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弁護士コラム

2020年08月11日
  • 財産事件
  • 通貨偽造
  • 刑期

通貨偽造で逮捕されたら刑期はどのくらい? 懲役刑の可能性は?

通貨偽造で逮捕されたら刑期はどのくらい? 懲役刑の可能性は?
通貨偽造で逮捕されたら刑期はどのくらい? 懲役刑の可能性は?

金銭として使うことを目的に硬貨や紙幣を偽造すると、刑法148条1項の通貨偽造罪で処罰されます。

通貨の偽造は国家の信用や、企業や個人間の経済的取引の安全性を損ねる行為であるため、重い量刑が規定されています。また、たとえ未遂であっても処罰される可能性があります。

本コラムでは、通貨偽造罪の成立要件や刑罰の内容について説明するとともに、通貨偽造罪に関連する犯罪、通貨偽造罪で逮捕された場合の刑期や量刑、法的な対応などについて弁護士が詳しく解説します。

1、通貨偽造罪の要件と刑期(量刑)

通貨偽造罪とは、「行使の目的で、通用する貨幣、紙幣または銀行券を偽造または変造する」と、問われる罪です(刑法148条1項)。

行使の目的とは、偽造通貨を使用し経済に流通させることを目的とするという意味です。自らが買い物などで使って流通させるだけでなく、他者に渡して使用させることを目的に偽造する場合も該当します。

通用する貨幣、紙幣または銀行券とは、現在、日本で使用できる通貨(法定通貨)を指します。つまり、日本銀行が発行する日本銀行券(1万円札、5000円札、1000円札などのお札)、政府が発行する貨幣(500円、100円、50円、10円などの硬貨)です。

偽造または変造するとは、通貨の作成権限のない者が、本物の通貨と誤認されるような外観の通貨を作成したり、既存の通貨に加工したりする行為です。具体的には、1万円札を両面カラーコピーする、スキャンしてプリンターで印刷する、といった行為が該当します。

通貨が偽造されて流通すれば、国の経済の根幹を揺るがし信用を損ねるとともに、社会を混乱させてしまうおそれがあります。したがって、その罪の重さから、通貨偽造罪の刑期(量刑)は無期または3年以上の懲役と規定されています。

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2、通貨偽造罪と近しい犯罪行為

通貨偽造罪に近しい犯罪行為には、次のような犯罪があります。

  1. (1)通貨偽造行使罪

    「偽造または変造の貨幣、紙幣または銀行券を行使し、または行使の目的で人に交付し、もしくは輸入」すると問われる罪です(刑法148条2項)。

    繰り返しになりますが、行使とは、偽造通貨を流通におくという意味です。偽造した通貨を店頭などで使用するほか、自動販売機に投入する、両替するなどの行為が該当します。また、自らが偽造した通貨だけでなく、他の者が偽造した通貨を行使した場合も含まれます。さらに、外国から偽造通貨を日本国内に持ち込む、輸入もこれに該当します。

    有罪になると、通貨偽造罪と同様に、無期または3年以上の懲役が科せられます。

  2. (2)通貨模造罪

    通貨模造罪は、刑法ではなく「通貨及証券模造取締法」の1条に規定されている犯罪です。模造した通貨や紙幣、銀行券、国債証券等を作成または販売した場合には、1月以上3年以下の禁錮または罰金(同2条)が科せられます。なお、模造通貨を行使するかについては規定がありません。したがって、行使の有無に関わらず作成しただけでも罪に問われる可能性があります。

    また、「偽造」が本物の通貨と誤認されるような外観の通貨を作成した場合を指すのに対し、「模造」は偽物の通貨との判別が紛らわしい外観の通貨を作成した場合を指します。簡単にいえば、一般に偽物だと判別できる程度の模造通貨であれば、通貨模造罪として成立し得るということです。

  3. (3)未遂でも罪に問われる

    通貨偽造および変造罪、通貨偽造行使罪については、たとえ使用未遂の場合であっても未遂罪として処罰されます(刑法151条)。

    たとえば、偽造通貨を作成している途中で逮捕された場合や、通貨を店頭で使用しようとしたところ、店員に見抜かれた場合などです。

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3、通貨偽造罪における牽連犯とは?

通貨偽造罪と牽連犯(けんれんはん)について解説します。

  1. (1)牽連犯とは?

