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大学生が逮捕されたら? 退学・前科を回避する対処法
大学生が逮捕された場合、そのあとはどうなってしまうのでしょうか。また、大学を退学させられるのかも、気にかかるところです。
大学生が逮捕された場合、20歳以上の方と20歳未満の方で手続きの流れが異なります。
この記事では、大学生が逮捕されたあとの流れや、前科や退学処分を回避するための対処法などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士がわかりやすく解説していきます。
この記事で分かること
- 大学生が逮捕されたら後の刑事手続きの流れ
- 少年事件と成人事件の違い
- 逮捕で前科がつくことや大学退学を回避するためにすべきこと
1、大学生が逮捕されたらどうなる?|20歳以上の場合
大学生の逮捕では、年齢によってその後の流れが異なります。具体的には、20歳を超えているのか否か、という点が重要です。
詳しく確認していきましょう。
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(1)いつの時点の年齢か? 少年事件と成人事件
犯罪を行った時点で20歳未満の「少年」であった場合には、少年事件の対象となります。なお、少年事件にいう「少年」とは、女子も含んだ概念です。
しかし、家庭裁判所の審判を受ける前に少年が20歳に達した場合、家庭裁判所は年齢超過の事件として検察官に送致することになります(少年法第19条2項)。
このように、少年法が適用されるのは、家庭裁判所の審判を受ける時点で20歳未満である少年です。犯行時すでに20歳を超えていたり、家庭裁判所の審判を受ける時点で20歳を超えていたりする場合は、成人事件として扱われることになります。
まだ社会人となっていない学生であっても、年齢によって扱いが変わるため、注意が必要です。 -
(2)20歳以上の大学生が逮捕された場合の流れ
20歳以上の大学生が逮捕された場合には、通常の成人事件として扱われ、少年法の適用はありません。通常逮捕や現行犯逮捕された場合、警察署に連行され、嫌疑がかけられている犯罪について取り調べを受けることになります。
警察官は、被疑者を逮捕したときから48時間以内に取り調べを行い、事件を検察官に送致するか、釈放するかを判断することになります。
警察官が留置の必要があると判断した場合には、被疑者の身柄を検察官に送致します。
検察官は事件の送致を受けてから24時間以内に、被疑者の勾留を請求するか釈放するかを判断しなければなりません。
検察官の請求に基づいて裁判官が勾留決定をした場合には、原則10日間の勾留が続くことになります。また、捜査のために必要があれば、さらに10日間を上限として勾留が延長されることになります。
検察官は、この勾留期間中に必要な捜査を行って、被疑者の起訴・不起訴を判断することになります。
検察官が公訴を提起(起訴)した場合には、被疑者は被告人へと身分が変わり、刑事裁判を受けることになります。
2、20歳未満の大学生が逮捕された場合
それでは、少年事件を受けることになる20歳未満のケースでは、どうなるのでしょうか。
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(1)触法少年、犯罪少年、特定少年
14歳未満の未成年は「触法少年」と呼ばれ、刑事責任を問われることはありません。一方、14歳以上20歳未満の場合は「犯罪少年」と呼ばれ、原則、少年法が適用されます。なお、少年法が適用されるとはいえ、犯罪少年の場合は成人と同じように逮捕・勾留されるおそれがあるため注意が必要です。
20歳未満の大学生の場合、上記ルールに則れば「犯罪少年」となるように思えますが、18歳・19歳の少年は同時に「特定少年」として扱われることになります。
「特定少年」は2022年(令和4年)4月1日から施行されている改正少年法によって導入された概念です。民法改正による成人年齢引き下げにより、18歳・19歳は成人として扱われることになりましたが、刑事事件においては、引き続き少年法が適用されることになっており、「特定少年」として定義されました。
特定少年の場合、17歳以下の少年よりも、原則逆送事件の対象が拡大されています。
少年事件の場合、通常であれば家庭裁判所が審判を行い、少年法の適用を受けることになります。ただし、原則、検察官へ送致しなければならない重大事件(原則逆送事件)の場合、検察官へ送致されて成人と同様の刑事罰が適用されることになります。特定少年は、原則逆送事件となる対象が17歳以下の少年よりも拡大されているのです。
また、特定少年は、実名報道の一部解禁など、17歳以下の少年とは異なる特例が定められています。
詳しくはこちら
少年法改正のポイント 死刑になるような重い事件はどう扱われる? -
(2)20歳未満の大学生が逮捕された場合の流れ
少年事件については、すべての事件が検察・警察から家庭裁判所に送られます(全件送致主義)。事件を受理した家庭裁判所は、次のような決定を行います。
・観護措置
観護措置とは、少年を少年鑑別所に送致することをいいます。少年鑑別所では、少年の処分を適切に決めるために、面接や心理検査が行われます。収容期間としては4週間以内ですが、一定の事件については8週間まで延長される場合があります。
・家庭裁判所調査官による調査
家庭裁判所調査官による調査では、家庭裁判所調査官が、少年の抱える問題や非行の原因や関係機関への照会結果などを取りまとめ、報告書を裁判官に提出します。
・少年審判
これらを経て、家庭裁判所で少年審判が開かれます。刑事裁判と違って少年審判は非公開で行われ、最終的な処分が決定します。少年事件の終局決定には、以下のようなものがあります。
- 不処分
- 保護処分決定:保護観察/少年院送致/児童自立支援施設等送致
- 検察官送致(逆送)
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(3)少年審判となった場合には前科はつかない?
