初回相談60分無料

被害者の方からのご相談は
有料となります

0120-359-186
平日9:30〜21:00/土日祝9:30〜18:00

弁護士コラム

2021年08月16日
  • その他
  • 虚偽告訴罪

虚偽告訴罪が成立する要件とは? 逮捕や刑罰を受ける可能性も解説

虚偽告訴罪が成立する要件とは? 逮捕や刑罰を受ける可能性も解説
虚偽告訴罪が成立する要件とは? 逮捕や刑罰を受ける可能性も解説

相手に刑罰を受けさせたい、懲戒免職にさせたいなどと考えて虚偽の申告をすると、刑法が定める「虚偽告訴罪」に問われる場合があります。

典型的には、痴漢に遭った事実はないのに痴漢被害をでっちあげ、虚偽の告訴を行うケースが該当しますが、その罪は決して軽いものではありません。逮捕される場合や、起訴され有罪判決が下り、前科がついてしまう場合もあります。

本コラムでは虚偽告訴罪を取り上げ、犯罪が成立する要件や類似する犯罪との違い、刑罰の内容などについて解説します。虚偽告訴罪にあたる行為をした場合に取るべき行動も確認しましょう。

1、虚偽告訴罪とは?

最初に、虚偽告訴罪とはどんな犯罪なのかを解説します。類似した犯罪との違いについても確認しましょう。

  1. (1)虚偽告訴罪とは?

    虚偽告訴罪とは、人に刑事または懲戒の処分を受けさせる目的で、捜査機関や懲戒権者などに対して虚偽の申告をすることで問われる罪です(刑法第172条)

    虚偽告訴罪が定められている目的は、一次的には、国家の審判作用の適正な運営のためと解されています。虚偽の告訴をすれば国の機関である警察・検察の捜査や適正な裁判を侵害するおそれがあります。

    虚偽告訴罪は国家的利益を守るために存在しているのです。そのため、たとえば相手の承諾を得て虚偽の告訴をした場合でも、国家の審判作用を誤らせる危険があるため、虚偽告訴罪は成立します。

    また二次的には、虚偽の告訴をされた人の個人的利益を守る目的もあります。虚偽の告訴をされた人は不当に刑事・懲戒の処分を受ける危険があり、社会生活上の平穏をおびやかされてしまいます。このような個人的利益を守ることも虚偽告訴罪の目的と解されています。

  2. (2)名誉毀損罪の違い

    名誉毀損罪とは、公然と、事実を摘示(てきし)して人の名誉を毀損する犯罪です(刑法第230条)。

    「公然と」とは不特定または多数の人が認識できる状態をいいます。「事実を摘示」とは人の社会的評価を下げるおそれのある具体的な事実を示すことです。事実の内容は真実でなくても構いません

    たとえば、嫌がらせ目的でインターネットの掲示板やSNS上で名指しして誹謗中傷する、うその情報を流すなどの行為が該当します。これらの行為は告訴や告発などにはあたらないので、その意味で虚偽告訴罪とは区別されています。

  3. (3)偽証罪の違い

    偽証罪は、法律の定めによって宣誓した証人が「虚偽の陳述」をすることで成立する犯罪です(刑法第169条)。

    証人の証言は裁判の証拠として重要な機能を果たすため、刑事訴訟法および民事訴訟法では裁判で証人が証言をするときには宣誓を行うことを義務づけています。宣誓したにもかかわらずうその証言をした場合に問われるのが偽証罪です

    偽証罪における「虚偽の陳述」とは、証人の記憶に反する陳述をすることをいいます。証人は自らの記憶に沿った証言が求められるため、たとえ客観的事実に沿った証言でも、自分の記憶に反する証言は虚偽の陳述にあたります。

    したがって、偽証罪は、記憶にないと認識しながらした証言がたまたま真実だった場合にも成立します。これに対して虚偽告訴罪は、虚偽だと認識しながらした申告が偶然にも真実だった場合には成立しません。

