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高校生が逮捕されたらどうなる? 逮捕後の流れや生活への影響・リスク
高校生であっても犯罪を起こしてしまうと警察により逮捕される可能性があります。
もっとも、高校生は未成年者ですので、逮捕されたとしても成人とは異なる流れで手続きが進められていきます。高校生が逮捕されると退学進学や就職に多大な影響が生じますので、早期に適切な対応をすることが重要です。
今回は、高校生が逮捕された場合の手続きの流れや生活への影響・リスクについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
この記事で分かること
- 高校生が逮捕されたらどうなる?
- 逮捕による日常生活への影響やリスク
- 高校生の子どもが逮捕された場合に、弁護士に相談するべき理由
1、高校生でも逮捕される可能性がある! 未成年者による犯罪の実態
高校生であっても罪を犯せば逮捕される可能性があります。以下では、未成年者による犯罪の実態と高校生の逮捕事例を紹介します。
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(1)高校生には少年法が適用される
少年法は、20歳未満の人が犯罪を行った場合の処理方法を定めています。ほぼすべての高校生は20歳未満ですので、高校生の犯罪に対しては、少年法が適用されます。
成人が罪を犯した場合には、刑法および刑事訴訟法により刑事事件として処理されますが、少年には成人とは異なる特殊性がありますので、少年法により少年の特性に応じた処理がなされています。
ただし、少年法が適用されるとはいっても、逮捕は制限されていませんので、高校生が罪を犯した場合、状況によっては逮捕される可能性も十分にあります。 -
(2)未成年者による犯罪の実態
法務省では「令和5年版犯罪白書」を公表し、高校生を含む少年による刑法犯の検挙人員の統計をまとめています。犯罪白書によると、刑法犯として検挙された少年の就学・就労状況別の構成比は、以下のようになっています。
- 高校生(41.7%)
- 有職少年(20.1%)
- 中学生(18.4%)
- 無職少年(11.7%)
- 大学生(4.7%)
- その他の学生(3.5%)
この統計からは、高校生による犯罪が少年事件の大部分を占めていることがわかります。
また、刑法犯として検挙された少年を罪名別・男女別でまとめると、以下のようになります。
罪名 男子 女子 少年比 殺人 36人 19人 7.0% 強盗 231人 14人 18.5% 放火 68人 11人 13.8% 強制交等 217人 3人 16.0% 暴行 1299人 162人 5.9% 傷害 1754人 188人 10.8% 恐喝 276人 44人 27.0% 窃盗 8766人 2393人 13.5% 詐欺 676人 160人 7.9% 横領 1224人 148人 14.5% 遺失物等横領 1211人 145人 15.9% 強制わいせつ 481人 4人 15.1% 住居侵入 888人 45人 26.3% 器物損壊 854人 102人 18.8% その他 1157人 181人 10.2%
上記の統計は高校生以外も含まれる数値になりますが、検挙された犯罪としては、窃盗、傷害、暴行、横領、遺失物等横領が多い傾向にあります。
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(3)高校生の逮捕事例
以下では、高校生が逮捕された実際の事例を紹介します。
① 特殊詐欺の受け子をした高校生が逮捕された事例
令和6年6月、新潟県警察は、80代の女性から現金1000万円をだまし取ったとして、男子高校生(16歳)を詐欺の疑いで逮捕しました。具体的な認否は明らかになっていませんが、特殊詐欺グループ内の受け子として事件に関与した疑いがあるとして捜査が進められています。
② 集団での暴行をした高校生が逮捕された事例
令和6年2月、長野県で、傷害の疑いで16歳の男子高校生3人、アルバイト従業員の男(19歳)、住所不定無職の19歳と20歳の男が逮捕されました。
高校生らは、駐車場などで男子高校生(15歳)に対して、集団で殴るなどの暴行を加え、顔面打撲などの傷害を負わせた疑いがあるとして捜査が進められています。
③ ドラッグストアで医薬品を万引きした高校生が逮捕された事例
令和6年5月、愛媛県のドラッグストアで医薬品を万引きしたとして、窃盗の疑いで男子高校生(17歳)が逮捕されました。
この事件では、ドラッグストアからの通報を受けて事件が発覚し、防犯カメラの解析により被疑者が特定され逮捕に至りました。
2、高校生が逮捕されたら、その後はどうなる?