審判の結果、少年院送致や保護観察などの「保護処分」となれば、前歴として捜査機関側に記録には残りますが、前科とはなりません。
前科とは、有罪判決を受けた経歴のことをいいます。
これに対して、前歴とは、有罪判決に至らない犯罪歴、つまり、捜査機関に犯罪の嫌疑をかけられ捜査の対象にされた経歴のことをいいます。
ただし、審判の結果、検察官送致(逆送)となり、刑事裁判を受け、有罪判決となると前科として残ることとなります。 -
(4)刑事事件(逆送)となった場合は?
家庭裁判所が、少年に保護処分ではなく、懲役や罰金などの刑罰を科すべきであると判断した場合には、事件を検察官に送致します(逆送)。
逆送された事件については、検察官によって刑事裁判所に起訴され、刑事裁判で有罪となれば刑罰が科されることになります。
先ほど解説したとおり、18歳・19歳が該当する特定少年の場合、原則逆送事件が17歳以下よりも拡大されていますので、逆送となるケースが17歳以下よりも多くなります。
特定少年に関する原則逆送事件に該当するものは、以下のような事件です(少年法第62条2項各号)。
- 16歳以上の少年のとき犯した、故意の犯罪行為により、被害者を死亡させた事件
- 18歳以上の少年のとき犯した、刑罰が死刑、無期または短期(法定刑の下限)1年以上の懲役・禁錮に当たる事件
したがって、強盗罪、不同意性交等罪、非現住建造物放火罪などの犯罪については原則逆送対象です。
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3、大学生が逮捕されても退学になるとは限らない
大学生が逮捕された場合、大学を退学になってしまうのか、気にかかるところです。結論としては、大学生が逮捕されたとしても、必ず退学になるわけではありません。
大学生が退学処分になるか否かは、在籍している学則に従うことになります。
大学によって規定されている学則の内容は異なりますが、犯罪行為があった場合や人権侵害・大学の秩序を乱す行為があった場合などは、学則の懲戒事由として、停学処分や退学処分の対象となることがほとんどでしょう。
懲戒事由に該当している場合、停学処分とするのか退学処分とするのかについては、大学に広い裁量権が認められます。
たとえ逮捕後起訴されずに不起訴処分になったとしても、起訴猶予処分である場合や自白事件の場合には、学則の懲戒事由に該当すると判断されるおそれもあるため、注意が必要です。
4、大学生が逮捕で前科・退学を回避するためには?
少年事件が逆送され、公訴提起されて刑事裁判によって有罪判決を受けてしまうと、前科や前歴が残ってしまうことになります。有罪の場合には退学処分となる可能性も高まります。
したがって、検察官送致(逆送)を回避するためには、警察の捜査を受けている早い段階で弁護士に相談・依頼することが大切です。
逆送しないよう求めるということは、家庭裁判所における少年向けアプローチが有効な事案であると示すことでもあるため、周辺の環境調整を含めて、早期に家庭裁判所を意識した活動を入れて行くことにより、家庭裁判所で扱うべき可塑性を立証することもできます。
なお、示談をしたからといって必ずしも軽い処分が下されるようになる、というわけではありません。
しかし、加害者の対応や被害者の処罰感情などについては、審判・裁判等の手続きにおいて重要な考慮要素となります。
被害者との示談成立は、家庭裁判所や捜査機関の処分に影響を与える可能性があるため、一刻も早く弁護士に対応を依頼しましょう。
5、まとめ
刑事事件では、捜査の初期の段階から、軽い処分を獲得するために積極的な弁護活動を行うことが重要となります。
ベリーベスト法律事務所には、刑事事件・少年事件の解決実績が豊富な弁護士が在籍しておりますので、すぐにご相談ください。
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※本コラムは公開日当時の内容です。
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