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弁護士コラム

2022年08月10日
  • その他
  • 刑事罰

刑事罰とは? 行政罰との違いや種類、刑の消滅方法などまとめ

刑事罰とは? 行政罰との違いや種類、刑の消滅方法などまとめ
刑事罰とは? 行政罰との違いや種類、刑の消滅方法などまとめ

刑事事件を起こしてしまったとき、本人やご家族にとって「どんな刑事罰を受けるのか?」は大きな関心事であるはずです。

刑事事件が報道される際には、死刑判決や懲役○年といったケースが世間の耳目を集めますが、刑事罰は死刑や懲役のほかにも禁錮や罰金、拘留、科料といった複数の種類があり、すべての内容を詳しく知る方は多くないでしょう。また同じく「罰」がつく用語に「行政罰」もありますが、刑事罰とは何が違うのか疑問に感じるかもしれません。

本コラムでは刑事罰の目的や種類を説明しながら、刑事罰による不利益や刑の消滅の仕組みなどについて解説します。あわせて、刑事罰に関するよくある疑問も確認しましょう。

1、刑事罰とは

刑事罰とは、犯罪行為をして刑事裁判にかけられ、有罪判決が確定した人に対して執行される不利益処分のことです。

ある行為を犯罪として刑事罰を科すには、刑事罰の対象となる犯罪行為と刑事罰の内容があらかじめ法律で定められていなければなりません。これを罪刑法定主義といいます。したがって、法律に規定されていない行為によって刑事罰を受けることはありません。

日本の刑事罰は刑法第9条において、主刑が死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留、科料の6種類、付加刑が没収の1種類と定められています。これらの刑事罰は法益に応じて生命刑、自由刑、財産刑に分類されます。生命刑は受刑者の生命を奪う刑、自由刑は受刑者の身体の自由を奪う刑、財産刑は受刑者の財産を奪う刑のことです。

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2、刑事罰の目的

罪を犯した人はなぜ刑事罰を受けるのでしょうか?刑法では刑事罰の目的は定義されていませんが、学問的には以下の2つの考え方があります。

  1. (1)応報刑論

    応報刑論とは、犯罪行為をした者は相応の報いを受けるべきだという考え方です

    古代バビロニアのハムラビ法典には「目には目を、歯には歯を」という言葉があります。誰かを傷つけたら相応の苦痛によって償わなければならないとする考え方であり、応報刑論を説明するうえでしばしば例示される言葉です。応報刑論によると、刑事罰の重さは犯した罪の重さに相応するので、犯罪行為に対して重すぎる刑事罰を科せられることはありません。

    しかし応報刑論を中心に考えると、犯罪に見合った刑事罰を与えるだけでは、犯罪の抑止効果に期待できず、かえって犯罪が増えることにもなりかねないとの指摘があります。罪を犯した者が長期にわたって刑務所に収監され社会から隔離された生活を送ることで、出所後に社会的な居場所がなくなり、自暴自棄になって再び犯罪に手を染めるおそれがあるからです。

  2. (2)目的刑論

    応報刑論と相対する概念が目的刑論です。刑事罰は犯罪に対する応報ではなく、社会秩序を維持して犯罪を予防することを目的として科せられるべきとする考え方をいいます

    目的刑論による犯罪の予防には、刑事罰には一般市民に犯罪を思いとどまらせる心理的効果があるという意味と、罪を犯した者を教育改善して社会復帰させ、治安を回復させるという意味があります。後者を教育刑主義ともいいます。

    目的刑論を中心に考えると、そもそも改善更生が期待できない被告人には刑事罰を科さなくてもよいのかとの問題が生じます。すると、禁止されている被害者・遺族による自力救済(個人的な復讐(ふくしゅう))を抑止できなくなるおそれがあります。

    そこで現在の日本では、応報刑論と目的刑論はどちらかひとつではなく、両者をあわせて考えるのが支配的です。裁判所も、犯した罪の刑事罰として妥当と考えられる範囲内で、更生の可能性を加味して最終的な刑を言い渡しています。

