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加害者家族が謝罪をする方法とは? 謝罪文を書くポイント
自分の家族が罪を犯して誰かを傷つけてしまったとき、家族としてどうしても被害者へ謝罪したいと考えることがあるかもしれません。
刑事事件では、加害者本人だけでなく加害者家族からも謝罪を行うことで、被害者の気持ちを動かし、事態を好転させるきっかけとなる場合があります。
ただし、加害者家族が謝罪するべきか、その場合いつどの方法で行うべきなのかはケース・バイ・ケースです。また謝罪に際して気をつけるべきポイントもあります。本コラムでは、加害者家族からの謝罪の意義や方法、注意点などを解説します。
1、加害者家族が行う被害者の方へ謝罪について
加害者の配偶者や親、子どもといった家族は、被害者に危害を与えた本人ではありません。事件の犯人でもないのに、被害者に対して謝罪する必要があるのでしょうか?
この点について、法的には、家族はおろか本人でさえ謝罪する義務はありません。しかし道義的には、まずは加害者本人が謝罪することが大切です。本人に謝罪する気持ちがないのに加害者家族だけがいくら謝罪しても、被害者には「本人には謝る気がないのだろう」と映り、処罰感情を増幅させてしまうおそれがあります。
本人が謝罪したうえで、状況によっては加害者家族も謝罪を検討します。事件の内容や刑事手続きの状況を踏まえて、弁護士から「ご家族にも謝罪してほしい」と言われる場合もあります。加害者家族自身が、「自分の家族が人に危害を加えてしまったのだから、すぐにでも謝りたい」と考えることもあるでしょう。
ただし、むやみに加害者家族が被害者に接触することで、被害者をさらに傷つけたり怖がらせたりするケースがあり、そうなれば謝罪は独りよがりなものになってしまいます。そのため加害者家族が謝罪するべきか、謝罪するべき状況だとしていつどのようにするのかは、弁護士に相談のうえ慎重に検討しましょう。何よりも優先されるべきは被害者の心情です。
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2、加害者家族による謝罪の方法
加害者家族が謝罪する方法は一般的には2つ考えられます。被害者に直接謝罪する方法と、謝罪文を作成して渡す方法です。
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(1)直接会って謝罪する
もともとの知人などで被害者の住居が分かっている場合や、店舗での万引きなどで被害店舗が分かっている場合などに、自宅や店舗へ直接赴いて謝罪する方法です。直接謝罪する場合は、黒色で無地のスーツなど地味で失礼のない服装で訪問する、菓子折りを持参するといった配慮も必要でしょう。
直接の謝罪は被害者から厳しい言葉を投げかけられる可能性があるため強い覚悟が必要ですが、その分誠意が伝わりやすいといえます。
ただし、加害者家族は被害者にとって、加害者側の人間です。また被害者は被害に遭ったことで非常に不安定な精神状態にあります。本人ではないとはいえ、加害者家族が直接会うことで被害者を怖がらせたり事件を思い出させたりする場合もあるでしょう。事件の内容にもよりますが、加害者家族が直接謝罪をするのは避けたほうがよいケースもあります。 -
(2)謝罪文を送る
加害者家族が作成した謝罪文を送る方法です。被害者の居所を知らずに直接の謝罪ができない場合や直接会うことを避けたほうがよい場合などには、謝罪文を送る方法を検討することとなります。
直接の謝罪では、緊張や申し訳ない気持ちなどで本来言いたかった言葉が出てこない場合があります。しかし謝罪文であればじっくりと考えながら言葉を選び、何度も見直すことができるため、本当の気持ちを伝えやすいといえます。また、加害者家族を目の前にして精神を揺さぶってしまい被害者に負担をかけてしまう事態を避けるという意味でも、安全な方法です。
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3、謝罪文の作成にあたっての注意点
謝罪文の作成にあたっての注意点を確認しましょう。
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(1)謝罪文に盛り込むべき要素
前提として、謝罪文の内容に決まりはありません。自らの言葉で被害者に謝罪の意思を伝えることが重要ですので、テンプレートをそのまま使用したような謝罪文は、かえって逆効果になってしまうことも考えられます。
