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法改正で厳罰化した強制性交等罪(旧:強姦罪)、逮捕されたら懲役何年? 示談のメリットは?
平成29年、政府は性犯罪規定の改正案を国会に提出し、賛成多数で可決されました。性犯罪規定の改正は実に110年ぶりです。これまでは女性に対する性的暴行だけが罪の対象でしたが、今回の改正では「性別問わず性的暴行が行われた場合」も罪の対象となります。また、強制性交等罪(旧:強姦罪)における懲役年数が引き上げられたこともひとつのポイントとなります。
今回の記事では、ベリーベスト法律事務所の弁護士が強制性交等罪の内容や刑罰について詳しく説明いたします。
1、法改正によってどのように厳罰化されたのか
平成29年7月の性犯罪規定の改正によって、「強姦罪」の名称が「強制性交等罪(きょうせいせいこうとうざい)」に変わりました。これにより準強姦罪も「準強制性交等罪」という名称に変更となります。
さらに、以前と比較すると罰則はさらに強化されました。
改正前 | 改正後 |
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強姦罪 3年以上の有期懲役 | 強制性交等罪 5年以上の有期懲役 |
準強姦罪 3年以上の有期懲役 | 準強制性交等罪 5年以上の有期懲役 |
強姦致死傷罪 無期又は5年以上の懲役 | 強制性交等致死傷罪 無期又は6年以上の懲役 |
上記のように強制性交等罪には罰金刑はなくいずれも懲役刑であり、懲役年数は以前より厳しく定められています。懲役年数は性的暴行の内容や程度等によって変わります。
2、強制性交等罪(旧:強姦罪)と強制わいせつ罪の違い
刑法に定められている性犯罪の成立要件、またそれぞれの内容の違いについて見ていきましょう。
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(1)強制性交等罪(旧:強姦罪)
強制性交等罪は刑法第177条において、次の通り規定されています。
「十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という)をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。」
強制性交等罪は、暴行・脅迫という手段を使い、性交、肛門性交、口腔性交を行った場合に成立します。
ここでいう暴行とは、性交等を行うために、殴ったり、力ずくで抑え込んだりすることです。脅迫は、性交等を行うために、刃物で刺すそぶりを見せて脅したり、「騒ぐと殺すぞ」と言って脅したりすることです。
旧強姦罪では「男性が女性に対して行った性的暴行」が適用範囲でしたが、平成29年から新たに施行された強制性交等罪では、女性が加害者となった場合や男性が被害者となった場合も適用範囲となります。
また、相手が13歳未満の場合は、たとえ相手の合意があったうえで行われた行為であったとしても、強制性交等罪として処罰されることになります。 -
(2)準強制性交等罪(旧:準強姦罪)
準強制性交等罪は刑法第178条2項において、次の通り規定されています。
「人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、性交等をした者は、前条の例による。」
準強制性交等罪は、たとえ暴行・脅迫行為がなかったとしても、既に心神喪失・抗拒不能状態となっている相手に性交等を行ったり、相手を心神喪失・抗拒不能状態にさせてから性交等を行ったりした場合に成立します。
心神喪失というのは、精神的な障害によって正常な判断力が失われた状態であることをいい、抗拒不能は心理的又は物理的に抵抗ができない状態のことをいいます。
たとえば、強度の精神障害又は知的障害がある人物に対する性交等、睡眠薬や飲酒による酩酊状態の人物に対する性交等などが該当します。 -
(3)強制性交等致死傷罪(旧:強姦致死傷罪)
強制性交等致死傷罪は刑法第181条2項において、次の通り規定されています。
「第百七十七条、第百七十八条第二項若しくは第百七十九条第二項の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯し、よって人を死傷させた者は、無期又は六年以上の懲役に処する。」
強制性交等致死傷罪は、性交等の手段として用いた暴行や脅迫などが原因となって被害者にけがを負わせたり死亡させたりした場合に成立します。
刑罰は、無期懲役又は6年以上の有期懲役刑となりますので、非常に重い刑罰といえるでしょう。相手を死亡させた場合は、無期懲役となる可能性が高くなります。 -
(4)監護者性交等罪
監護者性交等罪は、平成29年の刑法改正に伴い、新設された犯罪です。
刑法第179条2項において、次の通り規定されています。「十八歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて性交等をした者は、第百七十七条の例による。」
ここでいう「現に監護する者」とは、18歳未満の者を現に保護あるいは監督している者をいいます。同居している親はもちろん、親ではない者でも同居し保護・監督をしていると認められれば、「現に監護する者」となり得ます。その他、養親や養護施設の職員なども「現に監護する者」となり得ますが、学校の教師や部活動の指導者については、通常、「現に監護する者」には該当しないとされています。
上記の「現に監護する者」が、18歳未満の被監護者に対して、監護者としての影響力を利用して性交等を行った場合に、監護者性交等罪が成立します。
監護者の影響力を利用して行う犯罪となりますので、脅迫や暴行が用いられていなかったとしても、監護者性交等罪は成立してしまいます。
刑罰は、強制性交等罪と同様に、5年以上の有期懲役刑となります。 -
(5)強制わいせつ罪
強制わいせつ罪は刑法第176条において、次の通り規定されています。
「十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以上十年以下の懲役に処する。十三歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。」
強制わいせつ罪は、暴行・脅迫といった手段によって、性交等以外のわいせつ行為したときに適用される罪です。
強制性交等罪も強制わいせつ罪も、他者に性的暴行を加える犯罪ですが、大きな違いとしては「性交等を目的としているか否か」ということです。
性交等をしていない場合は、「強制性交等未遂」なのか「強制わいせつ未遂」なのかで判断が分かれます。実際に性交等をしていなくても、性交等を行う意思があったのであれば強制性交等の未遂として処罰されますし、性交等の意思はなかったとしても(例えば下着を脱がせるだけが目的だったとしても)強制性交等の未遂として捜査される可能性があります。
3、強制性交等罪は初犯でも懲役刑となる? 執行猶予はつかない?
