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弁護士コラム

2021年12月09日
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詐欺罪で家族が逮捕! 詐欺罪の成立条件や無罪となった事例

詐欺罪で家族が逮捕! 詐欺罪の成立条件や無罪となった事例
詐欺罪で家族が逮捕! 詐欺罪の成立条件や無罪となった事例

自分の家族が詐欺事件の容疑者として逮捕されてしまったら、どのような刑罰に問われるのか、無罪を獲得できる可能性があるのかなど、その後の流れが気になるでしょう。

日本の司法における有罪率は99%以上と極めて高く、刑事裁判で無罪を言い渡されるケースは非常に少ないのが現実です。しかし、逮捕されても起訴されずに不起訴になるケースや、判決に執行猶予が付くケースもあるので、必ずしも刑務所に収監されるわけではありません。

本コラムでは詐欺罪の構成要件を確認しながら、詐欺罪で無罪判決が言い渡された事例や弁護活動の内容について解説します。

1、詐欺罪とは

詐欺罪とは、どのような犯罪を指すのでしょうか。まずは、詐欺罪の定義や種類について解説します。

  1. (1)詐欺罪の定義

    刑法第246条1項は「人をあざむいて財物を交付させた者」が詐欺罪にあたるとしています。つまり、人をだまして金品を差し出させる犯罪だと理解すればよいでしょう。

    また同2項は「前項の方法により、財産上不法の利益を得、または他人にこれを得させた者」を同様に詐欺罪にあたるとしています。財産上不法の利益とは、債務の免除や弁済の猶予、役務の提供などを指します。
    わかりやすくいうと、本来は有償のサービスを無償で提供させる、借金をなかったことにさせるなどの行為がこれにあたります。

  2. (2)詐欺の手口

    詐欺には、古典的な手口から、近年、増加傾向にある手口まで実にさまざまです。


    • 特殊詐欺
    • 電話やメールなどを用いて、対面することなく金銭をだまし取る詐欺です。
      親族を装いお金が必要だとうそをついて現金を振り込ませるオレオレ詐欺や、架空の金融商品の売買をもちかけて購入代金をだまし取る金融商品詐欺など、10類型を総称して特殊詐欺と呼びます。

    • セミナー詐欺
    • 起業や投資のセミナーを開催し、高額な参加費を支払わせたり高額な商品・サービスを購入させたりする詐欺です。

    • 結婚詐欺
    • 結婚する気もないのに結婚をちらつかせ、事業の失敗や親の入院費などの名目で金銭を借り、返済しないまま音信不通となるのが典型です。

    • リフォーム詐欺(点検商法)
    • 自宅を訪問して不必要なリフォームをすすめたうえで、相場よりも高額な費用を請求します。

    • 寸借詐欺
    • 金銭を返すつもりがないのに必ず返すなどとうそをつき、少額の金銭をだまし取ります。

2、詐欺罪の成立要件

では、具体的にどのような行為をすると詐欺罪が成立するのでしょうか。詐欺罪の成立要件をみていきましょう。

  1. (1)欺罔(ぎもう)行為

    欺罔行為とは、被害者が真実を知っていれば財産・利益の処分行為をしなかったであろう、重要な事実を偽る行為のことです。たとえば、親族でもないのに親族だと思わせるような電話をかけ、お金が必要だとうそをつく行為が該当します。

    欺罔行為の対象は「人」です。そのため、コンピューター等は詐欺罪の対象外となります。ただし、不実の電磁記録を作出したり、虚偽の電磁記録を供用することで、財産上不法の利益を得たり他人にこれを得させた場合には、電子計算機使用詐欺罪に問われる可能性があります。
    また、自動販売機に細工をする、他人のキャッシュカードを用いてATMを操作するなどの行為によって金銭を得たような場合は、詐欺罪ではなく窃盗罪にあたります。

    あざむく方法に制限はなく、不作為による欺罔行為でも構いません。不作為とはあえて積極的な行為をしないことをいい、詐欺罪では法律上の告知義務があるのに告知しないことが該当します。