そのため、以下で記載するのは謝罪文の内容の一例でしかありません。以下の内容を参考にしつつ、最終的には自分なりの言葉で謝罪文を作成しましょう。
● 謝罪の気持ち
謝罪文である以上、まずは謝罪の言葉を述べるところから始めることが望ましいです。
● 被害者の状態を心配する言葉
家族が被害者に負わせた心身の傷の状態について「お加減はいかがでしょうか?」など被害者を心配する言葉を続けます。家族の行為がいかに愚かであったか、それにより被害者にどんなつらい思いをさせたのかなど被害者の気持ちを推し量る文章も記載するとよいでしょう。
● 再犯防止に向けた具体策
本人が今後二度と同様の行為をしないよう、家族としてどのように監督するのかを記載します。たとえば性犯罪なら性依存の治療プログラムを受けさせる、泥酔による暴行事件なら断酒させるといったことです。ただし、実行しなければ意味がありませんし、言ったことをやらないのでは被害者の不信感を増幅させてしまいます。確実に実行できる方策だけを書いてください。
● 被害弁償の意向
可能であれば、与えた損害について被害弁償する気持ちがある旨を記載します。ただし被害弁償は加害者側の義務なので、あたかも厚意で行うとでも言いたげな印象を与えないよう、「当然のことですが」などと述べたうえで意向を伝えましょう。
なお、被害弁償をすべきなのは基本的にはあくまでも加害者本人です。加害者家族の立場からは、加害者自身による被害弁償が困難な場合などにサポートをするというような観点で記載する方がよいと考えられます。
● 署名・捺印
最後にもう一度謝罪し、文章の末尾に作成日を記入したうえで署名・捺印します。 -
(2)謝罪文を書くときの注意点
作成にあたっては以下の点に特に注意しましょう。
● 同情をひくような文章を書かない
同情をひく事情を記載して被害者の心情を無視することがないよう注意してください。確かに自分の家族が罪を犯したことで、加害者家族もつらい思いをしているでしょう。しかし、もっともつらい思いをしているのは被害者であり、加害者家族のつらい状況の責任を取るべき者がいるとしたら加害者自身です。そのため、加害者家族の気持ちも考慮してほしいと受け取られかねない表現は避けるべきでしょう。
● 具体的な示談金額は書かない
謝罪文はあくまでも謝罪や反省の意思を伝えるための手紙です。示談交渉の場ではないので具体的な示談金額や支払時期などは盛り込まないようにしましょう。ただし、被害弁償を本当にしてもらえるのかは被害者も不安な点なので、「被害弁償についてはあらためて弁護士から連絡します」など被害者を安心させる文言を入れておきます。
● その他
被害者への謝罪文は何回も見返して誤字脱字がないよう注意しましょう。誤字脱字があれば必ず書き直してください。二重線や黒塗り、修正ペンなどを使って簡単に修正しようとすると、事件を軽視しているような印象を与えてしまいます。また、便せんは、白または薄いベージュで無地のものを選びましょう。柄入りのものを使えば軽い印象になってしまいますし、ノートの切れ端などを使うと当然失礼にあたります。
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4、謝罪文を送るのは早い方が良い
加害者家族から謝罪文を送るタイミングはできるだけ早い方がよいでしょう。
被害者からは、早くに謝罪したことで「刑事処分を回避するためだろう」と批判されることはあります。一方で、謝罪が遅ければ「弁護士に説得されて渋々謝罪しているだけだろう」と批判されるかもしれません。
しかしこのような批判は、被害に遭い、心身に傷を負った被害者の気持ちを考えれば無理はありません。謝罪するタイミングが早くても遅くても批判されるのは覚悟のうえで、やはり謝罪の気持ちは早く伝えるべきです。逮捕・勾留された場合の刑事手続きは厳格な時間制限のもと進められるため、早いほど刑事処分へ与える効果も高くなります。
とはいえ、事件の内容や被害状況によっては適切な時期を見極める必要があります。刑事処分への影響という点からも、本人が謝罪せずに家族だけが謝っても不起訴や刑の減軽を得ることはできないでしょう。本人が反省していないのなら更生や再犯防止に期待できないからです。
これらの点を踏まえると、加害者家族が謝罪文をいつ送るのかを判断するのは簡単ではありません。焦って送るのではなく、弁護士に相談して送付時期を判断しましょう。
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5、謝罪が刑事事件の処分に与える影響
被害者への謝罪は刑事処分にどのような影響を与えるのでしょうか?