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(1)初犯でも懲役刑となる可能性は?
強制性交等罪で起訴されると、初犯であっても強制性交等罪の法定刑の範囲内で判決が言い渡されるので、5年以上の有期懲役となります。暴行の態様が悪質だと判断されるなどの場合は初犯でも懲役年数は長くなる可能性が高くなります。
ただし、もし加害者と被害者との間で示談が成立すれば、起訴されない可能性があります。不起訴となった場合は刑罰を科されることはありません。また、示談が成立したのが起訴後であったとしても、示談が成立していることのほかに、初犯である点や加害者が深く反省しているかなどを考慮して懲役年数が減少したり、実刑を免れたりする場合があります。被害者との間で示談が成立しなければ、実刑となることがほとんどです。 -
(2)初犯でも執行猶予は付かない?
そもそも、執行猶予というのは、有罪の判決を受けても一定期間は刑の執行を猶予し、その間に何事もなく過ごせれば(再犯なく過ごせれば)刑の執行は免れ、そのまま社会復帰も可能となる制度です。
強制性交等罪には、非常に重い刑罰が定められていますので、起訴された場合には初犯であったとしても執行猶予が付かないケースが多いです。ただし、起訴後に被害者との示談が成立した場合や、未遂であったと判断された場合には、執行猶予が付くことがあります。
執行猶予の有無は、刑務所に収監されるか否かの大きな分かれ目となるものです。ただし、もしも執行猶予期間中に再犯を行えば、執行猶予は取り消され、刑務所に収監されることになります。
強制性交等罪で執行猶予付き判決を受ける可能性を高めるためには、被害者との示談が成立し、被害者が加害者を許しているかどうかが重要な判断ポイントとなります。
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4、強制性交等罪でも示談は可能? 示談成立の効果とメリット、方法について
強制性交等罪であっても示談にできる可能性はあります。示談の効果と、示談を成立させることによるメリットや、示談を成立させる方法について説明していきます。
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(1)示談の効果
強制性交等罪で示談が成立するということは、加害者と被害者が合意をして被害弁償を行い、被害者からの許しを得ることを意味します。示談が成立すると、加害者には示談金を含めその示談内容を履行する義務が発生し、被害者は加害者に対して示談金を請求できるようになります。
ただし、ほとんどの場合は、示談の成立と同時に示談金を支払うことになります。
もしも加害者が示談金を含め示談内容を履行しない場合、被害者は、示談書を証拠として請求や法的手続きを有利に進めることが可能となります。
加害者側にとっても、しっかりと示談書を作成し、被害者に署名・押印をもらうことは、後日のトラブル(示談についての言った言わないの争い)の防止に役立ちます。 -
(2)示談を成立させるメリット
強制性交等罪の事件で示談が成立した場合の加害者側のメリットは、非常に大きいです。
逮捕後、検察官が起訴する前に被害者と示談が成立すれば、そのまま不起訴となり、前科なしで事件が終了する可能性が高くなります。
起訴された後であっても、被害者との示談が成立すれば、示談不成立の状態よりも懲役の刑期が短くなったり、執行猶予付きの判決を得られたりする可能性が高くなるといったメリットが出てきます。
加害者にとって示談成立は、起訴前又は起訴後の刑事手続における様々な点で有利に進められる材料となります。 -
(3)被害者との示談を成立させるためには?
被害者との示談を成立させるためには、できるだけ早く謝罪の意思を伝え、示談交渉を行うことが重要となります。
しかし、強制性交等罪においては、被害者が示談を受け入れない、連絡を受け付けないというケースは少なくありません。
そのため、加害者自身からの連絡はもちろんのこと、加害者の家族からも連絡を取ることは困難です。
通常、検察官は加害者本人およびその家族から、被害者の連絡先を聞かれても開示することはありませんが、弁護士であれば被害者の同意を得た上で、検察官から被害者の連絡先を聞くことができる可能性があります。
また、第三者である弁護士であれば、被害者が示談に応じてくれるケースもありますので、示談成立の可能性は高まります。
示談交渉が可能となれば、弁護士が礼節を守って真摯に謝罪を行い、加害者は深く反省していること、二度と同じ過ちを犯さないと誓っていること等を被害者に伝えることができます。
強制性交等罪に関しては、加害者自身やそのご家族から被害者に連絡を取ることは非常に困難ですので、強制性交等罪で逮捕された場合は、早急に弁護士に相談されることをおすすめいたします。
5、まとめ
強制性交等罪と一言でいってもその内容は多岐にわたり、犯行の内容によって懲役の幅も異なります。
また、逮捕された後でも、被害者との示談によって、不起訴になる可能性があったり、刑罰が軽減されたりする等、その後の社会復帰に大きな影響が出てきます。
しかし、強制性交等罪で逮捕されると、弁護士の力なしに示談を成立させることは困難です。そこで逮捕後は、早期に弁護士に依頼をして、適切なアドバイスを受けて示談を成立させるよう尽力することが重要となります。
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