裁判は、大別すると「刑事裁判」と「民事裁判」のふたつに分類されます。単純に「訴える」といえば民事裁判を指すケースが多数ですが、刑罰法令に触れる犯罪行為があった場合は、刑事裁判によってその罪を問われることになるでしょう。
罪を犯した人が刑罰を受ける過程には、必ず刑事裁判が存在します。司法統計によると、令和元(平成31)年中に刑事事件について新たに受理した裁判は、全国の裁判所で88万5383件にのぼります。
本コラムでは、刑事裁判とはそもそもどんなものであるかについて、その役割や種類、手続きの流れ、民事裁判との違いなどを解説します。
1、刑事裁判とは
まずは、刑事裁判とはどのようなものなのかを確認しましょう。
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(1)刑事裁判とは?
刑事裁判とは、検察官が提起することによって開かれる裁判です。刑法などの刑罰法令に触れる犯罪行為をはたらいた疑いのある人を“被告人”として、裁判官に有罪・無罪を問い、有罪であればどのような刑罰を科すべきなのかの判断を求めます。
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(2)刑事裁判の種類
刑事裁判には、公開裁判・略式手続(簡易裁判)・即決裁判の3つがあります。
● 公開裁判
原則として、刑事裁判はすべての国民に公開されたうえで進行します。これは日本国憲法第37条に規定されている大原則です。
刑事事件の被告人は、不公平のおそれがない裁判所において、証人に対する審問(しんもん)の機会や、弁護人の選任といった権利を確保されたうえで、適正に裁かれる権利を有しています。
一般の人に傍聴されることに抵抗を感じる人は少なくありませんが、ひろく公開することで裁判が公正におこなわれることを保障する目的があります。
● 略式手続(簡易裁判)
以下の要件を満たしているケースでは、非公開で書面によって審理する略式手続が取られることがあります。- ① 簡易裁判所の管轄である、100万円以下の罰金または科料に相当する事件
- ② 被告人が事実であると認めている
非公開かつ迅速に裁判手続が進む一方で、公開の場で公平に裁かれる権利が失われるうえに、必ず有罪となり罰金・科料が科せられるという不利益も存在します。
● 即決裁判
執行猶予や罰金が見込まれる比較的に軽微な事件で、被告人と弁護人に事実を争う意思がない場合は、即決裁判が選択されることもあります。
略式手続とは異なり公開の裁判が開かれますが、できる限り1回の期日で判決が言い渡されるため、迅速な終結が期待できるでしょう。
懲役・禁錮が言い渡される場合は必ず執行猶予がつく反面、事実誤認を理由とした控訴ができなくなるという不利益を受けます。
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2、刑事裁判と民事裁判の違い
同じ「裁判」といっても、刑事裁判と民事裁判はまったく別のものです。刑事裁判と民事裁判の違いも確認しておきましょう。
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(1)取り扱う事件の種類が違う
刑事裁判は、刑罰法令に触れるような犯罪行為について、どのような刑罰を科すのか判断するための裁判です。
民事裁判は、人と人、会社と人など、私人間で起きた紛争についてどのような権利関係があるのかを判断します。損害賠償金の請求、未払いの代金・給与の支払い請求、離婚における慰謝料の請求や親権争いなどは、すべて民事裁判の範囲です。 -
(2)裁判の当事者が違う
刑事裁判と民事裁判では、裁判の当事者が異なります。
刑事裁判を提起できるのは検察官だけで、訴えられて罪を問われる立場の人は被告人となります。わかりやすくいえば、刑事裁判は“国家が個人を裁くもの”です。
一方で、民事裁判は人や会社などが提起するものです。訴えた側を原告、訴えられた側を被告とし、どちらの主張が合法・適切であるのかが判断されます。つまり、民事裁判は“国家が、個人間のどちらの主張を認めるのか”という制度です。 -
(3)判決実行までの手続きが違う