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(1)不起訴や執行猶予つき判決、減軽の可能性が生じる
加害者本人が謝罪し、被害者から許しを得ることができれば、反省の姿勢があることや再犯のおそれが低いことが認められ、刑事処分によい影響を与える可能性があります。検察官が起訴・不起訴を判断する前に謝罪して被害者と示談ができた場合は、検察官が不起訴とする可能性が高まります。不起訴になれば刑事裁判が開かれず、前科がつくこともありません。
起訴された後に謝罪した場合でも、執行猶予つき判決や刑の減軽の可能性を高めることができます。執行猶予つき判決になれば社会内での更生に努めることができ、刑が減軽されれば社会復帰が早まります。
加害者家族からの謝罪は、本人の反省を示すことにはならないため、それ自体が検察官や裁判官から評価されるわけではないと考えられます。しかし謝罪の中で、加害者家族が再犯防止のサポートを行うと約束したり、本人とは異なる視点から謝罪を示したりすることで、被害者に心境の変化をもたらす可能性があります。被害者の処罰感情が緩和され、被害届や告訴を取り下げる、示談に応じるといった展開があれば、結果的に刑事処分の軽減につながります。 -
(2)刑事処分への影響を考慮するなら示談が不可欠
刑事処分を少しでも軽くしてもらいたいと願うなら、本人が謝罪したうえで示談にしてもらう必要があります。刑事事件の示談とは、被害者への賠償を尽くして被害回復を図ることです。謝罪しただけで被害弁償をしていない場合は刑事処分への影響は限定的です。謝罪すらしていないケースと比べると反省の姿勢は認められますが、被害弁償がなければ被害回復がなされたとはいえません。
謝罪もせずに示談交渉を始めたいと申し出ても受け入れてもらえない可能性が高いため、通常、示談交渉は謝罪をした後に行います。また実際の交渉は、適正な賠償額がいくらか、示談書に何を盛り込むべきかといった判断が必要となるため、示談金の相場や刑事手続きへの影響を熟知した弁護士に一任するべきです。
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6、謝罪文を書くときは弁護士に相談するべき?
加害者家族が謝罪文を送りたい場合は弁護士へ相談のうえ作成しましょう。
理由として、まず送付先である被害者の住所が分からない場合には、加害者側がこれを知ることは困難です。被害者は加害者やその家族に自分の個人情報を知られたくないと考えるケースが多数であり、捜査機関も被害者の考えを尊重して個人情報を教えることはありません。そのため、多くのケースでは、弁護士が捜査機関を通じて被害者に謝罪文を送りたい旨を伝え、被害者が弁護士に限り住所を教えても構わないと言ってくれたら、弁護士が加害者本人や家族の謝罪文を送る流れとなります。
被害者の住所が分かる場合でも、謝罪文を送るべきか、いつ送るべきかについて、加害者家族が適切に判断することは容易ではないかもしれません。弁護士が事件の状況を見つつ慎重に判断するほうがよいでしょう。
また弁護士が内容を事前にチェックすることで、家族の謝罪の気持ちが伝わる内容なのか、被害者感情を逆なでするような文言が含まれていないかなどを判断できるため、誠意が伝わりやすい謝罪文になります。何を書けばよいのか分からない場合も、弁護士のアドバイスを受けながら書くことで、自分の気持ちや家族として再犯防止に向けて何をするべきかが見えてくるでしょう。
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7、まとめ
被害者への謝罪は何よりもまずは加害者本人が行うことが大切ですが、そのうえで加害者家族からの謝罪も検討するケースがあります。実際に謝罪するときは、被害者の負担を考慮して謝罪文を送るケースが多いでしょう。被害者が加害者家族からの謝罪文で心が動かされ、加害者を許そうという気持ちになってくれることも考えられますので、家族が果たす役割は大きいといえます。
ただし、謝罪文の作成は被害者の立場に寄り添った繊細な配慮が必要となるため、被害者へ謝罪したいとお考えであれば弁護士へ相談するのが適切です。刑事弁護の解決実績が豊富なベリーベスト法律事務所がサポートしますので、まずはご相談ください。
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