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侵入窃盗とは? 侵入窃盗にあたる手口や問われる罪を弁護士が解説
窃盗罪のうち、住居などに不法に侵入したうえで窃盗を行ったものは「侵入窃盗(住居侵入窃盗)」と呼ばれます。
侵入窃盗は、不法侵入を伴わない非侵入窃盗より刑罰が重くなる傾向があるので注意が必要です。もし侵入窃盗を犯してしまったら、速やかに弁護士へご相談ください。
本記事では、侵入窃盗の構成要件・該当行為・逮捕の可能性などをベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
この記事で分かること
- 侵入窃盗にあたる行為
- 侵入窃盗で逮捕されるたらどうなる?
- 逮捕された場合に、重い刑事処分を回避するための方法
1、侵入窃盗とは
「侵入窃盗」とは、住居などに不法に侵入したうえで行われる窃盗です。不法侵入を伴わない非侵入窃盗に比べて、侵入窃盗の量刑は重くなりやすい傾向にあります。
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(1)窃盗の3分類|侵入窃盗・非侵入窃盗・乗り物盗
法務省が公開している『犯罪白書』では、窃盗事件(窃盗犯)を「侵入窃盗」「非侵入窃盗」「乗り物盗」の3種類に分類しています。
① 侵入窃盗
住居などへの不法な侵入を伴う窃盗です。
(例)空き巣、出店荒らし、忍び込み、事務所荒らしなど
② 非侵入窃盗
住居などへの不法な侵入を伴わない窃盗です。
(例)万引き、車上・部品狙い、置き引き、払出盗、色情狙い、自動販売機狙い、仮睡者狙い、すり、ひったくりなど
③ 乗り物盗
乗り物を客体とする窃盗です。
(例)自転車盗、オートバイ盗、自動車盗
令和4年における窃盗の認知件数の手口別構成比は、以下のとおりとなっています。侵入窃盗被害の認知件数は、他の種類の窃盗に比べて少数です。
侵入窃盗 9.0% 非侵入窃盗 56.1% 乗り物盗 34.9% 合計 40万7911件
出典:令和5年犯罪白書 p10|法務総合研究所
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(2)侵入窃盗における罪数関係|住居侵入罪と窃盗罪は牽連犯
侵入窃盗については、侵入行為について「住居侵入罪」(刑法第130条前段)、窃盗について「窃盗罪」(刑法第235条)が成立します。
侵入窃盗の目的は財物を窃取すること(=窃盗)であり、住居などへの侵入行為(=住居侵入)はその手段です。
したがって、手段と目的の関係にある住居侵入罪と窃盗罪は「牽連(けんれん)犯」(刑法第54条第1項後段)となり、より重い窃盗罪の刑(=10年以下の懲役または50万円以下の罰金)によって処断されます。 -
(3)侵入窃盗の量刑は重くなりやすい
侵入窃盗は、他人の侵入を想定していない場所に侵入して行われるため、非侵入窃盗よりも大きな法益侵害を引き起こしやく、危険の大きい犯罪行為になります。
そのため、侵入窃盗は非侵入窃盗に比べて、量刑が重くなる傾向にあります。特に被害金額が大きい場合や、鍵を壊す・窓ガラスを割るなど悪質な方法で侵入した場合には、初犯でも実刑となるケースがあり得ます。
2、侵入窃盗の構成要件・該当する行為
侵入窃盗(=住居侵入罪・窃盗罪)の構成要件と、侵入窃盗に該当する主な行為を紹介します。
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(1)住居等侵入罪の構成要件
住居等侵入罪は、以下の構成要件をすべて満たす行為に成立します。
① 以下のいずれかの場所に侵入したこと
- 人の住居
- 人の管理する邸宅、建造物、艦船
※邸宅:居住用の建造物で、住居以外のもの
※建造物:住居、邸宅以外の建物
※艦船:軍艦および船舶
※侵入:管理権者の意思に反した立ち入り
② 侵入について正当な理由がないこと -
(2)窃盗罪の構成要件
窃盗罪は、以下の構成要件をすべて満たす行為に成立します。
① 以下のいずれかの物につき、占有者の意思に反して、自己または第三者に占有を移転させたこと
- 他人の所有物
- 自己の所有物のうち、他人が占有し、または公務所の命令により他人が管理するもの
② ①の行為を、不法領得の意思をもって行ったこと
※不法領得の意思:権利者を排除して、自己の所有物として利用・処分する意思。単に捨てたり壊したりする意思を有していたにすぎない場合は、不法領得の意思が認められない -
(3)侵入窃盗に該当する主な行為
一例として、以下の行為は侵入窃盗にあたります。
① 空き巣
居住者などがいないときに建物に侵入し、金品を盗む行為です。
② 居空き
居住者などが内部にいて活動しているにもかかわらず、隙を見て建物に侵入し、金品を盗む行為です。
③ 忍び込み
居住者などが内部で就寝している間に建物へ忍び込み、金品を盗む行為です。
④ 出店荒らし
店舗に侵入して金品を盗む行為です。主に防犯対策が手薄な店舗に対して、営業時間外に行われます。
⑤ 事務所荒らし
事業者の事務所に侵入して金品を盗む行為です。出店荒らしと同じく、防犯対策が手薄な事務所に対して、営業時間外に行われることが多いです。
