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未成年者略取は同意があっても犯罪? 執行猶予がつくケースとは?
「離婚した妻が監護・養育している子どもを勝手に自分の家に連れ帰った」「ネットで知り合った高校生を自分の家に連れ込んだ」などの行為は、刑法第224条が定める未成年者略取誘拐罪に該当するおそれがあります。
連れ去った相手が自分の子どもだった場合や、未成年者本人の同意があった場合でも、逮捕・起訴され有罪になる可能性があるので注意が必要です。
本コラムでは、未成年者略取誘拐罪と関連する犯罪について解説します。未成年者略取誘拐事件で執行猶予がつく可能性や、弁護士に相談するべき理由も確認しましょう。
1、未成年者略取で問われる罪
未成年者を勝手に連れ去るような行為をすると未成年者略取誘拐罪に問われます。
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(1)未成年者略取誘拐罪とは
20歳未満の未成年者を略取または誘拐した場合に成立する犯罪です(刑法第224条)。
略取と誘拐は、人を従来の生活環境から離脱させ、自分や第三者の支配下におくことをいいます。略取が暴行または脅迫などの強制手段を用いるのに対し、誘拐は欺罔(ぎもう)または誘惑を用いるという違いがあります。
略取と誘拐をあわせて拐取(かいしゅ)といいます。
刑罰は「3か月以上7年以下の懲役」です。罰金刑などはないため、執行猶予がつかない限りは刑務所へ収監されてしまいます。 -
(2)未成年者の同意があっても犯罪が成立する
未成年者略取誘拐罪の保護法益(法律が守ろうとする利益)は、被拐取者(連れ去られた方)の自由です。ただし被拐取者が保護・監護を必要とする状態にあるときは、親権者などの監護権も保護法益に含まれると解されています。
つまり未成年者本人だけでなく親などの監護権も保護される必要があるため、未成年者の同意があっても保護者の同意がなければ同罪が成立する可能性があるわけです。 -
(3)実の親子関係であっても未成年者略取にあたる可能性も
別居中の自分の子どもを、配偶者などの許可を得ずに連れ去る行為は、たとえ実の親子関係にあっても未成年者略取にあたる可能性があります。
実際のケースとして、妻が養育している2歳の子どもを、離婚協議中にある別居中の夫が車に乗せて強引に連れ去った事件について、未成年者略取にあたるとした判例があります。
判決では、夫が共同親権者であるとしても、子どもの監護養育上それが現に必要とされるような特段の事情もなく、連れ去り行為の様態が粗暴で強引なものであるという状況においては、違法性が阻却されないと示されました。
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2、未成年者略取に関連する犯罪
未成年者略取誘拐罪と関連する犯罪についても見ていきましょう。
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(1)営利目的等略取誘拐罪
以下のいずれかの目的で人を略取または誘拐した場合に成立する罪です(刑法第225条)。
- 営利目的:女性を夜の店で働かせて利益を得るため など
- わいせつ目的:性交やわいせつ行為をさせるため など
- 結婚の目的:自分や第三者の妻にするため など
- 生命・身体への加害目的:殺害や暴行、臓器摘出をするため など
目的を遂げたかどうかは同罪の成立に必要ではないため、上記の目的で拐取すれば罪に問われます。
刑罰は「1年以上10年以下の懲役」です。 -
(2)身代金目的略取誘拐罪
略取・誘拐された者の安否を憂慮する者の憂慮に乗じて、財物を交付させる目的で略取した場合に成立する犯罪です(刑法第225条の2第1項)。
このような目的がなく略取し又は誘拐した場合であっても、その後に略取・誘拐された者の安否を憂慮する者の憂慮に乗じて財物を交付させ、または要求する行為をした場合も同罪に問われます(同条第2項)。
「安否を憂慮する者」とは、親や祖父母、兄弟や生徒に対する教師など、被害者の安否を心配することが社会通念上当然と認められる人を指します。
刑罰は「無期または3年以上の懲役」です。身代金を得ようという動機の悪質性から重い刑が定められています。 -
(3)所在国外移送目的略取誘拐罪
所在する国の外に移送する目的で人を略取・誘拐した場合に成立する犯罪です(刑法第226条)。
日本国内にいる人を日本国外に移送するだけでなく、日本以外の国から別の国に移送する目的であった場合も罪に問われます。
刑罰は「2年以上の有期懲役」です。 -
(4)青少年健全育成条例違反
18歳未満の未成年者を深夜の時間帯に連れ回すような行為をすると、各都道府県が定める青少年健全育成条例に違反する可能性があります。
たとえば東京都の条例では、保護者の委託を受けたなどの正当な理由がない限り、午後11時から翌日の午前4時までの時間帯に18歳未満の者を連れ出す、同伴する、とどめる行為が禁止されています(第15条の4第2項)。
刑罰は「30万円以下の罰金」です(第26条)。
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3、未成年者略取における執行猶予
執行猶予とは、猶予期間中にふたたび罪を犯さないことを条件に刑の執行を猶予し、執行猶予期間満了時に刑の効力が失われる制度です(刑法第25条)。社会の中での更生が期待できる場合に限って言い渡されますが、どのような犯罪でも執行猶予がつくわけではありません。
未成年者略取誘拐罪に執行猶予はつくのでしょうか?
