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強制わいせつ罪の構成要件とは? どのような条件に当てはまれば逮捕されるのか
身内が強制わいせつ事件を起こしてしまったと聞けば、ご家族としては「逮捕されてしまうのか」「どのような罪になるのか」など、さまざまな疑問が頭をよぎるはずです。
今回は、強制わいせつ罪が成立するための要件や逮捕の条件、家族として何をするべきかといった点について弁護士が解説します。性犯罪は近年厳罰化傾向にあり、平成29年には関連する刑法改正がおこなわれていますので、その点も含めて解説いたします。
1、強制わいせつ罪とは
強制わいせつ罪は、個人の性的自由を侵害してわいせつな行為をする犯罪です(刑法176条)。13歳以上の被害者に対して暴行または脅迫を用いて、相手の同意なくわいせつな行為をすると強制わいせつ罪が成立します。強制わいせつ罪の被害者・加害者の性別は関係ありません。
一方、被害者が13歳未満の場合は、わいせつな行為をしただけで強制わいせつ罪が成立します。手段や同意の有無は問われないので、暴行または脅迫がなく、被害者の同意があったとしても強制わいせつ罪に問われます。
強制わいせつ罪で有罪判決が下されると「6月以上10年以下の懲役刑」に処され、執行猶予がつかなければ刑務所に収監されます。被害者の抵抗を受けて未遂に終わった場合でも、強制わいせつ未遂罪として同じ法定刑の範囲内で罰せられます。
2、「わいせつな行為」とは
「わいせつな行為」とは、被害者の性的自由や性的感情を害し、被害者に恥ずかしいと思わせる行為全般を指し、陰部や胸をさわる、キスをする、裸にして写真を撮るなどの行為が該当し得ます。公然わいせつ罪よりもわいせつな行為として判断される範囲が広いのが特徴です。
行為の度合いが比較的軽度であれば、各都道府県が定める迷惑防止条例違反や軽犯罪法違反に問われる可能性があります。典型的なのが、電車やバスの中で衣服の上から身体をさわるなどの、いわゆる痴漢行為です。しかし、執拗にさわり続けた場合は強制わいせつ罪になることがあり、明確な線引きがされているわけではありません。
また性交や肛門性交、口腔性交を強要した場合は、強制わいせつ罪よりも重い強制性交等罪(旧強姦罪)に問われます。平成29年7月の法改正以前は、男性に性交等をはたらいたとしても、強姦罪の適用はなく強制わいせつ罪が適用されていましたが、法改正により性別関係なく相手の意思に反して性交等をはたらいた場合は、強制性交等罪が適用されるようになりました。
3、「暴行または脅迫」とは
強制わいせつ罪における「暴行または脅迫」とは、被害者の反抗を著しく困難な状態にさせる言動のことです。暴行には殴る蹴る、手足を押さえる、羽交い絞めにする、押し倒す行為などがあります。脅迫は、被害者の弱みを握って黙らせる、殺人を予告するといった行為が該当します。
ここで注意が必要なのが「わいせつな行為そのものが暴行や脅迫に該当する場合がある」という点です。
つまり、一例として挙げたような暴行や脅迫がなかったとしても、わいせつな行為によって被害者が怖くなり抵抗できなかったのであれば、わいせつな行為そのものをもって暴行や脅迫があったと判断される可能性があるということです。
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4、被害者の同意の有無はどう判断されるのか
強制わいせつ罪では、しばしば被害者の同意の有無が争点になります。被害者が13歳以上の場合は、同意があれば強制わいせつ罪が成立しません。特に犯行を否認する際に「同意があった」あるいは「同意があったと思っていた」と主張するケースが多く見られます。
同意の有無は基本的に被害者の証言が決め手となりますが、犯行の状況や現場、時間帯、被害者との関係、メールやLINEのやりとり、被害者の事件前後の様子などからも推察して判断されます。客観的事実をもとに判断されるので、被害者が抵抗しなかったことのみをもって「同意があったと思った」という反論では不十分です。
5、性的意図は必要か
これまで強制わいせつ罪が成立するには、犯人の性欲を刺激興奮させ、または満足させるという「性的意図」が必要でした。言い換えれば復讐や虐待、侮辱などの目的でわいせつな行為をおこなった場合は、強制わいせつ罪が成立しなかったのです。
しかし、平成29年11月29日の最高裁判決で「性的意図を一律に強制わいせつ罪の成立要件とすることは相当でない」と判断されました。47年ぶりに15人の裁判官全員一致でなされた判例変更は、そもそも性的意図必要説に根強い反対があったことや、性犯罪への社会的意識の変化などが背景にあります。ただし、「性的意図がなくても犯罪が成立する場合がある」との解釈にとどまり、性的意図が100%不要というわけではありません。
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6、刑法改正で強制わいせつ罪は非親告罪に
従来の強制わいせつ罪は「親告罪」で、被害者の告訴がなければ起訴されることはありませんでした。しかし、被害者の名誉やプライバシーを保護する目的からとはいえ、告訴の判断を被害者のみに委ねることに批判がありました。そのため、平成29年7月施行の刑法改正で「非親告罪」に変更され、被害者の告訴がない場合でも捜査機関の判断で立件し、起訴することができるようになりました。また、起訴前に被害者と示談をして告訴を取り下げてもらったとしても、必ずしも不起訴処分になるわけではない点にも注意が必要です。
7、身内が逮捕された場合は弁護士に相談
逮捕後72時間は家族であっても面会が制限されるため、逮捕された身内が捜査機関の厳しい取り調べによって不利な供述をしてしまうおそれがあります。また、起訴・不起訴処分の決定まで逮捕後最長でも23日の猶予しかなく、速やかに対処しなければ社会生活に影響がでてしまいます。しかし加害者のご家族が、捜査機関へのはたらきかけや被害者との示談をおこなうことは非常に困難です。特に性犯罪に関しては、被害者の方の肉体的・精神的苦痛が大きいケースも少なくありません。加害者本人やそのご家族が直接示談交渉を行うことは難しいでしょう。
逮捕直後の段階からこうした活動ができるのは弁護士に限られるので、ご家族が逮捕された場合はなるべく早く相談し、迅速に対応されることをおすすめいたします。
8、まとめ
今回は強制わいせつ罪の構成要件について、刑法改正の影響も含めて解説しました。性犯罪への社会的関心が高まる昨今、ご家族が強制わいせつ事件を起こしてしまったら、逮捕されて厳しい罰を受けるリスクがあります。早期の身柄釈放や不起訴処分の獲得、処分の軽減を目指すためには、ご家族が速やかに弁護士に相談し、対処する必要があります。
ベリーベスト法律事務所の弁護士もご家族のために尽力しますので、ご家族のわいせつ行為が発覚したらなるべく早くご相談ください。
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※本コラムは公開日当時の内容です。
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