前述のとおり、高校生の犯罪には少年法が適用されますので、成人の刑事事件とは異なる流れで事件が処理されます。以下では、高校生が逮捕された後の手続きの流れについて説明します。
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(1)逮捕
未成年なら逮捕されないと考えるかもしれませんが、高校生が罪を犯して、逃亡のおそれまたは証拠隠滅のおそれがある場合には、警察により逮捕される可能性があります。刑法では、14歳未満の未成年による犯罪行為は罰しないと定められていますが、高校生は14歳以上ですので、罪を犯せば逮捕される可能性があるのです。
警察により逮捕されると、警察署内の留置施設で身柄を拘束され、事件に関する取り調べを受けることになります。警察は、必要な取り調べを終えたら、48時間以内に被疑者の身柄を検察に送致しなければなりません。 -
(2)勾留または勾留に代わる観護措置
被疑者の身柄の送致を受けた検察では、勾留により引き続き被疑者の身柄を拘束するかどうかを判断します。勾留が認められると、被疑者の身柄は10日間拘束されることになり、勾留延長も認められれば最大で20日間の身柄拘束となります。
ただし、少年法が適用される高校生の場合、成人の刑事事件とは異なり、やむを得ない場合でなければ勾留することができないと規定されています(少年法43条3項)。
そのため、高校生に対しては勾留ではなく、「勾留に代わる観護措置」がとられることもあります。勾留に代わる観護措置では、身柄拘束場所が留置施設ではなく少年鑑別所となり、身柄拘束期間も10日間に限られ延長が認められないということが通常の勾留とは違います。
もっとも、実務上は成人と同様に通常の勾留をされていることがほとんどです。 -
(3)家庭裁判所へ送致
成人の刑事事件では、捜査が終わると検察官が起訴または不起訴の判断を行いますが、少年の場合、捜査が終わると犯罪があったと疑えるすべての事件は、家庭裁判所に送致されます。
家庭裁判所に送致された少年は、裁判官と面談を行い、観護措置をとるかどうかの決定がなされます。 -
(4)観護措置
観護措置とは、家庭裁判所が少年審判を行うために、少年を鑑別所に収容して調査を行う措置をいいます。家庭裁判所の裁判官により観護措置の決定がなされると、原則2週間、鑑別所に収容されます。実務上は、1回更新され4週間の収容期間になることが多いです。
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(5)家庭裁判所調査官の調査
少年審判が開かれるまでの間に、家庭裁判所調査官による要保護性に関する社会調査が実施されます。家庭裁判所調査官は、少年や保護者と面接を行い、非行原因、家庭環境、交友関係などを調べます。
調査が終了すると家庭裁判所調査官は、調査結果および処遇意見を報告書にまとめ、裁判官に提出します。 -
(6)少年審判
成人の刑事事件は、検察官により起訴されると刑事裁判が行われますが、少年法が適用される高校生の場合、少年審判により処遇が決められます。少年審判では、裁判官が以下のいずれかの処分を言い渡します。
- 不処分
- 保護処分(保護観察、少年院送致、児童自立支援施設等送致)
- 検察官送致
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3、高校生でも成人と同じ刑事裁判の対象になる可能性|前科はつく?
未成年の高校生は少年法が適用され、原則として成人の刑事事件とは異なる手続きで処理されます。しかし、「逆送」された場合には、高校生でも成人と同じく刑事裁判の対象になる可能性があります。では、「逆送」とはどのようなことをいうのでしょうか。
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(1)逆送とは
逆送とは、家庭裁判所の少年審判によって、保護処分よりも刑事裁判で処罰するのが相当と判断された場合に、事件を検察官に送致することをいいます。検察官から送致された事件を再び検察官に送致することから「逆送」と呼ばれています。
家庭裁判所から送致された検察官は、犯罪の嫌疑がある場合には必ず起訴しなければならないので、成人の刑事事件よりも検察官の起訴に関する裁量は制限されています。 -
(2)逆送の種類
逆送には、以下のような種類があります。
① 年齢超過による逆送
少年審判のときに、少年の年齢が20歳以上に達しているときは、少年法の適用対象ではなくなりますので、成人と同様に刑事裁判を行うために、逆送が行われます。
② 刑事処分相当による逆送
逆送は、家庭裁判所の裁判官が少年の非行歴、性格、事件の内容、心身の成熟度などを踏まえて判断します。しかし、以下の事件については、原則として逆送されます。
- 16歳以上の少年のときに故意で被害者を死亡させた事件
- 18歳以上の少年のときに死刑、無期または短期1年以上の懲役、禁錮にあたる罪の事件
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(3)逆送により有罪判決となれば前科がつく
高校生が逮捕されたとしても、通常は少年審判により処分が決定されますので、原則として前科がつくことはありません。しかし、少年審判により逆送となり、刑事裁判で有罪判決が確定すると、高校生であっても刑罰が科され、前科がつくことになりますので注意が必要です。
4、高校生が逮捕されたことにより生じる影響
高校生が逮捕されると、以下のようなリスクや影響が生じます。
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(1)高校を停学または退学処分となるリスク
