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情状証人とは? 役割・裁判の流れ・反対尋問の注意点を解説
刑事裁判における証人尋問では、被告人の家族や知人が情状証人として出廷して証言することがあります。
情状証人の証言によって裁判官がくむべき事情があると判断すれば、執行猶予付き判決となったり、刑が軽減されたりする可能性が高くなります。そのため、裁判官が量刑を判断する上で、情状証人の証言はとても重要です。
本コラムでは、情状証人とは何かを取り上げ、情状証人として気を付けるべきポイントや証人尋問当日の流れ、反対尋問への対策などについて解説します。
1、情状証人とは
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(1)情状証人とは
情状証人は、刑事裁判の判決において刑罰を軽くしてもらうこと(情状酌量)を目的に、被告人の反省の有無、示談や弁償の有無など(一般情状)について証言する人のことをいいます。
刑法第66条では、「犯罪の情状に酌量すべきものがあるときは、その刑を減軽することができる」と定めています。不当に重い刑罰を科されないように、情状証人が証言をして、裁判官に情状を酌量してもらうことが必要です。 -
(2)どんな人が情状証人になるのか
情状証人となるのは、被告人の性格や事情をよく知っており、社会復帰へ向けて被告人を管理監督できる立場の人です。そのため、両親や配偶者など家族が情状証人になるケースが多いでしょう。家族以外では、職場の上司などがなることもあります。
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2、情状証人がすべき証言
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(1)被告人を監督する証言
情状証人は、みずから指導監督することで、執行猶予が付いたり刑期が短くなって社会復帰が早まるなどしても、再犯の可能性が低いことを証言します。たとえば、「同居して薬物依存症回復プログラムに参加させる」「社会復帰後も再雇用する」などといった証言です。
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(2)犯罪前の事情の証言
被告人の性格、生い立ち、生活環境、経済的状況など、情状してもらうべき理由があることを証言します。たとえば、「本来はまじめで優しい性格で十分に反省している」「犯行時には解雇されて収入を失ってしまっていた」などといった証言です。
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(3)実刑後の影響の証言
執行猶予付き判決ではなく、実刑となって刑務所に入所した場合には、被告人や家族など周りの人に悪い影響をおよぼすおそれがあることを証言します。たとえば、「子どもがまだ幼いため親がそばにいることが必要である」などの証言です。
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3、情状証人の裁判当日の流れ
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(1)証人尋問開始前
裁判当日は、証人尋問が始まるまで証人待合室または傍聴席で待機します。待機中に、証人出頭カードと宣誓書に必要事項を記入します。
証人出頭カードには氏名や住所、生年月日、職業などを記入して捺印します。また、宣誓書の「良心に従って真実を述べ、何事も隠さず、偽りを述べないこと」に同意した上で、署名捺印します。 -
(2)証人尋問の流れ
自分の順番となったら証言台に立ちます。まず、証人が本人であるかどうかを確かめるために、裁判長から人定質問されます。裁判長から氏名などについて確認されるので、間違いなければ、「はい」または「そのとおりです」と返事をして、署名捺印した宣誓書を読み上げます。
次に、裁判長から「うそをつくと偽証罪に問われることがあるので、本当のことを述べるように」と告げられるので、「はい」または「わかりました」と返事をします。
宣誓後は、
- ① 主尋問
- ② 反対尋問
- ③ 再主尋問
- ④ 補充尋問
の順で証人尋問が行われます。
主尋問とは、証人の請求をした者による尋問です。つまり、被告人の情状証人の場合には、まず、弁護人による尋問が行われます。続いて、検察官による反対尋問が行われます。反対尋問は主尋問で述べられた事項や情状証人の供述の証明力を争うために必要な事項などについて尋ねられます。反対尋問後には、弁護人からの再主尋問が行われます。裁判長からの許可があれば、検察官からの再反対尋問が行われることもあります。裁判長または裁判官が、証人から聞き取りたいことがあると判断した場合には、裁判長らによる補充尋問が行われます。すべての尋問が終了したら、傍聴席に戻ります。
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4、反対尋問をのりきるための対策
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(1)反対尋問の目的
弁護人による主尋問は、質問内容や受け答えについて打ち合わせをすることができます。しかし、検察官による反対尋問についてはその内容について知ることはできませんし、厳しい質問をされることも予想されるので、事前に反対尋問の対策をしておくことが必要です。
たとえば、次のような質問をされることがあります。- 事件前には、被告人とどれくらいの頻度で会ったり、連絡を取ったりしていたか
- どうして犯罪を止めることができなかったのか
- 被告人の犯した罪について、その内容の重大さを理解しているか
- 逮捕から裁判まで、被告人と何回面会しているか
- 具体的にはどのように指導監督するのか
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(2)反対尋問の対策
