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強制性交等罪で告訴された場合の対策とは? 告訴事件の流れと対処法を解説
男女間の性交渉、つまりセックスは、同意のもとでおこなわれないといけません。もし、相手が同意していないのに行為に至った場合は、刑法で規定されている犯罪になります。
このことは法律のことを知らなくてもモラルとして誰もが理解していることですが、法律による規制を悪用する人もいます。たとえば、同意のもとで性交渉に至ったのに、後日になって「強姦された」と訴えられるケースは決して珍しくありません。
浮気の事実を「強姦された」と言い訳して隠す、金銭を得る目的で「告訴する」と伝えるなど、目的はさまざまですが、目撃者がいないのが当然なので犯罪の容疑がかけられてしまうことは避けられないでしょう。
今回は、以前は強姦罪と呼ばれていた「強制性交等罪」について解説しながら、相手からいわれもなく「同意したつもりはない。告訴する」と言われた場合、どのように対応をとることができるのかなど解説していきます。
1、強制性交等罪とは
相手の同意がないまま性交渉に至ることを、一般的に「強姦」や「レイプ」と呼びますが、かつて日本の刑法では「強姦罪」という罪名で規定されていました。
性犯罪が多様化し、社会的に性犯罪に対する厳罰化が叫ばれるなか、平成29年には強姦罪が「強制性交等罪」へと改正されました。
強制性交等罪へと改正されても、基本的な考え方は変わりません。相手の同意がないまま性交渉に至れば、強制性交等罪が成立するものと考えてもおおむね間違いではありません。
ただし、改正によっていくつかの変更が加えられました。
まず、処罰対象となる行為が拡幅されました。
改正前の強姦罪では「強いて姦淫(かんいん)すること」が処罰対象であり、姦淫とは「陰茎を腟内に没入させること」と解釈されていました。そのため、陰茎を肛門や口腔内に挿入する行為は性類似行為として強制わいせつ罪に該当しうる行為とされていましたが、強制性交等罪では、性類似行為も処罰対象になりました。
また「陰茎を腟内に没入させる」という行為は、陰茎を持つ男性のみがおこなえる行為なので、原則的に加害者は男性に限られ、女性は共犯としてでしか処罰の対象にはなりませんでした。
改正後は加害者が男性、被害者が女性という区別がなくなったので、女性でも加害者と捉えることが可能となったのです。
さらに、強姦罪の場合、検察官が起訴するためには被害者による告訴が必須でした。告訴を訴訟要件とする犯罪を「親告罪」といいますが、改正後の強制性交等罪はこの制限が撤廃され、非親告罪となりました。
つまり、被害者の告訴がなくても検察官が起訴できるようになったので、たとえば捜査機関が犯罪の発生を認知しているのに被害者が告訴を拒んでいるような場合でも検察官の判断で起訴が可能になったのです。
2、強制性交等罪の構成要件
強制性交等罪はどのような場合に成立するのでしょうか?
強制性交等罪の構成要件を確認しましょう。
強制性交等罪は、刑法第177条に規定されています。
【刑法第177条】
13歳以上の者に対し、暴行または脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交をした者は、強制性交等の罪とする。13歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。
まず、被害者となるのは「13歳以上の者」です。
改正前の強姦罪では「13歳以上の女子」と規定されていましたが、改正によって男女の区別は撤廃されました。
また、対象が13歳未満の者に対して行為に及んだ場合は、暴行や脅迫がなくても成立します。
13歳未満という年齢では性交等へ同意できる意思能力がないということを前提に、手段や同意の有無を問わないのです。
「暴行または脅迫を用いて」とは、必ずしも殴る・蹴るなどの暴力や「騒いだら殺す」などの脅迫文言である必要はありません。相手の抵抗を抑圧する程度であれば暴行や脅迫とみなされるため、部屋が施錠されて逃げられない場合や、抵抗できないほどの体格差がある場合なども該当しえます。
「性交、肛門性交または口腔性交をした者」が対象ですから、強姦罪のときのように性交のみに限られません。
以前は法定刑が軽い強制わいせつ罪でしか処罰されなかった行為も、性類似行為が処罰対象に含まれたため、強制性交等罪によって重きに処断されることになりました。
3、強制性交等罪で告訴された場合の流れ
強制性交等罪で告訴された場合、告訴を受けた人の手続きはどのような流れになるのでしょうか?
