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飲酒時の住居侵入は罪に問われる? 逮捕されてしまった場合の対処法
他人の住居や敷地に無断で入ることを一般的に「不法侵入」と呼びますが、刑法には「不法侵入罪」という犯罪はありません。どのような場所に立ち入ったのかによって適用される法律は異なりますが、住居に侵入した場合は「住居侵入罪」によって処罰されることになります。
令和元年版の犯罪白書によると、平成30年中に住居侵入罪で検挙された人員は3549人で、検挙率は49.7%を示しています。ほかの犯罪と比べると検挙率は決して高くありませんが、刑罰を科せられるおそれは十分にあるでしょう。
本コラムでは、住居侵入罪の定義や刑罰などをお伝えしながら、飲酒で深酔いし、誤って住居に侵入してしまった場合でも逮捕されるのかどうか、弁護士が解説します。
1、住居侵入罪が認められる要件とは?
住居侵入罪は、簡単にいえば「他人の住居に不法侵入した場合」に成立する犯罪です。窃盗などほかの犯罪と密接に関係することが多く、積極的に逮捕されるケースも少なくありません。
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(1)住居侵入罪の定義
住居侵入罪は刑法第130条に規定されており、正当な理由なく、人の住居もしくは人が看守する邸宅に侵入した場合に成立します。罰則は3年以下の懲役または10万円以下の罰金です。
ここでいう住居とは「人が起臥寝食(きがしんしょく)のために日常的に使用する場所」と定義されており、現に人が住んでいる住宅はもちろん、人が住んでいない空き家でも「人が看守する邸宅」に含まれるため、住居侵入罪の対象です。さらに、住宅の屋根やベランダだけでなく屋外の庭なども広く住居として扱われるため、他人の敷地に侵入するだけで住居侵入罪が成立すると考えればよいでしょう。 -
(2)住居侵入罪に該当する行為
住居侵入罪に該当する行為の代表的な例としては、金品を盗む目的で他人の住宅の敷地内に入る行為が挙げられるでしょう。「金品を盗む」という不法行為を目的とした侵入であり、住居侵入罪の成立は避けられません。同じように、風呂場などをのぞく、屋内の様子を盗撮するなどの目的で侵入した場合も住居侵入罪の処罰対象です。
一方で、まったく同じ場所に立ち入ったとしても、水道やガスの検針、郵便物の投函などの正当な目的があれば、当然住居侵入罪は成立しません。
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2、不退去罪との違い
住居侵入罪と同じく刑法第130条によって規定されている犯罪として「不退去罪」があります。
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(1)不退去罪の定義
刑法第130条には「要求を受けたにもかかわらず住居・邸宅などから退去しなかった者」を不退去罪として罰する旨が規定されています。住居や敷地への立ち入り時点では不法侵入とならない場合でも、家人などから「帰ってほしい」と言い渡されたのにこれを拒んで居座れば、不退去罪となります。
不退去罪が適用されるケースで代表的なのが、強引な訪問営業・押し売りです。敷地への立ち入りは営業活動であり、この時点では適法とまではいえなくてもとくに違法性があるわけではないでしょう。ただし、家人から退去を求められても退去しなければ、その場所に居座ること自体が違法となり、不法な侵入と同じ扱いを受けます。
なお、無断で侵入したうえで家人から退去を求められた場合は、住居侵入罪と不退去罪どちらの成立要件も満たすことになりますが、この場合は立ち入りの時点で住居侵入罪が成立するため、不退去罪は成立しないと解されます。 -
(2)不退去罪の刑罰
不退去罪の刑罰は住居侵入罪と同じです。刑事裁判で有罪判決を受けた場合、3年以下の懲役または10万円以下の罰金が科せられます。
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3、飲酒して酔っていたとしても逮捕される可能性がある
限度を超えた飲酒で深酔いしてしまい、思いもよらぬ行動を取ってしまった経験がある方は少なくないでしょう。酔った勢いで他人の住居や敷地に不法侵入をしてしまった、または自宅に帰ったつもりが誤って他人の住居に立ち入ってしまったといったケースも想定されます。
「酒に酔っていて判断能力がなくなっていた」と説明すれば、絶対に逮捕されないということはありません。
とくに違法の目的がなかったとしても、家人の通報を受けた警察官に身柄を確保されれば現行犯逮捕されてしまうおそれが強いでしょう。
詳しい取り調べを受けながら、酒に酔っていたので判断能力が失われていたこと、不法な目的はなかったことを説明すれば罪に問われない可能性はありますが、容疑が晴れるまでは身柄拘束が続くおそれがあります。
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4、住居侵入罪の刑罰と量刑の判断
住居侵入罪の刑罰は「3年以下の懲役または10万円以下の罰金」です。これは「法定刑」と呼ばれるもので、実際に刑事裁判で有罪となった場合は、法定刑の範囲内で刑罰が下されます。この「実際に下される刑罰」のことを「量刑」と呼びます。
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(1)量刑の判断
住居侵入事件における量刑判断は、次の要素が関係します。
- 侵入が窃盗や盗撮など別の犯罪を目的としていないか?
