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住居侵入で家族が逮捕されてしまった! 保釈に必要な対策はなに?
住居侵入罪は、正当な理由なく他人の住居などに侵入すると問われる罪です(刑法第130条)。窃盗やわいせつ罪などの手段として犯してしまうケースも少なくありません。
もしも、逮捕・勾留されると、最長で23日間も身柄を拘束され、起訴された場合には裁判で判決がでるまでさらに身柄拘束が続く可能性があります。この間は、ご家族にとっても精神的な負担が大きい期間となるでしょう。「少しでも早く本人を釈放・保釈させてあげたい」と思っても、「具体的には何をすればよいのか分からない」というのが実情ではないでしょうか。
本コラムでは、住居侵入罪がどのような犯罪なのかを説明するとともに、逮捕後の流れ、起訴された後の釈放である保釈制度、保釈に向けて家族ができることについて解説します。
1、住居侵入罪で逮捕される要件とは
住居侵入罪の概要と、どのような状況で逮捕されるのかについて解説します。
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(1)住居侵入罪とは
住居侵入罪は、正当な理由がなく他人の住居などに侵入すると成立する犯罪です(刑法第130条)。
住居とは、人が寝食などの日常生活を営む場所です。建物の内部はもちろん、庭やベランダ、屋根などの空間も住居に含まれます。また、侵入とは、住人や管理者の意思に反して立ち入ることをいいます。
住居侵入罪に該当するのは、具体的には次のようなケースです。- 駅で見かけた好みの異性のあとをつけ、相手の自宅マンションの共有部分に立ち入った
- 芸能人の自宅だと知り、中の様子をのぞき見ようと塀によじ登った
- 窃盗をする目的で一軒家の内部に侵入した
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(2)現行犯逮捕と通常逮捕
住居侵入事件の逮捕の多くは「現行犯逮捕」か「通常逮捕」ではないかと思います。
現行犯逮捕されるのは、住居侵入の様子を被害者や近隣住民に目撃されて取り押さえられるケースや、通報を受けて駆けつけた警察官に確保されるケースがその典型です。
現行犯逮捕されなかったとしても、犯行の後日に通常逮捕される場合があります。犯行現場付近や被害者宅の玄関などに設置された防犯カメラをもとに、住居侵入の被疑者として特定されるケースが典型的です。 -
(3)逮捕の要件
現行犯逮捕の要件は「現に罪を行い、または罪を行い終わった」ことです(刑事訴訟法212条1項)。
これに対して通常逮捕には「逮捕の理由」と「逮捕の必要性」が求められます。逮捕の理由とは「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があること」をいいます(刑事訴訟法第199条)。単に罪を犯した可能性があるという程度ではなく、罪を犯したと疑うに足りるだけの証拠が必要です。
逮捕の必要性は「逃亡や証拠隠滅のおそれがない」かどうかで判断されます(刑事訴訟規則第143条の3)。たとえば定職につき、家族と同居もしており、すでに証拠が確保されているケースでは、逃亡や証拠隠滅のおそれがないため逮捕されない可能性があります。
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2、住居侵入罪の刑罰
住居侵入罪の法定刑は「3年以下の懲役または10万円以下の罰金」です(刑法第130条)。実際に言い渡される刑(量刑)は、法定刑の範囲で裁判官が次のような要素をもとに決定します。
- 前科の有無
- 犯行の目的
- 犯行様態の悪質性
- 被害者の処罰感情
- 被害者との示談の有無
たとえば住居侵入の同種前科があり、被害者との示談も成立していないケースでは、更生が期待できず、被害者の処罰感情も強いとみなされるため、量刑が重く傾く可能性があるでしょう。反対に初犯で深く反省しており、被害者が示談に応じているケースでは量刑が軽く済む可能性があります。
ただし、これは単純に住居侵入罪のみが成立する場合です。住居侵入事件では、住居への侵入そのものが目的というより、窃盗やわいせつ、盗撮など別の目的があり、手段として住居へ侵入するケースが多数です。
このように2つ以上の犯罪が目的と手段の関係にある場合を牽連犯(けんれんぱん、けんれんはん)といい、もっとも重い法定刑が適用されます(刑法第54条)。たとえば、窃盗目的で住居に侵入し、室内を物色しているところを発見された場合には、住居侵入罪よりも重い窃盗罪の法定刑(10年以下の懲役または50万円以下の罰金)によって処断されるわけです。
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3、住居侵入罪で逮捕された場合の流れ
住居侵入罪で逮捕されると、48時間以内に警察から取り調べを受け、検察庁へ送致された後、24時間以内に検察官から取り調べを受けます。ここまでの72時間以内に、検察官は被疑者を起訴するか不起訴とするのかを判断しますが、引き続き身柄を拘束して捜査する必要がある場合には、裁判官へ勾留を請求します。
