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弁護士コラム

2022年09月07日
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名誉毀損の要件とは? 成立する場合と成立しない場合では何が異なるか

名誉毀損の要件とは? 成立する場合と成立しない場合では何が異なるか
名誉毀損の要件とは? 成立する場合と成立しない場合では何が異なるか

インターネット上や職場の同僚、学校のクラスメートなどの不特定多数の相手に対して、公然と社会的評価を傷付ける書き込みや発言をすれば、刑法の名誉毀損罪に問われるおそれがあります。

令和3年5月には、令和元年に起きた一家殺傷事件の被疑者として逮捕された男を巡り、事件とは無関係の人物がネット上でデマや誹謗中傷を受け、抗議の文書を出す事態にまで発展しました。該当の人物は、被疑者と同性で同じ地区に住所があったため親戚であるとのデマが拡散したようですが、このようなデマや誹謗中傷の書き込みは刑法の名誉毀損罪にあたるおそれがあるため注意が必要です。

本コラムでは名誉毀損罪をテーマに、犯罪が成立する場合としない場合の要件について解説します。

1、名誉毀損の構成要件とは

構成要件とは、刑法の条文が規定する、犯罪が成立するための原則的な条件をいいます。名誉毀損罪の構成要件は刑法第230条1項に書かれています。

公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金に処する


それぞれの要件を詳しく見ていきましょう。

  1. (1)「公然と」とは

    不特定または多数の人に情報が伝達され得る状態のことをいいます。大勢の人が行き交う街中やインターネット上の匿名掲示板などが典型ですが、特定かつ少人数しかいない場合でも、その人たちを通じて多数の人に伝わるおそれがある状態であれば、これに該当します。

    たとえば少人数のグループLINEの中であった発言でも、誰かがほかの人に伝える危険があれば、「公然と」といえる可能性があります(伝搬可能性)

    反対に、自分と相手しかおらず、話し声がほかの人に聞かれることのない密室で発言した場合や、相手方に職務上の守秘義務があるためにほかの人に知られるおそれがない場合などには、「公然と」とはいえません。

  2. (2)「事実を摘示する」とは

    人の社会的評価を低下させるだけの具体的な事実を示す行為のことです。ここでいう事実とは、具体的な事柄という程度の意味であって、真実とは異なります。

    具体的な事実といえるかどうかは、示された情報の真偽を証拠などによって確認できるかどうかで判断できます。

    たとえば、「芸能人の○○は整形している」「○○の息子は高齢者をだまして金銭を得ている」などと表明する行為は、真偽の確認対象となり得るため、具体的事実の摘示にあたります。これに対して、「バカ」「ブス」のように、個人の主観に左右される評価や感想は情報の真偽を確認できないため、具体的な事実とはいえません。

  3. (3)「人の名誉を毀損する」とは

    ここでいう名誉とは、世間の評価や名声などの外部的名誉のことを指します。プライドや自尊心などと呼ばれる名誉感情は含まれません。毀損とは社会的評価を低下させるおそれのある行為のことです。実際に社会的評価が低下することまでは求められず、低下のおそれがあればよいとされています。

    たとえば犯罪行為や不貞行為をしたという事実の表明は、相手方の社会的評価を下げるおそれがある行為でしょう。

    また、第三者から見て対象者が誰かを特定できる必要がありますが、氏名を明示しなくても察知可能であれば名誉毀損罪は成立する可能性があります芸能人の芸名やインターネット上のハンドルネーム、伏せ字や当て字などを用いた場合でも、容易に個人を特定できるものであれば名誉毀損罪が成立するケースがあります

  4. (4)「事実の有無にかかわらず」とは

    発言や書き込みの内容の真偽を問わないという意味です。つまり、うそでも本当のことでも、吹聴したり書き込んだりした場合、名誉毀損罪は成立し得るのです。

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2、名誉毀損が成立しない場合とは

刑法第230条1項の構成要件を満たす場合でも、一定の条件のもとで犯罪が成立せず、処罰されない特例があります。日本国憲法第21条で保障される表現の自由の重要性から定められた特例です。