    また、欺罔行為は相手の財物を交付させる目的であることが必要です。相手にうそを伝えたとしても、それが財物の処分行為に向けられたものでなければ詐欺罪にはあたりません。

  2. (2)錯誤に陥らせる

    錯誤に陥らせるとは、事実と認識の不一致、つまりうそを真実だと信じ込んでいる状態を指します。リフォーム詐欺でいえば、修繕など必要もないのに必要だと思い込んでいる状態がこれにあたります。

    あざむく行為があったものの、相手が錯誤に陥らなかった場合は、詐欺未遂罪が成立するにとどまります。

  3. (3)財物の処分行為

    処分行為とは、財物または財産上の利益を相手方に引き渡す行為のことです。金銭を振り込む、契約書にサインするといった行為が該当します。
    錯誤によって、相手が自らの意思で財物または財産上の利益を処分することが必要なので、たとえば隙をみて金銭を奪うといった行為は、詐欺罪ではなく窃盗罪が問題となります。

  4. (4)財物・利益の移転

    欺罔行為があり、相手が錯誤に陥り、相手が自分の意思で処分行為をしたうえで、財物・利益が移転して初めて詐欺罪が成立します。

    欺罔行為から処分行為までの要件を満たしても、最終的に財物・利益が移転しなければ詐欺未遂罪が成立するにとどまります。

3、詐欺罪の刑罰

詐欺罪の概要を理解したところで、詐欺罪の刑罰と執行猶予が付く可能性、時効について確認していきましょう。

  1. (1)詐欺罪の刑罰

    詐欺罪の刑罰は「10年以下の懲役」と規定されています。
    罰金刑の規定はないため、起訴されると公開の刑事裁判が開かれることになります。また、無罪となるか執行猶予付きの判決が下されない限り、刑務所に収監され強制労働に従事しなければいけません。

    なお、執行猶予とは一定期間に限って刑の執行を猶予し、その期間内に再び罪を犯さないことを条件に、刑罰権を消滅させる制度のことです。執行猶予が付くと刑務所に収監されず社会の中で生活しながら更生を目指すことになりますが、実刑判決と同様に前科がつきます。

  2. (2)初犯でも実刑を下されるおそれがある

    一般的に、初犯の場合は再犯者と比べて更生に期待できることから、判決に執行猶予が付く可能性も高まります。

    詐欺罪の場合も同様ですが、「初犯=執行猶予」ではありません。特に、組織的に詐欺を行ったなど、様態が悪質と判断された場合は、初犯かつ末端関与者であっても実刑判決が下されるおそれがあることを心得ておくべきでしょう。

  3. (3)詐欺罪の時効

    刑事事件において、一定期間の経過によって検察官が起訴できなくなる制度のことを公訴時効といいます。

    公訴時効の長さは、各犯罪の法定刑にもとづき定められています(刑事訴訟法第250条)。詐欺罪の法定刑は10年以下の懲役なので、公訴時効は「7年」です。
    詐欺罪の場合、犯罪が終わってから7年が経過すると検察官が起訴できなくなるため、刑事責任を問われることはなくなります。

    なお、公訴時効の起算点(いつから時効が進行するのか)は、欺罔行為をした時点ではなく、相手が財産の処分を行った時点です。

4、詐欺罪で無罪判決となった事例

詐欺罪では厳しい刑罰が予想されますが、起訴されても無罪となるケースがまれに存在します。詐欺事件で無罪判決が言い渡された事例を紹介します。

【最高裁 平成26年3月28日判決】
暴力団員であることを隠してゴルフ場を利用したとして詐欺罪に問われたものの、無罪が言い渡された事例です。

暴力団幹部だった被告人はゴルフクラブを訪れ、フロントの受付表に氏名・住所などを偽りなく記入し、ゴルフ場の利用を申し込んだうえでゴルフをプレーし、利用料金を支払いました。同ゴルフクラブでは出入り口に、『暴力団関係者の立ち入りプレーはお断りします』と記載した看板を設置するなどして、暴力団員の施設利用を拒絶する意向を示していたそうです。