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(1)執行猶予の条件
執行猶予がつくためには、前提として、3年以下の懲役・禁錮または50万円以下の罰金の言い渡しを受けることが必要です(刑法第25条)。
未成年者略取誘拐罪の量刑は「3か月以上7年以下の懲役」の範囲で決定するため、3年以下の懲役を言い渡されると執行猶予がつく可能性があります。
ただし懲役3年以下であれば無条件で執行猶予となるのではなく、次の要件を満たしていなければなりません。- 以前に禁錮以上の刑に処せられたことがない
- 以前に禁錮以上の刑に処せられたことがあるが、その刑の終了から5年以内に禁錮以上の刑に処せられていない
- 情状に酌むべき事情がある
さらに執行猶予は裁判官が任意で言い渡すため、上記の条件を満たしても必ず執行猶予がつくわけではありません。
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(2)執行猶予でも前科はつく
前科とは裁判で有罪判決の言い渡しを受けた経歴を指します。
執行猶予つきの判決は不起訴処分や無罪判決とは異なり、前科がつきます。前科がつくと一部の職業や海外渡航に制限がかかるなどの不利益が生じるでしょう。
日本の刑事裁判では起訴後の有罪率が約99%以上と極めて高いため、前科を回避するには不起訴処分を得ることが重要です。
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4、未成年者略取誘拐罪について弁護士に相談できること
未成年者略取誘拐事件で不起訴処分や執行猶予つき判決を得るには、弁護士のサポートが不可欠です。
こちらでは、未成年者略取誘拐事件で逮捕された場合に、弁護士ができることを解説します。
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(1)被害者との示談交渉
不起訴処分を得るには被害者との示談成立が鍵となります。というのも、未成年者略取誘拐罪は、起訴にあたり被害者側の告訴を必要とする「親告罪」であるため(刑法第229条)、告訴状を提出しない、または告訴状を取り下げる旨の内容で示談が成立すれば、起訴されない可能性が高いのです。
ただし通常は、拐取された未成年者本人ではなく保護者との示談交渉となるため、加害者本人が直接交渉するのは避けるべきです。保護者の怒りの感情は高く、交渉のテーブルにつくのも難しいでしょう。
別居している自分の子どもを強引に連れ去ったような事件では、もともと配偶者との関係性が悪化しており、子どもと満足に会えなかったなどの状況が考えられるため、なおさら示談交渉は困難です。
この点、弁護士が間に入れば保護者の安心感につながり、本人の深い反省や謝罪の気持ちを伝えることで、交渉を受け入れてくれる可能性がでてきます。 -
(2)不起訴処分や執行猶予にむけた弁護活動
示談が成立しなかった場合や、示談は成立したが告訴状の取り下げの約束ができなかった場合などには起訴される可能性があります。
しかし、示談交渉の取り組みは被害者へ謝罪の意思を示し、加害者が反省している証でもあるため、不起訴処分となる可能性や、判決に際してよい事情として考慮され、執行猶予がつく可能性を高めます。
示談交渉のほかにも謝罪文を書く、加害者の家族に監督を約束してもらうなどさまざまな活動があります。弁護士がこれらの活動を検察官や裁判官に示し、不起訴処分や執行猶予の可能性を高めていくため、できるだけ早いタイミングで相談するのがよいでしょう。
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5、まとめ
本人と保護者双方の同意を得ずに未成年者を連れ去る行為は、未成年者略取誘拐罪にあたります。重い刑を避けたいと考えるのなら、被害者側との示談交渉を進めることが重要です。親告罪であるため示談が成立すれば、不起訴処分や執行猶予つき判決となる可能性もでてくるでしょう。
ただし保護者の怒りや処罰感情などを考慮すれば、交渉は弁護士へ委ねるのが最善の方法です。刑事事件の解決実績が豊富なベリーベスト法律事務所がサポートしますので、まずはご相談ください。
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