3、侵入窃盗は逮捕される可能性が高い
侵入窃盗は、窃盗罪にあたる行為の中でも悪質性が高く、想定される刑が重いことから逃亡のおそれも高いとして、発覚すれば逮捕される可能性が高いと考えられます。
侵入窃盗で逮捕されるパターンには、主に「現行犯逮捕」と「通常逮捕(後日逮捕)の2種類があります。
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(1)現行犯逮捕
現行犯人は、誰であっても逮捕状なくして逮捕することができます(刑事訴訟法第213条)。
現行犯人にあたるのは、以下のいずれかに該当する者です(同法第212条)。
① 現に罪を行っている者
(例)住居に侵入しようとしてピッキングを行っている者、住居に侵入して金品を物色している者など
② 現に罪を行い終わった者
(例)金品の奪取が完了し、犯行現場から逃げようとしている者
③ 以下のいずれかに該当し、罪を行い終わってからすぐの状況であると明らかに認められる者
- 犯人として追呼されているとき
(例)侵入窃盗を発見され、「待て泥棒!」と呼び止められながら逃げている者 - 盗品(=盗んだ物)または明らかに犯罪に使用したと思われる凶器などを所持しているとき
(例)侵入窃盗によって盗まれた物を携帯している者 - 身体や服に犯罪の顕著な証跡があるとき
(例)住居に侵入する際、窓ガラスを割ったときに怪我をして血痕がついている者 - 呼びただされて逃走しようとするとき
(例)侵入窃盗を犯した後、警察官に呼び止められて逃げ出した者
特に、侵入窃盗を行っている最中に住人に見つかった場合は、現行犯逮捕される可能性が高いと考えられます。
- 犯人として追呼されているとき
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(2)通常逮捕(後日逮捕)
現行犯逮捕されなかったとしても、後日逮捕状に基づいて通常逮捕されることもあります。
通常逮捕は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があり、かつ逮捕の必要性がある場合に、裁判官が発行する逮捕状に基づいて行うことができます(刑事訴訟法第199条第1項、刑事訴訟規則第143条の3)。
特に、侵入窃盗の現場または前後の行動が防犯カメラに写っている場合や、犯行現場に残された指紋や血痕などから犯人を特定し得る場合には、通常逮捕される可能性が高くなるといえます。
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4、侵入窃盗について、重い刑事処分を回避するための方法
侵入窃盗を犯してしまった方は、実刑を含む重い刑事処分を受けるおそれがあります。
重い刑事処分を回避するためには、以下の対応を検討しましょう。
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(1)自首する
捜査機関が犯罪事実を認識する前に、自首したときは、その刑を減軽できるとされています(刑法第42条第1項)。また、起訴前の段階においても、自首したことは被疑者にとって有利な情状として考慮され、検察官が斟酌する場合があります。
自首が成立するのは、捜査機関が犯人を特定する前の段階に限られるので、早めに自首することを検討しましょう。 -
(2)被害者との示談を成立させ、被害弁償を行う
侵入窃盗による被害に関して、被害者との間で示談をして被害弁償を行えば、被害の回復と被害者の許しによって処罰の必要性が低下したと判断され、不起訴または執行猶予つき判決の可能性が高まります。
示談交渉を行う際に必要となる被害者の連絡先は、弁護士を通して検察官に示談したい旨を伝えれば教えてもらえることがあります。弁護士のサポートを受けながら示談の早期成立を目指しましょう。 -
(3)早期に弁護士へ相談する
侵入窃盗について重い刑事処分を回避するためには、早期に弁護士へ相談することが大切です。
早い段階で弁護士に相談すれば、不起訴に向けた弁護活動を充実した形で行ってもらえます。また、被疑者が逮捕・勾留によって身柄を拘束された場合は、家族とのやり取りの仲介を弁護士に依頼できるので、精神的な支えとなるでしょう。
ご自身やご家族が侵入窃盗をしてしまった場合は、すぐに弁護士へご相談ください。
5、まとめ
住居・店舗・事務所などへの侵入窃盗は、窃盗犯の中でも悪質と評価される傾向にあり、重い刑事罰の対象になり得ます。
侵入窃盗による重い刑事処分を避けるには、できる限り早期に弁護士へ相談することが大切です。弁護士は、不起訴に向けた弁護活動や公判手続きに向けた準備などを通じて、被疑者・被告人が不当に重い刑事処分を受けることがないようにサポートいたします。
ベリーベスト法律事務所は、刑事弁護に関するご相談を随時受け付けております。刑事事件に関する経験を豊富に有する弁護士が、被疑者・被告人やご家族に寄り添いながら、早期の身柄解放および刑事手続きからの解放を目指して尽力いたします。
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