人」が、権利や義務を証明する文書や事実事項を証明する文書を、他人の印章や署名を使用して文書を作成して他人をだまそうとした場合には、私文書偽造罪となります。法定刑は、3か月以上5年以下の懲役です。
履歴書は私文書ですが、学歴など虚偽の経歴を記載したとしても、私文書偽造罪の構成要件を満たさないので、私文書偽造罪には該当しないと考えられます。しかし、履歴書に偽名を使用した場合や、卒業証明書や資格の取得証明書などを偽造した場合などには、私文書偽造罪に問われる可能性があります。なお、資格の取得証明書が、運転免許証など、公務所・公務員が職務上作成する文書である場合、これらの証明書自体を偽造すると、公文書偽造罪に問われる可能性があります。 -
(3)詐欺罪|刑法246条
経歴詐称をして他人を欺くだけでなく、金品などの財物の交付を受けていたり、財産上の不法の利益を得ていたりすると、詐欺罪が成立します。
経歴詐称で考えてみると、詐称した経歴で採用され給与の支払いを受けていたとしても、給与は労務に対する対価であるので詐欺罪にあたらない可能性が高いでしょう。
しかし、医師や弁護士など高度な資格が必要な職種において、経歴や資格を偽って給与の支払いを受けていた場合や、詐称した資格に対して資格手当、報酬、契約料などが支払われたような場合には、詐欺罪に問われる可能性があります。
詐欺罪の法定刑は、10年以下の懲役です。 -
(4)公職選挙法違反|公職選挙法235条1項
国会議員選挙や地方議員選挙など、公職者選挙に立候補した者は、選挙の当落に関わらず、選挙公報に学歴などの虚偽の記載をした場合には、公職選挙法違反に問われる可能性があります。
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3、経歴詐称で問われる可能性がある民事責任
経歴詐称をしたことが公になってしまった場合でも、詐欺罪などの刑事責任を問われないこともあるでしょう。しかし、民事責任を問われる可能性は高いといえます。具体的には、懲戒解雇される、損害賠償を請求されるなどのケースが考えられます。
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(1)懲戒解雇
会社の就業規則などに経歴詐称についての規定があれば、就業規則の規定によって懲戒処分を受ける可能性があります。
戒告から懲戒解雇までさまざまな懲戒処分がありますが、経歴詐称については、一般的には懲戒解雇か論旨解雇が規定されているケースが多いでしょう。懲戒解雇は原則として退職金は支給されないなど、通常の退職と比べて不利益が大きい処分です。
ただし、解雇が正当だと認められるのは、その経歴を知っていたら最初から採用しなかった場合など、重大な経歴詐称があったケースに限られます。そのほか、職務の遂行に支障があった、社内の秩序が乱れたなど、会社との信頼関係が損なわれた場合も重大な経歴詐称だといえるでしょう。
一方、募集段階で学歴の条件や必要な職務経験が明示されていなかったケースや、募集要項に「学歴不問」「経験不問」などと記載されていたケースでは、それらを詐称したとしても重大な経歴詐称とまではいえないでしょう。 -
(2)損害賠償
経歴詐称をしたことで、懲戒解雇だけでなく、会社から損害賠償請求される可能性もあります。
経歴を詐称して入社した結果、能力不足で給与に見合った職務を遂行できなかったとしても、経歴詐称による給与の返済義務が発生することはなく、損害賠償請求される可能性は低いでしょう。
しかし、虚偽の職歴を根拠に賃上げ交渉をして、高額の賃上げを獲得した事例では、賃金の増額分について損害賠償請求が認められています(東京地裁平成27年6月2日判決)。
業務上必要な資格を詐称していたことで会社に損害を与えた場合、損害賠償請求を受ける可能性があるといえるでしょう。
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4、まとめ
採用時の経歴詐称が発覚したときに問われる罪や、民事責任ついて解説しました。就職や転職をしたいためについたうそが、何年もたってから逮捕や懲戒解雇、損害賠償などのトラブルを招いてしまうこともあります。就職してから38年後に学歴詐称が発覚して、懲戒解雇となったケースもあります。
もし、経歴詐称の事実が会社や取引先に発覚してしまった、経歴詐称が原因で刑事事件に発展しそうな場合や、懲戒解雇や損害賠償を求められているなどの場合は、ベリーベスト法律事務所にご相談ください。経験豊富な弁護士が、早期解決に向けて全力でサポートします。
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