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準詐欺罪で逮捕されてしまったら。刑罰の内容や逮捕後の流れを紹介
「高齢者を相手にお金をだまし取る詐欺を繰り返していたところ、準詐欺罪で逮捕された……」
そのような場合には、まず弁護士に相談するのがよいでしょう。
準詐欺罪とは、まだ知識が浅い未成年や、判断能力が低下している高齢者などを狙った犯罪行為です。起訴されて有罪になった場合には最大で10年の懲役刑が科される可能性があり、前科が付きます。
この記事では、準詐欺罪の刑罰内容や親告罪となるケース、逮捕されてしまった場合にどうしたらよいのかを弁護士が解説します。
1、準詐欺罪とは
最初に「準詐欺罪」とはどのような犯罪なのかを見ていきましょう。
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(1)準詐欺罪とは
準詐欺罪は、刑法第248条において次のように定められています。
「未成年者の知慮浅薄または人の心神耗弱に乗じて、その財物を交付させ、または財産上不法の利益を得、若しくは他人にこれを得させた者は、10年以下の懲役に処する」
「未成年者の知慮浅薄または人の心身耗弱に乗じて」の「乗じて」とは、一般的な言い方をすれば「利用して」の意味となります。
準詐欺罪は、詐欺罪のように「人をだます」ことは成立の要件とされていません。未成年者や高齢者などの判断力が低いことを利用して、「だます」とまではいかなくても、たとえば「誘惑する」などの方法によって財物を得るなどした場合に成立します。
すなわち、準詐欺罪は、未成年者や高齢者などの人たちを、詐欺罪よりは軽い犯罪行為からも保護するための法律であるといえるでしょう。 -
(2)「未成年者の知慮浅薄」「人の心神耗弱状態」とは?
刑法第248条において「未成年者の知慮浅薄(ちりょせんぱく)」とは「知識が乏しく思慮が足りない」ことを意味します。
また、「人の心神耗弱(しんしんこうじゃく)状態」とは「精神の健全を欠き、事物の判断をするのに十分な普通人の知能を備えていない状態」のことです。以下のような理由により判断能力が低下している人のことを指します。
- 高齢である
- 精神に障害がある
- 飲酒をして酩酊状態にある
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(3)準詐欺罪の刑罰
準詐欺罪の刑罰は「10年以下の懲役」とされています。「準」の文字が付くために「準詐欺罪は詐欺罪より罪が軽いのでは?」と思う方もあるでしょう。しかし、そんなことはありません。
準詐欺罪の「準」は、詐欺罪の刑罰に準じる、という意味であり、詐欺罪の刑罰が同様に適用されます。罰金刑がありませんので、裁判で実刑判決が下った場合は刑務所に収監されるのです。
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2、刑が免除されるケースおよび親告罪になるケース
加害者と被害者が親族関係にある場合の準詐欺行為は、「親族相盗例」が適用されます。親族相盗例とは、親告罪となる特例で、一定の親族関係において刑が免除されることです。
次の範囲の親族は刑が免除されます。
- 配偶者 ……ただし内縁関係は含まない
- 直系の血族 ……祖父母→父母→子ども→孫などの親子関係のある血族。養子を含む。兄弟姉妹は含まない
- 同居の親族 ……直系血族以外の6親等以内の血族および3親等以内の姻族(配偶者の血族および血族の配偶者)。一時的に宿泊している場合は「同居」とはならない
そして上記の範囲「以外」の親族は、刑は免除されませんが、親告罪となります。
親告罪とは、起訴するためには被害者の告訴が必要となる犯罪のことをいいます。一般に刑事事件は、警察が逮捕をしたうえで検察が起訴しますが、親告罪に該当する犯罪は、被害者が告訴しない限り、起訴されません。
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3、詐欺事件による逮捕後の流れ
準詐欺事件においても、逮捕後は詐欺事件や他の事件と同様の流れで進みます。実際の動きを見ていきましょう。
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(1)逮捕後の流れ
詐欺事件で逮捕されると、まず警察が取り調べを行ったうえで、48時間以内に検察に身柄が送られます。検察に身柄が送られるまでの間は弁護士以外の人と接見することはできません。
身柄が送られると検察は、留置場に勾留する必要があるかどうかを24時間以内に判断します。勾留とは、逃亡あるいは証拠隠滅を避けるために行われる身柄拘束のことです。勾留が必要と判断されれば、検察は裁判所に対して勾留を請求し、裁判所が請求を認めれば、勾留が決定します。
勾留の期間は原則として10日間です。ただし、検察がさらなる調査が必要と判断し、勾留期間の延長を裁判所に請求して、裁判所がこれを認めた場合には、さらに最大10日間延長されることがあります。勾留の期間中は弁護士以外の人との接見も基本的には可能です。
逮捕されてから長くても23日以内の間に、起訴をするか、それとも不起訴にするかの判断が検察によって下されます。起訴するということは証拠が揃っていることを意味しますので、起訴されれば多くの場合、刑事裁判で有罪の判決が下されます。 -
(2)逮捕されないケースもある?
