強盗罪といえば重大犯罪という一般的なイメージがあるとおり、長期の懲役刑が科せられる重い罪です。
家族が強盗罪で逮捕されたとなれば、どれほどの懲役刑になってしまうのか、執行猶予はつかないのかなど、不安に感じる点が山ほどあるでしょう。
ただ強盗罪とひとくちにいっても、犯行様態や結果によって種類が複数あり、ほかの犯罪と深く関わりがあるという特徴があります。事件の内容や今後の対策によっては減軽され、執行猶予がつく可能性もあるため、具体的な対処法を知っておきましょう。
1、強盗罪における懲役! 法定刑について
強盗罪とは、暴行または脅迫を用いて他人の財物を強取する罪です(刑法第236条第1項)。コンビニ強盗や住居強盗などの侵入強盗のほか、路上で人を襲って現金を奪う非侵入強盗もあります。
暴行や脅迫によって財産上不法の利益を得たり、他人に得させたりした場合も強盗罪です(同条第2項)。タクシーに乗り、運賃を支払いたくないために運転手に暴力を奮って逃げるケースなどが該当します。
強盗罪は、人の財産や財産上の利益だけでなく、人の生命・身体・意思の自由といった人格的利益も守るために設けられています。
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(1)強盗罪が成立するための要件
強盗罪が成立するには、以下の要件をいずれも満たす必要があります。
- 実行行為······相手の反抗を抑圧する程度の暴行や脅迫を用い、人の財産を奪う行為です。
- 結果······財産や利益の占有が移ると結果が生じたことになります。
- 因果関係······実行行為と結果は結びついている必要があります。
- 故意······人の財産を強奪してやろうという意思です。
- 不法領得の意思······奪ったものを自分の自由に扱おうという意思です。
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(2)強盗罪の法定刑
強盗罪の法定刑は「5年以上の有期懲役」です。
有期懲役は刑法第12条で1か月以上20年以下と定められていますので、強盗罪では短くても5年、長くて20年の懲役刑を科せられます。
また、強盗罪には以下のように複数の種類があり、それぞれに法定刑も異なります。
- 事後強盗罪······窃盗の犯人が財物の取り返しや逮捕から逃れるため、あるいは証拠隠滅のために暴行や脅迫をする罪です。法定刑は「5年以上の有期懲役」です。
- 昏睡強盗······薬物などを使って人を昏睡させたうえで強盗する罪です。法定刑は「5年以上の有期懲役」です。
- 強盗致死傷罪······強盗の際に人にケガをさせると「無期または6年以上の懲役」、死亡させると「死刑または無期懲役」を科されます。
- 強盗・強制性交等罪······強盗犯が現場で性交等(性交、肛門性交、口腔性交)を強いる罪です。法定刑は「無期または7年以上の懲役」です。
- 強盗・強制性交渉等致死罪······強盗犯が性交等を行い死なせてしまった場合は「死刑または無期懲役」を科されます。
- 強盗予備罪······凶器の準備や現場の下調べなど強盗する目的で準備をする罪です。法定刑は「2年以下の懲役」です。
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2、強盗罪での逮捕から起訴までの流れ
強盗罪の逮捕には現行犯逮捕と通常逮捕があります。現行犯逮捕は犯行現場などで逮捕されることをいい、警察官だけでなく店員や警備員などの私人にも逮捕が可能です。
通常逮捕は逮捕状にもとづく逮捕です。捜査から得られた一定の証拠をもとに、裁判官が逮捕状を発付します。
逮捕されると、48時間以内に検察庁へ身柄が送られ(送致)、その後は次の流れで刑事手続きが進みます。
- 勾留請求······送致から24時間以内
- 勾留······原則10日間、延長10日間
- 起訴······勾留満期までに
- 刑事裁判······起訴からおよそ1か月後
- 判決······有罪または無罪、有罪の場合の量刑
なお、警察庁が公開する資料「平成28年の犯罪情勢」によれば、強盗罪の認知件数は2332件、検挙件数は1878件、検挙率は80.5%です。
認知件数とは、捜査機関に被害届などが届け出られた件数、検挙件数とは捜査機関が犯人を特定して送致した件数を指します。検挙率は認知件数に占める検挙件数の割合です。
強盗と聞くとめったにない犯罪のように思えるかもしれませんが、年間でこれだけ多くの強盗事件が発生し、捜査が進められていることが分かります。
犯罪全体でいえば、検挙件数の中には逮捕されず送致されたケースも含まれます。しかし強盗罪はその刑罰の重さから逃亡や証拠隠滅のおそれが高いため、逮捕されるケースが多いと思っておくべきでしょう。
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3、強盗罪の初犯では執行猶予がつくのか?