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3、刑事罰と行政罰の違い

刑事罰は、罪を犯したときに科される死刑や懲役、禁錮、罰金などの刑をいい、いずれも前科として扱われます。検察官が起訴し、刑事裁判の審理を経て裁判官が言い渡します。

行政罰とは、行政上の義務違反行為に対する罰のことです。行政罰は大別して「行政刑罰」と「秩序罰」の2つがあります。

行政刑罰とは、行政上の重大な義務違反に対して科される刑事罰のことです。刑事訴訟法が適用され、裁判にて刑事罰が言い渡されます。行政刑罰については、非刑罰的処理の仕組みとして道路交通法上の反則金制度があります。刑事手続きの簡素化のために、本来であれば刑事罰を受けて前科がつくところ、軽微な違反であれば反則金の納付によって刑事罰を免れ、前科もつかないという仕組みです。

秩序罰とは、行政上の軽微な義務違反に対して科される金銭的制裁のことをいい、国や地方公共団体が国民に命ずる「過料」が該当します。過料が適用されるのはたとえば住民票の届出義務違反などですが、犯罪とまではいえないため、刑法や刑事訴訟法の適用を受けず、前科もつきません。

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4、刑事罰の種類

刑事罰は死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留、科料、没収の7種類です。それぞれの刑の内容を解説します。

  1. (1)死刑

    死刑は受刑者の生命を奪う刑事罰です。人の生命というもっとも重大な法益を奪うことから究極の刑とも呼ばれており、外患誘致罪(刑法第81条)や現住建造物等放火罪(同第108条)、殺人罪(同第199条)などごく一部の犯罪にのみ規定されています。日本の死刑は刑法第11条1項で「絞首刑」と定められています。

  2. (2)懲役刑

    懲役刑は刑務所に収監して刑務作業(強制労働)に従事させる刑事罰をいいます。身体を拘束されて自由を奪われる自由刑の一種です。

    懲役刑には期間を定めない無期懲役と、1カ月以上20年以下の期間を定めて言い渡される有期懲役があります。つまり有期懲役の上限は20年ですが、刑法14条による加減の規定や、刑法第45条による併合罪(確定判決を経ていない2個以上の犯罪)の規定により、最長で30年になる場合があります。

  3. (3)禁錮刑

    禁錮刑は刑務所に収監する刑事罰のことをいいます。懲役刑と同じ自由刑のひとつです。

    禁錮刑も期間の定めのない無期禁錮と、1カ月以上20年以下の期間を定めて言い渡される有期禁錮があります。禁錮刑は懲役刑と異なり刑務作業はありませんが、受刑者が希望すれば刑務作業に従事できます。何もしないでただ座って過ごすのを苦痛に感じ、希望して刑務作業に従事する受刑者が多いようです。

    また、禁錮刑は再犯加重の規定がありません。懲役に処せられた者が執行を終わった日または執行免除の日から5年以内に罪を犯し、さらに有期懲役に処するときは再犯として扱われて刑が加重されます(刑法第56条)。しかし禁錮に処せられた者が同じく5年以内に罪を犯して有期懲役になった場合や、懲役に処せられた者が5年以内に罪を犯して禁錮刑になっても再犯として刑が加重される規定はありません。

  4. (4)罰金刑

    罰金刑は国に対して金銭を納めさせる刑事罰のことです。受刑者の財産を奪う財産刑のひとつにあたります。

    罰金の額は1万円が下限ですが、刑法第15条により1万円未満に減軽することも可能です。上限は各犯罪の条文で「○万円以下」と定められています。

    罰金を納付できない場合は、労役場に留置されて刑務作業に従事します。労役場留置の期間は1日以上2年以下で、日当換算して言い渡された罰金の額に到達するまでの間です。1日あたりの換算額は裁判所が言い渡しますが、多くの場合は1日5000円です。たとえば罰金50万円を納付できないと100日間の労役場留置となります。

  5. (5)拘留

    拘留は1日以上30日未満の期間を定めて刑務所に収監する刑事罰です。懲役刑や禁錮刑と同じ自由刑の一種ですが、無期刑は存在しません。また懲役刑のように刑務作業を強制されることもありません。

