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強姦罪から強制性交等罪へ! どう変わった? 不起訴や執行猶予のポイントとは?
強姦罪という言葉を聞いたことのある方は多いと思います。しかしこの強姦罪は法改正によって強制性交等罪という名前に変わっており、罰則も厳しくなっています。
もし自分の家族が強制性交等罪に問われてしまったらどうなるのか、強姦罪とは何が違うのか、そして何よりも、罪を軽くできないものかと考えるでしょう。
そこでこの記事では、強制性交等罪とは何か、強姦罪との違いや成立要件、刑罰などについて詳しく解説します。
1、強姦と強制性交等罪の違いとは?
強制性交等罪は、平成29年の法改正により、強姦罪から変更された罪です。しかし強姦罪の時代があまりに長かったため、まだ一般的にはなじみの薄い名前かもしれません。法改正後、これまでよりも処罰される行為の対象が広がり、また与えられる刑罰も以前より重たくなりました。親告罪だったものが非親告罪になったことも大きな変化です。
ではあらためて、変更のあったポイントを説明しましょう。
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(1)被害者の対象が拡大した
これまでの強姦罪は「姦」という字が示すように、女性が乱暴されることを想定していましたが、男性に対する性的暴行も対象になりました。
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(2)姦淫の定義が変わった
これまでの姦淫は、これも字から分かるように女性が対象であり、その内容は男性がおのずから、男性器を女性器に挿入することを想定していました。しかし法改正で、女性器への挿入だけでなく口腔や肛門への挿入にも拡大されることになりました。
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(3)刑罰が強化された
これまでは3年以上の有期懲役でしたが、5年以上の有期懲役となりました。さらに相手に怪我をさせたり死亡させたりした場合は強制性交等致死傷罪に問われ、6年以上、最大で無期懲役を科されます。
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(4)親告罪から非親告罪になった
これまでは親告罪であったため、被害者や被害者の親権者が刑事告訴をすることで、はじめて捜査機関が動くことができました。これが非親告罪となったことで、被害者の意思とは関係なく捜査をすることが可能になりました。
2、性交等の定義とは
強姦罪では問題となる行為が姦淫とされていましたが、法改正後はそれが性交等に拡大されました。ここでは一見分かりにくいその内容についてご説明します。
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(1)条文について
刑法第177条において下記のように定められています。
【刑法第177条】
13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。13歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。
まず前提となるのは、目的を果たすために暴行又は脅迫を用いるということです。ただし相手が13歳未満の場合は、それらの手段がなくても、また合意があったとしても犯罪になります。 -
(2)罪に問われる3つの行為
条文に明記されているのが「性交、肛門性交又は口腔性交」という3つの行為です。これらは、対象となる人体の場所と、そこに対する行為を示しています。
性交は、女性器に男性器を挿入することを指します。また同様に、肛門性交は肛門へ、口腔性交は口腔へ、男性器を挿入すると解釈できます。
つまり女性器への挿入だけでなく、肛門や口腔への挿入も同じ罪状で裁かれることになります。この規定により、男性が男性に行う性的暴行も対象になることが分かります。
強姦罪の時代には、被害者が男性の場合や肛門性交および口腔性交については、より罪の軽い強制わいせつ罪で罰せられていました。しかし法改正により、いずれの場合も強制性交等罪に問われることになりました。
なお、強制わいせつ罪における行為との境目として、性器の挿入をともなう行為か否かが問題となります。もっとも、性交等をする目的で強制わいせつを行ったと認められれば、後述する強制性交等罪の未遂罪に問われることもあります。 -
(3)女性が罪に問われることも
法律の中では、誰が誰に挿入したら問題になるのかは明記されていません。そのため、女性が相手の男性器を自分の性器や口腔に入れた場合も含まれると解釈できます。つまり、女性が無理やり男性の男性器を使って性交等をした場合も罪に問われることになります。
3、性交等が既遂となるのはどの時点から?
