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強制わいせつの疑いをかけられたときの対処法。逮捕や起訴回避のポイントは?
痴漢やセクハラなど、性的な加害行為は大きな社会問題となっています。性犯罪は単に相手の肉体を傷つけるだけではなく、心にも深いダメージを与える重大な犯罪です。平成29年6月には、そうした性被害の深刻さを司法判断の現場でくみ取るため、性犯罪の厳罰化が行われました。
しかし犯罪発生の抑止にまでは至っておらず、平成30年度版の「犯罪白書」によれば、平成29年における強制わいせつ罪での検挙件数は4320件にも上り、前年比で113件の増加となっています。
今回は、嫌がる相手を抱きしめた、酔った勢いで胸や下腹部をなで回したなどのように、強制わいせつ行為を働いてしまったケースを取り上げ、逮捕される可能性の有無や事件化を防ぐための対処法をご説明します。
1、強制わいせつ罪とは
まずは、具体的に何をすれば「強制わいせつ」となるのか理解するため、刑法における強制わいせつ罪の内容を確認しましょう。
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(1)強制わいせつ罪の行為
強制わいせつ罪に該当するとして定められている行為は、以下の通りです。
- 13歳以上の男女に対する、暴行または脅迫を用いてしたわいせつ行為
- 13歳未満の男女に対する、わいせつな行為
ポイントは「暴行」の程度、そして「わいせつ行為」の意味です。
まず、暴行とは、被害者の身体に向けられた不法な有形力(直接的な暴力)を指します。殴ったり蹴ったりという場合はもちろん、無理やり下着の中へ手を差し込むといった行為も暴行に含まれます。
次に、わいせつ行為とは、いたずらに性欲を刺激・興奮させ、性的な羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反する行為を指します。以下のような行為が挙げられます。
- 抱きしめる
- キスをする
- 胸を触る
- 下腹部を触る
- 自分の下腹部に触らせる
なお、強制わいせつ罪の成立に当たって、行為者に性的な意図がある必要はありません。「わいせつな気持ちはなかった」、「単なるコミュニケーションのつもりだった」などの弁解は通用しないのです。 -
(2)強制わいせつ罪の刑罰
刑罰は6か月以上10年以下の懲役となっています。有罪となれば罰金刑などでは済まず、原則として刑務所へ入らなければなりません。それだけ重い罪といえます。
2、後日、逮捕される可能性はあるのか
強制わいせつ罪の容疑で後から逮捕されることはあるのでしょうか。逮捕される可能性と犯罪の性質についてご説明します。
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(1)逮捕の方法
逮捕の方法には、大きく分けて2つあります。現行犯逮捕と通常逮捕です。強制わいせつ行為をした現場で取り押さえられるのが現行犯逮捕で、後からの逮捕状を示してするのを通常逮捕といいます。その場で逮捕されなかったとしても、後に、被害者の訴えやカメラの映像などに基づいて、捜査機関が逮捕状を取得して逮捕されることがあるため、安心はできません。
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(2)逮捕と告訴
逮捕とは、罪を犯したと疑われる者(被疑者)の身柄を拘束する処分をいい、刑事裁判へ向けて逃亡や証拠隠滅を防ぐために行われるものです。告訴とは、被害者等が捜査機関に対して犯罪事実を申告し、その訴追を求める意思表示です。
性犯罪については、平成29年6月に刑法が改正されるまで、親告罪でした。親告罪とは、被害者などの告訴が起訴の要件とされる犯罪をいいます。平成29年6月の改正前の強制わいせつ罪では、被害者などからの告訴がなければ逮捕される可能性は高くはなかったのです。
しかし、現在では性犯罪の重大性を考慮し、告訴を要しない非親告罪とされているため、告訴の有無にかかわらず逮捕されます。
また、刑法改正前に強制わいせつ罪を犯していた場合でも、後から告訴されれば、時効にかかっていない限り、やはり通常逮捕される可能性はあります。
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3、自首しても逮捕の可能性は排除できない