    なお、被疑者が逮捕された場合に引き続き身柄を拘束されることを「勾留」といい、同じく「こうりゅう」と読みますが、拘留とは異なります。拘留が刑事罰であるのに対し、勾留は刑事手続き上の強制措置であって刑事罰ではありません。

  6. (6)科料

    科料は罰金刑と同じく、受刑者から財産を奪う財産刑の一種です。罰金刑が1万円以上なのに対し、科料は1000円以上1万円未満と少額です。しかし刑事罰なので前科がつくことに変わりはありません。また科料を納付できない場合は罰金刑同様に労役場留置となります。

    なお、行政罰(秩序罰)である過料も「かりょう」と読みますが、過料は刑事罰ではないので前科がつきません。

  7. (7)没収

    没収とは物の所有権を剥奪して国庫に帰属させる処分のことです。死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留、科料が主刑であるのに対し、没収は付加刑です。付加刑とは主刑に付加してのみ言い渡される刑事罰をいい、単独で言い渡されることはありません。

    没収の対象物は、収賄事件の賄賂や薬物事件の違法薬物、殺人事件で使用した包丁、窃盗事件で得た現金で購入した物品などがあります。

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5、刑事罰による不利益

刑事罰を受けると、懲役・禁錮・拘留の場合は社会から隔離されて自由を制限され、罰金・科料の場合は財産を奪われて経済的な損失を受けることになります。しかし刑事罰の影響はこれだけではありません。刑を終えて、あるいは執行猶予がついて社会生活に戻る際にもさまざまな不利益が生じます。

  1. (1)資格・職業の制限を受ける

    刑事罰を受けた経歴、すなわち前科が「欠格事由」や「免許取り消し事由」にあたり、一定の資格や職業で制限を受ける場合があります。資格を取得できない、すでにある資格を剥奪される、一定期間はその職業に就けないなどの制限です

    前科による制限を受ける場合がある職業の一部を以下に挙げます。

    • 医師、薬剤師、看護師などの医療資格者
    • 弁護士、司法書士、公認会計士などの士業
    • 教員や保育士など教育関係者
    • 警備員
    • 生命保険募集人、損害保険代理店
    • 古物商
    • 国家公務員、地方公務員
    など
  2. (2)内定取り消しや解雇となるおそれ

    内定取り消しや解雇の有効性は厳しく判断されるため、捜査機関から犯罪の疑いをかけられている、逮捕されたといった段階で内定取り消しや解雇が直ちに認められるわけではありません。

    しかし刑事罰を受けた事実があると話は変わります。多くの会社では就業規則などで有罪判決を受けた事実を解雇事由として定めているため、刑事罰が確定すると勤務先から解雇されるおそれが大きいでしょう。

    また就職や転職にあたり、応募先の会社が採用の可否を判断する際に前科が影響する場合があります。賞罰欄がある履歴書の提出を求められた際には前科を記載しなければなりません。面接で前科の有無について確認された場合も正直に答える必要があります。賞罰欄に前科を記載しなかった、面接で虚偽の申告をしたといったケースでは、重大な経歴詐称とみなされて内定取り消しや解雇を言い渡されてしまうおそれがあります。

  3. (3)社会的な地位に就きにくい

    前科がつくことで、一定期間は医師など社会的な地位が高いとされる国家資格職に就くことが難しくなります。また、一定の前科があると会社法第331条が定める取締役の欠格事由にあたるため、会社の取締役になることもできません。業種によっては適格性がないなどとして事業の認可がおりない場合があるので、予定していたビジネスに影響を与えることも考えられます。

    さらに収賄罪など一定の前科があると被選挙権が停止されます。そうでなくても立候補者としての信用低下は避けられないため選挙への立候補を断念せざるを得なくなる場合があります。

  4. (4)海外渡航や留学ができなくなる

    海外渡航や留学の際にはまず日本から出国するためにパスポートが必要ですが、一定の前科があると旅券法第13条の規定によりパスポートが発給されない場合があります。パスポートが発給されても、渡航先からの入国許可を受けるためにビザが必要となる場合があります。入国許可基準は渡航先によって異なりますが、前科があるとビザを取得できない国があるため注意が必要です。

