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弁護士コラム

2021年06月29日
  • その他
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共謀罪(テロ等準備罪)とは? TOC条約との関係と処罰の対象

共謀罪(テロ等準備罪)とは? TOC条約との関係と処罰の対象
共謀罪(テロ等準備罪)とは? TOC条約との関係と処罰の対象

平成29年6月15日、テロや振り込め詐欺などの組織的犯罪を計画・準備段階で処罰できる共謀罪(テロ等準備罪)が成立しました。これにより国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約(TOC条約)の締結が可能となり、同年7月に条約が締結されています。

共謀罪は犯罪を実行していない準備行為の段階での処罰を可能とするものであるため、「一般人が捜査・処罰の対象になるのではないか」「一般人の行動の自由が制限されるのではないか」などの不安の声も少なくありません。たとえば知人から重大犯罪の計画を持ちかけられるなど、意図せず犯罪の計画に関わってしまった場合でも、処罰の対象となるのでしょうか?

本コラムでは共謀罪が創設された背景や成立要件を確認しながら、共謀罪に対する不安の声、それに対する政府の見解についてもご紹介します。

1、共謀罪とテロ等準備罪の違い

共謀罪とテロ等準備罪の概要および両者の違いについて解説します。

  1. (1)共謀罪とは

    共謀罪(組織的な犯罪の共謀罪)とは、テロ等準備罪が成立する前に、過去3度国会に提出されたが廃案になった法案のことです。政府は平成15年、16年、17年の3回にわたり共謀罪法案を国会に提出しましたが、野党や日弁連などの反対を受けて廃案になっています。

    廃案になった際の国会審議では、「正当な活動を行う団体も処罰の対象となるのではないか」「人の内心が処罰されることになるのではないか」といった不安の声が示されました。

  2. (2)テロ等準備罪との違い

    テロ等準備罪とは、「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律」(略称:組織的犯罪処罰法)の改正にともない、第6条の2に創設された「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団による実行準備行為を伴う重大犯罪遂行の計画」の罪のことです。

    過去3度廃案になった共謀罪の構成要件を変更したもので、政府は呼称をテロ等準備罪と改めました。
    野党などからは「今回も廃案にするべき」と強い反発がありましたが、政府は採決を強行し、平成29年6月15日に成立、同年7月11日から施行されています。

    テロ等準備罪と、かつての共謀罪との主な違いは以下のとおりです。

    • 対象となる「団体」を「組織的犯罪集団」に限定することが明文化されました。
    • 対象となる犯罪を限定的に列挙して範囲を明確化しました。以前の法案では対象となる犯罪の数は676個でしたが、テロとは直接関係のない犯罪を外すなどして277個に限定されています。
    • 「計画行為」に加えて「実行準備行為」が行われて初めて処罰されることになりました。犯罪の計画を話し合うだけでなく、資金を用意するなどの準備行為の存在も条件になっています。


    なお、共謀罪もテロ等準備罪も俗称ですが、日弁連などは従前に国会に提出されていた「共謀罪法案と本質において変わらない新たな共謀罪法案である」として引き続き共謀罪と呼んでおり、一般的にも両者の呼称は特に区別されていません
    そのためこの記事でも、以下、テロ等準備罪を共謀罪と呼んで解説します。

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2、共謀罪成立の要件と罰則

共謀罪が成立する3つの要件と罰則について解説します。

  1. (1)要件① 組織的犯罪集団が関与すること

    「組織的犯罪集団」とは、テロ集団や暴力団、薬物密売組織、振り込め詐欺集団など違法行為を目的とした集団のことです。具体的には以下の3要件をすべて満たす必要があります。

    ① 多人数の継続的な集団であること
    ごく少人数の集まりや、多人数でも一時的に集まった場合はこれにあたりません。

    ② 犯罪実行部隊のような組織を有していること
    指揮命令にもとづき、あらかじめ定められた任務の分担に従って行動する人の集まりを指します。

    ③ 重大な犯罪(目的犯罪)の実行を目的として集まっていること
    目的犯罪とは、組織的犯罪処罰法の別表第3に列挙されている犯罪をいいます。放火や通貨偽造、強制わいせつ、傷害など一般によく知られた犯罪が含まれています。

    たとえば会社の同僚数人が集まり、皆で「気に入らない上司を殴ってやろう」と画策しても、会社の同僚数人の集まりは①と②に該当しませんので、組織的犯罪集団とは言えないでしょう。

