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強制性交等罪(旧強姦罪)の量刑の重さは懲役何年? 初犯でも執行猶予はつく?
家族や親しい人が強制性交等(強姦)の罪に問われてしまったら、その量刑の重さや、執行猶予が付くのかなど、不安になってしまうことでしょう。
これまで強姦罪とされてきたものは、平成29年6月16日の法改正により、強制性交等罪に名称が変更され、同年7月13日から施行されています。その結果、処罰対象となる行為の範囲が広くなり、罰則も強化されています。
そこでこの記事では、強制性交(強姦)事件を起こしてしまった場合の量刑の重さや、少しでもその刑罰を軽くするにはどうしたらよいかについて、詳しくご紹介します。
1、強制性交等(強姦)罪の量刑の重さは?
まず、改正となった強制性交等罪(旧強姦罪)の条文から量刑の重さを確認しましょう。具体的には、刑法第177条が該当します。
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(1)第177条(強制性交等)
強制性交等罪は、刑法第177条で、「十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。」と定められています。
有期懲役は最大で20年とされているので、相手の性別を問わず強制的に性交等におよんだ場合、また13歳未満の者へは手段や合意の有無を問わず性交等におよんだ場合、5年~20年の懲役刑を受けることになります。執行猶予は3年以下の懲役刑に適用されるので、裁判所の判断で減刑できない場合には、いきなり実刑となってしまうのです。 -
(2)初犯でも懲役刑になる?
強制性交等罪には罰金刑がなく、初犯であっても有罪判決となった場合には懲役刑が科せられます。前述した通り、執行猶予は3年以下の懲役刑にしか適用されません。
懲役刑を避けるためには、起訴を回避するか、無罪を勝ち取る必要があります。それには被害者との示談が重要であり、もし示談が成立していないのであれば、可能性は低くなるでしょう。
なお、何らかの事情があると認められた場合は、裁判所の判断で減刑されることもあります。その結果、判決が3年以下の懲役になれば、執行猶予の可能性も出てきます。 -
(3)強制性交等罪の非親告罪化
法改正前の強姦罪の場合、被害者の告訴がなければ加害者を起訴することができませんでした。これを親告罪といいます。
このように親告罪としていた理由は、被害者の心情やプライバシーへの配慮等のためです。
しかしながら、告訴をするか否かという点の判断を被害者等に委ねることが、かえって被害者等にとって負担になる等の報告が多数寄せられました。
そのため、法改正により、起訴にあたって、被害者等の告訴が不要となりました。
したがいまして、強制性交等罪で起訴される前に、被害者との間で示談が成立し、被害者が告訴を取り下げたとしても、必ずしも不起訴になるわけではありません。
2、未遂の場合の刑罰の重さは? 強制性交等と強制わいせつの違い
もし性交等が未遂だった場合はどうなるでしょうか? 混同されやすい強制わいせつ罪についてもあわせて解説します。
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(1)強制性交等(強姦)罪は未遂も罪になる
刑法第180条では、「第百七十六条から前条までの罪の未遂は、罰する。」とのみ規定されています。
もし性交等が未遂に終わっても、第177条で定められた5年以上の懲役刑が適用されるということです。ただし実際には、刑法第43条の未遂減免の措置が取られる可能性が残ります(刑法第67条、第68条)。 -
(2)未遂犯(刑法第43条)
刑法第43条では、次のように規定されています。
【刑法第43条】
犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。ただし、自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。
刑法第43条本文は、未遂の場合には、裁判所の判断で刑を任意で減刑することを定めたものです。
強姦罪の場合、性器を一部女性性器に挿入すれば、「姦淫した」といえ、強姦罪の既遂と判断されていました。しかしながら、強制性交等罪では口腔性交や肛門性交等の行為も含まれ、強姦罪よりも処罰範囲が広くなっています。そのため、性器の女性性器への挿入前の段階でも、口腔性交等に及んでいた場合には、未遂ではなく、強制性交等罪の既遂と判断されます。また性犯罪に関する厳罰化の流れから、実刑判決を受ける可能性は低くありません。
刑法第43条但書は、「自己の意思により犯罪を中止した」場合、つまりいわゆる中止犯が成立した場合、刑が必要的に減免されることを定めたものです。
同上但書にしたがって刑が必要的に減免されるためには、中止犯が成立する必要があり、自己の判断で中止したか否か、意思決定の形成に影響を与えた外部的要因の有無も問われます。そのため、たとえば警官が駆けつけたことで未遂に終わった場合は必ずしも減免されるとは限りません。むしろ、警官が来たという外部的な要因が意思決定に重大な影響を及ぼしたと判断され、「自己の意思により犯罪を中止した」とはいえないと判断される可能性が高いでしょう。 -