強制性交等罪には、それまでの強姦罪と同じように、未遂の場合の規定があります。具体的には、着手、未遂、既遂という3段階があり、未遂に終わった場合には刑の軽減措置があります。ではこの3つを詳しく見ていきましょう。
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(1)着手
性交等を目的にして、相手を脅迫したり、何らかの暴行に及んだりした場合、この時点で犯罪の着手とみなされます。相手が13歳未満の場合、性交等を開始した時点が着手となります。
暴行とは、縄で縛って体を拘束する、殴って気絶させるなどして、相手を抵抗できない状態にすることを言います。脅迫とは凶器などを使って「動いたら殺すぞ」などと言い、抵抗できない状態にすることを言います。ただし、被害者の反抗が困難な状態であれば、必ずしも直接的な暴力や脅迫が求められるわけではありません。 -
(2)未遂
性交等に向けて暴行や脅迫を始めたが、最終的に性交等には至らなかった場合です。たとえば性器をなめた時点で行為が終わった場合などが、このケースに当たります。
原則として、未遂であっても既遂と同じ範囲内で罰を受けますが、情状酌量が認められると、起訴を受けても減刑され執行猶予が付く可能性が出てきます。また、自分の意思で行為をやめた場合は、必ず刑の軽減や免除されることも定められています。
ただし、未遂であったとしても、暴行をして相手に怪我を与えたり死なせたりした場合は、強制性交等致死傷罪に問われます。その場合、刑の軽減措置を受けることはできません。 -
(3)既遂
実際に男性器を性器、口腔、肛門に入れた場合は、既遂として言い逃れができない状態になります。執行猶予はなく、最低5年の懲役が科されます。
これまでは、あくまで男性器を女性器に入れることが想定されていましたが、そこでは男性器を少しでも女性器に入れたら既遂、そうでなければ未遂とされ、射精や妊娠の有無は考慮されていませんでした。改正後もその解釈を引き継いでおり、あくまで挿入の事実があったかどうかが判断の根拠となります。
なお、強制性交等罪はあくまで男性器を用いた犯罪であるとされているため、性器を模した器具を使った場合は、その対象に含まれないとされています。
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4、強姦罪以上に強制性交等罪は被害者への示談対応が重要
強制性交等罪は非親告罪となったことで、被害者の意思とは関係なく逮捕や起訴されることになりました。また罰則が強化されたことで、有罪となった場合は最低でも5年の懲役刑が科されます。しかも3年を超える懲役には執行猶予が付かないため、これを得るには量刑判断で3年以下に減刑される必要があります。
起訴を免れたり実刑判決で減刑を考えるなら、被害者との示談の成立が重要となります。
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(1)被害者の感情が重要
法務省では、捜査においては被害者の協力が必要であり、もし被害者が起訴を望まない場合は、それを尊重するとしています。また起訴された場合でも、裁判官が最終的な判断をするうえでは、被害者がどの程度の処罰感情を持っているかが大きな影響を与えます。
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(2)示談の決め手は弁護士
難しい状況の中で示談交渉を成功させるには、性犯罪に関する経験をもち、加害者に対する弁護の実績が豊富な弁護士事務所に、できるだけ早い段階で相談しなくてはなりません。
特に被害者の連絡先を知らない場合、警察や検察官などから本人やご家族に連絡先が明かされることはまずありません。唯一、弁護士だけが教えてもらえる可能性があるのです。
示談が早い段階で成立し被害者から宥恕(ゆうじょ)意思を示してもらうことができれば、逮捕されたとしても、不起訴となり前科が付かない可能性や、減刑されたうえで執行猶予が付く可能性が出てきます。
5、まとめ
強制性交等罪は性犯罪の中でも非常に重い罪です。捜査機関も被害者の側に立って、加害者を厳しく追及してくることが考えられます。取り調べは、厳しいものになるでしょう。
示談の成立に向けて動いたり、不起訴処分や執行猶予付き判決を得るためには弁護士のサポートが欠かせません。
もしも身内が強制性交等罪の容疑をかけられてしまったら、ベリーベスト法律事務所まですぐにご連絡ください。弁護士が力になります。
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