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接見交通権とは? 被疑者は弁護士や家族と会えるのか詳しく解説
被疑者・被告人は、身柄拘束を受けている間、自由な行動や外部との連絡を禁じられます。他者との接触や連絡により、犯罪の重要な証拠を隠滅したり、被害者などの関係者に圧力をかけたりするなど、事件捜査や訴訟の遂行が妨害される事態を防ぐためです。
とはいえ、身柄拘束を受けている被疑者・被告人には「接見交通権」という権利が認められており、一定の制限はあるものの、他者との接触が許されています。
本コラムでは、被疑者・被告人に認められている「接見交通権」に注目し、接見交通権の概要や弁護士とそれ以外の人における扱いの違い、接見交通権が制限された場合の対策などを解説します。
1、接見交通権とは
「接見交通権」は、刑事事件における重要な権利ですが、一般生活では触れることのない用語なので、意味がわからない方も多いでしょう。
まずは「接見交通権」の意味や概要を解説します。
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(1)接見交通権とは?
刑事事件の被疑者・被告人として身柄拘束を受けている者(ここでは、「被拘束者」といいます。)は、帰宅や外出、連絡といった自由が大幅に制限されます。ただし「誰にも会えない」「必要な物でも入手できない」というわけではありません。
被拘束者が外部の者と面会することを「接見」といい、物品を授受することを「交通」といいます。
接見交通権とは、被拘束者に与えられる「接見」と「交通」の権利を意味するのです。 -
(2)法的根拠からみる接見交通権
接見交通権は、法的に保障された権利です。
日本国憲法第31条は「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない」という定めがあります。同第34条には「何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない」とも明記されています。
これらは、被疑者・被告人に保障された司法上の基本的人権のひとつです。
また、刑事訴訟法第39条1項にも同様に「身体の拘束を受けている被告人又は被疑者は、弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者と立会人なくして接見し、又は書類若しくは物の授受をすることができる」という規定があります。
法的根拠に照らすと、被疑者・被告人が「弁護人」との関係で有する接見交通権が強く保障されていることがわかるでしょう。
そして、家族など、弁護人以外の者が接見交通をする場合は、刑事訴訟法第80条の「勾留されている被告人は、第39条第1項に規定する者以外の者と、法令の範囲内で、接見し、又は書類若しくは物の授受をすることができる」という規定が適用されます。
なお、弁護人以外の者による接見交通は、「面会」と呼ばれることが多いです。
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2、弁護士とそれ以外の人における接見交通の違い
接見交通は、弁護人だけでなく、被拘束者の家族・友人・知人などにも広く認められている制度です。ただし、法的根拠からもわかるとおり、弁護士とそれ以外の人の間には接見交通が認められる範囲に大きな差があります。
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(1)接見交通が許されるタイミングの違い
家族などが面会することを許されるのは、被疑者に対する「勾留」が決定した時からです。
刑事事件の被疑者として逮捕されると、検察官が勾留を請求し、裁判官がその請求に対して勾留を許可することで、勾留決定がされます。そして、逮捕から勾留決定までには、最大72時間かかります。つまり、逮捕直後から最大72時間は、たとえ家族であっても面会が許されません。
一方で、弁護人にはこのような時間制限が設けられていません。つまり、逮捕直後に被疑者と接見できるのは弁護人だけです。 -
(2)接見交通できる日時の違い
家族などが面会をすることができるのは、警察施設が開庁している平日の執務時間内に限られます。休祭日や早朝・夜間の面会は認められません。
弁護人はこのような制限を受けないため、休祭日・早朝・夜間のいつでも接見が可能です。 -
(3)接見交通できる人数制限の違い
家族などによる面会は、1日につき1組、1組につき3人までといった制限が設けられています。留置施設によって若干の差があるものの、回数・人数の制限は必ず設けられています。もし面会を申し込んでも、すでに同日中に別の人が面会を済ませている場合は、回数制限を受けて面会が拒否されてしまいます。
