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弁護士コラム

2019年11月12日
  • 性・風俗事件
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準強制性交等罪は準強姦罪から何が変わったのか? 未遂罪についても解説

準強制性交等罪は準強姦罪から何が変わったのか? 未遂罪についても解説
準強制性交等罪は準強姦罪から何が変わったのか? 未遂罪についても解説

性犯罪に対する批判や厳罰化の声の高まりを受けて、平成29年には110年ぶりに法改正がなされました。

110年ぶりの刑法改正となった背景には、どのようなものがあったのでしょうか。

今回は、この法改正の中でも準強制性交等(旧準強姦罪)を中心に、改正点やその理由などについて解説していきます。

令和5年7月13日に準強制わいせつ罪は「不同意わいせつ罪」へ、準強制性交等罪は「不同意性交等罪」へ改正されました。
この刑法改正によって、犯罪が成立する要件が明文化され、処罰の対象となる行為が拡大されました。

目次

  1. 1、旧強姦罪・旧準強姦罪の問題点
    1. (1)女性のみを対象としていた
    2. (2)親告罪なので被害者が泣き寝入りするケースが多かった
    3. (3)取り調べや裁判、報道によるセカンドレイプ
  2. 2、旧準強姦罪から準強制性交等罪への変更点
    1. (1)行為の拡大
    2. (2)性別の撤廃
    3. (3)非親告罪化
    4. (4)刑罰の厳格化
    5. (5)集団強姦罪の廃止
  3. 3、未遂の場合も処罰を受ける
    1. (1)既遂の条件
    2. (2)未遂の条件
    3. (3)未遂罪の刑罰
  4. 4、まとめ

1、旧強姦罪・旧準強姦罪の問題点

強姦罪と準強姦罪は、法改正によってそれぞれ名称が強制性交等罪、準強制性交等罪に変わりました。旧強姦罪、旧準強姦罪では以下のような点が問題と考えられていました。

  1. (1)女性のみを対象としていた

    改正前の条文では被害者を「女子」と明記していたため、男性が性犯罪の被害に遭っても、刑罰がより軽い(準)強制わいせつ罪でしか加害者を罰することができませんでした。

  2. (2)親告罪なので被害者が泣き寝入りするケースが多かった

    起訴に告訴を要する親告罪では、告訴の判断が被害者に委ねられていたため、その精神的な負担が相当に大きいことが問題でした。「告訴したら報復を受けるのではないか」「被害に遭った事実が周囲に知られてしまうのではないか」といった不安から被害者が泣き寝入りするケースが多いと考えられていました。

  3. (3)取り調べや裁判、報道によるセカンドレイプ

    セカンドレイプとは、被害者が思い出したくない性犯罪についての供述を求められるなどし、さらなる心理的ダメージを負うことをいいます。
    被害者は事件の後、取り調べや裁判の過程で被害の内容を証言しなくてはなりません。また、報道によって事件が世間の注目を集め、それを見た心無い人たちによって事実と異なることを言われたり、被害者の個人情報などがネット上に出回ってしまうといったケースもあります。
    こうしたセカンドレイプが起きる心配も、犯行がなかなか表面化できない点として考えられていました。

2、旧準強姦罪から準強制性交等罪への変更点

旧準強姦罪は準強制性交等罪へと名称を変更し、内容も大幅に変わりました。全体としていえることは、性犯罪への社会的批判を受け、従来よりも厳罰化されたということです。主な変更点は以下のとおりです。

  1. (1)行為の拡大

    旧準強姦罪では男性器を女性器に挿入する行為のみが処罰の対象でしたが、改正後は肛門性交および口腔性交も対象として加わりました。これらの行為は従来、準強制わいせつ罪でしか罰せられなかったのですが、より刑罰の重い準強制性交等罪の範囲に含まれることになったのです。

