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公判前整理手続に付されるケースとは? 手続きの流れと概要を解説
「公判前整理手続」とは、刑事事件審理の迅速化を目的に、刑事訴訟法平成16年改正によって導入された制度です。令和元年に地方裁判所で処理された通常第一審事件のうち、公判前整理手続に付された事件の人員は1243人にのぼっています(令和2年版犯罪白書)。
公判前整理手続は裁判員裁判対象事件のほか、否認事件や争点が複雑な事件などで採用されることが多い手続きです。事件への影響や被告人自身が出席する必要があるかどうかなど、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
1、公判前整理手続の意味
公判前整理手続とは、公判が始まる前に検察側と弁護側の主張を明確にし、事件の争点を整理しておく手続きのことです(刑事訴訟法第316条の2~第316条の32)。
裁判所、検察官、弁護人(弁護士)が集まって証拠を厳選し、証拠を取り調べる順番や時間、いつどの証人に対して尋問を行うのかなどを事前に決め、審理スケジュールを立てておきます。
通常の刑事事件では、事実上の打ち合わせ(裁判官、検察官、弁護人が法廷の外で話し合うこと)によって、裁判官が検察官に証拠を開示するよう促す場合もあります。しかしこの場合の証拠開示は任意なので、開示される証拠の種類や開示するかどうかは検察官に委ねられます。これに対し、公判前整理手続は、法律上の要件に該当する証拠は開示させることが可能です。
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2、公判前整理手続が必要なケース
公判前整理手続が必要なケースは主に以下の2つです。
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(1)否認事件
否認事件では、弁護人が検察官に対し任意で証拠の開示を求めても、検察官が応じない場合があります。しかし、検察官が保有する証拠の中には、被告人に有利となる証拠や、検察官が提出したほかの証拠の信用性を低下させる証拠が存在する可能性があり、否認事件のように徹底的に争う場合はこれらの証拠を提出させることが重要です。
そのため、検察官の証拠を開示させるための手段として、弁護人が公判前整理手続を請求する場合があります。 -
(2)裁判員裁判対象事件
殺人や強盗致死のような重大事件は裁判員裁判対象事件となり、必ず公判前整理手続が実施されます。
従来の刑事裁判は、大量の証拠を採用する、証人に対して長時間の尋問を実施するなどしたうえで、裁判官が調書を読み込んで判断することが多くありました。そのため審理に何か月もかかっていましたが、裁判員裁判で裁判員となる一般市民に長期間にわたる負担を強いることはできません。
そこで裁判員の負担を考慮し、あらかじめ争点を明確にしたうえで迅速で分かりやすい審理を実現できるようにしたのが公判前整理手続です。裁判員は公判前整理手続に参加せず、法廷で見聞きした情報と提出された証拠をもとに判決に臨むことができます。
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3、公判前整理手続の流れ
公判前整理手続のおおまかな流れを解説します。
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(1)手続きを請求するのは誰か
検察官または弁護人が裁判所へ請求します。裁判所は検察官と弁護人の意見を聞き、事件を公判前整理手続に付するかどうかを決めます。
他方、裁判所は検察官や弁護人の請求がなくても、職権で実施を決定することもできます。 -
(2)手続きの流れ
検察官は裁判所に対し、公判期日で証拠によって証明しようとする事実(証明予定事実)を記載した書面を提出するとともに、証明予定事実を立証するための証拠の取り調べを請求します。そして、弁護人に対し、検察官が取り調べ請求をした証拠(検察官請求証拠)を開示し、弁護人から請求があった場合は、証拠の一覧表を交付します。
弁護人は、検察官が開示した証拠以外に、刑事訴訟法の一定の類型に該当する証拠を検察官に開示請求することができます(類型証拠開示、主張関連証拠開示)。また検察官請求証拠に対する意見を明らかにし、証明予定事実その他の主張の内容を裁判所・検察官に示します。証明予定事実があるときは、裁判所に対して証拠の取り調べを請求し、その証拠を検察官に開示しなければなりません(弁護側請求証拠)。
このような開示手続を経て証拠を厳選し、公判期日や公判期日に要する時間、日数などの計画を立てていきます。公判前整理手続はおおむね月1回程度の頻度で実施されます。
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4、公判前整理手続を行う理由は?
公判前整理手続の目的は、継続的、計画的かつ迅速な審理を実現させることです。事前に争点を整理しておくことで、連日の開廷が可能となり、スピーディーな審理につながります。
ただし、公判前整理手続が終わった後は、原則として新たな証拠の取り調べ請求や証人の申請はできません。公判中、五月雨式に証拠や証人の申請がなされることなく、審理は計画的に進行します。
また弁護人は検察官に対し、あらかじめ証拠の開示や証拠の一覧表の交付を請求することができます。検察官がどんな証拠を持っているのか、反対に持っていない証拠は何かを把握することにより、検察官がどのような主張を展開するのかを予測し、公判期日での弁護活動に活かすことができるのです。
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5、公判前整理手続のとき弁護士と打ち合わせる内容
裁判員裁判対象事件では必ず公判前整理手続が実施されます。しかし、それ以外の事件では公判前整理手続が被告人にとって意味があるものになるかどうかを検討したうえで請求する必要があります。
なお、被告人自身は、公判前整理手続期日への出頭は義務ではありません。したがって、出席する・しないを選ぶことができます。被告人が出頭しない場合は弁護人のみが出頭します。
被告人が出頭した場合でも弁護人が被告人の代わりに主張をし、裁判所から被告人に対して直接質問される機会はほぼありません。ただ、出頭すれば自分自身の事件について、争点や成り行きをイメージしやすいでしょう。
一方で、出頭すると事件を担当する裁判官と直接顔を合わせるため、被告人の態度や発言が裁判官の心証を悪くするなど、かえって不利になるおそれがあります。事前に弁護人と打ち合わせ、出頭するべきか、出頭した場合は何に気を付けるのかなどを確認しておくことが大切です。
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6、まとめ
公判前整理手続は裁判所と検察官、弁護人によって、裁判の前に争点を明らかにする手続きです。裁判の長期化を防ぐだけでなく、多くの証拠に目を通すことで法廷での弁護活動に役立てることができます。否認事件のように徹底的に争いたい事件では利用する利点が大きいといえるでしょう。
ただし、どんな証拠を開示請求するかなど弁護人の力量が問われる手続きなので、刑事事件の経験豊富な弁護士への依頼が不可欠です。不明点があれば、多数の刑事事件対応の実績を持つベリーベスト法律事務所へご相談ください。
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※本コラムは公開日当時の内容です。
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