準詐欺事件は、すべての事件で逮捕されるわけではありません。逮捕は逃亡や証拠隠滅などを避けることが目的です。そのため逃亡や証拠隠滅のおそれがないときには逮捕はされないことがあります。罪を正直に認め、被害者に対して誠実に謝罪し、被害者との間で示談が成立した場合には「逃亡や証拠隠滅のおそれがない」と判断される可能性があるでしょう。
また、先ほど触れたように、準詐欺事件が一定の親族内において行われた場合、被害者が告訴しない限り、警察は逮捕したり捜査を進めたりすることができません。この場合にも、逮捕を避けるためには被害者との間で示談を成立させることが重要です。
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4、準詐欺事件の容疑にかけられたら早期に弁護士へ相談を
もし準詐欺事件の容疑をかけられた場合には、弁護士に相談するのがよいでしょう。弁護士と相談すれば以下のようなことが可能となります。
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(1)被害者との示談交渉
弁護士と相談することでまず可能となるのは、被害者との示談交渉です。準詐欺事件の容疑をかけられた場合には、被害者との示談交渉は非常に重要だといえます。
被害者との示談が成立すれば、逮捕されずに在宅事件となる可能性が高まります。被害者に対して誠実に謝罪し事実関係を認めた場合は、逃亡や証拠隠滅の恐れが少ないと判断されるケースがあるからです。また、逮捕された場合でも、示談が成立していれば早期に釈放されることも多くあります。
警察に逮捕され、勾留されてしまえば、家族や会社に直接連絡ができなくなります。会社は休まなければいけませんので、詐欺事件のことがいずれ会社に知られてしまうかもしれません。会社によっては、懲戒解雇されるなどのリスクもあります。
被害者との示談は、当事者同士が直接交渉した場合にはまとまらないケースも多いでしょう。第三者として弁護士が間に入ることで、被害者との交渉がまとまる可能性が高くなります。 -
(2)不起訴・執行猶予を目指す
弁護士に相談すれば、不起訴や執行猶予を目指すことも可能となります。弁護士に相談して被害者との示談が成立した場合には、たとえ逮捕・勾留されても不起訴になる可能性が高まるでしょう。
また、仮に起訴された場合にも、弁護士の弁護活動により執行猶予を目指すことも可能です。実刑判決が下った場合は刑務所に収監されることになりますが、執行猶予が付けば、収監されることはなく社会生活の中で更生を目指せます。 -
(3)身に覚えがない場合の対応
準詐欺事件の容疑をかけられる人は「身に覚えがない」ケースもあります。弁護士がしっかりと潔白を主張することにより、たとえ刑事裁判にかけられたとしても、無罪となることもあるでしょう。
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5、まとめ
準詐欺罪は未成年や高齢者、あるいは精神障害者などの判断力が十分ではない人に対して行う犯罪です。しかし、罪を認め、被害者に対して誠実に謝罪した場合には、示談が成立して不起訴となる可能性が生まれます。
詐欺事件の疑いをかけられた場合には、おひとりで悩まずに、刑事事件の実績豊富なベリーベスト法律事務所にご相談ください。
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※本コラムは公開日当時の内容です。
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