第一審および控訴審は、暴力団員であることを隠して施設利用を申し込む行為自体が、ゴルフ場が利用提供を許否判断するための基礎となる重要な事項を偽るものであって、人をあざむく行為にあたるとし、有罪判決を言い渡しました。

しかし最高裁は、ゴルフクラブが利用者に対して暴力団員であることを確認する措置を講じていないなどの事実関係のもとでは、施設利用申し込み行為は人をあざむく行為にはあたらないとして無罪判決を言い渡しています。

なお、この事例では無罪となりましたが、同じように暴力団員であることを隠してゴルフ場を利用した事例で最高裁が有罪としたケースもあります。具体的な事例ごとに判断が分かれるという点は理解しておくべきでしょう。

5、詐欺罪で無罪を勝ち取るために弁護士ができること

詐欺罪で不起訴や執行猶予、無罪を得るためには弁護士のサポートが不可欠です。では、弁護士に依頼することで、どのようなサポートを得ることができるのでしょうか。

  1. (1)不起訴の獲得

    日本の司法において無罪判決を獲得するのは非常に難しいため、まずは起訴されないための弁護活動が重要となります。

    詐欺罪で不起訴を目指すために重要になるのは、被害者との示談です。示談が成立すると、被害弁済がなされ、被害者の処罰感情が緩和された証しとなるため、起訴して刑罰を科す必要性が低いと判断されやすくなります。特に被害届や告訴の取り下げ、加害者を許すという意思である宥恕(ゆうじょ)の意思を含む示談が成立すると、不起訴になる可能性は高まるでしょう。

    また、示談交渉のほかには、適切な監督者を用意する、交友関係を清算するなど、検察官に対して具体的な再犯防止策を示すことも有効です。

  2. (2)執行猶予の獲得

    起訴された場合でも、判決に執行猶予が付けば刑務所に収監されることはなく、日常生活を送りながら更生を図ることができます。会社や学校へ行くこともできるため、実刑判決が下された場合と比較して社会復帰も円滑に進みやすいでしょう。

    執行猶予を獲得するためには、裁判官に再犯のおそれが低いと認めてもらう必要があります。そのため弁護士は、本人の深い反省や再犯防止策、家族のサポート体制などを示したうえで再犯のおそれがないことを主張します。
    また、前述した被害者との示談成立も、重要な要素となります。

  3. (3)無罪判決の獲得

    だますつもりがなかった、詐欺とは知らずに関与してしたなどの事情がある場合は、早期に弁護士に相談することが大切です。弁護士は、取り調べにおける注意点をアドバイスするほか、焦りや不安から取り調べにおいて不用意な発言をしないよう精神面も含めてサポートします。

    また詐欺罪は、詐欺行為であることの認識・認容(故意)がなければ成立しないので、故意にだます意思がなかったことを示す客観的な証拠をそろえるなどして、無罪を主張します。

6、まとめ

詐欺事件では紹介した事例のように無罪判決を獲得できるケースはあるものの、その可能性は決して高いとはいえません。そのため、罪を犯した事実がある場合は、被害者との示談交渉を進め、不起訴や執行猶予を目指すのが現実的な選択肢といえます。一方で、身に覚えのない容疑をかけられている場合は、しっかりと否認することが重要です。

いずれのケースでも弁護士のサポートは不可欠なので、逮捕されてしまった場合や逮捕されるおそれがある場合は、早急に弁護士に相談しましょう。
詐欺事件を起こしてしまった場合は、刑事事件の解決実績が豊富なベリーベスト法律事務所へお任せください。

監修者
萩原 達也
弁護士会:
第一東京弁護士会
登録番号:
29985

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※本コラムは公開日当時の内容です。
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