    パスポートやビザの発給制限を受けることで、海外出張できずに会社に前科が知られてしまう、留学できない、親族の結婚式に参列できないといった不利益が生じるでしょう。

  5. (5)社会的信用が低下する

    前科による法律上の不利益を受けなかったとしても、事実上の不利益が生じる場合があります。その最たるものがマスコミ報道による社会的信用の低下です

    たとえば鉄道会社の社員が鉄道内で痴漢をし、マスコミ報道された場合には鉄道会社の一員としての信用低下は避けられません。仮に解雇要件を満たさなかったとしても職場に居づらくなり、自ら退職を選択するケースもあるでしょう。

    報道については、昨今ではインターネット上にもニュース記事が掲載されることが多く、半永久的に前科の事実がさらされるおそれがあります。

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6、刑事罰における刑の消滅とは

刑事罰を受けた経歴があるとさまざまな不利益を受けますが、その不利益が生涯にわたって続くのであれば、かえって本人から更生の機会を失わせることになりかねず、ひいては社会全体の不利益にもつながるでしょう。そこで存在するのが「刑の消滅」という制度です。刑の消滅とは、一定の要件を満たすことにより、判決で言い渡された刑の効力が失われることをいいます。

  1. (1)刑の消滅の要件

    刑の消滅は前科の内容によって要件が異なります

    ● 執行猶予のついた懲役・禁錮刑だった場合
    執行猶予が取り消されることなく猶予期間を過ごし終えたとき

    ● 執行猶予のつかない懲役・禁錮刑(実刑)だった場合
    刑の執行を終わり、または執行の免除を受けてから罰金以上の刑に処せられないで10年が経過したとき

    ● 罰金刑だった場合
    刑の執行を終わり、または執行の免除を受けてから罰金以上の刑に処せられないで5年が経過したとき


    「刑の執行を終わり」とは、刑期満了により出所した場合や、仮釈放を取り消されることなくその期間を満了した場合などを指します。「執行の免除」とは恩赦や刑の時効(刑法第31条)のことを指します。しかし該当するのは非常にまれなケースなので、実質的には執行猶予期間の満了や、出所後・仮釈放期間後から10年または5年の経過が要件になるでしょう。

  2. (2)刑の消滅と前科

    前科には、検察庁が管理する電子記録と、市区町村が管理する犯罪人名簿の2つがあります。

    検察庁が管理する前科は刑事事件の処理に必要な範囲で使用され、本人が死ぬまで消えることはありません。したがって、再び罪を犯して捜査対象となった場合には前科があるとして処分が重くなるおそれがあります。

    一方、市区町村が管理する犯罪人名簿は、主に選挙権・被選挙権や資格登録時の欠格事由の確認に使用されます。そして刑が消滅すると犯罪人名簿から削除されるため、選挙権・被選挙権、資格の制限などの不利益がなくなります

    たとえば前科があることで資格を失った場合には資格を取得できる状態になります。もっとも、一度失った資格が自動的に元に戻るわけではないので、あらためて資格取得の要件を満たす必要があります。

    また海外渡航の際に提出を求められる場合がある「犯罪経歴証明書」に記載される前科ではなくなるので、以前は行けなかった国に行けるといったケースも出てくるでしょう。

  3. (3)刑の消滅と履歴書

    就職・転職を希望する場合に前科が不利にはたらくことは否定できません。会社は応募者がどんな人物なのか、ほかの従業員との協力体制を築けるのかなどを総合的に判断するので、前科がある人物の採用には慎重にならざるを得ないでしょう。

    前科は極めて秘匿性の高い個人情報なので会社が応募者の前科を調べる術はありませんが、履歴書に賞罰欄があれば記載する必要があり、虚偽の申告をすれば経歴詐称になってしまいます。

    しかし前科があっても刑が消滅していれば、履歴書の賞罰欄に「なし」と記載したり、前科の有無を問われてもないと答えたりしても経歴詐称にあたらなくなります。前科を理由にした内定取り消しや解雇は認められにくいでしょう。

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7、刑事罰に関するよくある疑問

刑事罰については、ここまで解説した以外にも疑問を感じる部分が多いはずです。刑事罰に関する一般的な疑問について解説しましょう。

  1. (1)刑事罰は懲役か罰金か?

