昨今、「殺人」「傷害致死」などの凶悪な犯罪がニュースで取り上げられることも多く、そのため「窃盗」というと、それほど大きな犯罪のイメージがない人もいるかもしれません。
しかし、窃盗罪は、罰金刑だけではなく、懲役刑も定められている犯罪です。窃盗罪は決して軽い犯罪ではないのです。それでは、万が一身内が事件を起こしてしまったら、家族はどうすればよいのでしょうか。
今回は、窃盗罪の概要と、事件を起こしてしまった際にとるべき対策や注意点について解説します。
1、窃盗罪と量刑について
まずは、窃盗罪の概要や量刑、窃盗罪以外の罪が適用されるケースについて解説します。
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(1)窃盗罪とはどのような犯罪か
窃盗罪については、刑法235条が「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役または50万円以下の罰金に処する」と定めています。
具体的には、
① 他人の占有する財物を、
② 不法領得の意思(自分のものにしようとする意思)をもって、
③ 窃取する
行為です。
たとえば、空き巣や万引きなどは窃盗罪にあたります。
窃盗罪の罰則は、「10年以下の懲役または50万円以下の罰金」と規定されています。これは1ヶ月以上10年以下の懲役または1万円以上50万円以下の罰金を意味しています。このように窃盗罪の罰則には大きな幅がありますので、刑事裁判になった場合に科せられる具体的な量刑は、事件の悪質性や前科の有無、損害の大きさなどさまざまな事情をもとに決定されます。 -
(2)窃盗罪以外の罪が適用される場合について
窃盗罪に類似した犯罪で「遺失物等横領罪」(刑法254条)というものがあります。落とし物など、他人の占有から離れたものを持ち去る行為に適用される犯罪で、いわゆる置き引きが典型例です。罰則は1年以下の懲役、または10万円以下の罰金もしくは科料です。窃盗罪よりも軽い罰則規定となっています。
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2、窃盗事件の流れ:① 捜査開始
窃盗を行うとどのようにして捜査が始まり、いつ逮捕されてしまうのか、捜査の流れを解説します。
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(1)窃盗事件の捜査開始時期
窃盗の事実が発覚すると捜査が開始されます。発覚する経緯は複数ありますが、代表的なものとしては、被害者による被害届の提出、告訴、第三者からの告発、警察による職務質問、犯人の自首などがあります。
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(2)捜査が開始されるとどうなる?
警察はまずは被害者から状況を聞き込み、現場捜査や証拠収集を行います。捜査線上に疑わしい人物や事情を知っている関係者がいることがわかると、警察は被疑者または参考人として任意同行を求め、取り調べをします。あるいは、任意同行ではなく、後ほど説明するように被疑者として逮捕されて取り調べを受けることもあります。
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(3)被害届と告訴の違いについて
被害届も告訴も、どちらも捜査機関に対して被害の事実を伝える行為です。両者において異なる点は、被害者が加害者に対しての処罰を求めるかどうかです。
告訴は加害者への処罰を求める届け出ですから、受理されれば速やかに捜査が開始されます。他方、被害届にはそのような役割はありませんので、被害届が提出されても、必ず捜査が開始するとはかぎらないのです。
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3、窃盗事件の流れ:② 逮捕、勾留
警察から窃盗事件の容疑をかけられると、逮捕される可能性があります。逮捕されると、警察に身柄を拘束され、行動の自由などが制限されます。ここでは、逮捕のタイミングや勾留期間について解説します。
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(1)現行犯逮捕と通常逮捕の違い
逮捕の種類には大きく2通りあります。
- 現行犯逮捕 窃盗を犯したその場で警察や店員などに身柄を拘束されることです。
- 通常逮捕 事件後に警察が捜査を開始し、犯人だと相当程度疑われる人物を特定すると裁判所に逮捕状を請求し、その令状に基づいて逮捕することです。
窃盗罪の公訴時効は7年ですから(刑訴法250条)、事件から7年以内であれば通常逮捕される可能性があります。 -
(2)逮捕から勾留まで
逮捕されると、警察は48時間以内に検察官に身柄を送致し(刑訴法203条)、検察官は24時間以内に勾留請求するか釈放するかの判断をします(刑訴法205条)。つまり、逮捕段階において、最大72時間もの間、身柄を拘束されることになります。
逮捕された被疑者は、この段階で外部と連絡をとることはおろか、家族でさえも面会することはできません。唯一、弁護士であれば面会して本人と話をすることが可能です。
そして勾留の理由と必要性があると判断すれば、検察官は裁判所に勾留請求することができます。勾留期間は原則10日間ですが、さらに10日間延長されることがあります。逮捕後には最大20日間の身柄拘束の可能性があるのです。 -
(3)逮捕されない場合もある
窃盗の罪を犯しても、逃走や証拠隠滅のおそれがないと判断されれば逮捕を回避できる可能性があります。このような場合には、逮捕されずに在宅のまま捜査が進むこともありますし、最終的に起訴猶予、嫌疑不十分、嫌疑なしなどの理由から刑事裁判が見送られることもあるのです。
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(4)早期に釈放されるには?