【刑法第230条の2第1項】
前条第1項の行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。


名誉毀損罪が不成立となる要件は以下の3つです。

  • 公共の利害に関する事実があること(公共性)
  • 公益の目的があること(公益目的)
  • 真実であることの証明があること(真実性)


上記3つをすべて満たすと名誉毀損罪が成立しないので、刑罰を科せられることはありません。要件を満たせば違法性が阻却される(なくなる)ことから、違法性阻却事由といいます。

それぞれの要件について見ていきましょう。

  1. (1)公共の利害に関する事実があること(公共性)

    表明した事柄が、社会的に利益をもたらす事実であることをいいます。多くの人が正当な関心を寄せる事柄でなければ免責されません。なお免責とは、法律上の責任を追及されない、という意味です。

    私生活上の行為は公共性が否定されやすいですが、政治家などの公人や、社会的影響力の大きい大企業の経営者などによる私生活上の行為は公共性があると判断される可能性があります。一方で、芸能人の不貞行為などは世間の注目を集めやすい話題ではあるものの、公共性は認められにくいでしょう。

    なお、第230条の2第2項の規定により、起訴される前の犯罪行為に関する事実は、公共の利害に関する事実とみなされます。

  2. (2)公益の目的があること(公益目的)

    事実を表明する行為について、主として公益の目的があることをいいます。個人的な報復や嫌がらせ、報酬を得るためなどではなく、その事実の表明が社会の利益になることを目的としている必要があります。

    公共性が認められた事実であれば、それを表明する行為にも公益目的があると評価される可能性は高いでしょう。

  3. (3)真実であることの証明があること(真実性)

    表明した事実が真実であることをいいます。つまり故意に嘘の情報を公開すれば、たとえほかの2つの要件を満たしても免責されません。

    真実であることの証明は行為者(事実を示した者)が行う必要があります。ただし、真実ではなかった場合でも、行為者が真実であると誤信したことについて、確実な資料・根拠と照らして相当の理由があると判断された場合は処罰されません。

    なお、同条第3項の規定により、公務員または公選による候補者に関する事実については、公共性・公益性は要件とされず、真実であることの証明があれば違法性が阻却され、罪になりません。

  4. (4)名誉毀損罪が不成立となるケース

    典型的には、新聞記者が政治家の不正を暴き、公にする行為が該当します。公人である政治家が不正をはたらいた事実は、有権者がその人に投票するかどうかの判断に影響するので、公共性・公益目的がともに認められます。客観的な証拠にもとづく事実であれば真実性も認められるでしょう。

    また、会社の不祥事を公開する行為も、一般消費者が物やサービスの購入の有無を決定する際に影響を与えるので、公共性・公益目的が認められる可能性が高いと考えられます。加えて真実性が立証されれば名誉毀損罪は成立しません。

    もっとも、政治家の不正や会社の不祥事を表明する行為だからといって、必ず名誉毀損罪が不成立となるわけではありませんたとえば、個人的な恨みを晴らす目的だった、証拠もないのに不正や不祥事を指摘したなどの場合には違法性は棄却されず、名誉毀損罪に問われるおそれがあります

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3、ネットの書き込みは名誉毀損になる?

近年、インターネットの掲示板やSNSへの書き込みによるトラブルが多発しています。これらの行為は名誉毀損罪に該当するのでしょうか?