執行猶予とは、猶予期間中に罪を犯さないことを条件に刑の効力が失われる制度です。「3年以下の懲役か禁錮、または50万円以下の罰金」を言い渡された判決に限って付加できるという条件があります(刑法第25条)。
したがって法定刑が5年以上の有期懲役である強盗罪は、このままでは執行猶予がつきません。初犯であっても同じです。
ただし、刑法第66条には酌量減軽の規定があるため、情状に酌量すべきものがあれば、刑が減軽されたうえで執行猶予がつく可能性があります。
具体的には、被害弁済がされている、示談が成立している、暴行や脅迫の程度が悪質とまではいえないといった事情です。余罪や前科前歴の有無も関係しますので、初犯でほかに何も罪を犯していない場合は減軽される可能性があります。
もっとも、さまざまな事情をもとに裁判官の裁量で「減軽できる」という規定なので、初犯だから必ず減軽されるわけではありません。また減軽されても執行猶予がつく判決にまで下がらなければ実刑は免れません。
強盗未遂罪の場合も同じ法定刑が適用されますが、未遂減免といって減軽できる規定があります(刑法第43条)。
初犯で、被害金額も低いなどの事情が加われば、執行猶予がつく可能性が高まります。
同じ未遂でも、自らの意思で犯行をやめた場合は刑が必ず減軽または免除されるため、執行猶予の可能性はさらに上がるといってよいでしょう。
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4、強盗罪で逮捕された際の対処法
家族が強盗罪で逮捕された場合、少しでも罪を軽くしてほしいと考えるのは無理もありません。ただ懇願すれば叶うものではなく、具体的な対処が求められます。
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(1)被害弁済と示談
被害者と示談が成立し「処罰を求めない」旨の宥恕を得られると、不起訴処分や減刑となる可能性が生じます。家族の今後を左右するといえるほど、示談は重要な対処法です。
ただし重大犯罪である以上、示談のハードルは極めて高く、弁護士のサポートが必要です。
真摯に謝罪をするのはもちろんですが、金銭という形でも被害回復を図らなくてはなりません。
示談金には被害額の弁済だけでなく、精神的苦痛に対する慰謝料や物を壊した場合の弁償、ケガをさせた場合の治療費、休業補償など、事件によって複数の項目が含まれます。 -
(2)反省の意思表示
反省の態度が見られるかどうかも重要です。犯行が明らかなのに否認を続けるなど非協力的な態度でいると、反省していないと見られ、検察官や裁判官の心証が悪くなります。
反省していない場合は再犯のリスクも高く、日常生活の中で更生するのは困難であるため、執行猶予をつけず、実刑を科して刑務所内で更生させるべきと判断されやすくなります。
本人がまったく反省していないなら、ご家族が弁護士の助言を得ながら事件の重大性を説き、反省を促すというのもひとつの対処法でしょう。 -
(3)強盗罪以外の犯罪を主張
強盗罪はほかの犯罪との関連性が高い犯罪でもあります。
たとえば、強盗と同じく暴行や脅迫を用いて財産上の利益を得る犯罪を恐喝罪といいます。両者の違いは暴行や脅迫の程度ですが、事実関係によっては強盗罪の要件は満たさず恐喝罪になるケースがあります。
また、事後強盗罪は窃盗から派生したものですが、万引きをして逃げる際に動揺して警備員の手を振り払い転倒させてしまっただけというケースがあります。
こうした場合、適切な主張によって強盗罪の成立が否定され、別の犯罪が適用される可能性があります。本人が深く反省し、被害弁済を尽くすなどの対応によっても同様の結果となる場合は少なくないため、これから何をするのかは非常に重要です。
ただし一般の方が法律の成立要件を正しく理解し、検察官や裁判官を納得させるだけの主張を行うことは難しいため、弁護士の力が不可欠でしょう。
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5、まとめ
強盗罪は5年以上の有期懲役という非常に重い罰が予定された犯罪です。たとえ初犯であっても減軽されない限りは執行猶予もつかないため、何も手を打たないままでは長期にわたり刑務所へ収監される可能性が高いと覚悟しなくてはなりません。
しかし、示談交渉や被害弁済など、量刑が軽く傾く事情を積み重ねることは可能ですので、ご家族は速やかに弁護士へ連絡をとり、サポートを受けるべきです。強盗罪の成否を争う場合も同様に弁護士の力が必要になるでしょう。
家族が強盗罪で逮捕されお困りであればベリーベスト法律事務所へご連絡ください。刑事事件における加害者弁護の経験豊富な弁護士が尽力します。
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※本コラムは公開日当時の内容です。
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