    刑事罰の内容は法律の条文で犯罪ごとの法定刑が示されています。たとえば強盗罪(刑法第236条)の法定刑は「5年以上の有期懲役」と懲役刑のみが規定されているため、初犯であるなどの事情があっても罰金刑で済まされることはなく、必ず懲役刑が適用されます。

    一方、たとえば過失致死罪(刑法第210条)は法定刑が「50万円以下の罰金」なので、人の死亡という重大な結果が生じていても懲役刑になることはありません。したがって、懲役か罰金になるのか、あるいはそれ以外の刑になるのかは事件ごとにどの犯罪が適用されるのかを確認する必要があります。

    しかし事件の内容によっては罪名の判断が難しいケースもあります。たとえば刑法には窃盗の犯人が逮捕を免れるために暴行や脅迫をしたときは強盗罪になる旨の規定が存在します(事後強盗罪:第238条)。そのため本人は窃盗しかしていないとの認識でも、逃げる際に人を突き飛ばすなどしていれば強盗罪(5年以上の有期懲役)が、突き飛ばした人にケガをさせれば強盗致傷罪(無期または6年以上の懲役)が適用される場合があります。

    実際にどの罪名が適用されるのかは難しい判断を要するため、個別の事件については弁護士に相談してください。

  2. (2)初犯の刑事罰はどんなものか?

    初犯は再犯と比べて更生の可能性が高いため、刑事罰が軽くなる場合があります。懲役刑と罰金刑のように複数の刑が規定されている犯罪において、初犯である、悪質性が高くないなどの事情があれば、懲役ではなく罰金刑で済まされる可能性もあるでしょう。

    たとえば窃盗罪(刑法第235条)の法定刑は「10年以下の懲役または50万円以下の罰金」と懲役刑と罰金刑の規定があるため、初犯で被害額も小さい事件なら罰金刑が選択される可能性は十分にあるといえます。

    罰金刑が規定されていない犯罪では、初犯だからといって罰金刑になることはありません。しかし初犯である事実が被告人に有利な事情として評価され、刑期が短くなる場合や、判決に執行猶予がつく場合があります。

    もっとも、量刑は前科の有無以外にもさまざまな点が判断材料となります。初犯であれば必ず刑事罰が軽くなるわけではないことは理解しておくべきでしょう

  3. (3)懲役刑に相場はあるのか?

    何年の懲役になるのかは事件によって大きく異なるため、相場はありません。刑事裁判で裁判官が量刑を判断する際には、結果の重大性や行為の悪質性、被害者との示談の有無などさまざまな要素を考慮します。

    たとえば詐欺罪(刑法第246条)の法定刑は「10年以下の懲役」ですが、オレオレ詐欺のように被害者数が多く被害額も大きい、組織的に高齢者を狙うなど行為様態が悪質な場合であれば量刑は重く傾くでしょう。初犯である、末端関与者であるなどの事情があっても、執行猶予がつかない実刑判決が下るおそれは大きいと考えられます。

  4. (4)量刑はどのように決まるのか?

    懲役刑に限らず、禁錮刑や罰金刑などほかの刑の量刑も事件ごとに異なるため相場と呼べるものはありません。結果の重大性、行為の悪質性、示談の有無のほかには以下のような要素も考慮されます。

    • 犯罪の内容
    • 動機の内容や計画性の有無
    • 犯行の手段、凶器の有無
    • 被告人の年齢や生育歴、周囲の環境
    • 被告人の反省の有無や度合い
  5. (5)刑事裁判はどのくらいの時間がかかるのか?

