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恫喝行為は犯罪にあたる? 恫喝で問われ得る罪と逮捕の可能性
「恫喝」とは一般に「人を脅して恐れさせること」「相手の弱みにつけこんで脅すこと」といった意味を持つ言葉です。人間関係のトラブルや店舗などへのクレームで人を恫喝してしまった場合、何かの罪に問われることがあるのでしょうか?
法律上、恫喝罪という犯罪は存在しません。しかし恫喝行為によって犯罪に該当し、逮捕される可能性はあります。では、恫喝行為で逮捕された場合、どのような罪に問われる可能性があるのでしょうか。
本コラムでは恫喝で逮捕された事例を紹介しながら、恫喝がどのような罪になるのかなどをベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
1、恫喝をして逮捕された事例
人を恫喝して実際に逮捕された事例を紹介します。
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(1)恫喝による威力業務妨害
北海道美唄市のJR美唄駅において、無職の男性が駅員を怒鳴りつけて逮捕された事例です。
男性は令和3年6月、JR美唄駅を訪れた際に駅員に対して「謝罪しろ」「土下座しろ」などと恫喝したうえで業務を妨害しました。このときは駆けつけた警察官が警告を与えたのみで逮捕には至らなかったものの、その4日後にも男性が同駅を訪れて駅員を恫喝したため、警察官によって逮捕されました。
逮捕容疑は刑法第234条の威力業務妨害罪です。男性は2年ほど前に駅員と列車内でトラブルを起こしており、そのことを恨みに思って犯行におよんだと見られています。 -
(2)恫喝による強要と脅迫、威力業務妨害
滋賀県大津市内の病院で、建設業の男性が病院の職員や医師を恫喝して逮捕された事例です。
令和3年3月、男性は病院を訪れた際、病院の職員が家族の名前を間違えたことに腹を立て、「殺したろか」と恫喝したうえで土下座を強要しました。また治療を担当した医師に対しても脅迫行為をしました。病院側が警察に通報したため、脅迫罪(刑法第222条)、強要罪(同第223条)、および威力業務妨害罪(同第234条)の容疑で逮捕されています。
2、恫喝をして問われる可能性のある罪
事例のように、恫喝行為をすると「脅迫罪」「強要罪」「威力業務妨害罪」に問われる可能性があります。また恫喝をしたうえで金銭を要求すれば「恐喝罪」(刑法第249条)が成立する場合も考えられるでしょう。
それぞれの罪が成立する要件と刑罰の内容について解説します。
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(1)脅迫罪の構成要件と刑罰
脅迫罪は人を脅して恐怖を与える犯罪です。脅迫罪では傷害を負わせたり金銭を奪ったりといった実害は発生していません。しかし、れっきとした犯罪行為として処罰の対象となります。
構成要件は以下のとおりです。
● 相手またはその親族の生命、身体、自由、名誉、財産に対し、害を加える旨を告知して脅迫すること
脅迫とは、一般に、人を畏怖させるに足りる、害悪の告知をいい、害悪の告知とは対象に危害を与えることを告げる行為です。紹介した病院の事例では医師に対して「殺したろか」と恫喝していますが、これは生命に対する害悪の告知に該当します。
脅迫罪の刑罰は「2年以下の懲役または30万円以下の罰金」です。 -
(2)強要罪の構成要件と刑罰
強要罪は脅迫や暴行を用いて相手に義務のないことをさせる犯罪です。紹介した病院の事例では職員に土下座を強要した行為が強要罪にあたります。
構成要件は以下のとおりです。- 相手またはその親族の生命、身体、自由、名誉、財産に対し害を加える旨を告知して脅迫すること
- 脅迫または暴行を用いること
- 義務のない行為をさせ、または権利の行使を妨害すること
強要罪の刑罰は「3年以下の懲役」です。
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(3)恐喝罪の構成要件と刑罰
恐喝罪は人を怖がらせてお金などの財物を差し出させる犯罪です。脅迫罪や強要罪との大きな違いは、目的が財物に向けられている点です。
構成要件は以下のとおりです。- 人を恐喝すること
- 財物を交付させ、または財産上不法の利益を得ること
恐喝とは、暴行または脅迫により相手を畏怖させることをいい、それは財物または財産上の利益の交付に向けられたものでなければなりません。
また、恐喝罪が成立するためには、畏怖した者の瑕疵ある意思に基づき、財物や財産上の利益が交付される必要があります。財産上不法の利益を得るとは、たとえばタクシー運転手を脅して無賃乗車するような行為を指しています。
恐喝罪の刑罰は「10年以下の懲役」です。 -
(4)威力業務妨害罪の構成要件と刑罰
威力業務妨害罪はクレームや迷惑行為などで適用されることの多い犯罪です。
