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弁護士コラム

2021年03月15日
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判決に不服! 上告と控訴は違う? 上告のための条件や方法を解説

判決に不服! 上告と控訴は違う? 上告のための条件や方法を解説
判決に不服! 上告と控訴は違う? 上告のための条件や方法を解説

裁判の結果までが注目される大きな事件では「上告」という手続きについてニュースなどで報じられることがあります。「即日で上告した」「上告が棄却された」といったフレーズを耳にする機会は多いでしょう。また、同じような場面で「控訴した」という報道を聞くことも多いはずです。

上告とは、裁判所の判決に不服を申し立てる手続きです。このコラムでは、上告の意味や手続き、控訴との違いなどについて弁護士が解説します。

1、上告と控訴の違い

まずは「上告」とはどのような手続きなのかを解説しましょう。紛らわしい「控訴」との違いについても確認します。

  1. (1)上告とは

    上告とは、控訴審の判決内容に不服がある場合に、最高裁判所に対して取り消しや変更を求める申し立てです。

    わが国の裁判制度は、ひとつの事件について3回まで裁判を受けることができる「三審制」が採用されています。刑事事件においては、第一審が地方裁判所または簡易裁判所、第二審は主に高等裁判所で審理され、第三審として主に最高裁判所で審理されます。上告はこのなかで第二審にあたる裁判の判決を不服として第三審を求める手続きです。

    原判決を不服としてさらに上級の裁判所に審理を求める手続きを「上訴」といい、上告は最終段階における上訴として位置づけられていますなお、民事裁判では原告・被告のいずれも、刑事裁判では検察官・被告人のいずれにも上訴の権利が与えられています

  2. (2)控訴とは

    控訴とは、三審制のなかで第一審にあたる裁判の判決を不服として第二審での審理を求める手続きです。控訴の申し立てによって開かれる第二審の裁判を「控訴審」と呼びます。

  3. (3)上告と控訴の違い

    上告は「第二審から第三審へ」、控訴は「第一審から第二審へ」の上訴であり、段階の違いはあるものの上訴であることに変わりはありません。ただし、決定的に違う点が存在しています。

    両者は「上訴が認められる理由」において大きく違っているのです。

    上告は刑事訴訟法第405条の規定に基づき、次の場合においてのみ認められます。

    • 第二審の判決に憲法違反または憲法解釈の誤りがある場合
    • 第二審の判決が最高裁判所の判例に反する場合
    • 最高裁判所の判例がない場合は、大審院もしくは高等裁判所の判例に反する場合


    つまり、上告は原則として第二審の判決に「憲法違反」または「判例違反」がある場合のみに認められる上訴です。ただし、これらが認められない場合でも、刑事訴訟法第411条の規定によって、不当に重い量刑が下された場合や重大な事実誤認があるなどの場合は、上告が認められることがあります。

    一方の控訴は、第一審の訴訟手続きに法令違反があった場合や、事実認定・法令適用に誤りがあった場合に認められます。判決の後に、有罪判決を受けた被告人にとって利益となる新たな証拠が発見されたなどの事情がある場合も控訴が可能です。

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2、上告が可能なケース

上告は原則として第二審の判決について憲法違反・判例違反があった場合にのみ認められます

たとえば、自己の女性器の三次元データをインターネット上で頒布した女性がわいせつ物陳列罪などに問われた事件では、日本国憲法第21条の「表現の自由」に違反するとして上告が認められました。

ただし、これらの理由にあたらない場合でも、刑事訴訟法第411条に掲げられている、判決に影響を及ぼすような法令違反・著しい量刑不当・重大な事実誤認など、これを取り消さないと著しく正義に反すると認められる状況であれば上告は可能です。

憲法違反・判例違反がない場合でも、上告を受けた上級の裁判所は控訴審の判決を破棄できます。

実際の事例では、原則的な憲法違反・判例違反を指摘しながらも、あわせて刑事訴訟法第411条を根拠とした理由を強く主張するケースが目立ちます。

たとえば、平成29年に起きた性的暴行(強姦)と児童買春・ポルノ禁止法違反の罪に問われた男の裁判では、被害者となった当時12歳だった女児の証言の信用性に注目して、事実誤認などを理由に被告人が上告しています。

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3、上告提起と上告受理申立ての2つの手続き

控訴審の判決に不服があり、刑事訴訟法が定めている理由に該当する場合は上告が可能です。上告には、その理由に応じて「上告提起」と「上告受理申立て」の2種類の手続きがあります

控訴審の判決に不服がある場合は、判決のどの部分が上告の理由にあたるのかを明確にしたうえで、上告提起と上告受理申立てのどちらに該当するのかを判断しなければなりません。

