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勾留請求が行われる理由は? 逮捕後の拘束を回避する方法について解説
傷害や痴漢などの罪で逮捕されたら、逮捕後に検察官へ送致されます。検察官が勾留請求を行い、裁判官がそれを許可した場合には、最大で23日間も留置場などで身柄を拘束されます。
長期間勾留された場合には、たとえ不起訴となっても学業や仕事に支障をきたしてしまい、社会生活への復帰が難しくなるおそれもあります。しかし、逮捕後すぐに弁護士に依頼すれば、意見書の提出や検察官との交渉、示談成立などによって、勾留を回避して釈放される可能性が高まります。
勾留請求の定義や手続きの流れ、どんな場合に勾留請求が却下されるのか、勾留回避のためにできることなどについて、弁護士がわかりやすく解説します。
1、勾留請求とは
まずは、勾留請求の意味について確認しておきましょう。
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(1)勾留請求とは
勾留(こうりゅう)とは、「逃亡や証拠隠滅を防ぐために、検察官からの請求で被疑者を警察の留置場などに留置して身体を拘束すること」です。
被疑者は、逮捕から48時間以内に検察官へ送致されます。検察官は送致から24時間以内かつ逮捕から72時間以内に、勾留を請求するか釈放をするかを判断します。
勾留請求とは、「被疑者を勾留するために、検察官が裁判官に許可を求める手続き」です。裁判官が勾留決定の際に発付する令状を勾留状といいます。
刑事事件に関する用語に、勾留と同じ読み方の「拘留」がありますが、拘留は刑罰のひとつです。1日以上30日未満の一定期間、刑事施設に拘置されることを意味するもので、勾留とは意味が異なります。 -
(2)勾留請求率の実態
令和2年「犯罪白書」によると、令和元年に身柄事件(警察などで逮捕され身柄付きで検察に送致された事件と検察で逮捕された事件)となった10万3264人のうち、9万5278人が勾留請求されており、勾留請求率は92.3%となっています。
勾留請求率は例年90%台の前半で推移しているので、刑事事件で身柄事件となった場合には、高い割合で勾留が請求されていることになります。 -
(3)勾留請求却下率の実態
検察官が勾留請求をしても却下されるケースがあります。
令和2年「犯罪白書」によれば、勾留請求された9万5278人のうち、4919人については請求が却下されており、勾留請求却下率は約5.2%となっています。
勾留請求却下率は、近年上昇傾向にあります。理由としては、平成21年に裁判員制度が始まったこと、自白を強要させるために勾留を続けることが「人質司法」として批判を浴びていることなどから、勾留請求がより厳格に審査されるようになったものと考えられています。
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2、勾留請求手続き
勾留請求手続きの概要についてみていきましょう。
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(1)勾留請求手続きの流れ
検察官への送致が決まると、被疑者は検察庁に移され、検察官による取り調べを受けます。そして、検察官が引き続き身柄拘束して取り調べる必要があると判断した場合には、「勾留請求書」を作成して裁判所へ提出します。
勾留請求が行われると、被疑者は裁判所に呼ばれて「勾留質問」を受けます。裁判官は、被疑事実を告げて被疑者の言い分を聞きます。検察官が提出した書類や被疑者の言い分、弁護人の意見書や面談の結果などから、勾留請求を認めるべきかどうかを判断します。
裁判官が要件を満たしていると判断すれば、勾留状が発付されるという流れです。 -
(2)勾留請求が認められるケース
勾留は被疑者の身体や行動の自由を侵害するため、刑事訴訟法では勾留の要件を厳格に定めています。刑事訴訟法第60条では、「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合」で、次の三つのうちどれかひとつでも該当するときは、勾留することができると定めています。
- 住居不定
- 証拠隠滅のおそれ
- 逃亡のおそれ
さらに、刑事訴訟法第87条1項は、「勾留の理由または勾留の必要がなくなったときは、裁判所は、…勾留を取り消さなければならない」と定めており、第60条の勾留理由だけでなく勾留の必要性も勾留の要件と考えられています。
