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背任罪で家族が逮捕されてしまった! 釈放を勝ち取る方法とは
令和2年7月、通信会社の技術開発部門に所属していた男性が背任罪の容疑で逮捕されました。外部との業務委託契約において、不必要な物品の発注により勤務先の会社に損害を与えたとのことです。この男性は、納入された物品を転売して利益を得ていた疑いももたれています。
この事例のように、会社における不正取引が「背任罪」にあたるとされるケースはめずらしくありません。大企業の不正取引事案などでは、幹部職員が背任容疑で逮捕されてニュースで大々的に報じられることもあります。
このコラムでは、背任罪とはどのような犯罪なのか、逮捕・勾留される可能性や釈放が期待できるタイミングはいつなのかなどをベリーベスト法律事務所が解説します。
1、背任罪とはどのような罪か?
まずは背任罪がどのような犯罪なのかを確認していきましょう。
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(1)背任罪の根拠と法定刑
背任罪は刑法第247条に規定されている犯罪です。
背任罪は、他人のためにその事務処理をする者が、自己もしくは第三者の利益をはかり、または本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をして本人に財産上の損害を加えた場合に成立します。
法定刑は「5年以下の懲役または50万円以下の罰金」です。 -
(2)背任罪が成立するケース
背任罪が成立する条件は、他人のためにその事務処理をする者が図利加害目的をもって任務違背行為をはたらき、財産上の損害を与えた場合です。
「図利加害目的」とは、条文が示す「自己もしくは第三者の利益を図る」または「本人に損害を加える」という目的を意味します。
「任務違背行為」も同じく条文が示す「任務に背く行為」という意味です。
冒頭で紹介した事例のほか、金融機関の役員が回収の見込みがない相手に対して十分な担保もなく貸付を実行したなどのケースが代表的な事例となるでしょう。 -
(3)横領罪・特別背任罪との違い
背任罪と似た犯罪に刑法第252条の「横領罪」があります。両者の違いについては学説上の争いがありますが、金品などの有体物を処分した場合は横領罪が成立すると考えておけばよいでしょう。
横領罪の法定刑は「5年以下の懲役」で、罰金刑の定めがないため、背任罪よりも重い刑罰が規定されているといえます。
同じく背任罪と似ているのが「特別背任罪」です。特別背任罪は刑法ではなく会社法第960条1項に定められている犯罪で、背任罪にあたる行為を株式会社の発起人・取締役などがはたらいた場合に適用されます。
法定刑は「10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはこれらを併科」です。背任罪よりも格段に厳しく処罰されます。
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2、背任で逮捕・勾留されるのはどのような場合か
背任罪の容疑をかけられた場合、逮捕や勾留によって身柄拘束を受ける可能性はあるのでしょうか?
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(1)背任罪の逮捕率
誤解している方もいるかもしれませんが、罪を犯した人全員が逮捕されるわけではありません。逮捕、つまり身柄拘束は逃亡や証隠滅防止のために行われるため、これらのおそれがなければ、逮捕されずにいわゆる在宅のまま捜査を受けることになります。
令和元年の検察統計調査によると、検察庁が取り扱った背任事件の総数は148件でした。そのなかでも、警察が逮捕して身柄を送致したのはわずか18件で、残り130件は逮捕されずに在宅のままで送致されています。
逮捕された割合は12.1%に過ぎず、ほとんどの事件が身柄拘束を伴わない在宅事件として処理されているのが現状です。 -
(2)逮捕された場合の勾留請求率
勾留とは、拘置所や警察の留置施設に身柄を拘束することです。
同じく令和元年の検察統計調査から、逮捕された場合に検察官が勾留を請求した件数をみると、逮捕された件数と同じく18件について勾留が請求され、すべて許可されています。
つまり、逮捕された場合の勾留請求率は100%で、ほぼ確実に勾留が認められているのです。 -
(3)背任罪の刑罰の傾向
令和元年中に検察庁が取り扱った背任事件のうち、検察官が起訴に踏み切った件数は19件で、起訴率は12.8%でした。このように統計上の数字を並べてみると、逮捕・勾留請求・起訴の件数はほぼ同数であり、逮捕された事件のほとんどが起訴されているという状況がうかがえます。
さらに令和元年版の司法統計調査をみると、判決が下された12件の背任事件のうちすべてに懲役刑が下されています。それぞれの量刑は次のとおりです。
- 2年以上3年未満の懲役(実刑)……3件
- 2年以上3年未満の懲役(執行猶予)……3件
- 1年以上2年未満の懲役(執行猶予)……5件
- 6か月以上1年未満の懲役(執行猶予)……1件
12件の事件のうち、実刑判決が下されたのは3件・25%で、残り9件・75%は執行猶予が付されています。
これらの統計情報をまとめると、背任罪は逮捕されると起訴・有罪に直結することが多いものの、執行猶予が付される可能性も高いという状況がみえるでしょう。
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3、背任で釈放されるのはどのような状況か
家族が背任罪の容疑で逮捕されてしまった場合には、できるだけ早く身柄拘束を解いてほしいと考えるのが当然です。刑事事件の流れをみながら、釈放が期待できるタイミングを解説しましょう。
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(1)「釈放」とは