  2. (2)要件② 犯罪の実行を2人以上で計画すること

    「計画」とは以下の2つの要件をいずれも満たしたものを指します。

    ① 団体の活動として一定の犯罪(対象犯罪)を実行するための計画であること
    対象犯罪とは、組織的犯罪処罰法の別表第4に列挙されている犯罪をいいます。たとえば内乱、贈賄、爆発物使用の罪などがあります

    ② 具体的かつ現実的な合意をすること
    「何か犯罪をしてやろう」といった計画は具体的ではないため要件を満たしません。

    たとえば組織的犯罪集団に所属している一部の者が、単に個人的な利益のために犯罪を計画した場合は、①の団体の活動としての計画にあたりません。

  3. (3)要件③ 計画に基づき実行準備行為が行われること

    「実行準備行為」とは、資金調達や現場の下見、ウイルスの製造など犯罪を実行するための準備行為を指します。以下の3要件をすべて満たす必要があります。

    ① 計画とは別の行為であること
    たとえば計画の内容をメモに書き留めただけでは未だ計画と何ら変わりはないため、計画とは別の行為だとはいえません。

    ② 計画にもとづく行為であること
    たとえば刺殺する計画を立てたが毒物を入手した場合、毒物の入手は計画にもとづく行為だとはいえません。

    ③ 計画を前進させる行為であること
    たとえば計画の後に生活に必要な日用品を購入しても、日用品の購入は当該行為にあたりません。

  4. (4)共謀罪の罰則

    罰則は以下のとおりです。

    • 死刑または無期もしくは長期10年を超える懲役もしくは禁錮の刑が定められている罪で共謀した場合……5年以下の懲役または禁錮
    • 長期4年以上10年以下の懲役または禁錮の刑が定められている罪で共謀した場合……2年以下の懲役または禁錮
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3、TOC条約と共謀罪の関係(テロ等準備罪)

共謀罪はTOC条約の締結を目的としたものであるため、共謀罪を理解するためには、TOC条約の内容やその必要性について知っておく必要があります。そこで以下ではTOC条約と共謀罪の関係について確認していきます。

  1. (1)TOC条約とは

    TOC条約とは、「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約」のことです。テロ、薬物の密輸、マネーロンダリングなどの組織犯罪を未然に防止し、これと戦うために協力を推進する枠組みとして、平成12年11月15日に国連総会で採択されました。

    日本は共謀罪の新設を受けて、平成29年7月11日に条約を締結しました。同時に、「人身取引議定書」「密入国議定書」「国連腐敗防止条約」を締結し、いずれも平成29年8月10日から効力が生じています。

  2. (2)TOC条約締結の動機

    日本はTOC条約の締結について平成15年5月に国会の同意を得ていましたが、平成29年3月時点で締結できずにいました。その時点で条約に加盟していなかったのは、国連加盟国(193か国)のうち、日本を含めてわずか11か国しかありませんでした。

    しかしTOC条約は、国際的連携によってテロを含む組織犯罪を防ぐことを目的とした条約です。未締結のままでは日本がテロ防止のための国際連携の抜け穴となりかねず、国際社会との連携を一層強化するためにも、条約への加盟が急務でした

    また3年後に東京オリンピック・パラリンピックの開催を控え、組織犯罪の未然防止に万全の態勢を整える必要性がさらに高まったことも大きな動機となりました。

  3. (3)共謀罪(テロ等準備罪)がないと何が問題だったのか?

    TOC条約第5条は締結国に対し、「重大な犯罪を行うことの合意」または「組織的な犯罪集団の活動への参加」の段階で犯罪として処罰できるようにすることを義務づけています。

    しかし日本の法体制は犯罪が実行された時点(既遂)で処罰するのを原則としており、例外的に個別の犯罪について未遂罪が設けられていますが、その場合も実行の着手がなされるまでは処罰できない仕組みになっています。
    また極めて例外的なケースとして、未遂の前段階である予備や陰謀の段階(計画・準備)で処罰できる犯罪がありますが、内乱や放火、強盗などの一部の犯罪にとどまっています。

    たとえば次のようなケースは、日本では実行に着手する前の計画・準備段階で処罰できませんでした。

    • 電気、水道、ガス設備などのインフラを標的としたテロ事犯
    • サイバー空間を利用した組織的な電子計算機損壊等業務妨害事犯
    • 振り込め詐欺などの組織的な詐欺事犯
    • 人身売買組織による人身売買事犯


    これではTOC条約の締結国に課せられた義務を果たすうえで不十分だったため、TOC条約に加盟する条件を満たすには、計画・準備段階で処罰できる共謀罪を創設する必要があったのです

  4. (4)TOC条約締結前と締結後の違い

    TOC条約の締結前は、外国へ犯罪の共助要請をする際に時間がかかっていました。
    たとえば日本で犯罪を行い他国に逃亡した犯人がいて、外国に共助要請をする必要がある場合、その国と個別に共助条約が結ばれていなければ、外務省を通じて外交当局と連絡を取り、そこから外国の捜査機関に共助要請を行う必要があったのです。

    しかし条約の締結後は、このような外交ルートを介すことなく、直接相手国の中央当局(捜査当局や法務当局)とやり取りできるようになりました

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4、共謀罪で一般人が処罰される可能性は?