  4. (4)虚構申告の罪との違い

    虚構申告の罪とは、虚構の犯罪または災害の事実を公務員に申し出た場合に成立する犯罪です(軽犯罪法第1条16号)。

    虚構とは、事実ではない犯罪や災害を事実であるように仮想することです。公務員とは犯罪や災害に対処すべき権限を有する公務員をいい、犯罪の場合は警察官や検察官、災害の場合は警察官や消防職員などが該当します。

    虚偽告訴罪の被害者は一次的には国家ですが、特定の人や法人に刑事・懲戒の処分を受けさせることを目的としているため、虚偽の告訴を受けた人は二次的な被害者だといえます。これに対して虚構申告の罪は、人を特定することなくうその犯罪や災害を公務員に伝えると成立するため、二次的な被害者が存在しません

tel 電話で相談する(無料)
営業時間:平日9:30~21:00/土日祝日9:30~18:00
事務員が弁護士に取り次ぎます
他の電話対応中の場合、取次ぎまで時間がかかる場合があります
被害者の方からのご相談は有料となります
mail メールでのお問い合わせ

2、虚偽告訴罪が成立する要件

刑法第172条では「人に刑事または懲戒の処分を受けさせる目的で、虚偽の告訴、告発その他の申告をした者」を虚偽告訴罪として処罰すると定めています。この条文をもとに、犯罪が成立する要件を見ていきましょう。

  1. (1)「人に刑事または懲戒の処分を受けさせる目的」とは

    人とは他人をいい、個人であっても法人であっても対象になります
    自分が犯人だと名乗り出ても虚偽告訴罪は成立しません。また人を特定せず「スリ被害に遭った」などとうその申告をしても虚偽告訴罪は成立しません。

    刑事の処分とは、懲役や罰金刑といった刑罰や少年法の保護処分などを指します。懲戒の処分とは、公務員や弁護士、医師、公認会計士などに対する懲戒や懲罰のことです。たとえば「刑務所に入れさせてやろう」「ライバルを失脚させるために懲戒免職させてやろう」といった目的をもって行為におよべば虚偽告訴罪が成立します。

    このように、ある目的を持ったうえで特定の行為をすることを「目的犯」といいます。
    虚偽告訴罪における目的は、刑事・懲戒処分を受けさせる積極的な意図までは不要とされ、刑事・懲戒処分を受けるかもしれないといった程度の認識で足りるとされています。

  2. (2)「虚偽の告訴、告発その他の申告」とは

    「虚偽」とは、客観的事実に反することをいいます。

    「告訴」とは、犯罪の被害者などの告訴権者が、捜査機関に対して被害申告を行い、加害者の処罰を求める意思表示をいいます。「告発」とは、告訴権のない第三者が、捜査機関に対して被害申告を行い、加害者の処罰を求める意思を示す手続きです。
    「その他の申告」とは、告訴・告発以外の方法で刑事・懲戒を求めることです。行政機関へ申し出る、弁護士会に対して弁護士の懲戒請求を行うなどの行為が該当します。

    虚偽の告訴・告発・その他申告は、自発的になされている必要があります。たとえばすでに捜査機関の取り調べを受けている中で「あの人が犯人です」などとうその申告をしても虚偽告訴罪にはあたりません。

  3. (3)犯罪の成立には「故意」が必要

    虚偽告訴罪が成立するには、相手が犯人ではないと分かっていながら虚偽の申告をする「故意」が必要です。相手が犯人だと思い込んで告訴した場合は過失なので虚偽申告罪は成立しません。

    ただし、故意には未必の故意も含まれます。未必の故意とは、「本当は犯人ではないかもしれないがそれでも構わない」という程度の認識がある場合をいいます。たとえば、確証はなかったが「周囲の人が皆言っているから」などとうわさ話を根拠に相手を告発した場合などが該当します。

  4. (4)犯罪が成立する時期

    虚偽の申告が捜査機関や懲戒権者に到達した時点で既遂となります。たとえば告訴状を提出して捜査機関が受け取ったときが該当しますが、その中身を現実に確認されている必要まではありません。

    ただし、犯罪が成立したことを確認できるのは、告訴などをした事件の無実が判明した時期です。裁判で無罪が確定した時期ではなく、捜査員や懲戒権者が虚偽だと気づけばその時点で無実が判明したことになります