逮捕が逃亡や証拠隠滅を防ぐための処分であれば、被疑者から積極的に自主をすれば、逃亡などの心配なしと見なされ、逮捕されないのでしょうか。自主と逮捕の関係について解説します。
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(1)犯罪の悪質性と罪の重さ
一般に、行為の悪質性が低く、軽微とされている犯罪であれば、罪を認めて自ら出頭したという事情が斟酌(しんしゃく)され、逮捕を回避できる可能性が高いといえます。たとえば、数百円程度の安価な品物を盗んだ場合や、相手に傷害を負わせない程度の暴力を振るったような場合などです。
ところが、強制わいせつ罪は悪質性の程度に幅があります。相手の身体に軽く触れる程度の行為から、物陰に相手を連れ込んで無理やり胸をもみしだくような、強姦に近い行為まで考えられるのです。
実際、痴漢や盗撮に比べても、強制わいせつ罪の刑罰は重く規定されています。一例として東京都迷惑条例を挙げると、痴漢は懲役6か月、盗撮は懲役1年が最高刑と定められているところ、刑法の強制わいせつ罪は6か月以上10年以下の懲役となっているのです。これは、悪質性の高い行為について、適切に処罰するためと考えられます。
したがって、悪質な強制わいせつ行為を働いた場合、自首しても逮捕を免れられるとは限りません。 -
(2)弁護士による自主同行と身元引受
ただ、逮捕すべきか否かの判断が分かれるようなケースでは、出頭の際に弁護士へ同行を頼み、家族に身元引受人となってもらうことで、逃亡などのおそれがないと判断されることがあります。その場合、逮捕の必要性がなくなり、逮捕を免れることができる可能性もでてくるでしょう。
逮捕されるのを避けたいのであれば、早期に、弁護士に相談し、素直に自首することが大切です。
4、事件化を防ぐための対処はある!?
逮捕や裁判に至る前の段階でことを収めるためには、いくつか押さえておきたいポイントがあります。
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(1)被害者との示談をまとめる
逮捕前、もしくは逮捕されてからでも、起訴前の段階で被害者との示談をまとめることができれば、逮捕や起訴を免れられる可能性が高くなります。確かに強制わいせつ罪が非親告罪化された以上、被害者の処罰意思がどうあれ起訴されるおそれはあります。しかし、被害者のプライバシーへの配慮などもあるため、示談の成立は逮捕や起訴の判断に大きく影響するのです。
また、勾留中であったとしても、示談がまとまれば身柄拘束からの解放の可能性があり、起訴された場合にも執行猶予処分を得やすくなるなど、示談を行う利点は多数あります。 -
(2)取り調べには素直に応じる
警察や検察に対しては、単に自首するだけでなく、取り調べに対して素直に受け答えをすることが大事です。捜査に協力的な姿勢を示すことで、身柄拘束や起訴の必要性が低いと判断してもらえる可能性があります。
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(3)弁護士へ速やかに相談する
被害者との示談にせよ、取り調べに対する適切な対応にせよ、弁護士の協力を得ることが重要です。性犯罪は非常にデリケートな問題なので、示談経験の豊富な弁護士に任せることにより、早期の示談成立が期待できます。
身柄拘束からの解放や不起訴処分の獲得により、今後の社会生活への影響も最小限にとどめることができるでしょう。
5、まとめ
今回は、強制わいせつ罪に該当する行為と刑罰、同罪の疑いをもたれたときの対処法についてご説明しました。強制わいせつ罪を始めとする性犯罪行為をしてしまった場合、できる限り迅速な対処をする必要があります。被害者との示談や取り調べへの対応など、対処が遅れてしまうと起訴されて刑罰を受ける可能性もありますし、会社や学校などに事実を知られ、社会復帰が困難となるおそれもあります。できれば逮捕される前の段階で、被害者との示談を成立させておきたいところでしょう。
ただ、性犯罪のようにデリケートな問題においては、加害者自身による被害者との示談交渉は基本的に避けたほうが無難です。強制わいせつ行為を働いてしまい、事件化する前に解決したい方や、刑罰を受ける可能性を低くしたいという方は、ベリーベスト法律事務所の弁護士にご相談ください。示談交渉から取り調べにおけるアドバイスまで、さまざまなサポートをいたします。
ベリーベスト法律事務所は、北海道から沖縄まで展開する大規模法律事務所です。
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