高校生が逮捕された場合、何らかの罪を犯したと疑えることになりますので、学校教育法が定める懲戒事由に該当する可能性がでてきます。そのため、逮捕されたことが学校に知られてしまうと、逮捕理由によっては高校を停学または退学となるリスクがあります。
また退学処分を免れたとしても、逮捕したことが学校中に広まってしまうと、学校に行きづらくなり、自主退学を選択するケースも少なくありません。 -
(2)大学進学や就職活動への影響
高校生は、大学進学や就職活動を考える大事な時期になります。そのような時期に逮捕されてしまうと、指定校推薦が受けられなくなったり、逮捕時期によっては受験や就職活動に参加できなかったり、何らかの不利益が生じることも考えられます。
逮捕歴があったからといって、大学進学や就職活動が不可能になるわけではありませんが、何もない場合に比べて不利な状況に置かれることは覚悟しておかなければなりません。 -
(3)実名報道をされるリスク
少年事件に関しては、少年法により実名報道(推知報道)が禁止されています。
しかし、テレビや新聞などのマスメディアは、少年法の規定を順守して対応しますが、SNSやインターネット上の掲示板では、事件の報道があると少年の氏名や住所などを特定しようとする動きがあるのも事実です。
また、18歳・19歳は少年法において、特定少年に位置づけられており、特定少年は実報道の対象となります。そのため18歳になった高校生が罪を犯すと、実名報道されるリスクがあるのです。ただし、特定少年によるすべての事件において実名報道の可能性があるわけではありません。特定少年で実名報道の可能性があるのは、逆送により起訴された場合に限ります。
実名報道がされてしまうと、半永久的にインターネット上に犯罪歴が残ってしまい、今後の生活に多大な影響を及ぼすことになるでしょう。
5、高校生の家族が逮捕されてしまったら、弁護士に相談するべき理由
高校生の家族が逮捕されてしまったときは、以下のような理由からすぐに弁護士に相談するようにしましょう。
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(1)逮捕直後でも話せる
逮捕直後に面会できるのは弁護士だけです。たとえ家族であっても逮捕直後は面会できません。すぐに弁護士に相談・依頼をすれば、弁護士が警察署に駆けつけ、被疑者と面会を行い、今後の対応についてアドバイスをすることができます。
高校生とはいってもまだ子どもですので、警察署内の留置施設という不慣れな環境で過ごさなければならないのは不安を感じるはずです。そのような不安な状況を一刻も早く解消してあげるためにも、早急に弁護士に相談することが大切です。 -
(2)早期釈放を実現できる可能性がある
高校生は、逮捕や勾留、観護措置による身柄拘束が長くなればなるほど、勉強に遅れが生じ、逮捕時期によっては受験や就職活動にも影響が生じる可能性もあります。
弁護士であれば、検察官や裁判官への働きかけにより、身柄拘束を阻止し、早期の釈放を実現できる可能性があります。身柄拘束されている本人だけでは、早期の身柄釈放の実現は困難ですので、早めに弁護士に相談し、弁護活動(付添人活動)に着手してもらいましょう。 -
(3)少年院送致を回避できる可能性がある
少年審判の結果次第では、少年院に送致されてしまう可能性もあります。少年院に送致されてしまうと不当なレッテルを貼られてしまい、その後の人生に大きな影響を及ぼすおそれがあります。
弁護士であれば、被害者との示談交渉や家庭環境、就労状況などの調整を行うことで、少年院送致を回避できる可能性があります。また、少年院送致が濃厚な事案でも試験観察の実施を求めることで、本人の反省を深め、少年院送致を回避できる可能性を高めることもできます。 -
(4)学校との対応を任せることができる
高校生が逮捕されてしまうと、学校から停学や退学処分が下されるおそれがあります。
しかし、退学処分は高校生が教育を受ける権利を奪う重大な処分ですので、学校側が自由に行えるものではなく、一定の制約があります。不当な退学処分に対しては、退学処分の違法・無効を主張することで、退学処分の撤回が認められる可能性もあります。
このような学校側の対応を本人または保護者が行うのは非常に大変ですので、弁護士に対応を任せるとよいでしょう。 -
(5)更生に向けた取り組みをサポートする
更生には、本人がしっかり反省しやり直すための意欲をもつことが大切ですが、逮捕されたことでふてくされてしまい、さらなる非行に走ると、取り返しのつかない事態にもなりかねません。
弁護士であれば弁護活動(付添人活動)を通じて、本人の更生に向けた取り組みをサポートすることもできますので、安心してお任せください。また家族によるサポート体制についても、どのようなことができるのか検討し、サポートすることが可能です。
6、まとめ
高校生でも罪を犯せば警察に逮捕される可能性は十分にあります。逮捕されてしまうと、長期間の身柄拘束や大学進学・就職活動への影響といった不利益が生じますので、すぐに弁護士に相談して、適切な対処を依頼しましょう。
高校生の家族が逮捕されてお困りの方は、早急にベリーベスト法律事務所にご相談ください。少年事件の解決実績をもつ弁護士が、事件の早期解決や更生に向けたサポートをいたします。
刑事事件・少年事件に関わってしまった方、関わっていないのに疑われている方など、刑事事件・少年事件に関してお困りの際には、ベリーベスト法律事務所にぜひご相談ください。
ベリーベスト法律事務所には、否認事件・裁判員裁判対象事件を多数経験した弁護士、元検察官の弁護士も所属しています。
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※本コラムは公開日当時の内容です。
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