勾留の必要性があるかどうかは、勾留によって得られる捜査機関の利益と勾留でもたらされる被疑者の不利益とを総合的に比較して判断されます。たとえば、学業や仕事への支障が大きい、被疑者の健康状態が悪化するおそれがある、高齢や幼年の家族を看護・養育しなければならない、軽微な事件であるといった場合は、必要性が低いと判断されることがあります。 -
(3)勾留期間
勾留請求は、被疑者送致から24時間以内かつ逮捕から72時間以内に行われます。勾留が決定した場合の初回の期限は最大10日間です。さらに、検察官からの請求によって延長が決定すれば、最大で10日間まで延長されます。
つまり、勾留されると延長を含めて逮捕から「最大23日間」にわたって身柄を拘束されることになるのです。
加えて、検察官が起訴した場合には、保釈が認められない限り、刑事裁判が終了するまで勾留が続きます。
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3、逮捕後の拘束を回避する方法
刑事事件の被疑者として逮捕・勾留されれば、長期間にわたって身柄拘束を受ける事態となり得ます。しかし、弁護士に迅速に依頼することで勾留を回避できる可能性があります。
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(1)勾留を回避すべき理由
長期にわたって勾留されれば、学校から停学・退学処分を下されたり、社会人の場合には免職や、会社に居づらくなることで、結果的に退職へと追い込まれてしまうおそれがあります。また、被疑者本人だけでなく、家族も精神的なダメージを受けることになるでしょう。
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(2)勾留回避のポイント
勾留を回避するためには、逮捕後すみやかに弁護人を選任することが大切です。
国選弁護人は、勾留決定後でなければ選任できません。しかし、私選弁護人であれば逮捕後すぐにでも選任できるので、勾留回避のための弁護活動が可能です。
被疑者本人の反省文や家族など身元引受人の誓約書の提出や示談が成立しているという事情は、勾留回避の可能性を高めます。弁護士なら反省文や誓約書を作成するための適切なアドバイスをしたり、代理人として被害者と交渉して示談を早急に成立させたりすることも可能です。 -
(3)勾留を請求しないよう求める
弁護士に依頼すれば、勾留請求される前に検察官に対して勾留請求をしないよう意見書を提出することができます。
被疑者との接見や家族との打ち合わせの後、逃亡や証拠隠滅を図るおそれがないことや勾留による不利益が大きいことなどを記載した意見書を作成し、反省文などを添えて検察官へ提出したうえで、検察官と交渉し、被疑者を直ちに釈放するように働きかけます。
被疑者本人の反省文や逃亡・証拠隠滅をしないという誓約書のほかにも、家族の誓約書や身元引受書、勾留による不利益を受ける家族の嘆願書、被害者との示談書なども有効です。 -
(4)勾留請求を却下するよう求める
検察官による勾留請求に対抗するために、弁護士が作成した意見書や被疑者が作成した反省文などを裁判官に提出します。さらに、勾留質問前に裁判官と面談し、勾留理由がないことや勾留による不利益が大きいことなどを主張し、勾留請求の却下を働きかけます。
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(5)勾留の取り消しを求める
勾留決定を受けた場合でも、刑事訴訟法第429条が定める「準抗告」を利用すれば、裁判官の決定に対して不服を申し立てることが可能です。勾留を決定した裁判官以外の3人の裁判官によって、勾留決定が正しかったかどうかが判断され、基本的には即日または翌日には結果が出ます。
準抗告が認容される可能性は決して高いとは言えません。ただし、示談の成立やすでに証拠がそろっていること、身元引受人ができたこと、病状が悪化したことなど、勾留が決定した時点とは事情が変化したことを理由に「勾留取り消し請求」や「勾留執行停止」を申し立てるという対抗方法もあります。
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4、まとめ
逮捕されて身柄事件となった場合には、90%以上の確率で勾留請求されます。年々、勾留請求却下率が上昇しているといっても、多くの場合は勾留決定となってしまうでしょう。
勾留を回避するには、弁護士による意見書の提出や被害者との示談交渉など、逮捕直後からの弁護活動が不可欠です。
刑事事件で家族が逮捕されてしまった方は、直ちにベリーベスト法律事務所にご相談ください。刑事事件の対応実績豊富な弁護士が早期釈放のために全力を尽くします。
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