反対尋問の質問はある程度予測できるので、想定される質問とその回答について弁護士と念入りに打ち合わせをしておくことが必要です。不必要な言動は避けて、質問に対しては簡潔に回答します。もし、想定外の質問をされたり、挑発的な質問をされたりしても、動揺しないで冷静に答えましょう。
また、被告人との関係性について、過去においては良好でなかったとしても、うそをつかずに正直に答えましょう。そして、今後は改善に向けてきちんと対応していくこと、再犯を防ぐための具体的な指導監督方法について証言すれば、信用性を高めることができます。
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5、情状証人として事前に知っておくべきこと
情状証人として証言することを刑の軽減につなげるためには、事前に知っておくべきことがあります。
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(1)証言時の注意点
たとえ被告人にとって有利な証言でも虚偽の証言をしてはいけません。刑事裁判で宣誓をした証人が虚偽の証言をした場合には、刑法第169条の偽証罪に問われることになるからです。偽証罪には、3か月以上10年以下の懲役という重い罰則が設けられています。
証人尋問においては、弁護人や検察官、裁判官の質問は最後まで聞き、発言するときには正面の裁判長に顔を向けてはっきりと大きな声で簡潔に答えましょう。メモなどを参照しながら証言することはできません。もし、質問が聞き取れなかったり、意味がわからなかったりしたときは、あいまいに答えずに質問を聞き返しましょう。 -
(2)前科がある場合の情状証人
被告人に前科がある場合には、再び同じ人が情状証人として出廷することもあります。その場合には、検察官から指導監督力の不足などについて、厳しい反対尋問をされることが予測されます。
弁護士と打ち合わせをして、再犯防止のためにしてきたこと、これから取り組もうとしていることなどを具体的に考え、証言しましょう。まずは、被告人に寄り添って二度と罪を犯さないように指導監督していくという姿勢を示すことが必要です。 -
(3)出廷できないときは
病気・事故で入院中の場合や遠方に住んでいる場合など、何らかの事情で出廷できないときには、弁護人が上申書を作成し、入院証明書などの出廷できない事情を明らかにする証拠とともに裁判所に提出します。
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(4)服装と用意するもの
情状証人として裁判に出廷するときには、証人出頭カードと宣誓書に押印するための印鑑を持参します。印鑑は、実印ではなく認め印でも問題ありません。
人の印象は服装や髪型などの外見で左右されるものです。指導監督を任せることができる人物であると印象づけるために、清潔感があり、信用できる雰囲気の服装と髪型にします。服装は、ビジネス・スーツなどのフォーマルなものが望ましいでしょう。派手なデザインや色は避け、紺色などの落ち着いた色にします。また、派手な化粧をしたり、過度なアクセサリーを身につけたりしないようにしましょう。
その他、不明な点については信頼できる弁護士に相談するとよいでしょう。
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6、情状証人に対する弁護士の支援
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(1)適切な情状証人の選定
情状証人は家族がなることが望ましいですが、誰が適任であるかの判断は難しいかもしれません。弁護士に相談すれば、事件の内容や被告人の状況なども考慮して、家族や知人、勤務先の上司などの中から、誰が情状証人として適任であるかを判断できます。
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(2)陳述書の作成
裁判官に対して自分の考えや思いを伝えるための書面のことを「陳述書」といいます。情状証人になりたくても、出廷することが難しい場合には、情状酌量を求める陳述書を作成して裁判所に提出できる場合があります。
陳述書は本人が作成することもできますが、内容にまとまりがなかったり、意味不明な文章だったりすれば、かえって裁判官の心証を悪くしてしまうおそれがあります。陳述書を提出する場合には、弁護士が本人に直接会ってヒアリングを行い、陳述書を作成することが可能です。 -
(3)尋問の打ち合わせ
刑事裁判の経験が豊富な弁護士なら、主尋問において有利な情状を主張するために必要な質問をするとともに、それに対する適切な回答をアドバイスすることができます。また、反対尋問の質問も想定できるので、想定問答集などを作成して、事前に打ち合わせをするのもよいでしょう。
もし裁判中に想定外の質問をされたり、被告人が緊張して答えられなかったりした場合にも、弁護士にその場で適切なフォローをしてもらうことが期待できます。 -
(4)示談交渉
詐欺や暴行、傷害、性犯罪など、被害者がいる刑事事件では、被害者との示談が成立していることは有利な情状となります。起訴後に保釈が認められる可能性も高くなり、判決までの身柄解放につながります。被害者が被告人家族との交渉を拒絶している場合でも、弁護士なら被害者と交渉して示談を成立させることが期待できます。
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7、まとめ
情状証人の証言は、量刑を決める上で重要な証言と考えられています。もし、裁判官が情状酌量してくれれば、執行猶予付き判決や刑期が短くなることが期待できます。ただし、有効な証人尋問を行うには、弁護士の適切なフォローが不可欠ともいえます。
刑事裁判の被告人となっている家族のために証言したいとお考えの場合は、ぜひベリーベスト法律事務所にご相談ください。刑事裁判の実績豊富な弁護士が、情状証人の選定から申請、尋問の打ち合わせ、裁判における弁論まで、刑の軽減のために全力でサポートします。
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