    刑事裁判に要する時間・期間は個々の事件によって異なるため一概にはいえません。傾向としては、否認事件や複雑な証拠関係のある事件の審理回数は多く、単純な自白事件のほうが少ない審理回数で結審します。

    事実関係に争いのない事件であれば起訴から1~2カ月程度で初公判があり、その約2週間後に判決が下されるケースが多いでしょう。一方、複雑な事件や重大な事件は審理に時間がかかるため、結審までに数か月・数年を要する場合もあります。

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8、刑事罰を回避するためには弁護士に相談を

自分や家族などの身近な人が刑事事件を起こしてしまい、刑事罰を回避したいと望むのであれば、早急に弁護士へ相談しましょう。弁護士は何ができるのかを解説します。

  1. (1)精神的な支えとなる

    逮捕されると本人は外部と連絡を取ることを許されずに孤独な状況に置かれたまま、どんな処分を受けるのか、会社や家庭はどうなるのかなど大きな不安を抱えるでしょう。不安定な精神状態の中で捜査機関からの厳しい取り調べを受けなければならず、自暴自棄になってやってもいないことを自白するなどして、結果的に重い刑事罰につながってしまうおそれがあります。

    これを避けるためには本人を精神的に支えて励ますとともに取り調べ対応のアドバイスを与える必要がありますが、逮捕から72時間はたとえご家族でも本人との面会が許されません。しかし弁護士だけは唯一、逮捕直後から本人と面会できます。弁護士が今後の刑事手続きや処分の見通し、ご家族からの励ましの言葉などを伝えるなどして安心すれば、落ち着いて取り調べに臨めるでしょう。

  2. (2)取り調べに対応するためのアドバイスが可能

    取り調べで供述した内容は、今後の処分や量刑の内容に影響を与える極めて重要なものです。取調官の誘導に応じてしまう、自身の意図と違う意味で捉えられてしまうなどして不利な内容の供述調書を作成されると、後の裁判で証拠として扱われ、想定よりも重い刑事罰を受けるおそれがあります。

    弁護士なら、逮捕された本人と面会して取り調べに対応するためのアドバイスを伝えることが可能です。何をどのように供述するべきか、あるいは何を黙秘すればよいのかなどの重要なアドバイスも提供できるため、取り調べで不用意な発言・態度をして不利な供述調書を作成される事態を回避できます。

  3. (3)事件の早期解決に導く

    弁護士は事件を早期に解決するために多面的な弁護活動を展開できます。たとえば被害者がいる事件で重要なのは示談交渉です。示談が成立していると検察官や裁判官が被害者から一定の許しを得たと評価するため、不起訴処分や執行猶予つき判決となる可能性が高まります。

    示談交渉は本人・ご家族が行うことも不可能ではないものの、実際には被害者の連絡先が分からない、被害者から拒絶されるなどで難しいケースが大半です。捜査機関は被害者の連絡先を教えてはくれません。本人やご家族が被害者の連絡先を知っていても、被害者感情を考慮すれば直接の交渉は避けるべきです。

    この点、弁護士であれば捜査機関を通じて被害者に示談の意思を伝え、被害者の承諾を得たうえで連絡先を教えてもらえる可能性があります。被害者感情に配慮しつつ慎重に交渉を進めるため被害者の警戒心が和らぎ、示談に応じてもらえる可能性も高まります。刑事処分への影響を考慮した適切な内容で示談をまとめるため、重すぎる刑事罰の回避につながります。

    弁護士はほかにも、勾留を阻止する活動や有利な証拠の収集などさまざまな活動を展開し、事件の早期解決に向けて力を尽くします。

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9、まとめ

法律の条文に定められた犯罪行為をすると刑事罰を科せられます。刑事罰を受けた経歴があると公私にわたる不利益を受けるおそれがあるため、刑事罰を回避したいと望むなら弁護士のサポートが不可欠です。不起訴処分になれば刑事罰を受けることがなく、前科もつきません。検察官が起訴・不起訴を判断する前のはやい段階から弁護士にサポートを依頼しましょう

自分や身近な人の事件で刑事罰に関する不安があればベリーベスト法律事務所へご相談ください。刑事事件の解決実績が豊富な弁護士が全力でサポートします。

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本コラムを監修した弁護士
萩原 達也
ベリーベスト法律事務所
代表弁護士
弁護士会:
第一東京弁護士会

ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
当事務所では、元検事を中心とした刑事専門チームを組成しております。財産事件、性犯罪事件、暴力事件、少年事件など、刑事事件でお困りの場合はぜひご相談ください。

※本コラムは公開日当時の内容です。
刑事事件問題でお困りの場合は、ベリーベスト法律事務所へお気軽にお問い合わせください。

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