構成要件は以下のとおりです。- 威力を用いること
- 業務を妨害すること
「威力」とは、人の自由意思を制圧するに足りる勢力をいいます。暴力行為や脅迫行為のほか、社会的地位を利用する、集団的勢力を示すなどの行為も威力を用いたといえます。
「業務」とは、職業その他社会生活上の地位に基づき、継続して行う事務・事業をいいます。一般的な仕事はもちろん、営利目的ではないサークル活動やボランティア活動なども含まれます。
威力業務妨害罪の刑罰は「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」です。
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3、恫喝行為で逮捕された場合に弁護士ができること
恫喝行為をしてしまい警察から連絡がきている、自分の家族が恫喝をして逮捕されてしまったなどのケースでは、早急に弁護士へ相談しましょう。
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(1)取り調べのアドバイスができる
警察・検察官からの取り調べの際に作成された供述調書は後の処分に影響を与える重要なものです。いったん供述調書にサインすると、仮に事実と異なる内容であっても証拠として採用されてしまうおそれがあります。そのため弁護士が早急に本人と接見し、取り調べにおけるアドバイスをする必要があるのです。
供述内容が与える影響や黙秘権・署名押印拒否権などの重要な権利の行使について、法的観点から有効なアドバイスができるのは弁護士だけです。弁護士から、取り調べの進み方やどのような展開が予想されるかといったことのアドバイスを受けられれば、準備をして取り調べに臨むことができます。 -
(2)逮捕から72時間以内でも本人を精神的にサポートできる
逮捕されると自由な行動を制限され、外部と連絡が取れなくなるため、動揺や不安で精神的に追い込まれてしまう人が多数です。ご家族が面会して励ましの言葉を与えることは精神的に大きな支えとなるはずですが、逮捕段階の72時間は、ご家族であっても本人との面会は許可されません。留置場にいる本人に衣類や現金などを差し入れすることも可能ですが、逮捕直後の72時間はこれもかないません。
しかし唯一弁護士だけは、逮捕直後であっても本人との面会や差し入れが可能です。ご家族からの言葉や家庭・会社の状況を伝える、差し入れを代行するなどして本人を精神的に支えることができます。 -
(3)不当に重い罪を受けないように示談交渉ができる
逮捕されても不起訴処分になれば刑罰に処せられることはなく、起訴されても執行猶予つきの判決が下れば社会の中で更生に努めることができます。
不当に重い刑罰を避けるために重要なのは被害者との示談交渉です。被害者に対し真摯な謝罪と被害弁済を行い、被害者から許すという宥恕(ゆうじょ)意思を得られれば、検察官や裁判官に評価されて不起訴や執行猶予を得られる可能性が高まります。
しかし、被害者は恫喝をした本人に対して恐怖心や処罰感情を抱いているケースが多く、示談交渉を拒否するおそれが高いでしょう。ご家族からの交渉も冷静な話し合いが難しく、場合によっては高額の示談金を要求されるおそれがあるため、加害者本人やその家族による示談交渉は避けるのが賢明です。
示談交渉は客観的な第三者の立場であり、示談金の相場なども把握している弁護士に一任するべきです。弁護士であれば被害者と冷静に話し合い、適切な額の示談金で穏便に解決できる可能性があります。 -
(4)早期の身柄解放に向けた弁護活動ができる
逮捕・勾留による身柄拘束は最長で23日間となります。23日間も身柄拘束を受けることになれば、会社に行くことも学校に行くこともできないため、日常生活に大きな影響をもたらすことになってしまいます。
そのため、弁護士は検察官に対して、被疑者が証拠隠滅をしたり逃亡したりするおそれがないという根拠を示すなどして、勾留を請求しないよう求めることができます。検察官が勾留を請求した場合でも、裁判官へ勾留の棄却を求めるなど、早期の身柄解放に向けた弁護活動を行うことができます。
4、まとめ
恫喝は人に強い恐怖心を与える行為です。紹介した事例のように警察に通報され、逮捕されてしまうケースもあります。恫喝罪という罪名はありませんが、恫喝をすれば脅迫罪や強要罪、威力業務妨害罪などが成立してしまいます。人に直接的・身体的な危害を加えていなくても重い刑罰を受けるおそれがあるため、人を恫喝してしまったら、早急に弁護士に相談することが大切です。
相手を恫喝して通報されそう、家族が恫喝行為をして逮捕されたなどの状況でお困りであればベリーベスト法律事務所へご連絡ください。刑事弁護の経験豊富な弁護士が事件の解決に向けて全力でサポートします。
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