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脱税で逮捕される?回避するには? 税務調査からの流れと対策
脱税で逮捕されるのは、「逃亡するおそれ」または「証拠を隠すおそれ」があると判断された場合が多いです。つまり、脱税の疑いがあるからといって必ず逮捕されるわけではありません。実際には、早期に修正申告や納税対応を進め、調査への協力姿勢を示している人は逮捕を避けられるケースが多くあります。
一方、放置したり、資料を隠したり、虚偽の説明をしたりすると、逃亡または証拠隠滅のおそれがあると評価され、逮捕のリスクが一気に高まります。脱税事件は、検察官が直接逮捕を行う特殊な仕組みのため、逮捕後の勾留判断までの時間が非常に短く、初動対応が結果を大きく左右します。そのため、逮捕を回避するには、早期に弁護士に相談することが重要です。
今回は、脱税事件で逮捕されるケースと回避できるケースの違い、調査から逮捕までの流れ、逮捕を避けるために今すぐ取るべき対応などをベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
1、脱税で逮捕されるケースと、回避できるケースの違い
脱税であっても、すべてのケースで逮捕されるわけではありません。
実際には、脱税で逮捕される場合の多くは「逃亡するおそれ」または「証拠隠滅のおそれ」があると判断された場合のようです。
そのため、適切に対応すれば逮捕を回避できるケースも多く存在します。
以下では、逮捕されるケースとされないケースの違いを説明します。
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(1)逮捕されるのは「逃亡・証拠隠滅のおそれ」がある場合
脱税は税法違反の一種ですが、逮捕には刑事訴訟法が定める逮捕要件を満たす必要があります。
つまり、- 罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があること
- 逃亡のおそれがある場合
- 証拠隠滅のおそれがある場合
のうち、罪を犯したと疑うに足りる相当な理由がある中で、逃亡するおそれがある場合または証拠隠滅のおそれがある場合のいずれかに該当すると、逮捕される可能性が高くなります。
脱税事件で逮捕される典型的なケース
- 帳簿やデータを隠した・改ざんした
- 関係者に口裏合わせを指示した
- 架空経費計上・二重帳簿など、悪質な隠蔽が行われている
- 税務署(国税当局)の呼び出しに応じない
- 修正申告を拒否し続けている
特に、帳簿隠しやデータ消去は「証拠隠滅」と判断されやすく、逮捕リスクを大幅に高める行為です。
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(2)逮捕されないケースでも在宅で捜査は進む
「逮捕されなかった=問題が解決した」というわけではありません。
逮捕の有無とは別に、税務上および刑事上の手続(在宅事件)は進行します。
このような在宅事件でも修正申告や追加納税が求められるのはもちろん、不正が疑われる場合には、裁判所の令状に基づき自宅への捜索が行われる可能性もあります。
ただし、在宅事件であれば身柄拘束がないため、仕事や家庭への影響は最小限にとどめることができ、社会生活を保ちながら対応できるという点は大きなメリットといえます。 -
(3)「すぐ動いた人」と「放置した人」で結果が変わる理由
脱税事件では、初動対応がもっとも重要です。
早期に修正申告や納税を行い、誠意ある姿勢を示すことで逃亡・証拠隠滅のおそれは低いと判断され、逮捕回避につながる可能性が高くなります。
また、弁護士が介入することで調査対応が適切かつ円滑になり、強制調査へ進むリスクを軽減できる可能性があります。
一方で、調査の連絡を無視したり、違法性を認識しながら放置したりすると、国税局が強制調査(査察)へ移行しやすくなります。
結果として、「放置した人」は逮捕の可能性が高まり、「すぐ動いた人」との差が大きく出てしまうのです。
2、逮捕を避けるためにとるべき初動対応
脱税の疑いがある場合、最初の対応がその後の捜査結果を大きく左右します。