  1. (1)ネットの書き込みは名誉毀損罪に問われるおそれがある

    名誉毀損罪は、①公然と②事実を摘示し、③人の名誉を毀損した場合に、④その事実の有無にかかわらず成立します。

    ネットの書き込みは拡散性が高く、不特定または多数に情報が伝わるおそれが大きいため、①の公然性を満たすと考えられます。仮に少人数しか閲覧できない設定であっても、閲覧した人がほかの人に伝えるおそれがあれば、「公然と」といえるでしょう。

    ②の事実を摘示したかどうかは、書き込みの内容によって判断されます。個人名や会社・店名などを特定して『○○はセクハラしている』『○○店の料理にゴキブリが入っていた』などと書き込めば、事実の摘示にあたるおそれが高いでしょう。
    また、これらの書き込みをされれば対象者の社会的評価は下がるおそれがあるため、③の名誉を毀損したといえます。さらに④として、その情報が真実かどうかは関係ありません。

    したがって、ネットの書き込みで名誉毀損罪は成立し得ると考えられます。

  2. (2)ネットの書き込みと侮辱罪の関係性

    「ブサイク」「デブ」などの書き込みは単なる個人の意見・感想であって真実かどうかを確認する術もないため、事実の摘示にはあたりません。対象者の氏名がイニシャルなどで示されており、前後の文脈などからも特定できない場合も同様です。

    このような書き込みは、名誉毀損罪こそ成立しませんが、侮辱罪に問われる場合があります。仮に匿名で投稿しても、発信者情報開示請求により発信者が特定され、刑事告訴されるおそれはあるでしょう。

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4、名誉毀損罪と侮辱罪の違い

名誉毀損罪と侮辱罪は共通点が多い犯罪ですが、明確な違いも存在します。

  1. (1)侮辱罪の構成要件

    侮辱罪は刑法第231条で「事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、1年以下の懲役若しくは禁錮若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する」と規定されています。つまり、事実を摘示しないで、公然と人を侮辱することで成立します。

  2. (2)2つの罪の共通点

    侮辱罪も名誉毀損罪と同様に、公然性が求められます。不特定または多数の面前で侮辱的な発言をされれば侮辱罪が成立する場合がありますが、1対1の対面で、かつ周囲に誰も人がいない状況で侮辱された場合や、自分宛てのメールに悪口が書かれていた場合などは成立しません。

    また侮辱とは、人の人格に対する軽蔑的な価値判断を表示することをいいますが、侮辱罪の場合もその行為によって相手の社会的評価を低下させるおそれが必要です。現実に低下させることまでは求められません。

    さらに、いずれも親告罪であるという点も共通しています。

  3. (3)2つの罪の違い

    名誉毀損罪は事実の摘示が必要ですが、侮辱罪は事実を摘示しなくても成立します。したがって、真偽の確認ができない抽象的な表現や臆測の域を出ない単なる意見、感想、愚痴などであっても侮辱罪は成立する場合があります。
    たとえば上司が部下に「お前は無能だ」とののしった場合などが該当します。

    刑罰にも違いがあります。侮辱罪の刑罰は「1年以下の懲役若しくは禁錮若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」です。一方、名誉毀損罪は「3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金」です。

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5、名誉毀損に対する刑事責任と民事責任の違い

人や法人・団体に対して名誉毀損行為をすると、刑事責任だけでなく民事責任も追及されるおそれがあります。それぞれの責任の違いを確認しましょう。

  1. (1)根拠とする法律の違い

    刑事責任と民事責任は、それぞれ追及する際の根拠となる法律が異なります。

    名誉毀損に対する刑事責任とは、刑法第230条の名誉毀損罪を犯したとして、国家によって処罰されることを意味します。

    名誉毀損に対する民事責任とは、民法第709条・710条が定める、不法行為による損害賠償責任のことを意味します。

  2. (2)責任の取り方の違い

    刑事責任を追及され、裁判で有罪判決が下ると、3年以下の懲役・禁錮、または50万円以下の罰金に処せられます。

    民事責任を追及された場合、罰則の適用はありませんが、民事訴訟で敗訴した場合には損害賠償金の支払いをもって責任を取る必要があります。また民法第723条にもとづく原状回復措置、具体的には、侵害された名誉を回復するための謝罪広告の掲載などを求められる場合もあるでしょう。