- 告訴 告訴とは、法律の定めでは口頭でも可能とされていますが、あらかじめ作成した告訴状という書面によっておこなわれるのが通常です。告訴状は、犯罪事実や被告訴人の特定などの要件が整っていて、指摘している事実が犯罪行為にならない場合でない限り、原則的に受理されます。
- 捜査 告訴状が受理されると警察の捜査が開始されます。この段階で、任意の取り調べがおこなわれるケースもあります。
- 逮捕 告訴状に記載の犯罪事実が存在することに相当な疑いがあるとみなされる場合は、裁判所が逮捕状を発付して、逮捕されます。逮捕されると、犯罪事実に関する取り調べがおこなわれて48時間以内に検察庁へと身柄が引き継がれます。
- 送致 警察から被疑者の身柄が引き継がれることを送致といいます。送致を受けた検察官は、取り調べのうえで被疑者を起訴するか釈放するかを判断します。この段階では捜査が尽くされていないと判断される場合、検察官は裁判所に対して引き続き身柄拘束をおこなう請求をおこないます。
- 勾留 検察官による身柄拘束の請求が認められた場合、原則10日間、最長20日間の身柄拘束がおこなわれます。
- 起訴 勾留が満期を迎えるまでに、検察官は刑事裁判の必要性を判断します。刑事裁判によって罪を問う必要があると判断した場合、検察官は起訴します。
- 刑事裁判 刑事裁判では、犯罪事実の有無が審理され、有罪と判断されればどの程度の刑罰が適当であるかが判断されます。
告訴の受理を端緒に始まった事件は、法律の規定によって必ず送致されます。たとえ送致前に取り下げがなされたとしても、送致は避けられません。
しかし、告訴の取り下げがあれば、被害者が明確に「処罰してほしいという意思はない」と示していることになるため、起訴を防ぐには告訴の取り下げを求めて、取り下げの意向を書類にしてもらう必要があります。
また、告訴の取り下げは、起訴までが期限となります。
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4、強制性交等罪の告訴を取り下げてもらう方法とは
強制性交等罪で告訴されてしまった場合は、逮捕の有無にかかわらず必ず送致されます。送致されてしまえば、次に待つのは起訴、裁判ですから、重たい刑罰を回避するには何としてでも起訴を防ぐ必要があります。
強制性交等罪に改正されたことで、強姦等の行為は非親告罪になりましたが、依然として告訴が有効であることは重要です。
訴訟要件ではなくなったとしても、被害者の強い処罰意思の表れである告訴は検察官が公判を維持する材料となります。示談によって謝罪告訴の取り下げが実現すれば、検察官が不起訴処分とする期待も高まります。
また、もし起訴されてしまっても、示談が成立していることで減刑が期待できるでしょう。
さらに、告訴の意向を示してはいるがまだ告訴受理に至っていない段階でも、示談成立を目指せば、被害者が告訴を控える可能性があります。いったん告訴が受理されてしまえば、警察の捜査が始まってしまい、逮捕の可能性も生じるため、告訴がなされる前に示談成立に向けて対策を講じるべきでしょう。
告訴の取り下げを求める交渉や、告訴前の示談交渉には、弁護士によるサポートが有効です。被害者は加害者との交渉を望まないことが多く、特に加害者との直接交渉は強く拒絶される傾向があるので、まずは弁護士に相談するとよいでしょう。
弁護士は状況に応じて適切に交渉しますので、告訴の取り下げや示談成立の可能性が高まります。
5、まとめ
いわれもない強姦の疑いをかけられてしまえば、誰でも動揺するはずです。さらに「告訴する」などといわれれば、詳しい意味を知らなくても重大な手続きになることは容易に感じられるでしょう。
強制性交等罪による告訴に不安がある方は、早急に弁護士に相談しましょう。弁護士に相談することで、被害者との示談交渉や告訴取り下げへのはたらきかけが可能になります。強制性交等罪は有罪が確定すれば懲役刑は免れず、執行猶予が期待できないことも多いので、何としてでも起訴を回避する必要があります。
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