(3)強制性交等と強制わいせつの違い
性器、口腔、肛門を使った性交におよんだものが強制性交等になります。他方、暴行脅迫等を用いて、服を脱がしたり、胸を触ったり、キスをしたりするなど、性交等におよばない場合には、強制わいせつ罪が成立する可能性があります。
そのため、強制性交等未遂罪と強制わいせつ罪の境目の判断が難しくなります。強制性交等を目的として未遂に終わったのか、そこまでは求めず強制わいせつを目的としたのか、諸般の事情から判断されることになります。
3、量刑の重さ
強制性交等罪は条文では5年~20年の懲役刑ですが、実際に示される量刑の重さは状況によって変わってきます。
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(1)量刑の判断基準
強制性交等罪の量刑の判断においては、一般的に下記のような要素をもとに、裁判所の裁判官が総合的に判断します。
- 性交等自体の悪質性 単純な性交等だったのか、それ自体に暴力性があったのかなど。
- 行為の結果、発生した被害の程度 たとえば、被害者が死亡してしまった場合は強制性交等致死罪が、金品を盗んだ場合は強盗・強制性交等罪が成立し、より重い量刑となります(刑法第241条)。
- 示談の有無や、その金額 被害者との間に示談が成立しているか、またその金額は十分なものであるかなど。
- 被害弁償の有無および被害弁償の額 仮に示談が成立していなかったとしても、具体的に弁償すべき行為があった場合、その金額や、それを弁償したかどうかも問われます。
- 加害者と被害者の特徴や関係性 ふたりは恋愛関係にあったのか、全く知らない同士だったのか、その親密さや年齢差など。
- 性交等に至った動機や経緯 なぜそのような行為におよんだのか、またどのように至ったのか。たとえば計画的に凶器を用意して行為におよんだ場合は、悪質性が問われるでしょう。
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(2)被害者の心情は重要
行為態様や結果はもちろん、被害者の心情も重視されます。
誠意をもって謝罪をしたことや家族が今後の監督をすると誓約したことで、被害者が加害者を許す意思を示して被害届や告訴を取り下げ、示談が成立することも考えられます。
この場合には、示談をしたことおよび被害者の感情等を考慮したうえで、減刑する事情として加味されることになります。
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4、強制性交(強姦)罪の刑罰を軽くするには弁護士に相談を
このように、強制性交等罪では被害者がもつ処罰感情が、裁判で下される量刑の重さに大きく影響します。被害者から許しを得るためには、まずは加害者本人がしっかり反省をして、謝罪の意を示すことが前提です。
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(1)示談の重要性
被害者に謝罪の意を示すと言っても、それだけでは裁判において決定的な影響力をおよぼせません。そのため、被害者と示談することが重要です。つまり、示談書を作成して相手との合意を記し、示談金を被害者に払い込み、あわせて被害届や告訴を取り下げてもらうことが必要です。そうした事実がなければ、裁判所は宥恕の有無を判断できず、情状酌量や刑の減軽も認められません。
示談が成立しないまま起訴や判決を迎えれば、高い確率で執行猶予なしの懲役刑が待っています。それを避けるためには、被害者に謝罪し、示談をする必要があるのです。 -
(2)弁護士に依頼する
示談交渉を進める場合は、ご家族が事前に弁護士に相談することが必要です。
なぜなら、被害者は心身に大きな傷を負っており、被害者に最大限の配慮をする必要があることから、警察や検察官は加害者本人やその家族に連絡先を教えてくれません。また、元々加害者と被害者が知り合いで連絡先を知っている場合であっても、冷静に交渉することができません。当然、逮捕・勾留された場合には、逮捕・勾留された本人が動くこともできません。
また、加害者本人が、逮捕・勾留された場合、原則として逮捕から23日以内に、起訴されるか否かが決まります。逮捕・勾留されている間に取られた調書も、その後の起訴や裁判の結果を左右します。当然、自分の身に覚えのない事件である場合には、弁護士が接見し、取り調べの対応をきちんとしなければなりません。
5、まとめ
強制性交等の罪に問われた場合、その刑罰は非常に重く、有罪となれば執行猶予が付かない可能性も高くなります。まず目指すべきは不起訴ですが、起訴されてしまった場合でも減刑されたうえで執行猶予付き判決となる可能性が残されています。そのためには示談が必要です。
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