裁判官が勾留を認めると原則10日間、延長を加えると最長で20日間、身柄を拘束されます。勾留が満期を迎えるまでに、検察官は再び起訴・不起訴を判断するという流れです。
一方で、在宅捜査となるケースもあります。在宅捜査とは被疑者の身柄を拘束せずにおこなう捜査をいい、被疑者は日常生活を送りながら、捜査機関からの要請にその都度応じて取り調べを受けることになります。在宅捜査の場合は身柄拘束による心身の負担はありませんが、逮捕・勾留されたケースのように起訴・不起訴の判断までの期間が定まっていない分、事件が長引くおそれがあります。
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4、起訴されてしまったら早期に保釈請求を
住居侵入罪で勾留されたまま起訴されると、裁判が開かれるまで身柄拘束が続きます。事実関係の争いがない事件であっても、起訴から裁判までに1か月半~2か月ほどかかるため、この間にも身柄を拘束され続けるのは大変な負担となるでしょう。
そこで起訴された後に一時的に身柄の拘束を解いてもらう制度が「保釈」です。
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(1)保釈と釈放の違い
保釈は起訴された「被告人」が利用できる制度です。保釈されると身柄の拘束を解かれ、日常生活を送りながら裁判のたびに出廷します。しかし、あくまでも一時的な措置なので、裁判で実刑判決が下ればそのまま身柄を拘束され、刑務所へ収監されてしまいます。
一方の釈放は、起訴される前の「被疑者」が勾留されなかった場合や、「受刑者」が刑期の満了を迎えて出所する場合なども含む、身柄拘束の解除を幅広く指す言葉です。 -
(2)保釈金はどのように決まるのか
保釈されるには、一定の重大犯罪にあたらず、逃亡や証拠隠滅のおそれがないなどの要件を満たしたうえで、保釈金を支払わなければなりません。
保釈金の額は犯罪の内容や被告人の経済状況などをもとに裁判官が決定します。保釈中の逃亡を抑止できる額、つまり被告人が「没取されたら困る」と感じられるだけの金額が設定されます。 -
(3)身元引受人が不可欠
保釈中には逃亡したり被害者と接触して証拠隠滅をはかることを防止するため、本人を監督する身元引受人の用意が不可欠です。被告人と同居している人が適しているため、多くのケースではご家族が身元引受人となるでしょう。
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5、釈放(保釈)に向けて家族ができること
家族が住居侵入罪で逮捕・勾留されれば、残されたご家族は「何とか本人を釈放・保釈させてあげたい」と思うことでしょう。そのためには、早急に弁護士へ対応を相談し、次のような活動を依頼することが大切です。
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(1)示談の成立を目指す
住居侵入事件の被害者へ真摯(しんし)な謝罪をし、「処罰を望まない」という意思を得て示談が成立すると、釈放される可能性が高まります。
起訴されるよりも前に示談が成立すれば、検察官が評価し、不起訴処分が下る可能性も生じます。不起訴処分になればその時点で釈放されるので、保釈の請求も保釈金を納める必要もありません。起訴された後に示談が成立した場合であっても、被害者と接触するおそれが消滅していることなどから保釈が認められやすくなります。裁判でも有利な事情として評価され、執行猶予つき判決が下る可能性もでてくるでしょう。
しかし、身柄を拘束されている本人はもとより、ご家族が直接被害者と交渉するのは困難です。冷静さを欠いてしまう、法外な示談金を請求されてしまうなどの理由で交渉が難航するおそれが高いので、公正中立な立場であり、示談金の相場感もある弁護士へ一任することをおすすめします。 -
(2)身元引受人になる
本人を監督できる環境を整え、身元引受人となるのも、釈放・保釈のためにご家族にできることです。特に保釈に関しては身元引受人が事実上の条件となります。ご家族であれば適切な身元引受人と認められやすく、保釈が許可される可能性を高められるでしょう。
そのほか、保釈金の準備や保釈日の出迎え、着替えの用意などもご家族の大切な役割です。
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6、まとめ
正当な理由もなく人の住居に立ち入れば住居侵入罪に問われます。量刑は事件によって異なりますが、窃盗やわいせつなどほかの犯罪の目的があって住居に侵入した場合や、前科がある場合などには重い刑を受ける可能性があるでしょう。
家族が住居侵入罪の疑いで逮捕・勾留され、少しでも早い釈放や保釈を希望するのであれば、弁護士のサポートが欠かせません。住居侵入事件の解決実績が豊富なベリーベスト法律事務所が力を尽くしますので、まずはご相談ください。
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※本コラムは公開日当時の内容です。
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