調査が始まってから慌てて動くと、国税側に「隠そうとしている」と受け取られ、逮捕の危険性が高まることもあります。
以下では、逮捕を避けるために必要な初動対応を紹介します。
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(1)早期の修正申告・納税対応が重要
脱税の疑いがある場面では、「できるだけ早く正しい金額を申告し、納税を済ませること」が最優先の対応です。
税務署や国税局は、- 不正が発覚した後に誠実に対応したのか
- 自主的に申告内容を正したのか
などの点を重視する傾向があります。
これらは、刑事告発や逮捕の判断に影響します。
逮捕を回避するには
修正申告や追加納税を早期に行うことで、逃亡・証拠隠滅のおそれが低いと評価され、逮捕を回避できる可能性が高くなります。
何もしないと逮捕のリスクが高まる
一方、何もしないまま調査が進むと、強制調査・告発という流れに発展しやすく、最終的に逮捕に至るリスクが高くなるため注意が必要です。 -
(2)申告漏れと脱税の違い|故意の有無
税務トラブルの相談では、「申告漏れ」と「脱税」が混同されがちですが、この2つは大きく異なります。
申告漏れ 計算ミス、事務処理の誤り、控除の認識違いなど故意がないケース 脱税 売り上げの隠蔽、架空経費の計上など、故意に税額を減らす行為
たとえ本人に意図がなかったとしても、帳簿が不自然な処理になっている場合や継続的な過少申告がある場合には、「故意があった」と国税側に判断される可能性があります。
早い段階で事実関係を整理することで、- 故意がなかったこと
- あくまで過失による申告ミスであること
を適切に説明でき、刑事告発・逮捕のリスクを下げることにつながります。
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(3)弁護士が介入すると逮捕リスクが下がる理由
脱税事件の調査で弁護士が早い段階から関与していると、捜査機関側に、「身柄を拘束しなくても手続きに支障がない」と判断してもらえる可能性が高まります。
- 逃げる心配が低いと評価されやすい
まず、弁護士が連絡窓口となることで、呼び出し日程の調整や必要資料の提出の窓口が確保されているという印象を与える効果が期待できます。
このため、当局からは、「逃げる心配がなく、手続きにきちんと応じる人物である」と評価されやすくなります。 - 証拠隠滅の可能性が低いと判断されやすい
また、査察(強制調査)で主要な証拠はすでに押収されますが、弁護士が関与することで追加提出する資料の扱いも適切に管理され、「証拠を隠したり捨てたりする可能性が低い」とみなされます。 - 不自然な動きが生じにくい
さらに、当局からみて、弁護士が行動や発言のアドバイスを行うことが想定されるため、不自然な動きが生じにくいという印象を与えうることも評価ポイントと考えられます。
結果として、逃亡のおそれも証拠隠滅のおそれも低いと判断されやすくなり、逮捕・勾留を避けられる可能性が高まります。
- 逃げる心配が低いと評価されやすい
- ※お電話は事務員が弁護士にお取次ぎいたします。
- ※被害者からのご相談は有料となる場合があります。
3、国税局・税務署の調査から逮捕に至るまでの流れ
脱税事件では、通常の刑事事件とは異なる特有の手続きの流れがあります。
多くの刑事事件は、警察が捜査を開始しますが、脱税事件は国税局の告発を受けて検察庁が捜査を開始する点が大きな特徴です。
そのため、逮捕後の流れや勾留判断のタイミングも一般的な事件と異なります。
以下では、税務調査から強制調査(査察)、告発、逮捕に至るまでの一連の流れを整理し、弁護士に相談すべきタイミングを説明します。
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(1)脱税事件の逮捕までの一般的な流れ
脱税が疑われる場合、税務当局は、以下のような流れで手続きを進めます。
① 税務調査
まずは税務署や国税局による任意の税務調査が行われます。
任意調査の段階では、対象者の協力が得られるか、申告内容に重大な不正があるかを確認し、必要に応じて関係者へのヒアリングや帳簿・請求書の提出を求めます。
② 査察(強制捜査)
