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弁護士コラム

2022年01月20日
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  • 責任能力

責任能力とは? 刑事裁判と責任能力の関係や無罪になる理由とは?

責任能力とは? 刑事裁判と責任能力の関係や無罪になる理由とは?
責任能力とは? 刑事裁判と責任能力の関係や無罪になる理由とは?

刑罰は、罪を犯したことに対する制裁としての意味と、その人が再び罪を犯すことのないようにする教育刑としての意味があります。しかし「責任能力」がない者は、自分が何をしたのかを理解できず、刑罰を通じて自分の行動を悔い改めて正すこともできません。そこで刑法では、責任能力のない者がした犯罪行為について処罰しないと定めています。

では、責任能力とは具体的にどのような能力を指すのでしょうか?被疑者や被告人に責任能力があるかどうかは、誰がいつ、どのように判断するのでしょうか?

本コラムでは責任能力をテーマに、責任能力が争点になるケースや責任能力の有無が判断された後の流れなどについて解説します。

1、刑法における責任能力

刑法の原則的な考え方に「責任主義」があります。行為者を非難できる場合でなければ刑罰を科すことができないとする考え方です。

行為者を非難できる場合とは、善悪の区別がつき、かつ自分の行動を抑制する力があることをいいます。これを「責任能力」といい、責任能力が備わっているのにあえて犯罪行為を選択した場合にはじめて行為者を処罰することができます。

刑法は、「心神喪失者」と「14歳未満の者」については、責任能力が欠けるため責任阻却を認め、「心神耗弱者」については、責任能力は存在するものの著しく限定されているため、責任減少を認めて刑の必要的減軽を規定しています。

  1. (1)心神喪失とはどのような状態か

    刑法第39条第1項は、「心神喪失者の行為は、罰しない」としています。

    心神喪失とは、精神の障害により、物事の是非善悪を判断する能力(事理弁識能力)や、それに従って行動を制御する能力(行動制御能力)が全くない状態をいいます。2つの能力は、両方が欠けていても、どちらかが欠けていても心神喪失が認められます。

    心神喪失者は、責任能力が全くありません。そのため起訴前の段階であれば、検察官は不起訴処分を下します。起訴され刑事裁判になっても、裁判官が無罪の判決を下します。

    ただし、心神喪失が認められるのは非常にまれなケースです。

  2. (2)心神耗弱とはどのような状態か

    刑法第39条第2項は、「心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する」としています。

    心神耗弱(しんしんこうじゃく)とは、事理弁識能力または行動制御能力が著しく限定されている状態をいいます。心神耗弱の場合は、完全責任能力者がした行為と同様の非難を加えることはできませんが、責任能力が全くないわけではありません。そのため限定的に責任能力があるとして、刑が減軽されるにとどまります。

    減軽は刑法第68条に規定されており、有期懲役・禁錮はその長期および短期が、罰金はその多額および寡額(かがく)が、それぞれ2分の1に減じられて量刑が言い渡されます。

  3. (3)未成年者の責任能力

    刑法第41条は「14歳に満たない者の行為は、罰しない」としています。

    14歳未満の者が犯罪にあたる行為をしても責任能力がないため、逮捕されることや、処罰されることはありません。もっとも、触法少年として家庭裁判所の審判を受け、児童自立支援施設や少年院に送致される場合はあります。

    14歳以上20歳未満の者については責任能力が認められるため、逮捕されたり処罰されたりする場合があります。ただし心身が未成熟であり、人格矯正による改善更生も期待できることから、原則として少年法にもとづき家庭裁判所の保護処分を受けます。

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2、責任能力が争点になるケース

具体的にどのようなケースで責任能力が争点となるのでしょうか?

