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線路内立ち入りをして、列車を止めてしまった! 賠償の必要はある?
いたずら、近道、撮影など、列車が走る線路内に人が立ち入ったことでトラブルに発展する事態は少なくありません。
令和2年7月には、JRが管理する東北線・仙石線の線路付近への立ち入りで宮城県の男性3人が書類送検、男子高校生ひとりが家庭裁判所送致を受けました。いずれも「山菜採り」や「鉄道の撮影」といった悪質とまではいえない目的の立ち入りでしたが、鉄道営業法という法律の違反に該当してしまったのです。
このコラムでは、線路内に立ち入ってしまった場合に問われる犯罪について触れながら、列車を遅延・運休させてしまった場合の責任などを解説します。
1、線路内への立ち入りは犯罪行為
線路内への立ち入りは、たとえ列車の運行に影響を与えなかったとしても犯罪になります。
また、列車の運行に危険を与えた場合には、重い刑罰が下される可能性があります。
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(1)無断で線路内に立ち入ると罪に問われる
線路内への立ち入りを罰するのは「鉄道営業法」と呼ばれる法律です。
鉄道営業法は、多くの人が生活のなかで活用している鉄道の安全確保と円滑な利用を目的として、鉄道事業者と利用者が守るべきルールを定めている法律です。
鉄道営業法第37条には「停車場そのほか鉄道地内にみだりに入りたる者は10円以下の科料に処す」という規定があります。
鉄道営業法は明治33年にできた古い法律なので「10円以下の科料」という刑罰が規定されていますが、現在では罰金等臨時措置法が適用されて「1万円未満の科料」が科せられます。
また、単に線路内に立ち入っただけでなく、列車の往来に危険を生じさせた場合は、刑法第125条の「往来危険罪」や第129条の「過失往来危険罪」によって罰せられます。
列車の往来に危険を生じさせた、転覆・破壊させるなどの結果を生じさせた場合に適用される犯罪で、線路内への立ち入りのほか、線路への置き石なども処罰の対象です。
往来危険罪では2年以上の有期懲役、過失往来危険罪は30万円以下の罰金が科せられます。 -
(2)威力業務妨害罪に該当することもある
線路への立ち入りによって鉄道会社の業務を妨害した場合は、刑法第234条の「威力業務妨害罪」が成立することがあります。
威力業務妨害罪といえば、官公庁や商業施設への爆破予告や犯罪予告などに適用されるイメージが強いですが、線路への立ち入りという直接的な行為によって業務を妨害した場合にも適用されます。
列車の運行に対する危険が生じず往来危険罪などが適用されないケースでも、駅員の制止を無視して線路内に立ち入ったり、警告を受けても退去せず運行に遅延や運休を生じさせたりすれば、処罰を受けるでしょう。
法定刑は3年以下の懲役または50万円以下の罰金です。
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2、新幹線の場合はより重い罪に問われる
線路内の立ち入りは、鉄道営業法違反として処罰を受けますが、罰則は1万円未満の科料であり、刑罰としては重いものとはいえないかもしれません。ただし、これは市街地などを走る在来線の場合です。
新幹線の線路に立ち入った場合は「新幹線特例法」が適用されます。新幹線特例法は、正しくは「新幹線鉄道における列車運行の安全を妨げる行為の処罰に関する特例法」といい、鉄道営業法の特例として規定されたものです。
新幹線は、在来線と比較すると駅間の距離が長く、最高速度は時速200kmを超えるため、線路の立ち入りは非常に危険です。
しかも、大量輸送が可能であり、事故防止のために精密を極めたダイヤに従って運行しています。立ち入りなどの行為があれば多くの利用客が予定を狂わされてしまい、多大な損害が生じます。
このような理由から、新幹線特例法が定める罰則は、鉄道営業法と比べると重たくなっているのです。
新幹線特例法によって定められている違反行為と罰則は次のとおりです。
●運行保安設備の損壊等
新幹線の安全な運行を制御するための設備を損壊させるなどの行為は、5年以下の懲役または5万円以下の罰金、これらの設備をみだりに操作する行為には、1年以下の懲役または5万円以下の罰金が科せられます。