重大な脱税の疑いが強い場合、国税局査察部が裁判所の令状に基づいて強制調査(査察)を行います。
いわゆる「マルサの強制捜査」であり、早朝に複数の査察官が一斉に事務所や自宅へ入り、帳簿やパソコンを押収します。
③ 告発
査察の結果、刑事事件としての立件が相当と判断されると国税局は検察庁へ告発します。
脱税事件は、ここで初めて「刑事事件」として正式に動き出します。
④ 逮捕
告発を受けた検察官が必要と判断すれば、逮捕手続きに進みます。
重要なのは、脱税事件は警察ではなく検察官が逮捕を行うという点です。
これにより、通常の刑事事件にある「警察→検察への送致」というステップが省略され、逮捕後すぐに検察官が裁判所に対して勾留請求を行い、裁判所が勾留の要否を判断します。
勾留されるかどうかの判断が速いため、初動での適切な対応が極めて重要になります。 -
(2)任意調査と強制調査の違い
脱税事件の手続きは、任意調査と強制調査で次のような違いがあります。
任意調査
- 事前連絡のうえで実施されることが多い
- 書類提出も任意
- 逃亡・証拠隠滅のおそれが低ければ逮捕には直結しない
任意調査は、「税務調査」として一般的に行われるもので、不正の疑いがあるときにまず実施される段階の調査といえます。
強制調査(査察)
- 裁判所の令状に基づき実施
- 自宅、会社、関係先などを一斉に捜索
- 書類・データは強制的に押収
- 対象となるのは重大な脱税事件
強制調査は、すでに脱税の証拠が相当程度揃っている段階で行われることが多いため、告発・逮捕へ進む可能性が高まります。
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(3)弁護士に相談すべきタイミング|呼び出し段階からでも可能
脱税の疑いで連絡や呼び出しが来たときが、弁護士に相談すべき最適なタイミングです。
つまり、税務署から連絡が来た段階で弁護士に相談することが、逮捕回避のために特に重要です。
初期段階で弁護士が関与すると、資料提出の方法や調査官への説明内容を整理でき、誤解を避けやすくなります。協力的な態度を示せるため、逃亡や証拠隠滅のおそれが低いと判断され、逮捕の必要性も低く見られます。
逆に、呼び出しを放置したり、独自判断で対応して調査官の心証を悪くしてしまったりすると、強制調査へ進むリスクが上がり、逮捕可能性も高まります。
早期に弁護士と連携することで、調査の進行を適切に管理し、不利益な展開を防ぎやすくなります。
4、脱税の罰則は?懲役・罰金
脱税が刑事事件として扱われると、所得税法や法人税法に基づき、重い刑罰が科される可能性があります。特に、悪質性が強いと判断されると実刑に至ることもあるため、罰則の仕組みと量刑判断のポイントを正確に理解しておくことが重要です。
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(1)所得税法・法人税法上の刑罰
所得税法(第238条)・法人税法(第159条)では、故意に所得を隠したり架空計上を行ったりして税金を免れた場合、次の刑罰が定められています。
- 10年以下の拘禁刑(※以前の懲役刑・禁錮刑を統合した刑罰)
- 1000万円以下の罰金
また、悪質性が強い場合には、「拘禁刑+罰金」が併科されることもあります。
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(2)実刑/執行猶予の分かれ目
脱税事件が起訴されると、「実刑になるか」「執行猶予が付くか」が大きな関心事になります。判断には主に以下の点が影響します。
同じ脱税事件でも、脱税発覚後の初動対応によって結論が大きく変わる点が特徴です。
① 脱税額の大きさ
数千万円〜億単位の高額な脱税は、実刑が選択される可能性が高くなります。
② 故意の強さや悪質性
架空請求や二重帳簿など、計画的な隠蔽は重く評価されます。
③ 自首・修正申告・納税対応
告発前に自ら修正申告を行い、納税まで済ませていると量刑は大きく軽減されます。
④ 反省の有無・再発防止措置
経理体制の整備や担当者の変更など、再発防止が明確になっているケースでは執行猶予に傾きやすくなります。 -
(3)社会的影響|報道・取引停止・役職辞任など
脱税が発覚すると、刑事罰以外の社会的ダメージも避けられません。