  2. (2)性別の撤廃

    条文が「女子」から「者」へ変更され、性別の制限がなくなりました。上で説明した行為拡大とあわせ、男性から男性への犯行はもとより、女性から男性への犯行も厳しく処罰されます。なお、女性から女性への犯行は、身体構造上の理由から処罰の対象外となっています。

  3. (3)非親告罪化

    起訴のために被害者の告訴を要した親告罪から、告訴がなくても起訴できる非親告罪へと変更になりました。これにより、被害者の精神的負担が軽減され、加害者の報復を恐れて泣き寝入りするケースが減ることが期待されています。

  4. (4)刑罰の厳格化

    旧準強姦罪の刑罰は「懲役3年~懲役20年」でしたが、準強制性交等罪では「懲役5年~懲役20年」と、懲役の下限が2年長くなりました。下限が2年になったことで、有罪となった場合、原則的には執行猶予がつかなくなりましたので、刑罰が厳格化されたということができます。

  5. (5)集団強姦罪の廃止

    法改正前、2名以上が共同で強姦した場合には集団強姦罪として「4年以上の有期懲役」が規定されていました。しかし、法改正によって旧強姦罪・旧準強姦罪の懲役の下限が3年から5年へ引き上げられ、集団強姦罪の法定刑よりも重くなったため、集団強姦罪は廃止されました。これは、集団で強姦する行為自体が処罰されなくなったということではなく、2名以上の集団で強姦を行うと強制性交等罪によって処罰されるということです。

3、未遂の場合も処罰を受ける

準強制性交等では、性交等に至らず未遂であったとしても罰せられることがあります。ここではどのような場合に未遂罪が成立するのか、未遂罪ではどのような刑罰となるのかなど解説します。

  1. (1)既遂の条件

    まずは、準強制性交等罪が既遂として成立する条件を確認します。
    準強制性交等罪は、人の心神喪失や抗拒不能に乗じ、あるいは心神喪失や抗拒不能にさせて性交等をする犯罪です。
    心神喪失とは、精神の障害が生じて正常な判断能力を欠いている状態をいいます。泥酔や麻酔状態、高度の精神病がこれにあたります。抗拒不能とは、心神喪失以外の理由、たとえば恐怖や錯誤によって心理的、物理的に抵抗できない状態をいいます。
    そしてこれらの状態にある相手に性交等をすれば、準強制性交等罪が既遂として成立します。

  2. (2)未遂の条件

    性交等におよぶ前段階に着手した段階で準強制性交等罪未遂罪が適用されます。準強制性交等罪では、心神喪失や抗拒不能に乗じ、あるいはその状態にさせた時点です。

    たとえば次のようなケースでは、性交等という目的を遂げずとも罪になります。


    • 性交等をする目的で飲み物に睡眠薬を入れた
    • 泥酔している相手へ乗りかかった
    • 病気の治療のために必要だとうそをついて性交等をしようとした
  3. (3)未遂罪の刑罰

    未遂に終わっても同じ法定刑が用いられますので、有罪になれば5年以上の有期懲役に処されます。
    未遂の場合は刑法第43条が定める未遂減免の規定により、量刑判断で減刑されることがあります。また自ら犯行をやめた場合は減刑または免除されます。
    もっとも、準強制性交等罪はそれ自体が非常に重い罪なので、仮に減刑されても重い罰を受ける可能性が高いでしょう。

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4、まとめ

強制性交等罪・準強制性交等罪は、法改正以降、罪の重さが増しています。ただ、未遂と既遂の区別や、どの犯罪にあたるのかについては判断を要し、その結果次第では逮捕後の対応方法が異なってきます。
もしもご自身やご家族が犯した事件が準強制性交等罪などの性犯罪にあたるのではないかと思われるようであれば、ベリーベスト法律事務所までご相談ください。刑事事件の解決実績が豊富な弁護士が適切な弁護活動に努めます。

本コラムを監修した弁護士
萩原 達也
ベリーベスト法律事務所
代表弁護士
弁護士会:
第一東京弁護士会

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※本コラムは公開日当時の内容です。
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