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売春防止法違反で家族が逮捕! 不起訴を目指すためにはどうすれば良い?
売春防止法は、売春や買春そのものではなく、売春を促す行為を取り締まる法律です。違反行為として、街頭での客引き行為などをイメージされる方が多いかもしれません。しかし、最近ではインターネット上のパトロールも強化されており、掲示板やSNSの書き込みがきっかけで取り調べを受けるケースも増えています。
万が一、「家族が売春防止法違反の疑いで逮捕された」と警察から連絡があったら、どのように対応すべきなのでしょうか。
この記事では、売春防止法で取り締まられている行為や刑罰の内容、不起訴処分となるかどうか、家族が逮捕された場合の対応方法などを、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
1、売春防止法の内容
はじめに、売春防止法とはどのような法律なのか、規定されている違反行為や刑罰の内容を解説します。
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(1)売春防止法の法律の内容と違反行為
売春防止法は、売春の防止を図る目的で作られた法律です。
売春防止法において「売春」は「対償を受け、又は受ける約束で、不特定の相手方と性交すること」と定義されており、売春を助長する行為への処罰や、売春を行うおそれのある女性に対する補導処分・保護更生措置などが定められています。
売春防止法の第3条には「何人も、売春をし、又はその相手方となつてはならない」と定められていますが、同法には売春・買春行為自体を処罰する規定はありません。
売春防止法違反として罰せられるのは、あくまでも売春目的でのあっせんや、場所の提供などの助長行為です。 -
(2)刑罰の内容
売春防止法で定められている刑罰について、主なものは次のとおりです。
- 売春・買春 先述したように、売春防止法においては、売春・買春行為そのものには罰則が設けられていません。
- 勧誘(第5条) 街頭で客待ちをしたり、広告を出したりして売春の相手方となるように誘った場合、6か月以下の懲役、または1万円以下の罰金が科せられます。
- 周旋(第6条) 売春の仲介やあっせんを行うと、2年以下の懲役、または5万円以下の罰金が科せられます。
- 前貸し(第9条) 売春をさせる目的で、前貸しなどによってお金や財産上の利益を与えた場合、3年以下の懲役、または10万円以下の罰金の対象になります。
- 売春をさせる契約(第10条) 売春をさせることを定めた契約を結ぶと、3年以下の懲役、または10万円以下の罰金に処せられます。
- 場所の提供(第11条1項・2項) 売春が行われることを知ったうえで場所を提供すると、3年以下の懲役、または10万円以下の罰金に処されます。
- 管理売春(第12条) 人を管理下に置いて売春をさせるような事業を行うと、10年以下の懲役および30万円以下の罰金です。
ただし、相手が18歳未満の未成年だった場合は、「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」違反として、買春行為をした側が罪に問われる可能性があります。
児童買春に問われた場合の刑罰は、5年以下の懲役、または300万円以下の罰金です(同法第4条)。また、各都道府県が定める、いわゆる青少年保護育成条例にもとづき処罰を受ける可能性もあります。
事業として場所の提供を行った場合の刑罰は、7年以下の懲役および30万以下の罰金です。
2、売春防止法違反で逮捕されるきっかけとは
売春防止法に違反したとして逮捕されるのは、どのようなことが発端になるのでしょうか。
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(1)被害者からの通報
無理やり売春行為をさせた場合、またはさせようとしていた場合には、被害者が警察に相談することで発覚することがあります。被害者が被害届を出す、告訴するといったことによって、警察による捜査がはじまり、逮捕に至るケースがあるでしょう。
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(2)ネット上の書き込み
ひと昔前には路上で客待ちをするなどして、巡回中の警察官に逮捕されるケースが多かったようです。しかし最近では、ネット上の取り締まりが強化されています。掲示板やSNSで、買春相手を募集するような書き込みをすると、ネットを巡回(サイバーパトロール)する警察官に発見され、取り調べの対象となり、逮捕されるケースがあります。
3、不起訴を獲得できるケース
売春防止法違反で逮捕されてしまった場合、必ず起訴されてしまうのでしょうか。起訴・不起訴がどのように決まるのかは、事件の様態などによっても異なりますが、一般的な傾向を解説します。
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(1)行為への関与が薄い場合
共犯者間での地位が低かった場合や、事件への関与があまりないことを客観的に証明できれば、不起訴となる可能性があります。また、実際には売春のあっせん等に関与していなかったにもかかわらず、何らかの経緯で疑いをかけられてしまった場合は、無実を裏付ける証拠の存在を主張して不起訴を求めていくことになります。
なお、売買春を行った本人が取り調べを受けたとしても、あくまで参考人としての取り調べにすぎず、逮捕されることも前科がつくこともありません。 -
(2)主犯格として罪に問われている場合は起訴される可能性が高い
売春のあっせんや場所の提供といった違反行為の主犯格として事件に関わった場合は、事件の内容にもよりますが、執行猶予や不起訴処分を目指すのは難しくなるでしょう。
もし、実際には主犯格ではなかったにもかかわらず主犯格として罪に問われてしまった場合には、まずは不起訴を目指すことになります。
4、残された家族ができること
売春防止法違反で身内が逮捕されてしまった場合、残された家族はどのように対応すればよいのでしょうか。
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(1)事実の確認
家族が逮捕されてしまったら、弁護士へ相談することをおすすめします。ただし、弁護士へ相談する前に、まずは現状を正しく把握しましょう。連絡をしてきた警察官に、次のことを確認してみてください。
- 何の罪で逮捕されたのか
- いつ逮捕されたのか
- どこの警察署に逮捕されているか
こうした事実の把握が重要なのは、弁護士へ相談する際に事情を伝える必要があるためです。刑事事件は、初期の対応がその後の流れを左右するといっても過言ではありません。逮捕に至った経緯を正しく伝えることが、適切な弁護活動を行ううえで非常に重要なポイントになります。 -
(2)弁護士に相談
弁護士には、早期釈放や不起訴、執行猶予の獲得などを目指した弁護活動を依頼できます。逮捕後すぐに依頼すれば、弁護士は早急に本人と面会し、取り調べのアドバイスを伝えるなどのサポートも行います。また、逮捕後最大72時間は弁護士以外との面会はできないため、本人へメッセージを伝言するといったことも可能です。
弁護士を選任することで、不当な取り調べを防ぎやすくなるほか、今後の流れや対応に関するアドバイスを受けることができます。本人にとっても家族にとっても、精神的な負担が軽減されるでしょう。 -
(3)被害者への謝罪と示談交渉を進める
売春防止法違反事件では、被害者がいるケースもあります。被害者が存在する場合には、謝罪し示談交渉を進めることが良いケースもあります。交渉が進んで示談が成立すれば、不起訴の獲得や、減刑などが期待できることがあります。
売春防止法違反の場合、事件の性質上、被疑者・被告人の関係者である家族が直接交渉するよりも、弁護士を介して示談交渉を進めるほうが得策です。こうした意味でも、家族が逮捕されてしまったときは、弁護士に相談することをおすすめします。
5、まとめ
売春防止法は売春・買春行為をした人ではなく、これらの行為を促すような行為をした人を取り締まる法律です。ただし、売買春の相手が18歳未満だった場合は、売買春行為をした人自身が逮捕される場合もあります。
ご家族が、売春をあっせんした罪や、場所を提供した罪などに問われてしまった場合は、ベリーベスト法律事務所にご相談ください。刑事事件の対応実績が豊富な弁護士が、解決にむけて迅速に対応します。
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