一般的に知られている「釈放」とは、刑務所の受刑者が刑期を終えて解放されることを指すでしょう。しかし、法的な手続きとしてみた場合、釈放は「身柄拘束を解かれること」を指しており、刑期の終了だけを指しているわけではありません。
釈放が行われるのは、次のいずれかの条件を満たす場合です。
- 身柄拘束の必要がない
- 身柄拘束が認められない
刑事手続きの流れのなかでは、これらの条件を満たして釈放されるタイミングがたびたび存在します。釈放を望むなら、適切なタイミングを逃さずに釈放の実現に向けたアクションを起こす必要があると心得ておきましょう。
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(2)起訴前に釈放されるケース
捜査機関に逮捕され、検察官に起訴されるより前でも、釈放が期待できます。起訴前の段階で釈放されるのは次のような状況です。
●逮捕後、検察庁に送致される前の釈放
誤認逮捕など、逮捕そのものに間違いがある場合や、逮捕手続きに違法があった場合です。
●勾留が請求されない場合の釈放
勾留請求よりも前に被害届が取り下げられた、逃亡や証拠隠滅のおそれがないので在宅捜査でも対応できると判断されたなどの場合です。
●勾留請求が認められなかった場合の釈放
検察官が勾留を請求したにもかかわらず、裁判官が「勾留は認めない」と判断した場合の釈放です。
●勾留延長が認められなかった場合の釈放
原則10日間の勾留が経過し、検察官が延長を求めたのに裁判官がこれを認めなかった場合の釈放です。ほかの事件で逮捕・勾留されたのちに背任罪で再逮捕されるなど、身柄拘束が長引いている場合は勾留延長が認められにくくなります。
●不起訴処分による釈放
検察官が「刑事裁判を開く必要はない」と判断して起訴しないという処分(不起訴処分)を下せば即日で釈放されます。 -
(3)起訴後に釈放されるケース
検察官に起訴された場合は「保釈」によって一時的な身柄拘束からの解放が期待できます。保釈とは、起訴を受けたあとの段階で、一定の要件を満たした場合に、裁判所に対して保釈金を預けることで、被告人としての勾留を解かれる制度です。
日常生活を送りながら在宅のまま刑事裁判に出廷することが認められますが、判決次第では刑務所に収監されてしまいます。また、禁止行為があれば保釈が取り消されてしまうため、あくまでも「一時的な身柄解放」だと考えておくべきです。 -
(4)判決後に釈放されるケース
刑事裁判の判決が下されたあとでも釈放される可能性があります。
●実刑以外の判決が下された場合の釈放
執行猶予付きの懲役刑や罰金刑が下された場合は刑務所に収監されることなく釈放されます。
●仮釈放が認められた場合
刑務所に収監されても、一定の条件を満たせば仮釈放が認められます。刑法第28条の規定に従えば、背任罪で実刑に処された場合は刑期の3分の1が終了し改悛の状が認められれば仮釈放の条件を満たします。ただし、実情は刑期の半分以上が経過しないまま仮釈放が認められるケースはごくまれです。
●刑期を満了した場合
刑務所に収監されて刑期を満了した場合は、刑罰が終了して釈放されます。
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4、背任で釈放されるためにできることとは
背任容疑で逮捕された場合に、釈放を目指すためにできることをみていきましょう。
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(1)勾留を阻止する
現実的に釈放のもっとも早いタイミングとなるのは勾留の要否が検討される段階です。検察官の勾留請求を阻止すれば、最短で72時間以内の釈放が期待できます。
たとえ勾留が許可されても、準抗告・勾留取消し請求などによって対抗すれば釈放される可能性があります。
これらの手続きを個人で行うのは難しいので、早い段階で弁護士に相談してサポートを得るのが最善でしょう。 -
(2)不起訴処分を目指す
検察官が不起訴処分を下せば、刑事裁判に移行することなく釈放されます。
不起訴処分には嫌疑なし・証拠不十分・起訴猶予といった種類がありますが、その多くは、容疑が固まっているものの刑罰を科すまでの必要はないと判断される「起訴猶予」です。
起訴猶予を目指すには、被害者との示談成立がもっとも効果的と考えられますので、ただちに弁護士に依頼して被害者との示談交渉を進めていきましょう。 -
(3)身柄拘束の必要性がないことを主張する
逮捕・勾留による身柄拘束は、国民の自由を一時的に奪う措置であるため、適法性がないと認められません。
身柄拘束が適法とみなされるためには「逃亡または証拠隠滅のおそれ」が要件となります。つまり、逃亡や証拠隠滅をはかるおそれがない者については、身柄拘束の必要性がありません。
定まった住居があって家族の監督もあるなど、逃亡や証拠隠滅をはかるおそれがないことを捜査機関や裁判官に主張することで、身柄拘束の解除が期待できるでしょう。 -
(4)保釈を活用する
逮捕・勾留され検察官に起訴されると、刑事裁判の判決が下されるまで釈放は叶いません。実刑判決を受ければそのまま刑務所に収監されるので、社会復帰はさらに遠のいてしまいます。
検察官に起訴された段階で保釈を活用すれば、一時的にでも身柄拘束が解かれます。身柄拘束が解かれれば、弁護士との連携が密になり、執行猶予や罰金といった刑罰の軽減に向けたアクションも起こしやすくなるでしょう。
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5、まとめ
背任罪は、逮捕される割合が少ないとはいえ、逮捕されると起訴・有罪となる可能性が非常に高い犯罪です。刑事事件の流れのなかには釈放が期待できるタイミングがたびたび到来するので、弁護士に相談して釈放を目指した適切な弁護活動を依頼しましょう。
家族が背任事件の容疑で身柄拘束を受けてしまい、素早い釈放を望むなら、刑事事件の解決・弁護実績が豊富なベリーベスト法律事務所にお任せください。
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