弁護人であれば、1日における回数や人数といった制限を受けません。同じ弁護人が1日のうちに複数回の接見を申し込んでも、すでに別人が面会を済ませていても、弁護人であれば何度でも許可されます。 -
(4)接見交通できる時間制限の違い
家族などによる面会には時間制限が設けられています。留置施設によって差がありますが、15~20分程度を規定しているところが多数です。制限時間が経過すると、警察官によって面会が終了させられます。
一方で、弁護人には接見時間の制限がありません。制限時間を気にする必要ないので、綿密なアドバイスや打ち合わせが可能です。 -
(5)接見交通における立会人の違い
家族などによる面会では、必ず留置担当官が立会人としてその場に介入します。基本的に会話に立ち入ることはないものの、会話の秘密は守られません。
弁護人による接見では、刑事訴訟法第39条1項に規定されているとおり「立会人なし」の接見が保障されています。会話の秘密が守られるだけでなく、一時的にでも警察の監視から外れるという意味では精神的に強い解放感が得られるでしょう。 -
(6)差し入れの可否
留置施設において設けられた制限がありますが、衣類や下着、現金、書籍などを差し入れることができます。この制限をクリアした物品であれば、家族などからであっても面会の時に差し入れることは可能です。この点は、弁護人であっても同じであり、弁護人だから特別に許可される物品があるというわけではありません。
ただし、弁護人は時間や回数の制限を受けることなく接見が認められるので、必要な物品を素早く差し入れることが可能です。
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3、接見交通が禁止されるケース
接見交通は被拘束者とその周辺の人に広く認められた制度ですが、一定の状況においては制限を受けて禁止されることがあります。これを「接見禁止」といいます。
接見禁止は検察官からの請求、または裁判所・裁判官の職権によって決定します。次のような状況があれば、請求あるいは職権による接見禁止が付されるおそれが高まるでしょう。
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(1)逃亡のおそれがある場合
たとえば、住居不定や無職といった事情があると、逃亡を図る危険があると判断されやすくなります。逃亡を防止するためには外部との接触を遮断する必要があると考えられるため、接見禁止がつきやすくなるといわれています。
ただし、警察施設などで身柄を拘束している状況であれば逃亡は困難であるため、逃亡のおそれがあることだけを理由に接見禁止が付されるケースはほとんどありません。ほかの要素とあわせて総合的に勘案されることになるでしょう。 -
(2)証拠隠滅のおそれがある場合
被拘束者が警察施設などに拘束されていることを前提にしても、被拘束者が他者に依頼するなどして証拠を隠滅しようとする危険が具体的に認められる場合には、接見禁止が付されることになります。「証拠を隠滅しようとする危険が具体的に認められる」とは、たとえば、以下のような事情がある場合をいいます。
① まだ発見されていない証拠がある場合
関係先の捜索が未了であるなど、必要な証拠が十分に確保されていない場合は、面会した人物に重要な証拠品の隠匿場所などが伝わることで証拠隠滅を受ける危険が高まるため、接見禁止がつきやすくなります。
② 組織犯罪や共犯者が存在する場合
組織的な犯罪や複数の共犯者が存在する事件では、組織をあげた証拠隠滅や共犯者との連絡による口裏合わせが危惧されるため、接見禁止が付されやすい傾向があります。グループによる特殊詐欺事件や暴力団などが関与する事件では、特に接見禁止を受けやすいと考えたほうがよいでしょう。
③ 被害者や目撃者などへの圧力が予想される場合
関係者との面会を通じて、事件の被害者や重要な目撃者などの参考人へ圧力をかけるよう依頼することが予想される場合も、接見禁止を受けやすくなります。暴行・傷害・脅迫・恐喝といった粗暴犯罪では特にこの点が重視されやすいといるでしょう。
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4、接見交通権が禁止されたらやるべきこと
接見禁止を受けてしまうと、家族などとの面会が禁じられてしまいます。家族生活のこと、仕事のことなど、多くの不安を抱えているなかで面会まで禁止されてしまえば精神的に強いストレスを感じることになるでしょう。
接見禁止を受けた場合に考えられる対抗策は3つです。