  5. (5)虚偽告訴罪での逮捕とその後の流れ

    告訴や告発を受理した捜査機関は捜査を開始するため、虚偽の告訴をした人も事情を聴かれることになります。取り調べでつじつまの合わない供述をするなどし、捜査員から追及を受けて言い逃れができなくなり、自白して逮捕に至るケースが考えられるでしょう。

    警察に逮捕されると、48時間以内に警察から取り調べを受け、検察官へ送致されます。
    さらに、送致から24時間以内に検察官から取り調べを受け、勾留請求または釈放されます。勾留が決定した場合の身柄拘束の期間は最長で20日間です。勾留期間が満期を迎えるまでに検察官によって起訴・不起訴が判断されます。

tel 電話で相談する(無料)
営業時間:平日9:30~21:00/土日祝日9:30~18:00
事務員が弁護士に取り次ぎます
他の電話対応中の場合、取次ぎまで時間がかかる場合があります
被害者の方からのご相談は有料となります
mail メールでのお問い合わせ

3、虚偽告訴罪の刑罰

虚偽告訴罪の刑罰の内容や自白による刑の減免について解説します。

  1. (1)刑罰の内容

    刑罰は「3か月以上10年以下の懲役」です
    罰金刑などの定めはないため、有罪になれば必ず懲役刑が言い渡されます。懲役刑の選択肢しかない点や、刑の下限が3か月と定められている点に注目すれば、決して軽くない罰といえるでしょう。

    虚偽告訴罪は捜査機関などに多大な労力をかけさせるうえに、不当に犯罪者扱いされるなどして人の人生を狂わせてしまう危険がある重大な犯罪です。軽い気持ちで行ったとしても重く処罰されるものと認識する必要があります。

  2. (2)自白による刑の減免

    刑法第173条は、裁判の確定や懲戒処分が行われる前に自白をすることで、刑を減軽し、または免除することができるとしています。国家の審判作用に対する侵害を未然に防止するために存在する規定なので、裁判の確定や懲戒処分の「前」に自白することが必要です。

    ただし「できる」とあるとおり、必ず刑が減軽または免除されるわけではありません。あくまでも諸事情を考慮したうえで、裁判官の裁量に委ねられるものと心得ておきましょう。

  3. (3)民事上の責任を追及されるおそれもある

    虚偽告訴をした者が有罪となって刑罰を受けたとしても、それはあくまでも刑事上の責任を果たすことであって、被害者に対する民事上の責任が果たされるわけではありません。そのため被害者から虚偽の告訴によって受けた損害につき、損害賠償を請求される場合があります

    特に虚偽の告訴によって被害者が長期の身柄拘束を受ける、社会的信用を失う、会社を解雇されるなど甚大な損害を被った場合には、それを補塡(ほてん)するために高額の賠償金を請求されるおそれがあるでしょう。

tel 電話で相談する(無料)
営業時間:平日9:30~21:00/土日祝日9:30~18:00
事務員が弁護士に取り次ぎます
他の電話対応中の場合、取次ぎまで時間がかかる場合があります
被害者の方からのご相談は有料となります
mail メールでのお問い合わせ

4、虚偽告訴罪で多い事例

虚偽告訴罪はどのようなケースに適用されているのでしょうか?虚偽告訴罪が起こりやすいケースを解説します。

  1. (1)性的トラブルのでっちあげ

    虚偽告訴罪の典型として、痴漢(迷惑防止条例違反)や強制わいせつ、セクハラなどの性的トラブルが挙げられます

    性犯罪は人混みで行われる場合や、反対に誰も見ていない場所などで行われる場合が多く、無実であることの証明が難しい犯罪です。加えて、性犯罪は被害者の証言が重視されやすい側面があります。そのため虚偽告訴罪が起こりやすいといえるでしょう。

    実際にあった事例としては、新婚の夫の関心を引くために強制わいせつの被害を受けたとうそをつき、本気にした夫が警察に届け出ると言い出したことから、いまさら本当のことを言えなくなったため、犯人をでっちあげて罪に問われた事件があります。
    被告人はたまたま夫を訪ねてきた男性を犯人に仕立て、強制わいせつ罪で虚偽告訴したとして、懲役1年の実刑判決が言い渡されました。