刑事裁判では、言い渡された判決に従って被告人に刑罰が科せられ、刑罰の執行が終わることで判決が実現します。罰金であれば言い渡された金額を納付したとき、懲役であれば言い渡された期間の服役を終えたときに、判決が実現したといえます。
民事裁判では、判決に従って被告が原告への義務を履行することで判決が実現します。たとえば、判決の通りに“原告へ未払いの売掛金を全額支払う”などです。もし被告が義務を履行しない場合は、国が財産を差し押さえて処分するなどの方法で判決を実現します。 -
(4)和解の有無が違う
刑事裁判には和解が存在しません。加害者と被害者の間で話し合って解決を進める示談は存在するものの、示談が成立したからといって必ず裁判が終わるわけではなく、示談が成立しても刑罰が下されるケースもあります。
民事裁判では、裁判の途中でも当事者の双方が合意すれば、和解による終結が可能です。
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3、刑事裁判の流れ
刑事裁判は、検察官が裁判所に起訴状を提出することによって手続きが始まります。起訴後の流れについて、順を追ってみていきましょう。
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(1)冒頭手続
公判の一番初めにおこなわれるのが、冒頭手続です。
被告人の氏名・生年月日・本籍・住居・職業といった事項を本人に質問する、人定質問によって、いまその場にいるのが被告人本人であることを確認します。
次に、公訴事実が記載されている起訴状を検察官が朗読し、この刑事裁判においてどのような罪が問われるのかを明らかにします。
起訴状の朗読が終わると、裁判官によって黙秘権が告知されたうえで、検察官が読み上げた公訴事実に間違いがないかを尋ねられます。この陳述の機会を、罪状認否と呼びます。 -
(2)証拠調手続
冒頭手続が終わると、証拠調手続が始まります。
まず検察官が、冒頭陳述で証拠によって証明しようとする事実を述べたうえで、どのような証拠が存在しているのかを明らかにします。
次に被告人の弁護人が、同様に証拠の存在を明らかにします。検察官・弁護人の両方が“この証拠を取り上げてほしい”と請求したものについて、裁判官は証拠として採用するかを吟味します。
証拠には、証拠書類・証拠物・証人の3つがあり、被告人にとって有利にはたらく可能性がある証拠を、それぞれ積み上げる必要があります。つまり、初公判の期日までに弁護人がどれだけの証拠を用意できるのかが重要といえるでしょう。 -
(3)弁論手続
証拠調手続が終わると、弁論手続へと移ります。
まず、検察官が意見を述べたうえで、どの程度の刑罰を科すのが相当であるのかを述べます。これを、論告・求刑と呼びます。
次に、弁護人に弁論の機会が与えられ、否認事件であれば無罪である理由を主張し、被告人も罪を認めている事件であれば被告人にとって有利な事情を示して処分の軽減を求めます。
最後に、被告人には最終陳述の機会が与えられ、事件について自由に意見を述べることになります。
弁論手続は、裁判官が判決を下すうえで極めて重要な段階です。無罪や刑の減軽などの寛大な処分を求めるには、弁護人の弁論によって争いのある事実や被告人にとって有利な事情を具体的に主張しなければなりません。個々の犯罪に関する知識はもちろん、刑事手続に関する深い知見のほか、これまでの経験が大きく影響するので、弁護人には刑事事件の解決実績が豊富な弁護士を選任するのが最善です。
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4、まとめ
刑事事件の被告人として起訴されると、原則として公開裁判によって罪を問われることになります。刑事裁判では、冒頭手続・証拠調手続・弁論手続という段階を踏んで判決が下されますが、不当に重い刑罰を回避するには各手続きにおける弁護士のはたらきが重要です。
被告人にとって有利な判決を獲得するには、刑事事件に関する知識と経験が欠かせません。刑事裁判の流れや重い刑罰に不安を感じているなら、刑事事件の解決実績が豊富なベリーベスト法律事務所にご相談ください。
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