- 侵入が窓や錠などの破壊を伴っていないか?
- 計画的な侵入ではないか?
- 被害者との面識や交際関係はあるか?
- 被害者との示談は成立しているのか?
これらの要素を総合的に検討したうえで、たとえば窃盗目的で錠の破壊などを伴っているとなれば量刑は重きに傾くでしょう。反対に、日ごろから交際がある相手の住宅で、酒に酔って判断能力が低下していたため侵入してしまったなどのケースでは、悪質性が低いと判断されて量刑が考慮される可能性があります。 -
(2)牽連(けんれん)犯の場合
住居への不法侵入が別の犯罪の手段として存在するようなケースでは、複数の犯罪が同時に成立することになります。たとえば、空き巣目的で侵入をした場合は、侵入の時点で住居侵入罪が成立し、さらに窃盗の着手があった時点で窃盗罪も成立します。
このような関係を「牽連(けんれん)犯」といい、複数の犯罪のうち法定刑がもっとも重いひとつの犯罪で処罰されます。
また、窃盗の場合は侵入の時点で「窃盗の着手があった」とみなされて窃盗未遂罪が成立する可能性があり、最長で懲役10年という重い刑罰が科せられるおそれがあります。
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5、住居侵入罪で逮捕されてしまったら弁護士に相談すべき理由
住居侵入事件では「なぜ侵入したのか」が重要視されます。窃盗や盗撮といった犯罪を目的とした侵入であれば量刑が重きに傾きやすくなるため、不法な目的を疑われてしまった場合はその容疑を晴らす必要があるでしょう。たとえ検察官に起訴されてしまっても、単純な住居侵入のみで行為に悪質性がなければ罰金刑や執行猶予つきの判決も期待できます。
また、被害者に謝罪のうえで示談金を支払って示談が成立すれば、検察官が不起訴処分を下す可能性が高くなります。
侵入の理由について容疑を晴らしたい、被害者との示談交渉をすすめたい場合は、弁護士へ相談されることをおすすめします。
客観的な証拠をもとに「不法な目的はなかった」と主張するには、法律の知識とトラブル解決の実績を豊富にもつ弁護士のサポートが必要となります。弁護士に依頼することで、逮捕されて身柄を拘束されてしまった場合でも、早期釈放に向けた弁護活動をおこないます。被害者との示談交渉も一任できるので、スムーズな解決が期待できるでしょう。
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6、まとめ
他人の住居や敷地に侵入してしまえば、刑法に規定された「住居侵入罪」が成立します。また、たとえ不法な侵入ではなくても、家人などから退去を求められたのにこれを拒んで居座り続ければ「不退去罪」となります。
酒に酔ってついやってしまった、深酔いして判断能力がなくなっていたと言い訳をしても、逮捕される可能性がありますので、侵入の事実があれば被害者との示談成立を目指すのが賢明です。
住居侵入・不退去の容疑で逮捕された、または警察の捜査を受けているといったお悩みを解決したい方は、ベリーベスト法律事務所までお気軽にご相談ください。
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