  1. (1)精神的な疾患を抱えているケース

    典型的なケースは統合失調症や躁(そう)うつ病などの精神的な疾患を抱えているケースです。著しい症状が出ており、妄想や幻覚、幻聴などに支配されたことが原因で犯行に至った場合は、心神喪失や心神耗弱が認定される可能性があります。

    ただし、これらの疾患があるからといって、自動的に責任能力が否定されるわけではありません。犯行前の生活状況や犯行当時の病状、犯行の動機、犯行様態などをもとに総合的に判断されます。

  2. (2)泥酔状態や薬物を乱用しているケース

    泥酔していて犯行時の記憶がない、覚醒剤などの薬物を乱用していたなどのケースも、責任能力が争われる場合があります。

    ただし、罪を犯す目的で大量の酒を飲む、薬物を摂取するなどし、結果として判断能力を欠く状態に陥っても、完全責任能力が認められます

  3. (3)知的障害を抱えているケース

    知的障害(精神遅滞)も責任能力が争点となる場合があります。

    知的障害といっても、重度から軽度までその程度はさまざまです。重度であれば心神喪失となる可能性がありますが、中度から軽度であれば心神耗弱で刑が減軽されるにとどまるか、完全責任能力があると判断される場合があります

  4. (4)発達障害を抱えているケース

    自閉症やアスペルガー症候群などの発達障害も、責任能力の有無が争点になりやすいケースです。発達障害のみで心神喪失は認められにくいですが、心神耗弱が認められるケースがまれにあります

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3、責任能力は誰がいつ判断するのか

責任能力があるかどうかを最終的に判断するのは法律家です。起訴される前であれば検察官が、起訴されて裁判になった後は裁判官が判断します。

ただし、検察官や裁判官は精神医学の専門家ではないため、精神科医による鑑定結果や意見を参考にします

  1. (1)起訴前に判断するのは検察官

    検察官が事件の資料を見たり被疑者を取り調べたりする中で、被疑者の精神障害が事件に影響したと疑われる場合には、精神科医に鑑定を依頼します。

    検察官は精神鑑定書や精神科医の意見を参考にして責任能力の有無や程度を判断し、それを踏まえて起訴・不起訴を決定します。

    起訴前の鑑定には、簡易鑑定と起訴前本鑑定の2種類があります

    簡易鑑定は、勾留期間中に医師が簡単な問診や検査を行う鑑定です。通常は1回に限り、1日以内で実施されます。簡易鑑定の実施にあたり被疑者は同意を求められますが、同意しなくても裁判所が発付する鑑定処分許可状によって強制的に実施される場合があります。

    起訴前本鑑定は、被疑者を精神病棟や拘置所に1~3か月留置し(鑑定留置)、医師が継続的に診察する鑑定です。鑑定の実施にあたり、裁判所が発付する鑑定留置状と鑑定処分許可状が必要です。

  2. (2)起訴後に判断するのは裁判所

    起訴され裁判になった場合も、裁判所主導で被告人の精神鑑定が実施される場合があります
    これを公判鑑定といいます。裁判所は精神科医に鑑定と証人尋問を要請し、その結果を参考にして責任能力の有無や程度を判断します。

    弁護士から裁判所への鑑定請求を行う場合もあります。ただし、起訴前本鑑定が実施されていると認められない場合が多く、不利な鑑定結果が出ても証拠にしないという選択ができません。

    また、弁護士が直接、精神科医に鑑定を依頼する場合があります(私的鑑定)。私的鑑定では、鑑定結果を見てから証拠として提出するかどうかを決めることができます。
    一方で、医師と本人の面接時間に制限があるため、鑑定結果の信用性が低いと指摘されるおそれがあります。

  3. (3)責任能力を争う場合の弁護士の活動

    弁護士は責任能力に問題がある証拠を確保し、検察官や裁判所に提出します。具体的には、精神科の通院歴を調べて取り寄せたカルテや、責任能力の有無や程度について書かれた主治医の意見書などが該当します。

    また、責任能力が争点となる事件の被疑者には、弁護士との接見中や捜査機関からの取り調べ中に異常な言動が見られるケースが多くあります。そこで接見中は本人の様子を動画で撮影しておき、捜査機関に対しては取り調べの様子や音声を録音・録画するよう要請します。動画や音声は後の裁判で裁判官や裁判員に確認してもらいます。

    ほかにも、医師や家族に出廷を求め、被告人の日頃の言動や服薬状況について証言してもらう場合などがあります。

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4、責任能力が判断された場合の流れ

責任能力の有無について判断がなされた後は、どのような流れで刑事手続きが進むのでしょうか?

