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身内が強姦の加害者に! 逮捕されたらどうすれば良いの? 示談交渉は?
もし、身内のひとりが強姦の加害者として逮捕された場合、どんな罪になるのでしょうか。
平成29年7月に施行された改正刑法では、刑法が制定されてから110年ぶりに性犯罪に関する規定が大幅に改正されました。以前の強姦(ごうかん)罪は強制性交等罪へという名称となり、処罰対象や被害者の範囲、起訴条件、罰則などが変更されました。
強制性交等罪で逮捕され起訴されれば、ほとんどのケースで実刑判決が下されます。そこで今回は、強制性交等罪とは何か、罰則はどのくらいなのか、執行猶予がつく可能性はあるのか、起訴や実刑判決を避けるためにできることなどについて解説していきます。
1、強姦(強制性交等罪)の刑罰とは
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(1)強制性交等罪とは
強制性交等罪(刑法第177条)とは、暴行または脅迫により、性交等(肛門および口腔による性交も含む)を行ったことで成立する犯罪です。また、13歳未満の者に対する性交は、暴行または脅迫がなくても成立します。
相手が心神喪失もしくは抗拒不能の状態であることを利用したり、酒や薬などでそのような状態にさせたりした上で性交等を行った場合には、準強制性交等罪(刑法第178条)が成立します。強制性交等罪と準強制性交等罪には、未遂罪(刑法第180条)も規定されています。 -
(2)強制性交等罪の罰則
強制性交等罪と準強制性交等罪の刑罰は、5年以上の懲役刑です。また、強制性交等致死傷罪(強制性交等により相手を死亡または負傷させた場合)は、無期または6年以上の懲役となります。公訴時効は、強制性交等罪と準強制性交等罪は10年、強制性交等致傷は15年、強制性交等致死は30年です。
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(3)強姦(ごうかん)罪と強制性交等罪の違い
旧強姦(ごうかん)罪と強制性交等罪には、次のような違いがあります。
- 処罰対象となる行為
「姦淫(かんいん)」から「性交等」に拡大し、姦淫(女性器への男性器の挿入)だけでなく、肛門や口腔での性交も含まれることになりました。
この点、改正前の刑法では、肛門や口腔での性交および被害者が男性の場合は強制わいせつ罪(刑法第176条)が成立していました。
- 被害対象
「女子」から「者」になり、女性だけでなく、男性も被害者に含まれることになりました。
- 罰則
「3年以上の有期懲役」から「5年以上の有期懲役」に厳罰化されました。
- 起訴条件
「親告罪」から「非親告罪」になり、被害者の告訴がなくとも起訴できるようになりました。
- 処罰対象となる行為
2、強姦(強制性交等罪)と執行猶予
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(1)執行猶予とは
刑事裁判で有罪判決を受けても、刑法第25条により刑の執行が猶予されることがあります。執行猶予付き判決を得ると、直ちに刑務所に入ることなく、日常生活を送りながら罪を償うことができます。無事に猶予期間を過ごし終えたときには、判決の効力そのものが失われます。ただし、猶予期間中に再び罪を犯すようなことがあれば執行猶予は取り消されます。また、執行猶予となっても有罪に変わりはありませんので、前科がつくことになります。
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(2)執行猶予の条件
懲役刑において、執行猶予が認められるためには、次のような条件が必要です。
- 判決が3年以下の懲役である
- 禁錮以上(死刑・懲役・禁錮)の刑に処せられたことがない
- 禁錮以上の刑に処せられたことがあるが、刑の終了・免除から5年以内に禁錮刑以上の刑に処せられていない
強制性交等罪の法定刑は5年以上の有期懲役です。そのため、強姦をすると原則として執行猶予の対象とはなりません。強制性交等罪で起訴された場合は、実刑を免れるのは難しいでしょう。
しかし、刑法第66条では情状酌量による刑の軽減が定められています。「示談が成立している」「懲戒免職など社会的制裁を受けている」「両親などの監督者がいる」などの点が考慮され、懲役刑を3年以下に軽減した上で、執行猶予がつくこともあります。
3、強姦(強制性交等罪)と逮捕
強姦(強制性交等罪)では、犯行現場において警察官や私人により逮捕される「現行犯逮捕」と、逮捕状を示されて逮捕される「通常逮捕」があります。現行犯逮捕を免れたとしても、唾液や精液などの体液、防犯カメラ、第三者の供述などの証拠がそろっていれば、後日逮捕(通常逮捕)されます。
上記のような証拠が残っていなくても、被害者の供述の具体性や状況によっては、警察へ事情聴取に呼び出されて、その後に逮捕される可能性もあります。
一方、証拠隠滅や逃亡のおそれがない場合や、証拠がそろっていない場合、起訴の見込みが低い場合などには逮捕されずに、在宅捜査となることもあります。この場合は捜査が継続するものの、身柄を拘束されませんので、会社や学校に行くこともできます。
ただし、起訴までの期間に制限がないため、事件が長期化するリスクがあります。在宅捜査中に逃亡を図ったり、余罪が発覚したりすれば、その時点で身柄を拘束される可能性があります。
平成30年版犯罪白書によると、平成29年に強制性交等事件として処理された事件のうち、約58%が逮捕されています。逮捕されたケースでは、約98%が勾留されています。勾留延長された場合は、最大23日間も身柄を拘束されることになりますので、日常生活への影響は免れないでしょう。
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4、強姦加害者として実刑を受けないために
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(1)示談の重要性
強姦(強制性交等)の加害者として起訴されたら、情状酌量の理由がない限り、99%以上の確率で実刑判決を受けることになるでしょう。
起訴されないためには、まず、起訴処分が下される前に、被害者との示談を成立させることが重要です。示談の目的は、被害者への謝罪を示すことが第一ですが、示談が成立することによって被害者が被害届や告訴の取り下げをする場合もありますし、その結果として、不起訴処分や刑罰の減軽につながる可能性も生じてきます。
刑法改正によって強姦(強制性交等)は非親告罪となったので、示談が成立すれば必ず不起訴処分となるわけではありません。しかし、被害者が示談書などで「起訴や処罰を求めない」という意思を示すことによって、前科がある場合や被害者が複数に及ぶ凶悪な事件などを除けば、不起訴処分となる可能性も出てきます。 -
(2)示談交渉は弁護士に依頼
事件により大きなショックを受けている被害者との示談交渉は、被害者の心情に対するきめ細やかな配慮が求められます。加害者本人はもとより、たとえ加害者のご家族であっても、被害者は会いたくないと思われるケースが多いでしょう。
被害者に謝罪し、許しを請い、示談交渉を進めていくためには、早期に弁護士に相談することが重要です。被害者も加害者や加害者のご家族からの連絡は受け付けなくとも、第三者である弁護士からの打診であれば話し合いに応じてくれやすくなりますし、示談成立の可能性も高まります。
5、まとめ
今回は、強制性交等罪とは何か、罰則の内容、執行猶予の可能性などについてご紹介しました。強姦や痴漢、セクハラ、DVなどの性犯罪・性暴力に対する社会の目は厳しく、もし罪を犯してしまい逮捕された場合には、一刻も早く対応することが重要です。
刑事弁護はスピードとの勝負です。もしも、身内が強制性交等罪で逮捕された場合は、一刻も早くベリーベスト法律事務所までご相談ください。
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