  3. (3)被害者の手続きの違い

    被害者が名誉毀損罪による刑事責任を追及する際には、捜査機関に対して告訴状を提出します。告訴状を受理した警察が捜査を行い、検察も捜査をしたうえで起訴・不起訴の判断を行います。
    被害者ができるのは基本的に告訴までです。その後の手続きや、最終的に刑事責任を追及できるかどうかは国家機関に委ねられています。
    なお、名誉毀損罪は、被害者の告訴がなければ検察官が起訴できない「親告罪」です。被害届の提出だけでは検察官が起訴できないので、被害者が刑事責任を追及したいと考えた場合は告訴状を提出するでしょう。

    一方、民事責任を追及する際には、被害者や被害者が選任した弁護士が裁判所に民事訴訟を提起します。最終的な判断を下すのは裁判所ではあるものの、被害者自身の手で責任追及のために手続きできる点が異なります。

  4. (4)時効の違い

    刑事事件において、一定の期間が経過すると検察官が起訴できなくなる制度を公訴時効といい、名誉毀損罪の公訴時効は3年です。また名誉毀損罪をはじめとする親告罪には、犯人を知った日から6か月を経過すると告訴できなくなるという告訴期間も定められています。

    一方、名誉毀損による民事事件の時効とは、不法行為による損害賠償請求権の消滅時効を指します。被害者または法定代理人が損害および加害者を知ってから3年が経過すると、被害者は損害賠償を請求できなくなります。

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6、名誉毀損に対する弁護活動

名誉毀損行為をしてしまったのであれば、刑事責任・民事責任の両方を追及されるおそれがあります特に刑事責任を追及されて裁判で有罪判決が下ると前科が付いてしまい大きな不利益を被るため、弁護士のサポートを受けることをおすすめします

  1. (1)犯罪が成立するか適切に判断する

    名誉毀損罪の構成要件を満たすかどうかは法律や判例の知識を要する難しい問題であり、一般の方が判断するのは困難です。自分のした行為が名誉毀損罪にあたるかどうか不安な場合は、弁護士に判断してもらいましょう。

    それにより、相手方へ丁寧に謝罪すれば済む問題なのか、謝罪では済まされないため必要な対応を考えるべきかなど、今後の方向性が変わってきます。

  2. (2)逮捕・起訴を回避するために示談を行う

    名誉毀損罪で逮捕・起訴されるケースは多くないため、加害者になっても軽く捉えてしまう人が少なくありません。しかし警察からの任意の取り調べを拒否し続けるなどすれば、逃亡や証拠隠滅を図るおそれがあるとして、逮捕されてしまう場合があります。また検察官が起訴した場合、日本の司法制度における有罪率は極めて高いため、大半のケースで前科が付いてしまいます。

    逮捕や起訴を回避するために有効な方法は、被害者との示談を成立させることです
    特に名誉毀損罪は被害者の告訴がなければ起訴されない親告罪であるため、告訴状を提出しない、または告訴状の取り下げを含めて示談が成立すれば、起訴を回避できます。検察官が起訴できない事件の被疑者を警察が逮捕するとは考えにくいため、逮捕も免れる可能性が高くなるでしょう。

    しかし、被害者は加害者に対して処罰感情を抱いているため、加害者が直接の交渉を行っても冷静な話し合いは期待できません。公正中立な立場の弁護士が間に入り、被害者感情に配慮しながら交渉を進めるのが最善策です。

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7、まとめ

名誉毀損罪は、不特定または多数の相手に向けて具体的な事実を表明し、人や法人・団体の社会的評価を傷付ければ、真実かどうかは関係なく成立します。一方で、公共の利害に関する事実で、社会の利益のためにした行為であり、真実が証明された場合には、違法性が阻却されて処罰されません。

とはいえ、犯罪が成立するか否かを判断するのは一般の方には困難です。被害者との示談交渉を自身で行っても思うような結果が得られないおそれがあります。

名誉毀損行為をしてしまい早期の解決を望むのなら、ベリーベスト法律事務所へご相談ください。被害者との示談交渉をはじめとする適切なサポートを行います。

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監修者
萩原 達也
弁護士会:
第一東京弁護士会
登録番号:
29985

ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
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※本コラムは公開日当時の内容です。
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