共謀罪については「犯罪と関係のない一般人も処罰されてしまうのでは?」といった不安の声があがっています。ここでは共謀罪への主な反対意見を紹介しながら、それに対する政府の見解を解説します。

  1. (1)反対意見① 内心の自由を処罰することにつながる

    日本国憲法第19条は「思想および良心の自由は、これを侵してはならない」と規定しています。心の中で何かを思うという人間のもっとも基本的な精神活動の自由を保障した規定で、これを「内心の自由」といいます。
    共謀罪は人と人との意思の合意を処罰対象としているため、内心の自由に反しているという反対意見があります

    これ対して政府は、共謀罪は「計画」をするだけでなく「実行準備行為」が行われてはじめて成立するため、「内心を処罰するものではない」との見解を示しています。

  2. (2)反対意見② 要件が曖昧で一般人が処罰の対象となりかねない

    犯罪の成立要件が曖昧であるため、一般人が処罰の対象となりかねないとの反対意見です。
    「組織的犯罪集団」かどうかの最初の判断は捜査機関が行うため、捜査機関の恣意的な解釈により、特定の団体が捜査・検挙の対象となるおそれがあると指摘されています
    また広範囲の犯罪が処罰の対象であるため「準備行為」の定義が曖昧になり、犯罪の危険性のない行動までもが制限されかねないとの意見もあります。

    これに対して政府は「国民の一般的な社会生活上の行為が共謀罪にあたることはない」との見解を示しています。
    「組織的犯罪集団」に該当するのはテロ集団や暴力団、薬物密売組織、振り込め詐欺集団など、一定の重大な犯罪を実行する目的をもつ集団です。一般の会社や市民団体、労働組合などの団体は犯罪を行うことを目的としていないので、これにあたりません。
    また共謀罪が成立するには3要件すべてについて「故意」が必要であり、組織的犯罪集団が関与した具体的な計画にもとづく準備行為をする認識がなければ成立しません。

  3. (3)反対意見③ プライバシーが監視の対象になる

    共謀罪でいう「計画」は、人と人との意思の合致によって成立します。
    そのため捜査の対象が個人の会話や電話、メール、SNSなど、個人の意思を表明する手段にまで拡大され、一般人のプライバシーが国家の監視対象となるという反対意見があります。

    これに対して政府は、「国民生活が広く監視されることはない」との見解を示しています。メールやSNSのやり取りの傍受は通信傍受法による「通信傍受」にあたりますが、共謀罪は通信傍受の対象犯罪ではないため、捜査で通信傍受をすることはできません。
    会話傍受といった新たな捜査手法の導入も予定されていません。

    また共謀罪の捜査においても、ほかの犯罪と同じように刑事訴訟法にもとづく捜査が行われます。捜索や逮捕などの強制捜査を行うためには裁判官が発付する令状が必要であり、捜査機関による捜査は裁判所による厳しい審査を受けることになります。

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5、まとめ

共謀罪は組織的犯罪を計画・準備の段階で処罰できるよう創設された犯罪です。一般人が処罰されかねないとの不安の声がありますが、政府は犯罪とは関係のない一般人が処罰されることはないとの見解を示しています。もっとも、組織的犯罪の計画に関与してしまった自覚があるのならば、捜査の対象となる可能性は否定できません。
そうでなくても未遂罪で罰せられるおそれが存在するので、不安な場合は弁護士に相談し、アドバイスを仰ぐのがよいでしょう。刑事事件の解決実績が豊富なベリーベスト法律事務所が力になります。まずはご相談ください。

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監修者
萩原 達也
弁護士会:
第一東京弁護士会
登録番号:
29985

ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
当事務所では、元検事を中心とした刑事専門チームを組成しております。財産事件、性犯罪事件、暴力事件、少年事件など、刑事事件でお困りの場合はぜひご相談ください。

※本コラムは公開日当時の内容です。
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