    この事例では、相手への刑罰を求めた背景に「夫の関心を引くため」という真意がありましたが、示談金を支払わせる目的で痴漢事件をでっちあげるケースなども典型的なケースです。

  2. (2)嫉妬や怒りによる報復

    人間関係のトラブルから嫉妬や怒りの感情を抱き、相手に報復してやろうと思って事件をでっちあげるケースもあり得ます。たとえば元交際相手が振られた腹いせにDVやストーカー被害を申告する、近隣住民の騒音に腹を立てたため窃盗被害を申告するケースなどが考えられます。

tel 電話で相談する(無料)
営業時間:平日9:30~21:00/土日祝日9:30~18:00
事務員が弁護士に取り次ぎます
他の電話対応中の場合、取次ぎまで時間がかかる場合があります
被害者の方からのご相談は有料となります
mail メールでのお問い合わせ

5、虚偽告訴罪に対する弁護活動

虚偽告訴罪で逮捕・勾留されると、最長で23日間もの身柄拘束を受けるため、社会生活から隔離されてしまい、職場に知られて解雇されるなどの不利益を被るおそれがあります
これを避けるため、弁護士は検察官や裁判官に対して意見書を提出する、直接面会するなどの方法で勾留の必要性がない旨を主張し、早期に釈放されるよう働きかけます。

また、取り調べで不利な供述調書を取られると、その後の処分に影響を与えてしまうため、弁護士が早期に被疑者と面会し、取り調べのアドバイスを与えます。
虚偽告訴罪では事件がどの段階にあるのかによって、自白すれば刑の減免を受けられる可能性もあります。弁護士のアドバイスのもと、自白するという選択肢も出てくるでしょう。

このほか、弁護士が被害者と示談を進める場合もあります。
国家的利益を保護法益とする虚偽告訴罪では、示談をしても被害が回復されたとはいえないため、必ずしも刑事処分の決定に際して有利に働くわけではありません。

とはいえ、虚偽の告訴をしてしまった相手に謝罪と賠償を済まして示談を成立させることで、反省の態度を示すことにつながり、量刑判断でよい事情として扱われる可能性があります

tel 電話で相談する(無料)
営業時間:平日9:30~21:00/土日祝日9:30~18:00
事務員が弁護士に取り次ぎます
他の電話対応中の場合、取次ぎまで時間がかかる場合があります
被害者の方からのご相談は有料となります
mail メールでのお問い合わせ

6、まとめ

虚偽告訴罪は、相手に刑事・懲戒の処分を受けさせる目的で偽の申告をすると成立します。痴漢被害をでっちあげて示談金を要求しようなどと安易な気持ちでする人も少なからずいますが、国家的利益を侵害したうえに個人の名誉を著しく傷つける重大な犯罪です。

重い刑罰が定められているため、虚偽告訴罪にあたる行為をしてしまった場合は弁護士のサポートが不可欠です。
刑事事件の解決実績が豊富なベリーベスト法律事務所が力を尽くしますので、できるだけ早期にご相談ください。

tel 電話で相談する(無料)
営業時間:平日9:30~21:00/土日祝日9:30~18:00
事務員が弁護士に取り次ぎます
他の電話対応中の場合、取次ぎまで時間がかかる場合があります
被害者の方からのご相談は有料となります
mail メールでのお問い合わせ
本コラムを監修した弁護士
萩原 達也
ベリーベスト法律事務所
代表弁護士
弁護士会:
第一東京弁護士会

ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
当事務所では、元検事を中心とした刑事専門チームを組成しております。財産事件、性犯罪事件、暴力事件、少年事件など、刑事事件でお困りの場合はぜひご相談ください。

※本コラムは公開日当時の内容です。
刑事事件問題でお困りの場合は、ベリーベスト法律事務所へお気軽にお問い合わせください。

弁護士コラムトップにもどる

その他のその他のコラム

事件の種別から探す