逮捕されてしまっても、勾留請求されずに早期に身柄を釈放してもらえるケースがあります。特に、被害者との間で示談が成立し、被害届の撤回や告訴の取り消しがなされた場合などは、釈放になる可能性が高いです。そのため、窃盗罪を犯してしまったら、いち早く被害者との間で示談を成立させることが重要といえます。
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4、窃盗事件の流れ:③ 起訴、刑事裁判
捜査機関による捜査が終わると、原則として刑事裁判を受けることになります。これを「起訴」といいます。ここでは、起訴から刑事裁判までの流れを解説します。
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(1)起訴されると刑事裁判が行われる
検察における取り調べの目的は、事件の内容を明確にするとともに、起訴か不起訴かの判断を下すために行われます。起訴されると、被告人として刑事裁判を受けることになります。
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(2)起訴された場合の有罪率
いったん検察官から起訴されてしまうと、裁判になったときの有罪率が非常に高くなります。現在の日本における刑事裁判では有罪率が約99%といわれているように、無罪を勝ち取るのは極めて難しいでしょう。そのため、検察官の取り調べの時点で、できる限り不起訴になるように示談を成立させる必要があります。
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(3)有罪になるとどんなデメリットがある?
起訴され有罪になった場合には、被告人にとってさまざまなデメリットがあります。まずは前科がつくことです。前科がつくと一定の職業に就くことが制限されるなど、その後の社会生活を送りにくくなることがあります。罰金刑では経済的負担が大きくなりますし、懲役刑ともなれば仕事を辞めて社会から一時的に離れる必要があります。
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(4)減刑をはかる方法はある?
起訴されると無罪を勝ち取るのは難しい状況になりますが、だからといって何もできないわけではありません。たとえ有罪になるとしても、罰金刑や執行猶予つき判決であれば日常生活を送ることができます。
実刑であっても刑期が短くなれば早期の社会復帰につながります。そのためには、起訴後であっても示談を成立させることに大きな意味があります。
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5、一刻も早く弁護士に相談を
窃盗罪で逮捕されてしまった場合、一刻も早く弁護士に相談することが望ましいといえます。
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(1)取り調べに対するアドバイスができる
被疑者は自分に黙秘権があることを知らなかったり、供述調書に署名・押印することの意味をよくわからないままに取り調べに応じてしまうことがあります。ご家族でさえも面会できない逮捕段階において、弁護士は唯一本人と面会し、取り調べに対する注意点をアドバイスできます。
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(2)減刑をはかるには示談成立が重要
起訴され刑事裁判にかけられると、検察官があらゆる証拠を固めていることが通常なので、被告人にとっては厳しい状況です。しかし事前に示談を成立することができれば、減刑される可能性が高まります。
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(3)示談成立には弁護士への依頼が効果的
逮捕、起訴、裁判のどの局面においても、示談成立の可否が大きな影響をおよぼします。しかし、示談成立には高い交渉力が求められるほか、感情的になっている被害者に対し、加害者本人やご家族が直接示談を申し込むことは困難なことも多いといえます。
示談交渉の経験が豊富な弁護士に一任することで、被害者も冷静な状態で交渉に臨むことができ、示談成立の可能性が高くなるといえるでしょう。
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6、まとめ
家族が窃盗の容疑で逮捕されてしまったら、 1日も早く弁護士に相談することをおすすめします。窃盗罪でも懲役刑となり、長期にわたり刑務所に収監されてしまう可能性もあるからです。不起訴処分や減刑を勝ち取るためには示談を成立させることが大切ですが、加害者本人やご家族が直接交渉を行うのは、被害者の心情を考えても避けた方がよいでしょう。
示談交渉は経験豊富な弁護士へ依頼することが大切です。ベリーベスト法律事務所では、取り調べを受ける際のアドバイスから裁判のサポートまで、不起訴や減刑に向けて総合的にサポートいたします。窃盗事件に関してお困りであれば、まずは一度ご相談ください。
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※本コラムは公開日当時の内容です。
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