●線路上に物件を置く・線路内にみだりに立ち入る
新幹線の線路上に物を置く、線路内に立ち入るなどの行為には、1年以下の懲役または5万円以下の罰金が科せられます。
●列車に物件を投げる等
走行中の新幹線列車に対して物を投げたり発射したりすると、5万円以下の罰金が科せられます。
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3、民事で問われる可能性のある責任とは
線路内への立ち入りによって、鉄道営業法や新幹線特例法の違反をし、刑罰が下されたとしても、これは「刑事責任」の部分です。たとえば、科料や罰金刑が科せられたとしても、納付したお金は国のものとなり、鉄道会社に支払われるわけではありません。
もし線路内への立ち入りによって鉄道会社に何らかの損害が発生していれば、民事上の責任、すなわち賠償金の支払い責任が生じます。
民事責任と刑事責任はまったく別のものです。科料や罰金を支払ったからといって、賠償金の支払いを免れることはできません。もちろん、賠償金を支払ったからといって、線路への立ち入りという犯罪が帳消しになるわけでもありません。
線路内への立ち入りによって遅延・運休が生じてしまえば、鉄道会社は事態を収拾するために振替輸送の手段を用意したり、運賃を払い戻したりして対応に追われるでしょう。
乗客の多い路線や、朝夕のラッシュ時間帯に遅延・運休を生じさせてしまった場合は、鉄道会社が負う損害も多額になります。
いたずら半分や気軽な気持ちで線路に立ち入ってしまうと、多額の賠償金を請求されてしまうおそれがあります。
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4、弁護士に相談すべき理由
線路内への立ち入りで警察に逮捕されてしまった場合は、直ちに弁護士に相談してサポートを受けましょう。
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(1)損害賠償の回避
すべての鉄道会社が「損害が発生すれば必ず責任を追及する」というわけではありません。しかし、甚大な損害が発生した場合や、故意に運行を妨害したような悪質なケースには、損害賠償を請求する傾向があります。
鉄道会社との話し合いや交渉を弁護士に任せることで、損害賠償請求の回避や、賠償金の減額が期待できるでしょう。 -
(2)代理での示談の交渉
線路内への立ち入りは、重い刑罰を受けなかったとしても前科がつくことがあります。
弁護士に依頼して代理人として示談交渉を任せることで、被害届・告訴状の提出を回避して、前科がついてしまう事態を避けられる可能性があります。 -
(3)逮捕直後も面会が可能
事件の被疑者として逮捕されると、72時間の間は家族であっても面会が許されません。逮捕後にも接見禁止がついてしまえば、その後も面会が許可されないおそれがあります。
しかし、だれも面会ができない期間でも、弁護士だけは自由な接見が認められています。
早い段階で法律の専門家がサポートすれば、不当な取り調べを防ぐためのアドバイスも得られるでしょう。 -
(4)減軽や釈放などの弁護活動
弁護士に事件の詳しい状況を説明し、特に悪質性のないことを検察官に主張することで、不当に重い処分とはならない可能性もあるでしょう。
また、刑の減軽を受けられれば、刑罰が軽くなります。早期の釈放や不起訴処分・執行猶予の獲得を目指すなら、弁護士による弁護活動が必須です。
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5、まとめ
たとえ列車が近づいていない場合でも、線路内への立ち入りは犯罪です。もし列車の運行に遅延を与えてしまったり運休を引き起こしたりすれば、鉄道会社から損害賠償を請求されるおそれもあるので、すぐに弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士に相談すれば、不当に重い刑罰の回避や早期釈放が期待できます。さらに、鉄道会社からの賠償請求も回避・減額される可能性が生じるでしょう。
線路内への立ち入りで責任を追及されてお困りなら、ベリーベスト法律事務所にご相談ください。刑事事件・民事トラブルの解決実績を豊富にもつ弁護士が、全力でサポートします。
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