  1. (1)上告提起とは

    上告提起とは、控訴審が下した判決について、憲法違反や重大な訴訟手続きの違反事由が存在する場合の不服申立てをいいます。単に「上告」と呼ぶ場合は上告提起を指していると考えてよいでしょう。

    上告提起をする場合は、第二審判決を下した裁判所に対し、第二審判決の正本が送達された日の翌日から起算して2週間以内に上告状を提出します。

  2. (2)上告受理申立てとは

    上告受理申立てとは、控訴審が下した判決について、判例違反や法令の解釈に関する重要な事項を含むことを理由とする場合の不服申立てです。上告提起の場合と同様、上告受理申立書を期限内に第二審判決を下した裁判所に提出しなければなりません。

    上告受理申立ては、理由さえあれば必ず受理されるわけではなく、受理の判断は上級の裁判所に委ねられます。また、不服申立ての理由が両方の理由に該当する場合は、上告提起と上告受理申立ての両方の申し立てが可能です。

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4、上告審で下される判決

上告審で下される判決は、基本的に「棄却」「破棄」「差し戻し」の3つです。

  1. (1)棄却

    上告が不適法である、または理由がないと判断された場合、上告審の裁判所は上告を「棄却」します。棄却とは「請求を排斥する」という意味なので、棄却された場合は第三審における審理が開かれず、第二審の判決が確定します。

    なお、上告の主張が明らかに憲法違反にはならない場合は「上告棄却の決定」が下され、憲法違反の主張はあるが審理したところ憲法違反にはあたらないとされた場合は「上告棄却の判決」が下されます。

  2. (2)破棄

    上告に理由がある場合、または上級裁判所の職権による調査の結果によって第二審の判決を維持できないことが判明した場合は、第二審の判決を「破棄」します。第二審の判決に誤りがあることを上級の裁判所が認めたことになるので、審理のやり直しが必要になります。

  3. (3)差し戻し

    「差し戻し」とは、上級の裁判所が破棄した判決について、第二審の裁判所に戻して審理をさせる手続きです。

    第三審となる上告審は、一般的な刑事裁判とは異なり、第二審の判決に憲法違反や法律の解釈に誤りがないかを審理する「法律審」と呼ばれる場です。第一審・第二審のように事実認定に注目する場ではないので、原則として証拠調べも行われません。

    上告審には有罪・無罪の認定や量刑の判断を下す機能はないため、第二審の裁判所に差し戻して再び審理をさせるわけです。

    なお、第二審の判決を破棄した場合でも、裁判の長期化が不利益を招く場合や、被告人にとって有利な方向に判断を変更する場合に限っては、上告審が判決を確定させることもありますこれを「破棄自判」といいます

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5、上告審の判決が不服な場合はどうする?

三審制を採用しているわが国の刑事司法では、上告審の判決は最終判断となります。さらに上級の機関に対して上訴する制度は存在していません。

ところが、ニュースなどでは「上告を棄却した最高裁判決に対する訂正を申し立てた」「最高裁判決を不服として異議を申し立てた」といった情報が報じられることがあります。

上告が棄却された場合、その理由によっては「訂正申立て」または「異議申立て」が可能です

●訂正申立て
上告棄却の判決について、誤記などの訂正を求める手続きです。訂正の申立てなので、主張の変更や追加などを認めるものではありません。訂正申立ては、上告棄却の判決から10日以内という期限が定められています。

●異議申立て
上告棄却の決定について異議を申し立てる手続きです。上告審による棄却の取り消しを求めるものですが、現実的にほぼ認められる可能性はありません。
なお、異議申立ての期限は上告棄却の決定から3日以内です。訂正申立てよりも期限が短いので注意が必要でしょう。

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6、まとめ

わが国の刑事司法は三審制を採用しているので、不利な判決が下されてしまった場合でも、第二審への控訴、第三審への上告によって判決を覆すことができる可能性があります。ただし、第三審の上告は原則として憲法違反や判例違反がある場合に限って認められるものであり、これらの理由がない場合でも第二審判決が「著しく正義に反する」と判断されない限り認められません。

3回のチャンスを活かすという姿勢も大切ですが、上告審で審理される可能性は決して高くないことを考えると、現実的には第二審までに決着をつける必要があるでしょう。

控訴審での判決に不服があり上告したいと考えている方はもちろん、重い刑罰をできる限り軽減したいと考えている方も、刑事事件の弁護実績が豊富なベリーベスト法律事務所にご相談ください。

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本コラムを監修した弁護士
萩原 達也
ベリーベスト法律事務所
代表弁護士
弁護士会:
第一東京弁護士会

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※本コラムは公開日当時の内容です。
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