具体的には以下のような影響が考えられます。
- 新聞・テレビ・ネットで報道されるリスク
- 取引先からの信用低下による契約終了・取引停止
- 金融機関からの融資停止・更新拒否
- 会社役員・公職の辞任や解任
- 従業員や家族への影響
このような「社会的制裁」は、刑罰以上に大きなダメージとなることもあります。
だからこそ、早期に弁護士・税理士と連携し、被害を最小限に抑えるための対応が欠かせません。
5、脱税・横領・節税はどう違う?犯罪になるライン
脱税事件に関しては、「節税と脱税の境界が分からない」「私的流用は横領になるのか?」といった質問を多く受けます。
同じお金に関わる行為でも、法律上の評価はまったく異なります。
そのため、どこから犯罪になるのか、その線引きを明確に理解しておくことが重要です。
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(1)「節税」は合法的手段(税法上のルール内)
節税とは、税法で認められた制度を適切に活用し、支払う税金を少なくする行為です。
- 青色申告特別控除
- 特例措置の活用
- 適正な経費計上
税務署も当然の前提として認めている行為であり、違法性はありません。
ただし、「節税のつもりが、実は脱税に該当していた」というケースもあるため、税理士に確認しながら進めることが重要です。 -
(2)「横領」は他人の財産を盗む行為(税務とは別の刑法犯罪)
横領は、会社や他人から預かった財産を、本人の許可なく自分のために使う行為を指します。これは税務とは別に、刑法上の犯罪として扱われます。
- 会社の売り上げを個人口座に入れる
- 会社の資金を私的に使う
- 預かったお金を勝手に流用する
といった行為は業務上横領罪に当たる可能性があります。
横領が行われた結果として、税務申告も不正になると、横領+脱税の両方の責任を問われることもあります。 -
(3)「脱税」は違法な隠蔽・虚偽申告
脱税とは、税金を減らすために不正な手段を用いる行為を指します。
- 売り上げの一部を隠す
- 架空経費を計上する
- 二重帳簿を作る
など、「意図的に税額を少なく見せる行為」が脱税に当たります。
「故意」があるかどうかが重要で、誤りや勘違いで申告を間違えた場合は「過少申告(申告漏れ)」として扱われ、脱税とは区別されます。 -
(4)自社資金を私的に流用→横領罪、会社として不正計上→脱税罪、という線引き
事業者がよく悩むのが、どの行為がどの犯罪になるのかという点です。
会社のお金を私的に使った 横領罪の可能性 その支出を経費と偽装して計上した 脱税罪の可能性
このように、資金の動き(横領)と税務処理(脱税)は別々に判断されます。
横領行為が伴う場合は、横領罪と脱税罪の双方で責任を問われることがあり、一般の脱税事案より重く扱われる傾向があります。 -
(5)「税理士の指示でやった」「知らなかった」場合
脱税相談で多いのが次のようなケースです。
- 税理士に任せていたから知らなかった
- 経理担当者がやった
- 悪気はなかった
しかし、税法上の責任は最終的に申告義務者である経営者・個人にあります。
故意が弱いと判断されれば刑事処分が軽減される可能性はありますが、告発されるリスクが完全になくなるわけではありません。
適法な節税と違法な脱税の線引きは非常に複雑であり、少しの判断ミスが刑事事件につながる可能性があるため注意が必要です。
6、脱税は犯罪!弁護士・税理士に相談を
脱税は、税務上の問題にとどまらず、告発されれば刑事事件として扱われます。
税務署や国税局から調査や呼び出しを受けている段階で、どのように対応するかによって、逮捕のリスクや量刑が大きく変わります。
早期に弁護士へ相談することで、調査官への説明内容や提出資料の整理を行うことで、誤解を避けつつ適切な対応方針を示すことができます。
また、ベリーベスト法律事務所には、グループ法人として税理士事務所があり、税務面の見直しや修正申告まで一貫してサポートできます。
税務調査の連絡を受けた、処理に不安があるなど、不安を感じた段階で早めにベリーベスト法律事務所までご相談ください。
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