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(1)準抗告・抗告
接見禁止の処分を下すのは、被疑者段階では裁判官、被告人の段階では裁判所です。裁判官または裁判所が下した接見禁止処分に対しては、「準抗告」または「抗告」をして不服を申し立てることで、接見禁止処分の取り消しや変更を求めることができます。
刑事訴訟法に定められた制度なので、要件さえ満たしていれば申し立ては可能ですが、裁判所による厳格な審査を受けることになります。逃亡や証拠隠滅などのおそれがないことを主張して、接見禁止の必要性を否定しなければならないので、請求が認められる可能性は決して高くありません。 -
(2)接見禁止処分の解除の申請
法で定められた制度ではありませんが、裁判官・裁判所に対して、非公式に、接見禁止の全部または一部の解除を申請することも可能ではあります。準抗告や抗告による接見禁止の取り消しや変更が、審査の厳しい制度である一方、たとえば家族など一定の範囲に限って解除を申請することは、非公式であるが故に審査が緩やかになる可能性があります。つまり、準抗告・抗告よりも許可される可能性が高く、現実的な手段であるといます。
ただし、法が定めている制度ではないので、解除の申請を却下されても、その却下に対して準抗告・抗告できるわけではないという点は心得ておかなければなりません。 -
(3)勾留理由開示請求
勾留が決定している場合は「勾留理由開示請求」の申し立てが可能です。
公開の法廷において、被告人が出廷して「なぜ勾留されたのか」の理由開示を受ける手続きであり、直接的には接見禁止の解除にはつながりません。ただし、公開の法廷が開かれるため、接見を禁じられている家族や友人なども傍聴人として参加できます。会話や差し入れなどは許されませんが、被拘束者と家族などが顔をあわせる機会を設ける方法としては有意義です。
特に、身柄を拘束されて厳しい取り調べを受けている最中の被拘束者にとっては、親しい人と顔をあわせる機会を得ることが大きな励みになるでしょう。
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5、早めに弁護士に接見の依頼を
刑事事件の被疑者・被告人として家族が身柄を拘束されてしまったなら、直ちに弁護士に相談して接見を依頼しましょう。
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(1)弁護士は接見に関する制限が少ない
逮捕直後の72時間は、たとえ家族であっても面会が許されません。検察官による勾留請求を回避して長期の身柄拘束を防ぐためには、このタイミングでのアドバイスがかかせないのに、面会が許されないという状況は被拘束者にとって大きな不利益になります。
弁護士には、日本国憲法や刑事訴訟法によって独自の接見交通権が保障されているため、逮捕直後のタイミングでも接見が可能です。取り調べに対する姿勢や黙秘権の行使など必要なアドバイスが得られるうえに、今後の見通しや捜査・処遇に対する防御策の教示も受けられるので、早急に弁護士を派遣して接見してもらうのが最善策です。 -
(2)接見禁止でも弁護士は接見可能
逃亡や証拠隠滅などが疑われて接見禁止を受けてしまった場合でも、弁護士は制限なしで接見可能です。弁護士との接見交通は被拘束者に認められた基本的人権のひとつであり、裁判所・裁判官であっても侵すことはできません。
弁護士を通じて被拘束者の様子や事件の状況を知ることができるうえに差し入れなども依頼できるので、接見禁止を受けた場合は弁護士の存在が被拘束者と家族をつなぐ架け橋になるでしょう。
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6、まとめ
逮捕・勾留によって身柄を拘束されている被疑者・被告人が、弁護人や家族などと面会をすることができる制度を「接見交通」といいます。被拘束者だけでなく、弁護人や家族にも広く認められる制度ですが、家族などの場合は一定の制限が設けられるほか、逃亡や証拠隠滅を疑われると接見禁止を受けてしまうこともあります。
弁護士には独自の接見交通権が保障されているため、制限なく被拘束者との接見が可能です。逮捕直後のタイミングや接見禁止が命じられたケースでは、弁護士のサポートが必須となるでしょう。
ご家族が逮捕・勾留されてしまった場合は、素早い接見によって被拘束者にアドバイスを伝えなければなりません。直ちに刑事事件の解決実績が豊富なベリーベスト法律事務所にご相談ください。
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