    牽連犯とは、犯罪の手段もしくは結果である行為が他の犯罪にも該当する場合を指します。

    たとえば、住居に侵入して窃盗を行った場合には、住居侵入罪(刑法130条)と窃盗罪(同235条)が牽連犯に該当します。牽連犯が成立する場合、それぞれの罪のうち、量刑が重い方の刑罰に処すると定められています(刑法54条1項)。
    ふたつの罪の量刑は以下の通りです。


    • 住居侵入罪の量刑
    • 3年以下の懲役または10万円以下の罰金

    • 窃盗罪の量刑
    • 10年以下の懲役または50万円以下の罰金


    有罪となった場合には、住居侵入罪よりも量刑が重い窃盗罪で処罰されます。

  2. (2)通貨偽造罪における牽連犯の要件

    通貨偽造罪で牽連犯にあたるのは、たとえば買い物の際に使う目的で通貨を偽造し、その偽造通貨を実際に買い物で使用した場合などが考えられるでしょう。この場合は通貨偽造罪および通貨偽造行使罪が成立し、牽連犯となります。

  3. (3)牽連犯の罪は重い

    通貨偽造罪および偽造通貨行使罪は、単一の犯罪であっても、無期または3年以上の懲役という重い刑罰です。加えて牽連犯に該当する場合には、刑期の長さに影響がでることは否めないでしょう。

    たとえば、偽造するときには行使の目的を有しておらず、結果として偽造通貨を行使した場合などには、行使の目的がなかった点をしっかりと主張・立証することが、適切な刑期とするためにも重要です。もしも通貨偽造罪やそれに関連する罪を犯してしまったら、すみやかに弁護士に相談しサポートを受けることをおすすめします。

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4、そのほか通貨に関して知っておきたい法律

通貨に関する犯罪は、刑法以外にも次の法律の適用を受けます。

  1. (1)通貨及証券模造取締法

    本物のお札の画像を広告やポスター、ホームページなどに使用することは、通貨及証券模造取締法1条の対象となる可能性はないか、注意が必要です。違法性は、「見本」の文字や斜線の有無、デザインや模擬の程度、大きさなどから総合的に判断されます。

    違反した場合には、模造通貨罪と同様に1月以上3年以下の禁錮または罰金(同2条)に処せられます。

  2. (2)関税法

    偽造通貨を海外から持ち込むことは、関税法でも取り締まられています。偽造、変造、模造された通貨は、関税法で定められている「輸入が禁止されている貨物」に該当します(同法第69条の11、6号)。

    違反した場合には、10年以下の懲役もしく3000万円以下の罰金または併科(同法109条)に処せられます。なお、未遂も同罪となります(同法109条3項)。

  3. (3)貨幣損傷等取締法

    本物の硬貨(貨幣)に穴を開けて損傷する、鋳つぶす(溶かして地金にする)などの行為は、貨幣損傷等取締法1項により禁止されています。損傷や鋳つぶすことを目的に貨幣を集める行為も同様です(同法2項)。
    違反した場合には、1年以下の懲役または20万円以下の罰金(同法3項)に処せられます。

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5、通貨偽造罪で弁護士に相談すべき理由

通貨偽造の罪は重く見られることが多く、すみやかな弁護活動の有無によって、刑期や量刑に影響がでる可能性が高まります。通貨偽造罪の疑いをかけられた場合、早期に弁護士へ相談すべき理由は以下の通りです。

  1. (1)裁判員裁判への備えができる

    通貨偽造罪は、裁判員裁判の対象となる犯罪です。裁判員裁判では一般市民に向けたわかりやすい主張や証拠の準備が必要です。不当に重い量刑を回避するためにも、警察・検察における取り調べの段階から弁護士のサポートを受けて、供述や立証の準備を入念にすることが大切です。

  2. (2)適切な刑期になる可能性がある

    弁護士は行使する目的がなかった点を立証・主張し、情状酌量を求めます。これにより、適切な刑期となる可能性が高まります。

  3. (3)示談交渉を一任できる

    繰り返しになりますが、通貨偽造罪は国家の信用を脅かす重罪です。示談を成立させても早期釈放につながることは難しいといえるでしょう。しかし、示談成立は、反省の態度を示す要素のひとつとなり得ます。偽造通貨を使用した店舗など被害者がいる場合には、弁護士に依頼し、すみやかに示談交渉を進めることが大切です。

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6、まとめ

今回は通貨偽造罪の成立要件や量刑、関連する犯罪について解説しました。通貨偽造罪および偽造通貨行使罪は、国の信用や経済を脅かす犯罪であるため、刑期が最長で無期懲役となる重大な罪とみなされます。たとえいたずら半分で偽造したとしても、懲役刑に処せられる可能性があります。
通貨偽造罪や関連する犯罪に問われている場合には、すみやかにベリーベスト法律事務所にご相談ください。刑事事件の実績豊富な弁護士が全力でサポートします。

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本コラムを監修した弁護士
萩原 達也
ベリーベスト法律事務所
代表弁護士
弁護士会:
第一東京弁護士会

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※本コラムは公開日当時の内容です。
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