  1. (1)責任能力があると判断された場合

    ほかの刑事事件と同様に、通常の刑事手続きが取られます。

    検察官が起訴した場合は刑事裁判を待つ身となり、保釈されない限りは裁判が結審するまで身柄の拘束が続きます。刑事裁判では、限定責任能力があるのか、完全責任能力があるのかを踏まえ、裁判官が有罪または無罪と、有罪の場合の量刑を言い渡します。

    責任能力があると判断された場合でも、弁護士の活動によって不起訴処分や執行猶予つきの判決を得られる可能性は残されています。不起訴処分になれば刑事裁判にかけられることなく、前科もつきません。執行猶予つきの判決になれば前科はつくものの、社会生活の中での更生を図ることができます。

    具体的には、弁護士が次のような事実について客観的な証拠を集め、証拠をもとに検察官・裁判官を説得します。

    • 被疑者・被告人が精神的な問題を自覚して専門機関の治療を受けるなど再犯防止に向けて努力している事実
    • 被害者に真摯(しんし)な謝罪と弁済を行い、示談が成立した事実
    • 被疑者・被告人の家族の指導監督が期待できる事実
  2. (2)責任能力がないと判断された場合

    責任能力が否定され、検察官による不起訴処分または裁判官による無罪判決が下されると、通常であればその時点で刑事手続きが終了し、社会復帰を果たすことができます。

    しかし一定の重大な他害行為をした者については、そのまま社会に戻せばまた同じ犯罪行為をして被害者を生み出す危険があり、行為者本人にとっても社会にとっても不幸です。

    そこで心神喪失などの影響で重大な他害行為をした者のうち、社会復帰のための専門的な処遇が必要な者については、「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」(通称:医療観察法)にもとづく制度により、指定医療機関で医療の措置を受けることになります。
    重大な他害行為とは、殺人、放火、強盗、強制性交等、強制わいせつ、傷害にあたる行為のことです。

  3. (3)医療観察法による手続きの流れ

    まず検察官が地方裁判所に申し立てを行います。申し立てを受けた裁判所は、裁判官と精神科医の各1名からなる合議体で審判を行い、ほかの精神科医による鑑定結果をもとに、入院決定、通院決定、医療を行わない旨の決定などを言い渡します。

    令和元年版の犯罪白書によれば、平成30年における審判では74.5%が入院決定、8.1%が通院決定でした。

    したがって多くのケースでは入院することになり、保護観察所が病院や地域の関係機関と連携して生活環境の調整を行うなど、退院と社会復帰に向けた継続的な取り組みが実施されます。

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5、まとめ

精神の障害が影響して犯罪行為に及んでしまった場合は、責任能力を争い不起訴処分や無罪判決を目指すことができます。しかし、責任能力がない、または著しく限定されていると認められるのは決して簡単ではありません。
捜査機関に対して不用意な主張をすれば、刑罰を免れるための言い訳と捉えられかねないため、事件の当初から弁護士のサポートを得て、客観的な主張を展開する必要があります。精神の障害が原因となって事件を起こしてしまいお困りであれば、刑事事件の解決実績が豊富なベリーベスト法律事務所へご相談ください。

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監修者
萩原 達也
弁護士会:
第一東京弁護士会
登録番号:
29985

ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
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※本コラムは公開日当時の内容です。
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